「求人を出しても応募がゼロ」「やっと入った新人が3日で辞めた」
こういう話、最近ほんとうに多いです。
帝国データバンクの2024年7月の調査(2024-07時点)では、飲食店の非正社員の人手不足割合が全業種中トップ。約67%の店が「足りない」と答えています。正社員に限っても60%近く。つまり、3軒に2軒は人が足りていない計算です。
「人手不足なのは知ってる。でもうちの規模じゃ時給を上げる余裕もないし……」
そう感じている方が多いんじゃないでしょうか。
この記事では、時給で大手チェーンに勝てない小規模飲食店が、お金をかけずに人を集めて、なるべく長く働いてもらうための具体策を整理します。
先に結論
- 飲食業の人手不足は構造的。 時給で勝負しても消耗戦になるだけ
- 「ここで働く理由」を作る ことが定着率を上げる最短ルート
- 0円でできる求人 はGoogleビジネスプロフィール、ハローワーク、店頭張り紙、SNS
- シフト設計 を見直すだけで「応募が来やすい店」に変わる
- 業務を減らす ことで少人数でも回せる体制を作る
なぜ飲食店に人が来ないのか
原因を並べると、だいたいこの3つに集約されます。
① 給料が安い
飲食店のフルタイム従業員の平均月収は約25.9万円(2024-07時点)。全産業平均の約31.5万円と比べて5.6万円低い。
年収換算で約67万円の差です。この差がある限り、「同じ時間働くなら他の業界」と思われるのは当然です。
② 働き方がきつい
- 土日祝・年末年始が書き入れ時で休めない
- ランチとディナーのあいだの中抜けシフト
- 急な欠勤の穴埋めは店長がワンオペ
- 有給が取りにくい(取れない)
小規模店ほどこの問題は深刻です。「3人しかいないから1人休むだけで回らない」という店はたくさんあります。
③ 最低賃金が上がり続けている
2025年10月以降、全国平均の最低賃金は1,121円(2025-10-01時点)。過去最大の平均66円引き上げです。東京都は1,226円。
最低賃金が上がること自体は働く人にとって良いことです。ただ、小規模飲食店にとっては「時給を上げないと法律違反」「上げると人件費で利益がなくなる」というダブルパンチになっています。
| 地域 | 2025年 最低賃金 | 前年比 |
|---|---|---|
| 東京都 | 1,226円 | +63円 |
| 大阪府 | 1,177円 | +63円 |
| 愛知県 | 1,143円 | +66円 |
| 福岡県 | 1,082円 | +59円 |
| 全国平均 | 1,121円 | +66円 |
(出典:厚生労働省 令和6年度地域別最低賃金改定状況、2025-10-01施行)
時給以外で勝負する——5つの具体策
「大手チェーンと時給で勝負したら負ける」。これは事実です。でも、小さな飲食店にしかない強みがあります。
1. 「ここで働く理由」を見える化する
大手チェーンにはない魅力を、求人を出す前に言語化してください。 たとえば——
| 小規模店の強み | 具体的に伝えること |
|---|---|
| まかないがおいしい | メニュー写真を求人に載せる(「毎日違うまかない」は強い) |
| 料理を覚えられる | 「調理補助からスタート。3ヶ月でパスタが作れるようになります」 |
| シフトの融通がきく | 「週2日・3時間からOK」を明記する |
| 少人数で距離が近い | 「スタッフは店長含めて4人。わからないことはすぐ聞ける」 |
| 駅近/自転車OK | 通勤のラクさは意外と重要 |
求人原稿に「アットホームな職場です」と書いても刺さりません。具体的な場面が想像できる言葉で書くのがコツです。
2. 0円でできる求人を全部やる
有料の求人媒体に月3万円かけても応募ゼロ、という話はよく聞きます。まず無料の手段を全部試しましょう。
① Googleビジネスプロフィールの投稿機能 Googleマップで店を探す人は多いです。「投稿」から求人情報を出せます。無料。更新も簡単。
② ハローワークインターネットサービス 完全無料で掲載できます。パートやアルバイトの求人も出せます。意外と見ている人が多い。
③ 店頭の張り紙 近所に住んでいる人にとって、通勤時間ゼロは最大のメリットです。「スタッフ募集中 週2日からOK」だけでも効果があります。
④ Instagram/SNS ストーリーズで「まかない紹介+スタッフ募集」を出すと、近隣の学生やフリーターの目に留まりやすいです。フォロワーが少なくても、ハッシュタグと位置情報を入れれば見てもらえます。
3. シフト設計を変える
「週5日・8時間」で募集すると、応募者が一気に減ります。今はフルタイムよりも短時間・少日数で働きたい人が多い。
やること:
- 最小シフト単位を「3時間」にする。 ランチのピーク(11:00〜14:00)だけ、ディナーの仕込み(15:00〜18:00)だけ、という切り方
- 「週1日からOK」と書ける状態にする。 実際には週2日は入ってほしくても、入口のハードルを下げる
- 中抜けシフトをやめる。 11:00〜14:00と17:00〜22:00の2回出勤を求めると、ほぼ応募が来ない
- シフト提出を2週間前にする。 1ヶ月前の提出はプライベートの予定が立てにくく、離職の原因になる
4. 面接と初日で辞められないようにする
せっかく来た応募者が面接後に辞退、初日で来なくなる——これは面接と初日の設計で防げます。
面接で聞かれる前に伝えること:
- 実際のシフト例(「先月の○○さんのシフトはこんな感じでした」)
- まかないの有無と内容
- 最初の1週間でやること(「最初はホールで注文を取るところから。2週目からレジ」)
初日にやること:
- 「何をやるか」を紙1枚にまとめて渡す
- 名前で呼ぶ(当たり前だけど意外とできていない)
- 初日のまかないはちょっと良いものを出す(第一印象が大事)
5. 業務を減らして少人数で回す
人を増やすのではなく、業務を減らすという発想です。
| やること | 効果 | コスト |
|---|---|---|
| モバイルオーダー導入 | ホール人員を1人削減できる | 月額0円〜3,000円程度 |
| セルフレジ・キャッシュレス化 | レジ対応時間を半分に | 端末により異なる |
| メニュー数を絞る | 仕込み時間が減り、食材ロスも減る | 0円 |
| 仕込みの外注化 | 冷凍カット野菜や業務用ソースの活用 | 食材費は上がるが人件費で相殺 |
| 営業日・営業時間の見直し | 週6日→5日にして1人分の人件費を削減 | 売上減との兼ね合い |
特にメニュー数の見直しは見落とされがちです。メニューが30品あれば仕込みも在庫管理も大変。20品に絞れば、2人でも回せる店になるかもしれません。
よくある質問
Q. 外国人スタッフの採用は現実的ですか?
制度上は可能です。「特定技能」の在留資格で飲食料品製造業・外食業の分野で働けます。ただし、受け入れには登録支援機関を通す必要があり、手続きや費用がかかります。まずは地域の外国人雇用に詳しいハローワークに相談するのがいいでしょう。
Q. 求人媒体は何がいいですか?
予算ゼロなら、上で書いた4つ(Google・ハローワーク・張り紙・SNS)をまず全部やる。有料なら、成功報酬型(採用が決まったら費用が発生するタイプ)の媒体を選ぶとリスクが低いです。
Q. 時給はいくらに設定すべきですか?
最低賃金の50〜100円上が「現実的に出せて、最低限の競争力がある」ラインです。時給1,200円を出せない場合は、まかない・交通費全額支給・シフトの柔軟さなど、金銭以外の条件で差別化してください。
人件費を「見える化」するだけで変わること
人手不足の対策は、突き詰めるとお金の問題に行き着きます。
- 今、人件費が売上の何%を占めているか
- 時給を50円上げたら月の人件費がいくら増えるか
- メニューを5品減らしたら仕込み時間(=人件費)がどれだけ減るか
こういう計算を感覚ではなく数字で把握している店は、値上げの判断も、メニュー改定も、シフト設計も、根拠を持って決められます。
KitchenCostは、レシピごとの原価と人件費を可視化できるアプリです。「この料理にかかるコスト」が見えると、メニュー数の判断やスタッフ配置の判断にも使えます。
今週やることチェックリスト
- 自分の店の「ここで働く理由」を3つ書き出す
- Googleビジネスプロフィールに求人投稿を出す(15分でできる)
- 最小シフト単位を3時間にできるか検討する
- メニュー数を数えてみる。30品以上なら「削れるもの」をリストアップ
- 人件費率を計算する(人件費÷売上×100)
出典・参考:
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2024年7月)
- 厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金改定状況」(2025年10月施行)
- マイナビ「飲食店の人手不足はどうなる?アルバイト市場動向調査」