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「人が来ない」なら海外から——飲食店の外国人採用、ビザ・費用・落とし穴を全解説(2026年版)

飲食店の67%が人手不足。特定技能ビザで外国人スタッフを雇う費用は初年度で約30〜50万円(給与別)。採用から就労開始まで4〜6ヶ月かかる手続きの全体像と、知らないと違法になる支援義務10項目を整理。2027年スタートの育成就労制度にも対応。

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目次

「人手が足りないのは分かってる。でも外国人採用って、何から始めればいいの?」

正直な話、こう思っている飲食店オーナーは多いと思います。

求人を出しても応募ゼロ。やっと来た人もすぐ辞める。時給を上げたいけど、原価も光熱費も上がっていて、そんな余裕はない——。

東京商工リサーチの発表によると、2025年の飲食業倒産は1,002件。過去30年で初めて1,000件を超えました。そのうち「人手不足」が直接の原因とされた倒産は55件で、前年から2.6倍に急増しています(2025年時点)。

「人が来ない」は、もう精神論では解決できない段階に来ています。

そんな中で、選択肢の一つとして現実的に広がっているのが外国人スタッフの採用です。2025年6月末時点で、外食業分野の特定技能外国人は累計36,281人。前年の約1.8倍のペースで増えています。

ただし、「雇いたい」と思ってもすぐには雇えません。ビザの種類、費用、支援義務、試験制度——知らないと違法になることもあります。

この記事では、飲食店オーナーが外国人を雇うために最低限知っておくべきことを、費用の具体的な数字まで含めて整理します。


先に結論

  • 飲食店の現場作業で外国人を雇うなら、**特定技能1号「外食業」**が基本ルート
  • 初期費用は30〜50万円(給与別)。月々の支援委託費が2〜4万円かかる
  • 採用から就労開始まで4〜6ヶ月。すぐには来ない
  • 雇用主には10項目の支援義務がある。自社でできなければ登録支援機関に委託(必須)
  • 2027年4月から育成就労制度がスタート。転職が認められるようになるので、「選ばれるお店」にならないと定着しない

まず知っておくこと:外国人を雇える「ビザの種類」

飲食店で外国人を雇うとき、ビザの種類によってできる仕事が全然違います。ここを間違えると不法就労になるので、最初に整理しておきます。

ビザの種類できる仕事在留期間注意点
特定技能1号(外食業)ホール、調理、店舗管理すべて最長5年試験合格が必要。家族帯同は不可
特定技能2号(外食業)同上上限なし(更新制)2023年から外食業も対象に。家族帯同可
技術・人文知識・国際業務メニュー開発、マーケティング、通訳など更新制ホール・調理の現場作業は原則NG
留学アルバイトのみ在学中週28時間の上限あり。超えると違法
永住者・定住者・配偶者等制限なし各種就労制限なし。日本人と同じ扱い

小規模飲食店にとって現実的なのは「特定技能1号」

大手チェーンなら企業内転勤や技人国ビザで海外からマネージャーを呼ぶこともありますが、個人店や小規模店にとって一番使いやすいのは特定技能1号です。

理由はシンプルで、ホール・調理・店舗管理の現場業務が全部できるから。

「留学生のアルバイトでいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、週28時間の上限はかなり厳しいです。ランチとディナーのピークだけ入ってもらうくらいならいいですが、戦力として計算するには不十分。しかも、卒業したらビザが切れます。

特定技能なら最長5年、フルタイムで働けます。2号に移行すれば在留期間の上限もなくなり、家族を日本に呼ぶこともできます。


外国人採用にかかる費用:リアルな数字

「で、いくらかかるの?」——一番気になるところだと思います。

費用は大きく分けて初期費用毎月の費用の2種類あります。

初期費用の内訳

費目金額の目安備考
人材紹介手数料15万〜60万円紹介会社経由の場合。経験者ほど高い
ビザ申請代行費10万〜20万円行政書士に依頼する場合
健康診断費用1万〜2万円雇い入れ時の健診義務
国内採用の場合 合計約30〜50万円給与は含まず

海外から呼び寄せる場合は、これに加えて以下がかかります。

費目金額の目安
渡航費(片道航空券)3万〜10万円
住居の初期費用(敷金・礼金等)15万〜30万円
生活必需品の準備3万〜5万円
海外採用の追加分 合計約20〜45万円

毎月かかる費用

費目金額の目安備考
登録支援機関への委託費月2万〜4万円平均約28,000円/人。義務的支援の委託費
日本語学習支援費月0〜1万円教材費や学校の補助など

日本人アルバイトの採用費と比べてみると

「高い」と感じるかもしれません。でも、比較してみてください。

日本人のアルバイト採用でも、求人媒体に掲載すると1回あたり5万〜20万円。応募が来なければゼロ円のまま終わるリスクもあります。せっかく採用しても3ヶ月で辞められたら、また同じ費用がかかる。

特定技能の外国人は在留期間が最長5年あるので、定着率が高い傾向があります。来日のためにお金と時間をかけて試験に合格しているので、「ちょっと合わないから辞めます」ということが起きにくい。

もちろん個人差はありますが、「年間の採用コスト」で見ると日本人アルバイトの繰り返し採用より安くなるケースも珍しくありません。


採用から就労開始までの流れ:4〜6ヶ月かかる

外国人採用は「明日から来てください」ができません。全体で4〜6ヶ月を見ておく必要があります。

ステップ1:採用方法を決める(1〜2週間)

大きく3つのルートがあります。

採用ルートメリットデメリット
人材紹介会社を使う候補者の選定〜書類手続きまで任せられる紹介手数料が高め(15〜60万円)
自社で募集するコストを抑えられるビザ手続きの知識が必要。候補者探しに時間がかかる
知人・既存スタッフの紹介信頼性が高い対象者が限られる

初めて外国人を雇うなら、最初の1人目は紹介会社を使うのが無難です。ビザ申請の書類ミスで不許可になると、また最初からやり直しになります。

ステップ2:面接・内定(2〜4週間)

日本語レベルの確認がかなり重要です。特定技能の試験に合格していても、日常会話のスピードについていけるかどうかは別の問題

面接で確認したいポイント:

  • 日本語力:注文を聞き取れるか、お客さんに料理の説明ができるか
  • 衛生意識:手洗い・消毒の習慣が身についているか
  • 飲食経験:母国での調理・接客経験
  • 働く動機:なぜ日本の飲食店で働きたいのか

オンライン面接でもいいですが、できれば実際に店舗で1時間ほど体験してもらうと、お互いのミスマッチを減らせます。

ステップ3:ビザ申請(1〜3ヶ月)

ここが一番時間がかかります。

国内にいる外国人(留学→特定技能への切り替えなど)の場合は「在留資格変更許可申請」、海外から呼ぶ場合は「在留資格認定証明書交付申請」。

必要書類の一例:

  • 雇用契約書
  • 1号特定技能外国人支援計画書
  • 登録支援機関との委託契約書
  • 会社の登記簿謄本、決算書
  • 特定技能試験の合格証明書
  • 日本語能力試験の合格証明書

書類に不備があると審査が長引くので、行政書士に依頼するのが現実的です。費用は10〜20万円程度。

ステップ4:入国・就労開始(2〜4週間)

ビザが下りたら、入国(海外の場合)→住居の確保→役所の手届き→就労開始。

ここで登録支援機関が力を発揮します。空港への出迎え、住居探し、銀行口座の開設、市区町村への届け出——これらを全部サポートする義務があるからです。


知らないと違法になる「10の支援義務」

特定技能1号の外国人を雇うと、雇用主には法律で定められた10項目の支援を行う義務があります。

これ、知らずに「うちは面倒見られないから自分でやって」と言うと、支援義務違反で受け入れ停止や罰則の対象になります。

No.支援項目具体的な内容
1事前ガイダンス労働条件、生活情報、入国手続きの説明
2出入国時の送迎空港への送り迎え
3住居の確保支援物件探し、連帯保証、初期費用の立替え等
4生活オリエンテーションごみの出し方、交通ルール、緊急連絡先等
5公的手続きへの同行市区町村への転入届、社会保険手続き等
6日本語学習の機会提供教室の案内、教材の提供など
7相談・苦情への対応母国語で対応できる体制の構築
8日本人との交流促進地域行事への参加支援など
9転職支援(解雇時)会社都合で解雇する場合のサポート
10定期的な面談3ヶ月に1回以上、生活状況の確認

「全部自分でやるの?」→ 登録支援機関に委託できる

10項目を見て「こんなの無理だよ」と思ったかもしれません。安心してください。登録支援機関に委託すれば、これらの支援を代わりにやってくれます。

費用は1人あたり月額2万〜4万円が相場。7割以上の機関が月額1.5万〜3万円の範囲に収まっています。

ただし、支援にかかる費用を外国人本人に負担させることは法律で禁止されています。全額、雇用主(お店)の負担です。

登録支援機関の選び方

正直、質はピンキリです。選ぶときのチェックポイント:

  • 外食業の実績があるか:業種によって必要なサポートが違う
  • 母国語対応のスタッフがいるか:ベトナム語、ミャンマー語、ネパール語など
  • 緊急時の連絡体制:夜間・休日に対応できるか
  • 定期面談の実施方法:訪問なのかオンラインなのか
  • 追加費用の有無:基本料金に何が含まれているか

入管庁の公式サイトで登録支援機関の一覧を確認できるので、地域と対応言語で絞り込んで複数社に見積もりを取るのがおすすめです。


特定技能試験のしくみ:外国人側に求められること

「この人を雇いたい」と思っても、その外国人が試験に合格していなければビザは下りません

特定技能1号(外食業)に必要な試験は2つ。

試験内容合格の目安
外食業技能測定試験衛生管理、飲食物調理、接客全般正答率65%以上
日本語能力試験N4以上(基本的な日本語を理解できるレベル)JLPT N4またはJFT-Basic A2以上

2026年の大きな変更:CBT方式に移行

2026年6月以降、外食業の技能測定試験が**CBT方式(パソコンで受験)**に切り替わります。

これまでは年に3回程度、限られた会場でしか受けられなかったのが、年間を通じて全国数十ヶ所で受験可能に。

雇う側にとっては、「試験のタイミングが合わなくて採用が遅れる」という問題が減るので、採用しやすくなる変更です。

特定技能2号:長期定着の道も開けている

2023年から、外食業でも特定技能2号が取得できるようになりました。

2号に移行すると:

  • 在留期間の上限がなくなる(更新制で実質永住の道も)
  • 家族(配偶者・子ども)を日本に呼べる
  • 支援義務が不要になる(登録支援機関への委託費もなくなる)

2025年の外食業2号試験の合格率は約58%(受験者1,469名中849名合格)。決して簡単ではありませんが、5年間しっかり働いたスタッフにとっては十分目指せる水準です。

「長く働いてほしい」なら、2号取得を応援する姿勢が定着率に直結します。


2027年「育成就労制度」で何が変わる?

2027年4月から、現在の技能実習制度に代わる**「育成就労制度」**がスタートします。飲食業にも関係する大きな変化です。

主な変更ポイント

項目技能実習(現行)育成就労(2027年〜)
目的国際貢献(建前)人材確保と育成(明確化)
転職(転籍)原則禁止一定条件で可能
日本語要件なし就労開始時に要件あり
在留期間最長5年最長3年(→特定技能1号に移行可)
受け入れ枠2年間で43万人(全17分野)

飲食店が準備しておくべきこと

転籍(転職)が認められる——これが一番のインパクトです。

つまり、「安い給料で雇えるから」という理由だけで外国人を雇っても、よりよい条件のお店に移ってしまう可能性があるということ。

これは裏を返せば、きちんとした待遇と職場環境を用意しているお店にとってはチャンスでもあります。

準備のポイント:

  1. 給与水準の見直し:「日本人と同等以上の報酬」はすでに法律上の義務だが、最低限ではなく「選ばれる水準」を
  2. 職場環境の整備:日本語のマニュアル、多言語メニュー、休憩室の確保
  3. キャリアパスの明確化:特定技能2号、ゆくゆくは店長——という道筋を見せる
  4. 住居の確保:外国人にとって日本での部屋探しは大きなハードル。支援があるだけで他店と差がつく

よくある失敗パターンと対策

外国人採用がうまくいかないケースには、いくつかの共通パターンがあります。

失敗① 「日本語ができる=仕事ができる」と思い込む

日本語試験のN4に合格していても、飲食店特有の表現(「おさげしてよろしいですか」「お冷やのおかわりいかがですか」)は別物。

対策:最初の2週間は「接客フレーズ帳」を作って、毎日5分の練習時間を設ける。

失敗② 既存スタッフへの説明不足

「突然外国人が入ってきた」と既存スタッフが戸惑い、ギクシャクするケース。

対策:採用前に「なぜ外国人を雇うのか」「どうサポートするか」を全スタッフに共有。担当制(メンター制)にすると馴染みやすい。

失敗③ 原価に人件費を反映していない

外国人スタッフの場合、給与以外にも支援委託費や各種保険料がかかります。これを原価計算に入れていないと、利益の計算がずれます。

対策:登録支援機関への月額費用(2〜4万円/人)と社会保険料を、人件費に上乗せして原価計算に反映する。

💡 KitchenCostでは、原材料費だけでなく人件費も含めた原価計算ができます。外国人スタッフの採用で増えるコストも、レシピごとの原価にきちんと反映させましょう。


今週やること

外国人採用を「いつかやろう」で終わらせないために、今週中にできることをリストにしました。

  • 自分の店に必要な人材像を書き出す(ホール?調理?両方?日本語レベルは?)
  • 登録支援機関を3社ピックアップする(入管庁サイトで地域×対応言語で検索)
  • 人材紹介会社に問い合わせて見積もりを取る(初期費用と月額費用の内訳を確認)
  • 既存スタッフに「外国人採用を検討している」と伝える(いきなり入ってくるより100倍マシ)
  • 原価計算に支援委託費と社保を組み込む(月々のコスト増を把握しておく)

まとめ

飲食店の人手不足は、もう「待っていれば応募が来る」段階ではありません。2025年の人手不足倒産が前年比2.6倍になっている現実を見れば、「人材確保の手段を増やす」こと自体が経営判断です。

外国人採用は確かに手続きが多く、最初はハードルが高く感じます。でも、やるべきことは明確です。

  1. 特定技能1号で雇えるか確認する
  2. 費用を見積もる(初期30〜50万円+月2〜4万円)
  3. 登録支援機関を選ぶ
  4. 人材紹介会社に相談する

この4ステップを踏めば、4〜6ヶ月後にはフルタイムで働ける戦力が増えます。

2027年の育成就労制度スタートに向けて、今から準備を始めておいて損はありません。

よくある質問

飲食店で外国人を雇うにはどのビザが必要ですか?

飲食店のホールや調理で外国人を雇う場合、主に使われるのが「特定技能1号(外食業)」の在留資格です。2025年6月末時点で外食業分野の特定技能外国人は累計36,281人と、前年から約1.8倍に増えています。ほかに「技術・人文知識・国際業務」ビザでマネジメント業務に就く方法もありますが、ホール・調理の現場作業はできません。留学生のアルバイトは週28時間の上限があります。

特定技能で外国人を1人採用するのにいくらかかりますか?

給与とは別に、初期費用として30〜50万円程度が目安です。内訳は人材紹介手数料15〜60万円、ビザ申請代行費10〜20万円。これに加えて毎月の登録支援機関への委託費が2〜4万円(平均約28,000円/月)かかります。海外から呼び寄せる場合は渡航費や住居初期費用も発生し、総額はさらに上がります。

特定技能の試験はどんな内容ですか?合格率は?

外食業の特定技能1号試験は「技能測定試験」と「日本語試験(N4相当以上)」の2つに合格する必要があります。技能試験では衛生管理・飲食物調理・接客の知識と実技が問われます。合格率は回によって変動しますが、2号試験で約58%前後(2025年実績)。2026年6月からはCBT方式に移行し、試験会場と回数が大幅に増える予定です。

2027年から始まる育成就労制度で何が変わりますか?

2027年4月から現在の技能実習制度に代わる「育成就労制度」がスタートします。飲食業も対象の全17分野で、2年間で43万人の受け入れ枠が設定される見込みです。大きな変更点は、目的が「国際貢献」から「人材確保・育成」に変わること、一定条件での転職(転籍)が認められること、就労開始時に日本語能力要件が設けられることの3つです。

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