要点まとめ
- 値上げを先延ばしにすると年間150万円以上の損失になることも
- ベストタイミングは年始、季節メニュー切り替え時、リニューアル時
- 一度に大きく上げるより少しずつ何度も上げる方が受け入れられやすい
- お客様には正直に理由を説明すれば、ほとんどの方が理解してくれる
メニュー価格の値上げ、いつ・どうやればいい?
「食材費が去年より3割上がった」
「人件費も光熱費も上がっている…」
「でも値上げしたらお客さんが来なくなりそう」
こんな悩みを抱えている飲食店オーナーは多いです。
結論から言うと:上げるべき時に上げないと、もっと大きな問題になります。
値上げを先延ばしにすると利益が減り続け、最終的に食材の品質を落とすか、閉店を考えざるを得なくなります。
値上げが必要なサイン
以下のうち3つ以上当てはまれば、値上げを検討すべきタイミングです。
| サイン | チェック |
|---|---|
| 原価率が目標より5%以上高い | ☐ |
| 最低賃金や人件費が上昇した | ☐ |
| 周りの同業店が値上げした | ☐ |
| 以前より利益が薄くなっている | ☐ |
| 食材のグレードを下げたくなる | ☐ |
| 1年以上価格を据え置いている | ☐ |
値上げしないとどうなるか
例:パスタ1皿
1年前
販売価格: 1,400円
食材費: 420円 (原価率 30%)
粗利: 980円
現在(食材費20%上昇後)
販売価格: 1,400円(据え置き)
食材費: 504円 (原価率 36%)
粗利: 896円
「たった84円の差」と思うかもしれませんが:
1日50食販売として
84円 × 50食 × 30日 = 月126,000円の損失
年間で約150万円になります。
新しい設備投資や従業員へのボーナスに充てられたはずの金額です。
値上げのベストなタイミング
適したタイミング
| タイミング | 理由 |
|---|---|
| 年始(1〜2月) | 新年で気持ちの切り替えがしやすい、最低賃金改定の時期 |
| 季節メニュー切り替え時 | 新メニューと一緒なら自然 |
| 店舗リニューアル時 | 内装・メニュー表の刷新と同時に |
| 物価高ニュースが多い時期 | お客様も「仕方ない」と理解しやすい |
避けるべきタイミング
| タイミング | 理由 |
|---|---|
| 年末年始・お盆直前 | 稼ぎ時を狙った印象を与える |
| 競合店のオープン直後 | 価格比較されやすい |
| 閑散期 | 客数が少ない時に上げるとさらに減る可能性 |
| ネガティブな出来事の後 | 悪印象が重なる |
どのくらい上げればいい?
基本原則
一度に大きく上げる < 少しずつ何度も上げる
お客様は急な大幅値上げには敏感ですが、少額ずつの値上げは気づきにくいものです。
推奨値上げ幅
| 現在の価格帯 | 推奨値上げ幅 | 例 |
|---|---|---|
| 1,000円未満 | 50〜100円 | 800円 → 850円 |
| 1,000〜2,000円 | 100〜200円 | 1,500円 → 1,600円 |
| 2,000円以上 | 200〜300円 | 2,500円 → 2,700円 |
値上げ幅の計算方法
まず原価がいくら上がったか確認します。
必要値上げ額 = 原価上昇分 ÷ (1 - 目標原価率)
例:
原価上昇: 90円
目標原価率: 30%
必要値上げ額 = 90 ÷ 0.7 = 約129円
→ 100円または150円の値上げ
値上げの5つの方法
方法1:直接値上げ(正攻法)
変更前: からあげ定食 900円
変更後: からあげ定食 1,000円
✅ メリット: シンプルで分かりやすい❌ デメリット: お客様に最も気づかれやすい
向いているケース:
- 長期間価格を据え置いていた
- 周りのお店も既に値上げした
方法2:メニューリニューアルと同時に
変更前: からあげ定食 900円
変更後: 国産若鶏のからあげ御膳 1,100円
✅ メリット: 価値向上として受け入れられやすい❌ デメリット: 実際に品質も上げる必要がある
ポイント:
- 食材のアップグレード(国産、銘柄鶏など)
- メニュー名の変更で差別化
- 新しいメニュー表の作成
方法3:松竹梅の価格設定
変更前: 親子丼 900円
変更後:
- 親子丼(並)900円
- 親子丼(上)1,100円(比内地鶏使用)
- 親子丼(特上)1,400円(極上卵使用)
✅ メリット: お客様に選択肢を提供、客単価アップが可能❌ デメリット: 管理するメニューが増える
方法4:セット価格の調整
変更前:
- ラーメン 850円
- 餃子 350円
- 合計: 1,200円
変更後:
- ラーメン 900円
- 餃子 400円
- セット価格: 1,200円(100円お得)
✅ メリット: お得感を演出しながら実質値上げ❌ デメリット: 価格設定が複雑になりがち
方法5:オプション分離
変更前: ラーメン 850円(煮卵付き)
変更後:
- ラーメン 850円
- 煮卵追加 +100円
- チャーシュー増量 +200円
✅ メリット: 基本価格を維持、追加収益を確保❌ デメリット: 「前は付いてたのに」という不満も
お客様へのお知らせ方法
お知らせ文の例
避けるべき例:
1月1日より価格改定いたします。
おすすめの例:
お客様各位
いつもご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
当店はこれまで価格の維持に努めてまいりましたが、
食材費・人件費の高騰により、現行価格での
ご提供が難しい状況となりました。
1月より一部メニューの価格を改定させていただきます。
今後も変わらぬ品質でお届けできるよう努めてまいります。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
店主
お知らせのポイント
- 理由の説明: なぜ値上げするのか正直に
- 努力の強調: これまで価格を維持してきたこと
- 約束: 品質は維持・向上させること
- 感謝: お客様への感謝の気持ち
透明性のあるコミュニケーションが、値上げ時の顧客信頼を維持する鍵です。
値上げ後に客数が減ったら?
初期の減少は自然なこと
値上げ後1〜2週間: 10〜20%減少(様子見のお客様)
値上げ後1ヶ月: 5〜10%減少(一部の離脱)
値上げ後3ヶ月: ほぼ元の水準に回復
客数が戻らない場合の確認事項
-
価格が原因か確認
- ネット上の口コミで価格への不満はあるか
- 周りの店と比べて高すぎないか
-
他の原因の可能性
- 最近、味やサービスの質が変わっていないか
- 新しい競合店の影響はないか
-
対応策
- 値下げより付加価値の追加(量、サービス、特典)
- 時間帯限定の割引
- 常連客向けの特典
2025〜2026年の飲食業界の現実
コスト上昇の状況
帝国データバンクの調査によると、2025年に価格改定された食品・飲料は20,000品目を超え、2年ぶりの高水準となりました。主な要因は原材料費と物流費の上昇です。
2025年7月には主要食品メーカー195社が平均15%の値上げを実施。原材料費だけでなく、輸送費や人件費の上昇も理由に挙げられています。
外食価格の動向
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 外食価格上昇率(2025年10月、前年比) | +4.3% | 総務省 |
| 調理食品価格上昇率(同) | +6.5% | 総務省 |
| 2026年予測 | 落ち着く見込みだが高止まり | 帝国データバンク |
業界の対応
牛丼チェーンの例では、すき家が牛丼並盛を400円→430円→450円と段階的に値上げしています。
「自分だけ上げると損」ではなく「上げないと損」の時代です。
値上げ前のチェックリスト
✅ 原価率が目標より5%以上高くなっているか✅ 6ヶ月〜1年以上価格を据え置いているか✅ 周辺の競合店の価格を調査したか✅ 値上げ幅は10%以内に抑えているか✅ お客様へのお知らせ方法を準備したか✅ 値上げ後の売上モニタリング計画はあるか
関連ガイド
まとめ
- 値上げを先延ばしにすると損失が積み重なる
- 年始、季節の変わり目、リニューアル時がベストタイミング
- 一度に大きくより少しずつ何度も上げる
- メニューリニューアルや松竹梅設定で自然に
- お客様には正直に説明すればほとんどの方が理解してくれる
- 初期の売上減少は自然なこと、3ヶ月後には回復
お店のメニューの原価率、正確に把握していますか?KitchenCostでメニューごとの原価と利益を計算できます。どのメニューをいくら値上げすべきか、データで確認できます。
今すぐやること
- 現在の原価率を計算し、目標より5%以上高いか確認する
- 周辺の競合店の価格を調査する
- 値上げ幅を10%以内で設定する
- お客様へのお知らせ文を準備する