親子丼は、飲食店のなかでも原価管理が”簡単そうに見えて難しい”メニューのひとつです。
使う食材は鶏肉、卵、玉ねぎ、出汁、ご飯。シンプルだからこそ、ひとつひとつのグラム数が直接利益に効いてくる。
たとえば鶏もも肉。80gで盛るか90gで盛るかの違いは、1杯あたりたった25円程度。でもこれが1日60杯、月25日で計算すると——月37,500円の差になります。
「うちはだいたい80gくらいで…」の”だいたい”が、年間45万円の利益を消しているかもしれません。
先に結論
- 親子丼の原価の核は鶏肉。 80gと90gで月3.7万円変わる
- 出汁は「バッチ原価÷杯数」で計算する。 感覚ではなく1杯16円と知っておく
- 卵は2個が標準。 半熟仕上げはロス率を5%で見ておく
- サイズ展開は3段階。 大盛りの追加原価50円を追加売価150〜200円でカバー
親子丼1杯の原価を分解する
例:並盛り(税抜売価850円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 鶏もも肉 | 80g | 104円 |
| 卵 | 2個 | 50円 |
| 玉ねぎ | 30g | 5円 |
| 出汁 | 120ml | 16円 |
| たれ(醤油・みりん) | 20ml | 8円 |
| ご飯 | 200g(炊き上がり) | 38円 |
| 三つ葉 | 1g | 3円 |
| 合計 | 224円 |
原価率:224 ÷ 850 = 26.4%
数字だけ見れば優秀です。でもこの計算は「毎回きっちり80gで盛っている」前提。ここがブレると、一気に崩れます。
鶏肉のグラム管理が利益を決める
親子丼で最も原価に影響するのは鶏もも肉です。
鶏もも肉の仕入れ価格を1,300円/kgとすると——
| 鶏肉量 | 1杯あたり原価 | 80gとの差 | 月間差額(60杯/日) |
|---|---|---|---|
| 70g | 91円 | ▲13円 | ▲19,500円 |
| 80g | 104円 | — | — |
| 90g | 117円 | +13円 | +19,500円 |
| 100g | 130円 | +26円 | +39,000円 |
10gの差で月に約2万円。 忙しい時間帯にスタッフが「気持ち多め」に盛ると、100gを超えることは珍しくありません。
対策:ポーションコントロール
- 仕込み段階で80gずつにカットする。 朝の段階で全量をカットしてバットに並べれば、調理時に迷わない
- カット後の端材は別メニューに回す。 鶏の端材は炊き込みご飯や賄いに使う
- 歩留まりを計算に入れる。 鶏もも肉の歩留まりは85〜90%。皮・脂・筋を取ると1kgから使えるのは850〜900g
仕入れ1kg = 1,300円
歩留まり85% → 使用可能量 850g
実質単価 = 1,300 ÷ 850 = 1.53円/g
80g × 1.53円 = 約122円(歩留まり込み)
歩留まりを含めると、さっきの104円が122円に上がります。歩留まりを無視した原価計算は、常に利益を過大評価しています。
出汁のバッチ原価
親子丼の出汁は、1杯ずつ取るのではなく「バッチ(まとめ作り)」で計算するのが正しい方法です。
例:出汁1バッチ(4L分)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 昆布 | 40g | 200円 |
| かつお節 | 80g | 240円 |
| 水 | 4L | 約2円 |
| 醤油 | 200ml | 40円 |
| みりん | 200ml | 40円 |
| 合計 | 522円 |
4Lから取れる出汁は約3.6L(蒸発ロス10%)。1杯120ml使うなら30杯分。
出汁原価(1杯)= 522 ÷ 30 = 約17円
「出汁なんて安いでしょ」と思いがちですが、17円 × 60杯/日 × 25日 = 月25,500円。小さな金額の積み重ねが、月末の利益を左右します。
卵のロス管理
卵は1杯2個が標準。1個25円として50円。ここは大きくブレにくい項目ですが、注意すべきはロスです。
- 割れ卵(仕入れ時の破損):2〜3%
- 半熟仕上げの失敗による作り直し:1〜2%
- 仕込み時の落下・殻混入:1%
合計でロス率5%前後。1日120個使う店なら、6個がムダになっている計算です。月に150個、金額にして3,750円。
小さい金額ですが、鶏肉・出汁・卵のロスを合計すると、月に数万円になります。
サイズ展開で粗利率を改善する
丼もので利益を出すなら、サイズ展開が有効です。
サイズ別の原価設計(例)
| サイズ | 鶏肉 | ご飯 | 原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ミニ | 60g | 150g | 182円 | 680円 | 26.8% |
| 並 | 80g | 200g | 224円 | 850円 | 26.4% |
| 大盛り | 100g | 250g | 275円 | 1,050円 | 26.2% |
大盛りは原価+51円なのに、売価は+200円。大盛りが売れるほど粗利率が上がる構造にできます。
ポイントは、大盛りの追加分を「ご飯多め」だけにしないこと。鶏肉も増やさないと見た目で満足感が下がり、リピートに響きます。
今週やること
- 鶏もも肉を80gにカットして、1杯分ずつバットに並べる仕組みを作る
- 出汁のバッチ原価を実測する(昆布・かつお節の仕入れ価格から計算)
- 卵のロスを1週間だけ記録する(割れ・作り直し・殻混入の個数)
- 並・大盛りの売価を、原価率ベースで見直す
- 人件費を1杯あたりに換算する(時給1,121円 ÷ 1時間の提供数)
関連ガイド
出典
鶏肉のグラム数と出汁のバッチ原価を登録すれば、1杯ずつの利益がすぐ見えます。KitchenCost を使ってみてください。