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2月と8月、売上が落ちるのは仕方ない──でも赤字は防げる。飲食店の閑散期「ニッパチ」を黒字で越える方法

飲食店の閑散期は2月と8月。売上は平均15〜20%落ちるのに、家賃と人件費は1円も減らない。この2ヶ月で年間利益の大半を食いつぶす店もある。売上を無理に上げようとするより、原価と固定費をコントロールして黒字ラインを下げる方が確実。閑散期こそ原価管理が利益を決める。

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目次

毎年、2月になると売上が落ちる。

8月もそうだ。お盆が終わった後、ぽっかりと客席が空く。

わかっている。去年もそうだったし、その前の年もそうだった。「ニッパチ」──飲食店なら誰でも知っている言葉。2月と8月は売上が落ちる。

でも、わかっていても毎年苦しい。

売上は落ちるのに、家賃は同じ。人件費も同じ。光熱費もそこまで変わらない。売上だけが減って、固定費はそのまま。この2ヶ月で、年間の利益をかなり食いつぶしている──そんな実感がある人は多いのではないか。

閑散期に何が起きているか──数字で見る

「なんとなく厳しい」を、一度数字にしてみる。

月商200万円の定食屋の場合

項目通常月閑散期(2月)差額
売上200万円165万円(▲17.5%)▲35万円
食材費(原価率30%)60万円49.5万円▲10.5万円
人件費(固定)50万円50万円変わらない
家賃30万円30万円変わらない
水道光熱費12万円11万円▲1万円
その他経費15万円14万円▲1万円
利益33万円10.5万円▲22.5万円

売上が35万円減ると、利益は22.5万円減る。売上の減少額より利益の減少額の方が体感として大きいのは、固定費が変わらないからだ。

2月は日数も28日しかない。営業日数が1〜2日少ないだけで、月商は5〜8万円変わる。

2月と8月、2ヶ月の利益減少を合算すると約45万円。 年間利益400万円の店なら、この2ヶ月だけで年間利益の11%が消える計算になる。

「売上を上げる」より「黒字ラインを下げる」

閑散期になると、つい「売上を上げなきゃ」と焦る。割引クーポンを配る。ランチの値段を下げる。SNSで必死に告知する。

気持ちはわかる。でも、閑散期に売上を無理に上げようとする施策には、リスクがある。

やりがちな対策短期の効果長期のリスク
ランチ値下げ(800円→500円)客数は少し増える原価率が悪化、値段を戻しにくい
クーポン大量配布一時的に客が増える「安い店」のイメージが定着
新メニュー大量投入話題にはなる仕込みと食材の負担が増える

閑散期に本当に効くのは、「売上が減っても赤字にならないライン」を下げること。 つまり、損益分岐点を下げる。

損益分岐点を下げるには、2つの方向がある。

  1. 固定費を減らす ──できることは限られるが、ゼロではない
  2. 変動費率を下げる ──原価管理で利益率を上げる

両方やるのが一番効く。

固定費──「動かせない」と思い込んでいないか

家賃

家賃は基本的に変わらない。でも、交渉の余地はある。

  • 契約更新のタイミングで、近隣の相場と比較して減額交渉する
  • **長期入居(5年以上)**の場合、「退去されるより減額した方がいい」と大家側も考える
  • 月5,000円でも下がれば、年間6万円の利益改善

「家賃交渉なんて」と思うかもしれない。でも、家賃が1万円下がれば、毎月の損益分岐点が1万円下がる。 閑散期にはこの1万円が生死を分けることがある。

人件費

正社員の給料は下げられない。でも、アルバイトのシフトは調整できる。

対策効果の目安
閑散期のシフトを1日あたり1時間短縮時給1,200円×1h×25日=月3万円削減
ピーク時間帯に集中させる(ダラダラシフトをやめる)月2〜4万円の改善
営業時間の短縮(閑散期だけランチ or ディナーのみ)状況による

大事なのは「人を切る」ではなく「稼働を最適化する」。 暇な時間にスタッフが2人いるなら、1人でまわる仕組みを考える。

原価管理──閑散期こそ利益率が物を言う

売上が減るということは、1食あたりの利益が、そのまま月末の利益に直結するということ。

メニューのABC分析で「閑散期メニュー」を作る

すべてのメニューが同じ利益を生んでいるわけではない。

分類特徴閑散期の扱い
A群(売れ筋&高利益)出数が多く、利益率も高いそのまま維持。閑散期のエース
B群(そこそこ)出数は普通、利益率もまあまあ状況次第で維持か一時休止
C群(出数少ない)ほとんど出ない、食材が専用閑散期は休止候補

C群のメニューを一時的に休止するだけで、こんな効果がある。

  • 仕入れる食材の種類が減る → 在庫がスッキリする
  • 使い切れない食材が減る → 廃棄ロスが減る
  • 仕込みの手間が減る → 人件費の削減になる

「メニューを減らしたらお客さんが来なくなるのでは」と不安になるかもしれない。でも、C群は「ほとんど出ないメニュー」だ。なくなっても、多くのお客さんは気づかない。

原価率の低いメニューに誘導する

閑散期は、「何が売れるか」ではなく「何を売りたいか」をコントロールする意識が大事。

メニュー売価原価率粗利
刺身盛り合わせ1,200円45%660円
鶏の唐揚げ定食900円28%648円
豚の生姜焼き定食850円25%637円

刺身盛りは売価が高いが、原価率も高い。唐揚げや生姜焼きは売価が低くても、粗利(利益額)はほぼ同じ。 しかも原価率は20ポイント近く低い。

閑散期には、こういう「原価率が低く、利益額が高い」メニューを:

  • メニュー表の一番目立つ位置に置く
  • 日替わりランチのメインに据える
  • 店頭のPOPで推す

お客さんに「食べたい」と思ってもらいつつ、利益が出るメニューに自然に誘導する。

食材の仕入れを閑散期モードに切り替える

客数が減るなら、仕入れも減らす。当たり前に聞こえるが、意外とできていない店が多い。

発注の「慣性」に注意する

繁忙期の仕入れ量をそのまま閑散期に引きずる──これが廃棄ロスの最大の原因。

ありがちなパターン何が起きるか
12月の発注量のまま2月を迎える食材が余って廃棄
「安いから」と大量仕入れ使い切れずにロス
仕入れ先に連絡せず、いつもの量が届く冷蔵庫がパンパン

閑散期に入る1〜2週間前に、仕入れ先に「来月は◯%くらい量を減らしたい」と伝えておく。 最低発注量がある場合は、品目を絞って対応する。

旬の食材で原価を下げる

2月なら大根、白菜、ほうれん草、ブリ。8月ならナス、トマト、枝豆、アジ。

旬の食材は安くて美味しい。閑散期こそ旬の食材を中心にメニューを組むことで、食材費を自然に下げながら「季節感」という付加価値もつけられる。

閑散期を「繁忙期の準備期間」に変える

売上が落ちる時期は、忙しいときにできないことをやるチャンスでもある。

やること効果
メニューの原価を全品再計算する食材価格の変動を反映し、利益率を正確に把握
レシピの分量を整理・記録する属人化を防ぎ、仕込みの標準化が進む
仕入れ先の見直し・相見積もり繁忙期に向けてコストを下げる交渉材料になる
厨房の大掃除・設備点検故障を事前に発見し、繁忙期の緊急修理を防ぐ
スタッフの教育・新メニューの試作繁忙期の質とスピードが上がる

特に「メニュー原価の再計算」は、閑散期にこそやるべき作業。 食材価格は半年で5〜10%動いていることも珍しくない。去年の原価のまま値段をつけていると、気づかないうちに利益率が下がっている。

閑散期に「やってはいけない」3つのこと

① 安易な値下げ

前述の通り、値下げは利益率を壊す。値下げで来たお客さんは、値段を戻せば来なくなる。

② 新メニューの大量投入

「メニューを増やせばお客さんが来るはず」──これは逆効果。メニューが増えれば仕入れ品目も増え、食材ロスも増える。閑散期はメニューを「増やす」のではなく「絞る」時期。

③ 何もしない

「2月はどうせ暇だから」と手をこまねいていると、赤字がそのまま積み上がる。閑散期は「我慢する時期」ではなく「仕組みを整える時期」。 ここで打った手が、3月以降の利益に効いてくる。

今週から始める3つのこと

① 自分の店の「閑散期の損益分岐点」を計算する 固定費(家賃+正社員人件費+リース+保険)÷ 粗利率 = 損益分岐点売上。この数字を知っているだけで、「あといくら売ればいいか」が見える。

② メニューのABC分析をして、C群を特定する 過去1〜2ヶ月の出数を見て、ほとんど出ていないメニューをリスト化する。閑散期はそのメニューを一時休止して、食材と仕込みを減らす。

③ 閑散期に入る前に、仕入れ先に数量変更を連絡する 「来月は少し減らしたい」と一言伝えるだけで、余計な在庫を抱えずに済む。

ニッパチは避けられない。でも赤字は避けられる。 売上が落ちる時期に「何とか売上を上げよう」ともがくより、「売上が落ちても利益が残る仕組み」を作る方が、ずっと確実だ。

KitchenCostで全メニューの原価率を出しておけば、閑散期に「どのメニューを推せば利益が残るか」が一目でわかる。繁忙期の忙しさの中では見えなかった数字が、閑散期にこそ武器になる。

よくある質問

飲食店の閑散期はいつですか?

一般的に2月と8月です。業界では『ニッパチ』と呼ばれています。2月は年末年始の忘年会・新年会の反動と寒さで外食需要が落ち込み、8月はお盆の帰省や夏休みの出費でビジネス街を中心に客足が減ります。飲食店ドットコムの調査によると、2月の売上は年間平均より約15〜20%下がる店が多く、日数が少ないことも影響しています。

閑散期に売上が落ちるとどうして赤字になるのですか?

売上が落ちても家賃・リース料・保険料などの固定費は変わらないからです。例えば月商200万円・家賃30万円の店は、通常なら家賃比率15%ですが、閑散期に売上が160万円に落ちると家賃比率は18.8%に跳ね上がります。家賃だけでなく、正社員の人件費やリース料も固定費です。売上に対する固定費の割合が上がることで、利益が一気に圧縮され、赤字に転落するケースが多いのです。

閑散期にメニュー数は減らすべきですか?

はい、閑散期にメニューを絞るのは有効な戦略です。客数が少ない時期にメニュー数が多いと、食材の種類が増えてロスが発生しやすくなります。普段30品あるなら、閑散期は20品程度に絞ることで、仕入れ品目が減り、仕込みの手間も減り、食材ロスも抑えられます。ABC分析で出数の少ないメニュー(C群)を一時的に休止するのが基本的な考え方です。

閑散期に安易な値下げをしてはいけない理由は?

値下げで集客しても、下がった利益率のまま繁忙期に戻すのが難しくなるからです。500円ランチで集客しても、原価率が40%を超えれば売れるほど赤字です。さらに値下げで来たお客さんは『安いから来た』だけで、値段を戻せば来なくなります。閑散期は『安くする』のではなく『利益率の高いメニューに誘導する』方が、売上が減っても利益は守れます。

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