町中華のカウンターに座って、壁のメニューを見上げる。
半チャーハン+ラーメンセット 900円。餃子定食 850円。レバニラ定食 800円。
この価格帯を20年近く変えていない店も少なくありません。「うちはこの値段じゃないとお客さんが来ない」——その気持ちはわかります。
でも、いま食材の仕入れ値は20年前とはまったく違う。 2025年だけで食品20,609品目が値上げされました。米のCPIは前年比+70.9%。卵も油も軒並み上がっています。
売値が変わらず、仕入れだけ上がれば、利益は静かに消えていく。
先に結論
- 町中華の原価管理は「単品」ではなく「セット単位」で見る。 セットが主力なら、セットの原価率が店全体の利益を決める
- 炒飯は油と卵の量ブレが最大のリスク。 油10ml多いだけで月5,000円
- ラーメンはスープ原価を分解する。 「スープ代=鍋まるごとの原価÷杯数」で計算
- セット割引は10〜15%が上限。 それ以上の割引は粗利を食いすぎる
町中華の原価が崩れる3つの原因
1. 油と卵の量が日によって違う
炒飯を振るとき、油の量はどうやって決めていますか? お玉でザッとすくって——そのザッが問題です。
サラダ油の仕入れ価格を1Lあたり350円とすると:
| 油の量 | 1皿あたり | 80皿/日の月間コスト |
|---|---|---|
| 20ml | 7.0円 | 14,000円 |
| 30ml | 10.5円 | 21,000円 |
| 40ml | 14.0円 | 28,000円 |
油が10ml多いだけで月に7,000円変わる。 ラードを使っていればもっと差が出ます。
卵も同様です。Lサイズ1個25円、2個使う店なら1皿50円。「Mでも味は変わらない」のであれば、Mサイズに切り替えるだけで1個あたり5円、月に10,000円の差になります。
対策: 油はお玉ではなく計量カップで決める。卵のサイズを仕入れ段階で固定する。
2. スープの原価を分解していない
ラーメンのスープは「鍋で煮込む」ので、1杯あたりの原価が見えにくい。「まあ安いだろう」と思っていると、意外な金額になっていることがあります。
例:醤油ラーメンのスープ(20杯分バッチ)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 鶏ガラ | 1.5kg | 375円 |
| 豚骨(ゲンコツ) | 1kg | 300円 |
| 長ねぎ(青い部分) | 200g | 30円 |
| 生姜 | 50g | 25円 |
| にんにく | 30g | 20円 |
| 水 | 12L | 約3円 |
| 醤油ダレ | 400ml | 120円 |
| ガス代 | 4時間煮込み | 約200円 |
| 合計 | 1,073円 |
20杯分で1,073円。1杯あたり約54円。 ここに麺(30〜40円)、チャーシュー(50〜80円)、メンマ・海苔・ねぎ(15〜20円)を足すと、ラーメン1杯の原価は149〜194円になります。
売価750円なら原価率20〜26%。ラーメン単品なら問題ない。でもセットにした瞬間に数字が変わります。
3. セット割引が固定で見直されない
町中華の看板メニューは、たいてい「セット」です。
ところが、このセット価格を何年も前に決めたまま見直していない店が多い。
例:半チャーハン+ラーメンセット
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| ラーメン(スープ+麺+具) | 170円 |
| 半チャーハン(米+卵+油+具) | 130円 |
| 漬物・スープ小鉢 | 20円 |
| セット原価合計 | 320円 |
単品合計:ラーメン750円 + 半チャーハン450円 = 1,200円 セット価格:900円(25%引き)
セット原価率:320 ÷ 900 = 35.6%
これだけ見れば悪くない。でも実際は——
- 半チャーハンの量が「半」ではなく7割盛りになっている(+30円)
- スープの原価を50円安く見積もっていた(+50円)
- 漬物を「サービス」で山盛りにしている(+15円)
実質原価415円、原価率46.1%。10ポイント以上ズレている。
対策: 月に1回、売上上位3セットの原価率だけ再計算する。全メニューは不要。3セットだけで十分。
町中華の利益を守る3つの打ち手
打ち手① セット構成を「原価率」で設計し直す
| セット | 原価 | 現在の売価 | 原価率 | 適正売価(原価率35%) |
|---|---|---|---|---|
| 半チャーハン+ラーメン | 320円 | 900円 | 35.6% | 914円 |
| 餃子6個+ライス | 195円 | 700円 | 27.9% | 557円(現状OK) |
| レバニラ+ライス+スープ | 280円 | 850円 | 32.9% | 800円(現状OK) |
半チャーハンセットは原価率35%ぎりぎり。ここに「量ブレ」が加わると一気に赤字圏に入ります。売価を50〜100円上げるか、量を正確に固定するのが対策です。
打ち手② ランチとディナーで価格を分ける
町中華はランチタイムに客が集中します。ランチの回転が早い店なら、ランチはセット中心・ディナーは単品+ドリンクで利益率を変える設計が有効です。
- ランチ:セット主体(原価率35〜38%でも回転で補う)
- ディナー:ビール+単品(ドリンク原価率15%で全体を押し下げる)
打ち手③ サイドメニューで粗利を稼ぐ
町中華のサイドメニュー(小皿・惣菜)は原価率が低く、利益率が高いものが多い。
| サイド | 原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 冷奴 | 25円 | 250円 | 10% |
| ザーサイ | 15円 | 200円 | 7.5% |
| 杏仁豆腐 | 30円 | 280円 | 10.7% |
サイドの注文率を10%上げるだけで、全体の原価率が1〜2ポイント下がります。 壁にPOPを貼る、セットに「+100円で杏仁豆腐」を付けるだけで十分です。
今週やること
- 売上上位3セットの原価を再計算する(量ブレも含めて)
- 炒飯の油の量を計量カップで固定する
- スープ原価をバッチ単位で計算し、1杯あたりに割り戻す
- セット価格を原価率35%以内に収まるよう調整する
- サイドメニューのPOPを1つ追加する
関連ガイド
出典
セットごとの原価率を一覧で見たいなら。単品を登録すれば、セットの原価も自動計算されます。KitchenCost を使ってみてください。