2024年、飲食店の倒産が過去最多を更新した。
帝国データバンクのまとめでは894件。コロナ禍の2020年(780件)すら超えた。 2025年上半期も458件と前年同期を5.3%上回り、通年で初の900件超えが見えてきた。
業態別では居酒屋・ビアホールが212件で最多。中華158件、西洋料理123件、日本料理77件と続く。
ここで注目すべき数字がある。 倒産した店の約9割が、従業員5人以下の小規模事業者だった。
閉じた店と残った店。何が違ったのか
取材や業界データを追うと、倒産店には共通するパターンがある。
食材費が上がったのに、メニュー価格を据え置いた。
2025年平均CPIで食料は前年比+6.8%(総務省統計局、2026年1月23日公表)。 鶏肉、食用油、小麦粉——あらゆる食材が上がった。 それでも「お客さんが離れるのが怖い」と価格を変えなかった店は、毎月の粗利が静かに削れていった。
一方で残った店は、派手な値上げをしたわけではない。
月に1回、上位メニューの原価を再計算していた。
たったそれだけの差だ。 しかし、この「計算する習慣」があるかないかで、値上げの判断が3か月早くなる。 3か月の遅れは、小規模店では致命的な資金流出になる。
「売上はあるのに、お金が残らない」の正体
飲食店オーナーのSNSや掲示板を見ると、この言葉が繰り返し出てくる。
「売上はあるのに、なぜかお金が残らない」
この状態の多くは、原価率ではなく変動費の総量を見ていないことから起きる。
食材費だけで原価率30%に収まっていても、 包材、決済手数料、デリバリー手数料、廃棄ロスを足すと実質40%を超えていた—— そんなケースは珍しくない。
計算式にすると単純だ。
実質変動費率 = 原価率 + 包材率 + 決済手数料率 + 廃棄率 + デリバリー手数料率
この数字が50%を超えていたら、固定費(家賃・社会保険・借入返済)を払った時点で手元に何も残らない。
人手不足が追い打ちをかけている
帝国データバンクの調査(2025年1月)では、飲食店の65.3%が人手不足を感じている。 全業種で最も深刻だ。
人が採れなければ、オーナーが現場に立つ時間が増える。 すると経営管理——つまり原価計算や価格見直し——に使う時間がなくなる。
この悪循環が、小規模店の倒産を加速させている。
今からできる3つのこと
大規模なシステム導入は必要ない。 まず次の3つだけ始める。
1. 上位5メニューの原価を「正確に」出す
「だいたい30%くらい」ではなく、1品ごとに食材を積み上げて計算する。 包材と決済手数料まで含める。
商品原価 = Σ(食材単位原価 × 使用量) + 包材 + 決済手数料按分
必要売価 = 商品原価 ÷ 目標原価率
2. 月1回、仕入単価を更新する
仕入先の請求書を見て、主要食材の単価が前月から動いていないか確認する。 5%以上動いていたら、必要売価の再計算に進む。
3. 損益分岐点売上を把握する
固定費と変動費率から、毎月「いくら売れば赤字にならないか」を出す。
損益分岐点売上 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
この数字を知っているだけで、「売上があるのに残らない」状態の原因が見える。
廃業率の現実
飲食業の廃業率は全業種で最も高い。
- 開業1年以内: 約30%が閉店
- 3年以内: 60〜70%が廃業
- 10年後: 生存率30%以下
この数字を見て不安になる必要はない。 ただし、「原価を知らずに営業している期間」が長いほどリスクは確実に上がる。
計算の精度が上がれば、値上げの判断も早くなる。 判断が早ければ、資金が尽きる前に手を打てる。
原価管理は、売上を伸ばす技術ではない。 店を守る技術だ。
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