「値上げしたいけど、お客さんが来なくなったらどうしよう」
2025年、この恐怖と戦っている飲食店オーナーは多いだろう。
食材費は上がり続けている。4月だけで4,225品目が一斉値上げ。最低賃金は全国加重平均で1,121円に引き上げ。米は10kgで7,000円。
コストは上がっているのにメニュー価格はそのまま。差額はすべてオーナーの利益から消えている。
先に結論
- 値上げした店の6割は「客数に大きな影響なし」
- 客離れの原因トップは「味やサービスへの不満」。 価格は4番目以降
- 1回5〜10%、看板メニューは控えめに、サイドとドリンクで調整
- 「数字がこうだから」で判断すれば、恐怖に振り回されない
値上げしても「客数が減らなかった」店は6割
ある飲食業界の調査によると、値上げを実施した飲食店のうち**約6割が「客数に大きな影響はなかった」**と回答している。
客離れを恐れて値上げをためらっている間にも、実際に値上げした店の過半数はお客さんを失っていない。
もちろんやり方次第だ。でも正しい方法で値上げすれば、客離れは最小限に抑えられることをデータが示している。
客が離れる本当の理由
お客さんが飲食店に来なくなる理由のトップ3は——
- 味やサービスへの不満
- 新しい店への浮気
- 生活圏の変化(引っ越し・転職など)
「価格」は実は4番目以降。
50〜100円の値上げで常連が離れることは、思っているほど多くない。 むしろ値上げせずに食材の質を落としたりポーションを減らしたりする「ステルス値上げ」のほうが、常連の信頼を損ねる。
客離れしない値上げの5つのルール
ルール1:一度に大きく上げない
500円→600円は「高くなった」と感じる。500円→530円は「まあそうだよね」で済む。
値上げ幅は1回あたり5〜10%。100円上げたいなら2回に分けて50円ずつ。半年〜1年の間隔をあければ、お客さんの抵抗感はぐっと小さくなる。
ルール2:全メニュー一律に上げない
お客さんがいちばんよく頼む「定番メニュー」は価格感度が高い。ここを大きく上げると「値上げした」という印象が強くなる。
定番メニューの値上げ幅は控えめに。サイドメニューやドリンクで調整する。
| メニュー | 現在価格 | 値上げ後 | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| 看板メニュー(ランチ定食) | 900円 | 930円 | +30円(3.3%) |
| サイドメニュー(サラダ) | 350円 | 400円 | +50円(14%) |
| ドリンク | 300円 | 350円 | +50円(17%) |
お客さんが気にするのは看板メニューの価格。サイドやドリンクの50円増は、ほとんど意識されない。
ルール3:理由を正直に伝える
「食材費の高騰により、やむを得ず価格を改定いたします」
この一文があるだけで受け止め方が大きく変わる。理由を言わずに値上げすると「金儲けか」と思われる。理由を伝えれば「大変なんだな」と共感してもらえる。
告知は値上げの1ヶ月前がベスト。店内掲示・SNS・LINE公式アカウントなど、常連に届く手段で。
ルール4:値上げと同時に「何か」を加える
価格だけが上がるとお客さんは「損をした」と感じる。でも値上げと同時に小さな改善を加えると印象が変わる。
- 味噌汁を具沢山にする
- 漬物を1品追加する
- ご飯のおかわりを無料にする
原価にして数十円の追加で「値上げしたけど、むしろお得感が出た」と思ってもらえることがある。
ルール5:値上げの判断を「数字」で決める
「いつ値上げすべきか」を肌感覚で判断すると、恐怖が邪魔をしてどうしても遅れる。
判断基準を先に決めておこう。
- 原価率が3ポイント以上、上がったとき
- FL比率(食材費+人件費の割合)が売上の60%を超えたとき
- 月の利益が前年同月比で20%以上減ったとき
この基準があれば、「怖いから」ではなく「数字がこうだから」で決断できる。
値上げの判断には「今の原価」が必要
ここで問題がある。
メニューごとの原価率を正確に把握しているオーナーは、実はそう多くない。
「うちの原価率はだいたい30%」——この「だいたい」が曲者だ。食材費が毎月変わる今、3ヶ月前の原価率で判断するのは、3ヶ月前の天気予報で今日の服を選ぶようなものだ。
KitchenCostのようなアプリなら、食材の仕入れ値を更新するだけで全メニューの原価率がリアルタイムで再計算される。
「先月から卵が15%上がった。影響を受けるメニューはこの3つ。原価率はそれぞれこう変わった」
この情報が手元にあれば、「何をいくら値上げすべきか」は恐怖ではなく数字に基づいて判断できる。
値上げは「お客さんへの裏切り」ではない。適正な価格で良い料理を出し続けるための経営判断だ。
値上げを恐れて利益を削り続け、最後に店を閉めることになったら——それこそがお客さんにとっての裏切りではないだろうか。
まずは自分の店の「今の原価」を知ることから始めよう。
客離れを抑えた価格改定を数字で判断するなら。KitchenCost を使ってみてください。