新品のエプロンが3ヶ月で「ボロボロ」
開業のとき、気合いを入れてそろえたエプロン。
初日はパリッとしていたのに、2ヶ月もすると油シミが取れなくなった。3ヶ月で紐が切れた。半年後には袋に入れてゴミの日に出した。
「まあエプロンだし」と思って、また通販で似たようなものを買う。1枚1,000円。たいした金額じゃない──でもこれをスタッフ含めて年に何回やっているか、数えたことはあるだろうか。
エプロンだけではない。コックシューズの底がツルツルで危ない。Tシャツの首元がヨレヨレで、お客さんから見える。コックコートの襟が黄ばんで、漂白してもダメだった。
飲食店のユニフォーム代は、 1回の金額は小さいのに、年間で見ると意外に積み上がる経費 だ。しかもほとんどの個人店は、いくらかかっているか把握していない。
先に結論
- 個人飲食店(オーナー+スタッフ1〜2人)で、ユニフォーム関連の年間コストは 合計3〜8万円
- エプロンは 3〜6ヶ月で買い替え が現実的。撥水加工品にするだけで寿命が伸びる
- コックシューズは 3〜6ヶ月交換 。底が減ると滑って危険なので安全面でもケチらない
- スタッフ3人以下なら 購入+自分で洗濯 が最安。5人以上なら レンタル が管理込みでお得
- 勘定科目は従業員用 = 福利厚生費 、事業主本人用 = 消耗品費
アイテム別──年間コストの目安
オーナー1人+スタッフ1〜2人の個人飲食店を想定した数字だ。
エプロン
| 種類 | 単価の目安 | 寿命の目安 | 年間買い替え枚数 | 年間費用(1人) |
|---|---|---|---|---|
| 綿100%(安価品) | 500〜1,000円 | 2〜4ヶ月 | 3〜6枚 | 2,000〜5,000円 |
| ポリエステル混紡(撥水加工) | 1,200〜2,500円 | 6〜12ヶ月 | 1〜2枚 | 1,500〜4,000円 |
| デニム・帆布(厚手) | 2,000〜4,000円 | 12〜18ヶ月 | 1枚 | 2,000〜4,000円 |
安いエプロンを何枚も買い替えるより、撥水加工や厚手のものを選ぶ方が年間コストは下がる。 1枚あたりの単価だけで判断すると、結果的に高くつく。
コックコート・調理用シャツ
| 種類 | 単価の目安 | 寿命の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| コックコート(定番・ツイル素材) | 2,000〜4,000円 | 1〜2年 | シワになりにくい。洗濯に強い |
| コックコート(薄手・夏用) | 1,800〜3,000円 | 1年 | 通気性が良い。夏場の厨房向き |
| 調理用ポロシャツ | 1,500〜3,000円 | 6ヶ月〜1年 | カフェなどカジュアルな業態向き |
コックコートは生地がしっかりしているので、エプロンほど買い替え頻度は高くない。ただし、白いコックコートは襟元や袖口の黄ばみが落ちなくなるのが先に来る。 黄ばみ予防には、着用後すぐに襟にスプレー洗剤をかけてから洗うだけで寿命がかなり違う。
コックシューズ
| 種類 | 単価の目安 | 寿命の目安 | 年間費用(1人) |
|---|---|---|---|
| 安価品(EVA素材) | 1,000〜1,800円 | 2〜3ヶ月 | 4,000〜10,000円 |
| 中価格帯(PVC・ゴム底) | 2,000〜3,500円 | 4〜6ヶ月 | 4,000〜10,000円 |
| 耐久品(弘進ゴム等) | 3,000〜5,000円 | 6〜12ヶ月 | 3,000〜10,000円 |
コックシューズは「安全装備」だ。 底がすり減ったシューズで油のはねた床を歩くと、転倒事故のリスクが跳ね上がる。
労災になれば治療費だけでなく営業に穴が開く。 ケチるところではない。 底の溝がなくなったら即交換。
その他
| 品目 | 単価の目安 | 寿命の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| コック帽(使い捨て) | 50〜100枚入り 1,000〜2,000円 | – | 衛生管理上必要な業態向き |
| バンダナ・三角巾 | 300〜800円 | 3〜6ヶ月 | カフェ・ベーカリーで多い |
| 調理用手袋(使い捨て) | 100枚入り 500〜1,500円 | – | 仕入れコストに含める店も |
年間コストのまとめ──オーナー+スタッフ2人の場合
| アイテム | 1人あたり年間 | 3人分 |
|---|---|---|
| エプロン | 2,000〜5,000円 | 6,000〜15,000円 |
| コックコート/シャツ | 2,000〜4,000円 | 6,000〜12,000円 |
| コックシューズ | 3,000〜10,000円 | 9,000〜30,000円 |
| クリーニング/洗濯代 | 2,000〜7,000円 | 6,000〜21,000円 |
| 合計 | 9,000〜26,000円 | 約3〜8万円 |
月に換算すると2,500〜6,500円。 大きな金額ではないが、把握しているかいないかで年間の利益管理の精度が変わる。
購入 vs レンタル──どっちが得か
「レンタルユニフォーム」は、リネン業者が制服の貸し出し・回収・洗濯・補修をまとめてやってくれるサービスだ。飲食チェーンでは当たり前に使われているが、個人店ではあまり知られていない。
購入+自分で洗濯
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 初期費用(3人分・一式) | 15,000〜30,000円 |
| 年間買い替え費 | 15,000〜40,000円 |
| 洗濯代(光熱費・洗剤) | 年間5,000〜10,000円 |
| 年間トータル | 約3〜5万円 |
レンタル
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 初期費用 | ほぼ0円(デポジットのみの業者が多い) |
| 月額(1人・週2回交換) | 2,500〜4,000円 |
| 3人分・年間 | 90,000〜144,000円 |
| 年間トータル | 約9〜14万円 |
判断基準
スタッフ3人以下 → 購入+自分で洗濯が安い。
ただしレンタルには「管理の手間がゼロ」というメリットがある。スタッフが5人以上になって、洗濯や在庫管理に時間を取られるようなら、レンタルの方がトータルで得になるケースもある。
また、レンタル業者によっては個人店向けの少量プラン(月額3,000円〜)を持っていることもある。 地元のリネン業者に「個人の飲食店でも対応できるか」と聞いてみる価値はある。
クリーニング──業者に出すか、自分で洗うか
クリーニング業者に出す場合
| 品目 | 1着あたり | 月の回数 | 月額(1人) |
|---|---|---|---|
| コックコート | 600〜1,000円 | 4回 | 2,400〜4,000円 |
| エプロン | 400〜600円 | 4回 | 1,600〜2,400円 |
1人あたり月4,000〜6,000円。3人なら月12,000〜18,000円。 年間15〜20万円。 これは正直、個人店にとっては重い。
自分で洗濯する場合
洗濯機で洗えるユニフォームなら、1回あたりのコストは電気代+水道代+洗剤で 30〜50円程度 。毎日洗っても月1,500円以下で済む。
ポイントは「帰る前に洗濯機を回す」ことをルーティンにすること。 翌日に持ち越すと油汚れが定着して、家庭用洗濯機では落ちなくなる。
落ちにくい油汚れのコツ:
- 着用直後に襟・袖口にスプレー洗剤(ウタマロクリーナー等)をかける
- 40〜50℃のお湯で洗濯する(油汚れは水では落ちにくい)
- 酸素系漂白剤(オキシクリーン等)を月に1回つけ置き洗い
これだけで、 クリーニング代ゼロ でコックコートの白さを1年以上キープできる。
確定申告──ユニフォーム代の勘定科目
ユニフォーム代は経費になる。ただし 誰が使うかで勘定科目が変わる ので注意。
従業員用 → 福利厚生費
スタッフに支給するユニフォーム(エプロン、コックコート、シューズ等)は 「福利厚生費」 で処理する。
福利厚生費にするための条件は2つ:
- 全従業員に一律で支給していること(特定の人だけに支給するのはNG)
- 業務に直接必要なものであること(私服としても着られるものは認められにくい)
コックコートやエプロンは「明らかに業務でしか着ないもの」なので、2の条件はまず問題ない。
個人事業主(オーナー自分用) → 消耗品費
個人事業主が自分で使うユニフォームは福利厚生費にできない。 これはよく間違えるポイントだ。
「自分1人しかいない店で、自分のエプロンを福利厚生費にした」──税務調査で否認されるケースがある。 個人事業主本人分は「消耗品費」で計上する。
クリーニング代
| 対象 | 勘定科目 |
|---|---|
| 従業員の制服クリーニング | 福利厚生費 |
| 事業主本人のクリーニング | 消耗品費 |
| レンタルユニフォーム料金 | 賃借料 または 福利厚生費 |
仕訳の例
【従業員用エプロン3枚購入 4,500円】
福利厚生費 4,500 / 現金 4,500
【事業主本人のコックシューズ購入 3,000円】
消耗品費 3,000 / 現金 3,000
【従業員の制服クリーニング 1,800円】
福利厚生費 1,800 / 現金 1,800
【レンタルユニフォーム月額 9,000円】
賃借料 9,000 / 普通預金 9,000
コストを抑える5つのコツ
① 業務用ユニフォーム通販で買う
ユニクロやワークマンでも買えるが、 飲食店専門の通販サイトの方が安くて機能的 だ。
主な通販サイト:
- ユニフォームネクスト(uniformnext.com)──品揃えが豊富。エプロン943円〜
- ユニコレ(ths-fooduniform.jp)──飲食店専門。ブログでの情報発信が参考になる
- いしまる(food-wear.shop)──飲食店制服の老舗通販
- アイクック(i-cook.jp)──激安路線。コックコート1,800円〜
② エプロンは「撥水加工」を選ぶ
綿100%のエプロンは安いが、油と水を吸う。吸えば汚れが染み込んで取れなくなる。
ポリエステル混紡の撥水加工エプロン(1,500〜2,500円)は、油をはじくので汚れがつきにくく、洗濯で落ちやすい。結果的に寿命が2〜3倍になる。
1枚あたりの単価が500円高くても、買い替え頻度が半分になれば年間コストは下がる。
③ コックシューズは「中価格帯」が最もコスパが良い
1,000円台の安価品は3ヶ月で底がすり減る。5,000円以上の高級品は個人店にはオーバースペック。
2,000〜3,500円の中価格帯(弘進ゴムのシェフメイトなど)が最も費用対効果が高い。底の溝が深く、半年程度持つ。
④ 色選びで汚れの目立ち方が変わる
白いコックコートは清潔感があるが、黄ばみが目立つ。 黒やネイビーのコックコートは汚れが目立ちにくく、見た目の「限界」が来るのが遅い。
最近はカフェやビストロで黒系のコックコートが主流になりつつある。衛生面で白を求められない業態なら、 暗い色を選ぶだけで買い替え頻度を下げられる。
⑤ 予備を「2セット」持つ
1セットしかないと、洗濯が間に合わなかったり、破れた時に慌てて買いに行くことになる。
最低2セット(=今着ているものと洗濯用) を持っておけば、ローテーションで生地の傷みが分散される。結果的に1セットあたりの寿命が延びる。
よくある失敗パターン
❶ スタッフに「自分で用意して」と言う
「エプロンは各自で持ってきて」──一見コスト削減に見えるが、 バラバラのエプロンで統一感がない店は、お客さんから「ちゃんとした店じゃない」と見られる。
Googleの口コミで「スタッフの服装がバラバラで不安になった」と書かれるリスクもある。 統一された制服は、お客さんへの「この店はちゃんとしています」というメッセージだ。
❷ コックシューズを限界まで使う
底がツルツルになったシューズは転倒事故のもと。 厨房での転倒は労災になりうる。 治療費、休業補償、そして何より営業に穴が開く。
シューズの底の溝がなくなったら、 まだ履けても交換する。 2,000〜3,000円のシューズをケチって骨折したら、損失は比べものにならない。
❸ レシートを捨てる
ユニフォーム代は経費になるのに、レシートを捨てると計上できない。 通販で買えば購入履歴が残る ので管理が楽だ。
現金で買った場合は、スマホで撮影するだけでもいい。freeeやマネーフォワードを使っているなら、そのまま取り込める。
まとめ──「たかがエプロン代」を管理できる店は強い
ユニフォーム代は年間3〜8万円。家賃や食材費に比べれば小さな金額だ。
でも 「小さな経費の出入りを把握している」こと自体が、経営力の指標 になる。
やることは3つ。
- 業務用通販で買う(ユニフォームネクスト、ユニコレ等。汎用品より安くて丈夫)
- 撥水加工のエプロン+中価格帯のシューズ を選ぶ(安物の買い替えループを断つ)
- レシートを保管して経費計上する(従業員用 = 福利厚生費、事業主本人 = 消耗品費)
月2,500〜6,500円。年間3〜8万円。
「たかがエプロン代」を数字で把握している店は、原価率も人件費率もちゃんと見ている。
KitchenCostにはメモ欄があるので、レシピごとに「このメニューを出すときの服装・エプロンの種類」を記録しておけば、業態やメニュー変更時にユニフォームの見直しもスムーズです。