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居酒屋お通しの原価管理|月41万円の粗利源を守る設計ルール

お通しの原価を食材・仕込み・器まで分解。席料との比較、断られたときの対応、値上げのコツまで、居酒屋経営の実務で使える内容を整理。

更新 2026年2月18日
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目次

「お通し代、もらっていいのかな」——お客さんの反応が気になって、なんとなく量を多くしたり質を上げすぎたりしていませんか?

お通しは居酒屋にとって小さいけれど確実な収益源です。400円×1日50組で月50万円の売上になる。でも「なんとなく」で運用すると、利益が出るどころかコストセンターになってしまいます。

最近はお通しを廃止して席料に切り替える店も増えています。シンクロ・フードの2023年調査(飲食店373店)では、お通し制の店は全体の38%まで減り、2018年の50%から大きく下がりました。一方で席料制は22.7%から28.7%に増加。「お通しをやめて席料にした」という店が確実に増えているわけです。

お通しを続けるのか、席料に切り替えるのか。どちらを選ぶにしても、まず「いまのお通しにいくらかかっているか」を把握するところから始めましょう。

先に結論

  • お通しの最多価格帯は300〜399円。値上げ傾向で500円台も増加中
  • お通し制は減少傾向(50%→38%)、代わりに席料制が増加(22.7%→28.7%)
  • 1人前の量をグラムで固定すれば、安定した利益源になる(原価率15〜25%が目安)
  • 断られた場合の対応ルールを決めてスタッフで統一するのが最重要

お通しの原価——食材だけでは足りない

お通しの原価を「食材費だけ」で見ている店は多いです。でも実際には、仕込みの手間と器のコストが隠れています。

お通し1人前の原価分解(例:きんぴらごぼう小鉢)

項目原価備考
食材(ごぼう・にんじん・ごま)約45円80g目安
調味料(醤油・みりん・油)約8円
仕込みの人件費按分約15円50食分仕込み30分、時給1,121円で計算
器の減耗・洗浄コスト約5円年間の器破損と洗剤・水道代を按分
合計約73円

お通し代が400円なら粗利は327円、原価率は約18%。悪くない数字です。

でも問題は、ここからブレること。「ちょっと多め」が続くと80gが100gになり、食材費が45円→60円に。10食で150円、月間で4,500円以上の差になります。小さく見えますが、年間で5万円超のコスト増です。


お通しの価格帯——いまの相場

シンクロ・フード2023年8月調査(飲食店373店)による価格分布です。

価格帯割合(2023年)2018年との比較
200〜299円11.5%
300〜399円40.4%-7.9pt(最多だが減少)
400〜499円14.4%+2.9pt
500〜599円21.2%+4.0pt(増加中)
600〜699円5.8%

注目すべきは500円以上の価格帯が増えていること。食材費の高騰を反映して、20%以上の店がこの1年でお通し代を値上げしています。値下げした店はわずか1.9%。

業態別の目安:

業態お通し代の目安
チェーン居酒屋170〜200円
一般的な居酒屋300〜400円
やや高級な居酒屋500円〜
高級店・割烹1,000円〜

お通し vs 席料——どちらが正解?

課金方式2018年2023年変化
お通し代50.0%38.2%-11.8pt
席料(テーブルチャージ)22.7%28.7%+6.0pt
サービス料15.1%
なにも取らない23.4%29.4%+6.0pt

お通し制が減っている理由:

  1. インバウンド対応 — 外国人にとってお通しは分かりにくい。16.3%の店は外国人客にお通しを提供していない
  2. 消費者の目が厳しくなった — 約33%の消費者がお通しを断った経験あり
  3. 席料のほうがシンプル — 食材の仕入れ・仕込み・ロスが不要

それでもお通し制を続けるメリット:

  1. 第一印象をコントロールできる — 最初の一品で「おっ、美味しい」と思わせれば後の注文が増える
  2. 待ち時間を埋められる — ドリンクが来るまでの数分間の「放置感」を減らせる
  3. 低原価で確実な売上 — 原価率15〜25%で全組から確実に売上が立つ

大手チェーンの対応

チェーンお通し対応
鳥貴族お通しなし(創業当初から)
和民キャンセル可
魚民・白木屋・笑笑キャンセル可
甘太郎キャンセル可
庄や申し出れば対応

お通しの法的な位置づけ

結論から言うと、事前に告知していれば合法です。メニューや店頭に「お通し代○○円」と明記している場合、着席時点で暗黙の合意が成立すると解されています。

ただし告知なしで請求するのはグレー。実務上のポイント:

  • メニューの見やすい場所に「お通し代 ○○円」と記載する
  • 入口やテーブルにもPOPで掲示する
  • 外国人客向けに英語でも記載する(“Table Charge ¥○○○ (includes appetizer)”)
  • 断りたい客への対応ルールをスタッフで統一する

お通しで利益を出す4つのルール

ルール1:1人前の量をグラムで固定する

最も重要。「だいたい」で盛ると量が安定しません。

お通し目安量食材原価
枝豆(冷凍)80g約35円
ポテトサラダ80g約60円
きんぴら70g約45円
冷奴(半丁+薬味)約40円
キャベツ塩昆布60g約40円

80gが100gになるだけで原価は25%増えます。仕込み時に計量して小分けしておくのが最善です。

ルール2:日替わりは2〜3種類まで

「温かいもの1種 + 冷たいもの1種」の2種ローテーションで十分。日替わりを増やしすぎると仕込みが分散してロスが増えます。

ルール3:原価率は食材込みで25%以内

食材+調味料+仕込み+器のコストを含めて25%以内が目安。400円のお通しなら合計原価100円以内。

ルール4:無料おかわりは禁止

「おかわり無料」は原価を直撃します。おかわりは有料(200円など)にするか、最初の1人前のみと決めてください。


月間の利益シミュレーション

お通し400円、1人前原価70円(原価率17.5%)の場合:

1日あたり:
売上 = 400円 × 50組 = 20,000円
原価 = 70円 × 50組 = 3,500円
粗利 = 16,500円

月間(25日営業):
売上 = 500,000円
原価 = 87,500円
粗利 = 412,500円

年間で約500万円の粗利。無視できない数字です。

席料300円にした場合との比較:

席料の月間粗利 = 300円 × 50組 × 25日 = 375,000円(原価ゼロ)
差額 = 412,500 - 375,000 = 月37,500円(お通し制が上)

ただしお通し制は仕込みの手間とロスリスクがあるので、人件費とオペレーション負荷を加味して判断してください。


お通しの値上げ——やり方次第で可能

20%以上の店が過去1年で値上げしている現状を考えると、お通しの値上げは十分に可能です。

  1. 品質を目に見えて上げる — 300円→400円なら、盛り付けで「前より良くなった」と分かるように
  2. 季節感を出す — 「旬の小鉢」として月替わりにすると特別感が出る
  3. メニューに説明を加える — 「本日のお通し:○○産のきんぴら」とストーリーを一行
  4. 一気に上げない — 50〜100円ずつ段階的に

今すぐやること

今日:

  • 現在のお通しの1人前原価を計算する(食材+調味料+仕込み按分+器)
  • 盛り付け量をグラムで決めて、紙に書いて厨房に貼る
  • お通しを断られた場合の対応ルールを決める

今週中:

  • お通しの仕込みを定量化する(50食分を一括仕込み→小分け保存)
  • メニューにお通し代を明記する(日本語+英語)
  • お通しを続けるか席料に切り替えるか、月間利益で比較する

参考資料


関連ガイド:


お通しの原価をメニューごとに管理するならKitchenCostが便利です。食材を登録すれば、1人前の原価と原価率が自動で出ます。

よくある質問

お通しの相場はいくらですか?

最も多い価格帯は300〜399円で全体の約40%(シンクロ・フード2023年調査)。チェーン居酒屋では170〜200円、一般的な居酒屋で300〜400円、高級店では500円以上が目安です。500〜599円の価格帯も増加中で、20%以上の店が過去1年以内に値上げしています。

お通しを断られたらどうすべき?

チェーン居酒屋の約50%がキャンセルを受付けています。対応は3つ:(1)断りOKにして席料に切り替える、(2)代替の小鉢を用意する、(3)メニューに明記して事前了解を得る。外国人客には16%の店が最初から提供していません。ルールを決めてスタッフ全員で統一するのが鍵です。

お通しと席料、どちらにすべき?

業界全体でお通し制→席料制への移行が進んでいます。お通し制は2018年の50%から2023年には38%に減少、席料は22.7%→28.7%に増加。お通し制は原価15〜25%で月41万円の粗利源になりますが仕込みの手間がかかります。席料は原価ゼロで運用が楽ですが粗利はお通し制より月3.75万円少なくなります。

お通しで利益を出すコツは?

1人前の量をグラムで固定することが最重要。お通し400円・原価70円(原価率17.5%)で1日50組×月25日なら、月50万円の売上・約41万円の粗利。ただし盛り付け量が『手加減』になると原価率が25%以上に跳ね上がるので、計量して小分けするのが鉄則です。

お通しの原価にはなにを含めるべき?

食材だけでなく、調味料(5〜10円)、仕込みの人件費按分(10〜20円)、器の減耗・洗浄コスト(5〜10円)を含めます。きんぴら小鉢なら食材45円+調味料8円+仕込み按分15円+器5円=合計73円。お通し400円なら粗利327円です。

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