ランチタイム。カツ丼の注文が立て続けに入る。
忙しい中、つい卵をもう1個多めに割ってしまう。「半熟のほうが喜ぶから」。豚ロースも「ちょっと厚めのほうがいいか」と切り分ける。
その**「もう1個」「ちょっと厚め」が、1日50杯で月に数万円の差**になっている——と気づくのは月末の帳簿を見たときだ。
先に結論
- カツ丼の原価の40〜50%は豚ロース。 100gと150gで原価が60〜70円変わる
- 卵は1個基準。 2個にすると原価+23円。「追加卵+50円」でオプション化が正解
- 揚げ油は「見えないコスト」。 1枚あたり15〜25円かかっている
- サイズ別価格を用意する。 100g/150gの2段階で、客単価と原価率を両立させる
カツ丼1杯の原価を分解する
並カツ丼(豚ロース100g・税抜800円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 豚ロース(100g) | 130円 |
| 衣(パン粉・小麦粉・卵) | 15円 |
| 揚げ油(1枚あたり) | 20円 |
| 卵(1個) | 23円 |
| つゆ(1杯分) | 12円 |
| 玉ねぎ(30g) | 8円 |
| ご飯(200g) | 55円 |
| 味噌汁(セット) | 25円 |
| 漬物 | 10円 |
| 合計 | 298円 |
原価率:298 ÷ 800 = 37.3%
上カツ丼(豚ロース150g・税抜1,000円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 豚ロース(150g) | 195円 |
| 衣 | 18円 |
| 揚げ油 | 25円 |
| 卵(1.5個) | 35円 |
| つゆ | 15円 |
| 玉ねぎ(40g) | 10円 |
| ご飯(250g) | 70円 |
| 味噌汁 | 25円 |
| 漬物 | 10円 |
| 合計 | 403円 |
原価率:403 ÷ 1,000 = 40.3%
上カツ丼は200円高く売っても、原価率は3ポイント高い。 利益額で見ると並が502円、上が597円。粗利額は上のほうが大きいが、原価率を気にするなら並をメインに据えるのが安全だ。
豚ロースの「10g」が利益を左右する
カツ丼で最も効果的な原価管理は、肉のグラムを統一することだ。
| 豚ロース重量 | 原価 | 差額 |
|---|---|---|
| 80g | 104円 | — |
| 100g | 130円 | +26円 |
| 120g | 156円 | +52円 |
| 150g | 195円 | +91円 |
80gと150gで91円の差。1日50杯の店なら:
仮に平均10g多めに切っているとすると:
13円 × 50杯 × 25日 = 16,250円/月 = 195,000円/年
年間約20万円。 秤でカットするだけで防げる金額だ。
スタッフ全員が同じグラムで切れるよう、「100g ± 5g」のルールを明文化しておく。
卵の個数管理——「半熟なら1個で十分」
卵は2025年後半に価格が落ち着いたものの、まだ1個あたり23円前後。
| 卵の使い方 | 原価 | 効果 |
|---|---|---|
| 1個・半熟とじ | 23円 | 見た目のボリューム感は十分 |
| 2個・しっかりとじ | 46円 | 原価+23円で差額を回収しにくい |
| 1個 + 追加卵オプション(+50円) | 23円 + 客単価UP | 追加分は粗利27円 |
卵を2個使うのが「当たり前」になっている店は多い。 でも1個を半熟でとじれば、とろっとした見た目で満足度は十分出る。
「卵追加+50円」のオプションにすれば、追加した人からは確実に利益が出る。
揚げ油——1枚あたりの原価を把握しているか
揚げ油は「鍋に入れたら見えなくなるコスト」だ。
揚げ油コストの計算
鍋の油量:5L × 油単価200円/L = 1,000円
交換頻度:3日に1回
3日間の揚げ枚数:60枚(仮)
油1枚あたり = 1,000円 ÷ 60枚 = 約17円
さらにカツは揚げるたびに20〜30mlの油を吸う。この吸油分を足すと、1枚あたり20〜25円が実際のコスト。
20円 × 50枚/日 × 25日 = 25,000円/月
月2.5万円。「油なんて安い」と思っていると、年間30万円になる。
つゆの管理——鍋単位で原価を出す
カツ丼のつゆ(出汁・醤油・みりん・砂糖)は鍋で仕込むことが多い。
つゆ1鍋(約30杯分)
| 材料 | 金額 |
|---|---|
| 出汁(かつお・昆布) | 120円 |
| 醤油 | 80円 |
| みりん | 60円 |
| 砂糖 | 20円 |
| 水 | — |
| 合計 | 280円 |
つゆ1杯あたり = 280円 ÷ 30杯 = 約9円
つゆ自体は安い。ただしお玉の大きさがスタッフで違うと、1杯あたりの量が30〜50mlブレる。お玉を固定サイズにするか、計量する仕組みがあると原価が安定する。
サイズ別価格設計
カツ丼は2サイズ展開がシンプルで効果的。
| メニュー | 肉量 | 売価 | 原価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|---|
| 並カツ丼 | 100g | 800円 | 298円 | 37% | 502円 |
| 上カツ丼 | 150g | 1,000円 | 403円 | 40% | 597円 |
| ミニカツ丼 | 70g | 600円 | 240円 | 40% | 360円 |
ランチは並を主力にして回転率で稼ぐ。夜は上カツ丼 + ビールで客単価を上げる。
ミニカツ丼はセット用。 うどんやそばとのセットで使うと、客単価が200〜300円上がる。
今週やること
- 豚ロースのカット重量を秤で統一する(100g ± 5g)
- 卵の使用個数を1個に固定して、追加卵はオプション化する
- 揚げ油の交換頻度と1枚あたりの原価を計算する
- つゆをお玉何杯でかけるかルールを決める
- 並・上の2サイズで原価率を比較する
カツ丼は「ちょっと多め」の積み重ねで利益が消える業態。まずは肉のグラムと卵の個数を固定するところから。数字を出せば、「どこまでサービスできるか」が判断できるようになる。
カツ丼のレシピ原価を管理するなら。豚肉・卵・油の仕入れ値を更新するだけで、メニューごとの原価率がリアルタイムで変わります。KitchenCost を使ってみてください。