おばんざい店の魅力は「やさしい家庭の味がたくさん並んでいる」こと。
でもこの「たくさん」が、原価管理の最大の敵です。
小鉢が3品なら原価率32%で収まるのに、4品にすると38%、5品になると40%を超える——品数が増えるほど、1食あたりの原価が膨らみます。 しかもおばんざいは「心を込めてたっぷり盛る」が売り。盛りブレまで加わると、利益は静かに消えていきます。
先に結論
- 小鉢は3品固定が安全。 4品以上になると原価率40%超えのリスク
- だし・煮汁は「仕込み品」として原価計算する。 各小鉢に按分
- 盛り量はgで固定。 器を決めて8分目が基準
- 日替わりでも、小鉢の原価基準は変えない
おばんざい定食1食の原価を分解する
例:おばんざい定食・3品(税抜売価950円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 主役:だし巻き卵 | 80g | 55円 |
| 控え:きんぴらごぼう | 60g | 18円 |
| 低原価:ぬか漬け | 30g | 8円 |
| ご飯 | 200g | 38円 |
| 味噌汁 | 180ml | 22円 |
| 香の物 | 15g | 5円 |
| 合計 | 146円 |
原価率:146 ÷ 950 = 15.4%
… 低すぎると思いましたか? これは「だし巻き卵が主役で残り2品が低原価」という理想的な構成の場合。
品数を増やすと何が起きるか
| 構成 | 小鉢原価 | セット原価 | 原価率(950円) |
|---|---|---|---|
| 3品(主1+控1+低1) | 81円 | 146円 | 15.4% |
| 3品(主1+控2) | 91円 | 156円 | 16.4% |
| 4品(主1+控2+低1) | 99円 | 164円 | 17.3% |
| 5品(主2+控2+低1) | 154円 | 219円 | 23.1% |
主役級の小鉢(肉じゃが、焼き魚など原価50〜100円)を2品入れると、原価率が一気に跳ね上がります。
対策: 主役は1品だけ。控えと低原価でバランスを取る。「品数の多さ」ではなく「主役の質」で勝負するほうが利益が安定します。
小鉢の盛りブレを防ぐ
おばんざいは「気持ちを込めてたっぷり」盛りたくなる。その気持ちが利益を削っています。
| 小鉢 | 標準量 | ブレ量 | 原価差 | 月間差額(80食/日) |
|---|---|---|---|---|
| だし巻き卵 | 80g | 120g | +28円 | +56,000円 |
| きんぴら | 60g | 90g | +9円 | +18,000円 |
| ひじき煮 | 60g | 90g | +9円 | +18,000円 |
| 肉じゃが | 100g | 150g | +25円 | +50,000円 |
だし巻き卵を1.5倍盛るだけで月5.6万円。 年間67万円です。
対策
- 器を統一する。 「この豆皿に8分目」がルール。計量不要で、器が基準になる
- 仕込み段階で1食分ずつ分ける。 きんぴらやひじきは60gずつ小皿に盛っておく
- 日替わりでも「1食分のgは固定」というルールを守る
だしの原価計算
おばんざいは「だし」が命。でも「だし代なんて安いでしょ」と原価に入れていない店が多い。
かつお昆布だし1バッチ(5L分)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 昆布 | 30g | 150円 |
| かつお節 | 50g | 150円 |
| 水 | 5L | 約2円 |
| 合計 | 302円 |
5Lのだしが取れるとして:
だし原価 = 302 ÷ 5,000ml = 0.06円/ml
各料理へのだし使用量
| 料理 | だし使用量 | だし原価 |
|---|---|---|
| だし巻き卵(3個分) | 60ml | 4円 |
| 肉じゃが(1食分) | 200ml | 12円 |
| 味噌汁(1杯) | 180ml | 11円 |
| 煮浸し(1食分) | 100ml | 6円 |
1日5Lのだしを使う店なら、だし代だけで月7,550円。安くはありませんが、計算に入れていないと利益を過大評価します。
季節食材の原価管理
おばんざいは季節感が大切。旬の食材を使うのは正解ですが、季節で仕入れ値が大きく変わる食材は、価格を据え置くと利益が削れます。
| 食材 | 安い時期 | 高い時期 | 価格差 |
|---|---|---|---|
| なす | 7〜9月(100円/kg) | 12〜3月(250円/kg) | 2.5倍 |
| 大根 | 11〜2月(80円/kg) | 7〜8月(200円/kg) | 2.5倍 |
| ほうれん草 | 12〜2月(150円/束) | 7〜8月(300円/束) | 2倍 |
対策: 旬の食材を使い、旬でない時期は別の食材に切り替える。「日替わり」の自由度を活かして、高い食材を避けるのがおばんざい店の強みです。
今週やること
- 小鉢の品数を3品に固定する(主1+控1+低1)
- 小鉢ごとの基準グラムを決める
- だしのバッチ原価を計算し、各料理に按分する
- 器を統一して、盛り量の基準を「8分目」にする
- 仕入れ値が高い食材を日替わりから外す
関連ガイド
出典
小鉢ごとの原価を登録すれば、日替わりでも定食全体の利益がひと目でわかります。KitchenCost を使ってみてください。