要点まとめ
- 家賃がない代わりに**出店料(5〜15%)+車両維持費(5〜10%)**が発生する
- 減価償却を必ず計算に入れる。5年後の車両更新に月4〜5万円の積立が必要
- 天候・季節で売上が大きく変動するため原価率30%以下を目標に設定
- 損益分岐点を把握して1日の最低目標売上を明確にする
キッチンカーの原価計算 - 店舗型飲食店と何が違う?
「家賃がかからないなんて、いいビジネスだ!」
キッチンカーに対して、こう思う方は多いでしょう。しかし、キッチンカーにも見えにくいコストがしっかり存在します。家賃の代わりに出店料や車両維持費がかかり、売上の変動も店舗型より大きいのが現実です。
キッチンカー vs 店舗型飲食店:コスト構造の比較
店舗型飲食店
| 項目 | 売上比率 |
|---|---|
| 原材料費 | 28〜35% |
| 人件費 | 25〜30% |
| 家賃 | 10〜15% |
| 光熱費 | 3〜5% |
| その他 | 5〜10% |
| 純利益 | 3〜10% |
キッチンカー
| 項目 | 売上比率 |
|---|---|
| 原材料費 | 25〜35% |
| 人件費 | 15〜25%(通常1〜2名体制) |
| 家賃 | 0% |
| 出店料 | 5〜15% |
| 車両維持費 | 5〜10% |
| 光熱費 | 2〜3% |
| その他 | 5〜10% |
| 純利益 | 6〜15% |
主な違い:
- 家賃がない代わりに出店料+車両費が発生
- 人件費率は低いが、オーナーの体力的負担が大きい
- 純利益率は店舗型(3〜5%)より高くなる可能性があるが、売上変動が激しい
日本のキッチンカー業界では、年間売上900万円超・利益400万円程度を目指せるとされています(メニューや出店場所による)。
キッチンカー特有のコスト
1. 出店料
キッチンカーはどこでも営業できるわけではありません。ほとんどの場所で許可と費用が必要です。
出店場所別の費用目安(2025年):
| 場所タイプ | 出店料 | 特徴 |
|---|---|---|
| 公園・広場(自治体) | 無料〜1日5,000円 | 許可申請必要、競争激しい |
| 大学キャンパス | 1日3,000〜10,000円 | 昼食時のみ、長期休暇は営業不可 |
| オフィス街 | 1日5,000〜15,000円 | 平日安定した売上 |
| イベント・フェス | 1日10,000〜50,000円+ | 売上高いがコストも高い |
| ケータリング | 交渉次第 | 出張費別途請求可 |
月間出店料の例:
- オフィス街(平日のみ):1日1万円 × 22日 = 22万円
- 大学キャンパス:1日5,000円 × 20日 = 10万円
2. 車両維持費
キッチンカーの「見えない家賃」と言えます。
| 項目 | 月額費用 | 備考 |
|---|---|---|
| ガソリン代 | 3〜6万円 | 移動距離により変動 |
| 保険料 | 1〜2万円 | 営業車両保険 |
| 定期点検 | 0.5〜1万円 | 月平均換算 |
| プロパンガス | 1〜2万円 | 調理用 |
| 駐車場代 | 1〜3万円 | 夜間・休日の保管 |
| 洗車・清掃 | 0.3〜0.5万円 | |
| 合計 | 7〜15万円 |
店舗の家賃が月15万円なら、キッチンカーの「車両+出店費用」も同等かそれ以上になることがあります。
3. 初期投資と減価償却
キッチンカーは初期投資が大きいです。2025年現在、日本でのキッチンカー開業費用は200万〜600万円が目安です。
| 項目 | 金額 | 耐用年数 | 月額減価償却 |
|---|---|---|---|
| 車両購入・改造 | 150〜400万円 | 5年 | 2.5〜6.7万円 |
| 厨房設備 | 30〜100万円 | 5年 | 0.5〜1.7万円 |
| 外装・看板 | 20〜50万円 | 3年 | 0.6〜1.4万円 |
| 合計 | 200〜550万円 | 3.6〜9.8万円 |
減価償却は必ず計算に入れてください。
5年後に車両を更新するなら、毎月少なくとも4〜5万円は積み立てが必要です。これを無視すると、実際の利益を過大評価してしまいます。
キッチンカー原価計算:実例
状況設定:たこ焼きキッチンカー
**メニュー:たこ焼きセット(8個+ドリンク)**販売価格:800円
ステップ1:原材料費の計算
| 材料 | 使用量 | 単価 | 原価 |
|---|---|---|---|
| たこ焼き粉 | 50g | 1円/g | 50円 |
| タコ | 40g | 4円/g | 160円 |
| ネギ | 10g | 1円/g | 10円 |
| 紅生姜 | 5g | 2円/g | 10円 |
| 天かす | 10g | 0.5円/g | 5円 |
| ソース・マヨ | 20g | 1円/g | 20円 |
| 青のり・かつお節 | 5g | 3円/g | 15円 |
| ペットボトル飲料 | 1本 | 80円 | 80円 |
| 合計 | 350円 |
原材料原価率:350円 ÷ 800円 = 44% → 高すぎる
ステップ1.5:価格調整の検討
原価率44%は高いため、以下の調整を検討:
- 販売価格を900円に上げる → 原価率39%
- ドリンクなしの単品(600円)をメインに → 原価率45%
ここでは900円のセットで再計算します。
調整後原価率:350円 ÷ 900円 = 39%
ステップ2:包装資材費の計算
キッチンカーはほぼすべてテイクアウトです。この費用を見落としてはいけません。
| 項目 | 単価 |
|---|---|
| 舟皿 | 25円 |
| ピック | 3円 |
| 紙ナプキン | 2円 |
| レジ袋 | 10円 |
| 合計 | 40円 |
ステップ3:1食あたりの総原価
原材料費:350円
包装資材:40円
────────────
1食あたり原価:390円
原価率:43%(900円販売時)
ステップ4:1日の損益計算
前提条件:
- 1日販売数:80セット
- 出店料:8,000円
- ガソリン代:2,000円(1日平均)
- ガス代:500円(1日平均)
- その他:500円
売上:900円 × 80 = 72,000円
経費:
- 原材料費:350円 × 80 = 28,000円
- 包装資材:40円 × 80 = 3,200円
- 出店料:8,000円
- ガソリン代:2,000円
- ガス代:500円
- その他:500円
────────────────────────
経費合計:42,200円
1日の利益:72,000 - 42,200 = 29,800円
ステップ5:月間損益(現実的な計算)
営業日:22日
月間営業利益:29,800円 × 22日 = 655,600円
固定費控除:
- 車両保険:-15,000円
- 定期点検積立:-8,000円
- 駐車場代:-20,000円
- 減価償却:-50,000円(車両300万円÷60ヶ月)
────────────────────────
実際の月収:約56万円
重要: これは1人運営、毎日同じ売上が続く前提です。雨天による営業中止、イベントキャンセル、閑散期などで実際の収入は変動します。
キッチンカーの推奨原価率
メニュータイプ別
| メニュータイプ | 推奨原価率 | 理由 |
|---|---|---|
| コーヒー・ドリンク | 15〜25% | 原価低く回転率高い |
| デザート・スナック | 20〜28% | 少量販売、利益重視 |
| 軽食(焼きそば等) | 25〜30% | 単価低いため原価管理必須 |
| 肉料理 | 28〜32% | 原価高いが客単価も高い |
| 海鮮 | 30〜35% | 鮮度リスク含む |
キッチンカーの現実
店舗型飲食店:原価率35%でも成立
キッチンカー:原価率35%はリスクあり
理由:
- 天候・季節で売上が大きく変動
- 出店キャンセルの日は売上ゼロ
- 車両故障で営業不可に
- 閑散期の売上激減
原価率は30%以下を目標に設定しましょう。
損益分岐点の計算
固定費の把握
| 項目 | 月額費用 |
|---|---|
| 出店料 | 15万円(1日7,500円×20日) |
| 車両維持費 | 10万円 |
| 減価償却 | 5万円 |
| 保険 | 1.5万円 |
| その他 | 1.5万円 |
| 合計 | 33万円 |
変動費率の把握
原材料費:39%
包装資材:4%
キャッシュレス手数料:3%
────────────
変動費率:46%
損益分岐売上の計算
損益分岐売上 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
= 33万円 ÷(1 − 0.46)
= 33万円 ÷ 0.54
= 約61万円
月61万円以上売らないと赤字です。
1日あたり:61万円 ÷ 20日 = 約3万円/日
コスト削減の戦略
1. メニューをシンプルに
キッチンカーはスペースが限られています。メニューが多いと在庫管理が難しく、廃棄ロスも増えます。
推奨:メインメニュー3〜5品
2. 共通食材の活用
複数のメニューで同じ食材を使えば、在庫回転が速くなり廃棄が減ります。
例:ネギ → たこ焼き、焼きそば、お好み焼きすべてに使用
例:ソース → 全メニュー共通
3. 仕込みの最大化
車内でできる調理には限界があります。できる限り事前に準備しましょう。
✓ 事前準備:
- 生地の調合
- 具材のカット
- ソースの調合
- 食材の小分け
✓ 車内調理:
- 焼く、盛り付け、仕上げのみ
4. 出店戦略の最適化
すべての出店場所が同じ収益性ではありません。
| 判断基準 | 良い出店場所 |
|---|---|
| 人通り | ピーク時500人以上 |
| 競合 | 同じメニューのキッチンカーなし |
| 出店料 | 予想売上の10%以下 |
| アクセス | 車両の出入りが容易 |
| リピート | 定期出店可能 |
5. 天候リスクの管理
雨天や猛暑・厳寒時は売上が激減します。
対策:
- 屋内イベントを優先的に確保
- 天候に左右されにくい食材でメニュー構成
- 季節対応(夏:冷たいメニュー、冬:温かいメニュー)
関連ガイド
- 原価管理ツール比較
- たこ焼き屋の原価計算 — 屋台・キッチンカーと相性の良いたこ焼きビジネスの原価管理
まとめ:キッチンカー原価計算チェックリスト
原価計算の公式
純利益 = 売上
− 原材料費(25〜35%)
− 包装資材費(3〜5%)
− 出店料(5〜15%)
− 車両維持費(5〜10%)
− 人件費(該当する場合)
− 減価償却(必ず含める!)
重要ポイント
- 家賃の代わりに出店料+車両費が発生
- 減価償却を必ず計算に入れる—いずれ車両更新が必要
- 原価率30%以下を目標—売上変動リスクへの備え
- メニューをシンプルにして在庫管理を効率化
- 損益分岐点を把握—1日の最低目標売上を明確に
店舗型飲食店との違いまとめ
| 項目 | 店舗型 | キッチンカー |
|---|---|---|
| 家賃 | あり(固定) | なし |
| 出店料 | なし | あり(変動) |
| 車両費 | なし | あり(固定) |
| 売上安定性 | 比較的安定 | 変動大(天候影響) |
| 推奨原価率 | 30〜35% | 25〜30% |
| 平均純利益率 | 3〜5% | 6〜10% |
今すぐやること
- 月間の出店料と車両維持費を合計する
- 車両の減価償却費を月額で計算する
- 損益分岐売上を計算する(固定費 ÷(1 − 変動費率))
- 1日の最低目標売上を設定する
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