キッチンカーは固定費が少ない。家賃もないし、内装工事もいらない。
「固定店舗より簡単に利益が出そう」と思って始める人は多いです。でも実際に営業してみると、思ったほど手元に残らない。
理由は出店料です。オフィス街なら1日3,000〜5,000円、週末のイベントなら2〜10万円。これを原価に入れずに「食材費30%で利益率70%」と計算していると、月末に数字が合いません。
キッチンカーの原価計算は「食材+包装+出店料+ロス」の4つで考える必要があります。
先に結論
- キッチンカーの原価は 食材 + 包装 + 出店料 + 燃料 + ロス の5要素
- 食材原価だけ見ると30%以下でも、出店料を入れると実質40〜50%になることが多い
- 出店料は「1日の料金 ÷ 想定客数」で1食あたりに配賦する
- 売り切り設計(仕込み量のコントロール)が利益の鍵
カレーライス1食の原価を分解してみる
例:キーマカレー(売価800円・税込)
| 項目 | 内容 | 原価 |
|---|---|---|
| ごはん | 200g | 40円 |
| キーマカレー | 合挽き肉80g + 玉ねぎ・トマト | 120円 |
| トッピング | 温泉卵 | 15円 |
| 容器 | 使い捨てBOX + フタ | 30円 |
| スプーン・おしぼり | 1セット | 8円 |
| 紙袋 | 1枚 | 5円 |
| 食材+包装 小計 | 218円 |
食材+包装の原価率:218 ÷ 800 = 27.3%
ここまでは「利益率が高い」ように見えます。でもここに出店料と燃料を足します。
出店料を1食に配賦する
例:オフィス街出店(出店料5,000円・1日50食想定)
出店料の1食あたり = 5,000円 ÷ 50食 = 100円
| 項目 | 1食あたり |
|---|---|
| 食材+包装 | 218円 |
| 出店料 | 100円 |
| ガソリン+発電機 | 40円 |
| 合計 | 358円 |
実質原価率:358 ÷ 800 = 44.8%
食材だけなら27%だったのが、出店料を入れると45%近くになります。この差を把握していないと「売れているのに利益が出ない」状態に陥ります。
さらに怖いのは、想定の50食に届かない日です。30食しか売れなかった場合:
出店料の1食あたり = 5,000円 ÷ 30食 = 167円
実質原価 = 218 + 167 + 40 = 425円
原価率 = 425 ÷ 800 = 53.1%
だから出店料の計算は「目標客数」ではなく「最低ラインの客数」で見積もるのが安全です。
出店場所ごとのコスト比較
| 出店場所 | 出店料/日 | 想定客数 | 1食あたり出店料 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| オフィス街 | 3,000〜5,000円 | 40〜60食 | 70〜125円 | 平日安定、ランチ特化 |
| 大学・学校 | 5,000円 | 50〜80食 | 63〜100円 | 学期中は安定、長期休みは× |
| 商業施設 | 3,000〜5,000円 | 30〜50食 | 60〜170円 | 週末強い、平日弱い |
| 小規模イベント | 2〜10万円 | 80〜200食 | 250〜1,250円 | 当たればデカい、リスクも大 |
| 大規模イベント | 10万円〜 | 200〜500食 | 200〜500円 | 仕込み量と人手が課題 |
歩合制(売上の15〜20%)の出店場所もあります。売れなかった日のリスクが小さい反面、売れた日の取り分が減ります。安定を取るなら歩合制、勝負するなら固定制。
原価が崩れる4つの原因
1. 出店料を原価に入れていない
「食材費30%だから大丈夫」と思っていたら、月末に出店料を合計してみると15〜20万円。これを入れると利益率が半分以下になっていた——というケースは多いです。
対策:出店ごとに「食材費+出店料+燃料」の合計を記録する。 1ヶ月後に場所ごとの利益率を比較できるようにしておくと、「行くべき場所」と「行かない方がいい場所」が見えてきます。
2. 仕込みすぎて廃棄が出る
「足りないと機会損失」と思って多めに仕込むと、売れ残りが出ます。キーマカレー1食分の廃棄は218円の損失。10食残れば2,180円。週3日営業で月に26,000円。
対策:前回の出店実績をベースに仕込み量を決める。 初めての場所なら、想定の7割で仕込む。足りなくなったら「完売御礼」にするほうが、ブランドイメージにもプラスです。
3. 包装資材を計算に入れていない
キッチンカーはすべてテイクアウトなので、容器代が毎食かかります。
| 包装資材 | 1食あたり |
|---|---|
| 使い捨てBOX(フタ付き) | 25〜40円 |
| スプーン or フォーク | 3〜5円 |
| おしぼり | 3〜5円 |
| 紙袋 | 5〜10円 |
| 紙ナプキン | 2円 |
| 合計 | 38〜62円 |
1食あたり40〜60円。月に1,000食売るなら、包装資材だけで40,000〜60,000円です。
対策:容器はまとめ買いで単価を下げる。 ECサイトでケース購入すると1個あたり5〜10円安くなることがあります。
4. メニュー数が多すぎる
メニューが5品あると、それぞれ仕込みが必要です。1品あたり20食仕込んで合計100食。でも全品均等には売れないので、人気メニューは売り切れ、不人気メニューは余る。
対策:メニューは3品以下が基本。 メインの看板メニュー1品 + バリエーション1〜2品が理想です。仕込みがシンプルになり、ロスも減ります。
利益が出やすいメニューの比較
| メニュー | 食材原価 | 包装込み | 売価 | 原価率(包装込み) |
|---|---|---|---|---|
| たこ焼き(8個) | 60円 | 85円 | 500円 | 17% |
| クレープ | 50円 | 60円 | 600円 | 10% |
| カレーライス | 160円 | 205円 | 800円 | 26% |
| ケバブラップ | 180円 | 210円 | 700円 | 30% |
| タコライス | 140円 | 185円 | 800円 | 23% |
| ピザ(1枚) | 120円 | 150円 | 700円 | 21% |
粉もの系(たこ焼き・クレープ・ピザ)が圧倒的に原価率が低い。 食材が小麦粉・卵・砂糖など安い材料中心だからです。
ただし粉もの系は客単価が低め(500〜600円)。1日の売上を稼ぐには客数が必要です。客数が見込めるイベント出店なら粉もの、オフィス街のランチならカレーやタコライス——と場所に合わせて使い分けると効率的です。
出店場所の選び方
利益を最大化するには「出店料に対していくら売れるか」の比率で考えます。
出店料回収率の計算
出店料回収率 = 粗利(売上 − 食材 − 包装 − 燃料)÷ 出店料
たとえばオフィス街で50食(800円 × 50 = 40,000円)売って、食材+包装+燃料が15,000円、出店料5,000円なら:
粗利 = 40,000 − 15,000 = 25,000円
出店料回収率 = 25,000 ÷ 5,000 = 5.0倍
回収率3倍以上なら合格。 2倍以下の場所は、客数を増やす施策がないなら見直したほうがいいです。
出店ごとにこの数字を記録しておくと、3ヶ月後には「稼げる場所リスト」ができます。
天候リスクへの対応
キッチンカーは天候に売上が大きく左右されます。雨の日は客数が30〜50%減ることも珍しくありません。
仕込み量の天候ルール(例):
| 天気予報 | 仕込み量 |
|---|---|
| 晴れ | 通常の100% |
| 曇り | 通常の80% |
| 降水確率50%以上 | 通常の60% |
| 雨確定 | 出店見送り or 50% |
前日の天気予報を見てから仕込み量を決める。この「前日判断」のルールを作っておくだけで、廃棄ロスが大幅に減ります。
今週やること
- 直近3回の出店で「食材+包装+出店料+燃料」の合計原価を計算する
- 出店場所ごとの出店料回収率を比較する(3倍以上かどうか)
- 包装資材の1食あたりコストを把握する
- メニュー数を3品以下に絞れるか検討する
- 天候別の仕込み量ルールを決める
関連ガイド
食材と包装を登録すれば、1食あたりの原価が自動で出ます。出店場所ごとの利益計算にも使えます。KitchenCost は無料で使えます。