「売上は悪くないのに、なぜか手元に残らない」
この状態が続いているなら、まず見るべき数字はFLコストです。
早見表:業態別FL比率の目安
| 業態 | F(食材費率) | L(人件費率) | FL比率目安 |
|---|---|---|---|
| カフェ | 25〜30% | 25〜30% | 50〜55% |
| ラーメン店 | 30〜35% | 20〜25% | 50〜55% |
| パン屋 | 25〜30% | 25〜30% | 50〜55% |
| 居酒屋 | 28〜35% | 25〜30% | 55〜60% |
| 焼肉店 | 35〜40% | 20〜25% | 55〜60% |
| 定食屋 | 30〜35% | 25〜30% | 55〜63% |
| 寿司屋 | 40〜48% | 20〜25% | 60〜65% |
| 高級レストラン | 30〜38% | 28〜35% | 60〜68% |
自分の業態の目安より5pt以上高ければ、すぐ見直しが必要です。
FLコストとは
FLコストは、飲食店の支出で最も大きな2つ——食材費(Food)と人件費(Labor)——を合わせた金額です。
FL比率(%)=(食材費 + 人件費)÷ 売上高 × 100
英語では**プライムコスト(Prime Cost)**と呼ばれます。中身は同じです。
なぜこの2つだけ合わせて見るかというと、飲食店のコストの約6割がこの2項目に集中するから。家賃は固定で動かせない。光熱費も限界がある。利益を左右するのは、結局FとLなんですよね。
計算例:FL比率60%と65%で利益はこれだけ変わる
月商200万円の居酒屋で比較します。
FL比率60%の場合
| 項目 | 金額 | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 200万円 | 100% |
| 食材費(F) | 64万円 | 32% |
| 人件費(L) | 56万円 | 28% |
| FLコスト | 120万円 | 60% |
| 家賃 | 20万円 | 10% |
| 光熱費 | 10万円 | 5% |
| その他経費 | 15万円 | 7.5% |
| 営業利益 | 35万円 | 17.5% |
FL比率65%になると
| 項目 | FL 60% | FL 65% | 差 |
|---|---|---|---|
| FLコスト | 120万円 | 130万円 | +10万円 |
| その他経費 | 45万円 | 45万円 | ±0 |
| 営業利益 | 35万円 | 25万円 | -10万円 |
5ポイントの悪化で、月の利益が10万円減る。 年間120万円の差です。
ここから税金や借入返済を引くと、手元に残るのは10万円台かもしれない。FL比率が65%を超え続けると、売上はあるのに生活が苦しい——という状態になります。
2026年、FとLが同時に上がっている
FLコストが厄介なのは、今まさにFもLも同時に上がっていること。
F(食材費)の状況
- 2025年の食品値上げは20,609品目(帝国データバンク、2025-11-28公表)
- 前年比**+64.6%**の品目数
- コメの相対取引価格は27,649円/60kg、前年同月比**+101.8%**(農林水産省、2025-06-17公表)
L(人件費)の状況
- 全国加重平均の最低賃金は1,121円(前年1,055円、+66円)(厚生労働省、2025-09-05公表)
- 飲食店の正規職員の人手不足率は65.3%(帝国データバンク、2025-06-11公表)
- 「時給を上げないと人が来ない」状況が常態化
転嫁できているのか?
- 全業種の価格転嫁率は53.5%(経済産業省、2025-11-28公表)
- 飲食業界は32.3%(帝国データバンク、2026-01-13公表)
コスト増の7割近くを自腹で吸収している計算です。2025年の飲食店倒産は900件(帝国データバンク、2026-01-13公表)。売上が悪いわけじゃない。コストを吸収しきれなくなった店が増えているんですよね。
FとLのバランスは業態で全然違う
先ほどの早見表で気づいたかもしれませんが、FとLは反比例しやすいです。
- 食材費が高い業態(寿司、焼肉)→ オペレーションを効率化してLを抑える
- 食材費が安い業態(カフェ、パン屋)→ 接客や仕込みに人手がかかるのでLが高くなる
だから「FL比率が何%なら大丈夫」と一律には言えません。自分の業態の目安と比較して、「どちらがはみ出しているか」を見るのが正しい使い方です。
FL比率が65%を超えたら:5つの立て直し手順
手順1:FとLに分解する
F率 = 食材費 ÷ 売上 × 100
L率 = 人件費 ÷ 売上 × 100
| ケース | F率 | L率 | FL比率 | 重い方 |
|---|---|---|---|---|
| A店 | 35% | 28% | 63% | 食材費 |
| B店 | 28% | 37% | 65% | 人件費 |
| C店 | 33% | 33% | 66% | 両方 |
同じ65%前後でも原因が違います。分解しないと的外れな対策を打ってしまう。
手順2:F(食材費)が重い場合
- 売上上位5品の原価率を出す — 上位品がFL比率を決めている
- 原価率が高いのに粗利額も低い商品を特定 — ここが改善の最優先
- 盛り付け量のグラム管理を始める — 計量していない店は原価が10〜15%ブレる。売れ筋3品だけでも計ると月2〜3万円の改善が見込める
手順3:L(人件費)が重い場合
- 時間帯別の売上と人件費を出す — 低売上時間帯に人が多くないか
- シフトを30分単位で見直す — 週2〜3時間の削減で月1〜2万円改善。最低賃金1,121円なら30分で約560円
- メニュー数の絞り込みを検討 — 30品→20品に絞って必要人員を1人減らせた事例あり(月15万円改善)
人件費の適正ラインについては、飲食店の人件費が高い? 最初にやるべきことで詳しく整理しています。
手順4:仕込み量を適正化する
曜日別・天気別の来客データがあれば、仕込みを絞れます。廃棄が仕入れの5%から2%に下がれば、月80万円の仕入れなら月2.4万円の改善。
手順5:週次で追いかける
月次だけだと悪化に4週間気づけません。
- 週の食材費 ÷ 週の売上 = F率
- 週の人件費 ÷ 週の売上 = L率
- 前週比で合計3pt以上動いたら原因を確認
10分あればできます。これだけで「手遅れになる前に手が打てる」状態になります。
最低賃金1,121円の影響シミュレーション
最低賃金が1,055円→1,121円(+66円)に上がった影響を、月商250万円の店で計算します。
| 条件 | 改定前 | 改定後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 時給 | 1,055円 | 1,121円 | +66円 |
| アルバイト月間労働時間 | 400h | 400h | ±0 |
| 月間人件費(バイト分) | 42.2万円 | 44.8万円 | +2.6万円 |
| L率 | 28.9% | 29.9% | +1.0pt |
| FL比率への影響 | — | — | +1.0pt |
たった1ポイントでも、月商250万円なら月2.5万円、年30万円の利益減。
これに食材費の上昇が重なると、半年で3〜5ポイントの悪化は簡単に起こります。だからFLコストは月次ではなく週次で見る必要があるんですよね。
今月やること:FL比率を1回出してみる
計算に必要なのは3つだけです。
- 今月の売上高(レジの日報を合計)
- 今月の仕入れ額(仕入れ伝票を合計)
- 今月の人件費(給与+社会保険+自分の生活費)
この3つで計算してみてください。
FL比率 =(仕入れ額 + 人件費)÷ 売上高 × 100
- 55%以下 → 優秀。利益体質ができている
- 55〜60% → 標準。現状維持でOKだが油断禁物
- 60〜65% → 要注意。FとLのどちらが重いか分解して対策を
- 65%超 → 危険信号。今月中にFかLの改善に着手する
完璧な管理は必要ありません。月に1回この数字を出すだけで、「見えている経営」と「見えていない経営」の差が出ます。
運営チェックリスト
- 先月の売上・食材費・人件費を確認した
- FL比率を計算した
- F率とL率に分解して、どちらが重いか特定した
- 重い方の上位3項目の改善候補を書き出した
- 週次チェックの曜日を決めた(月曜朝がおすすめ)
関連ガイド
- FL比率って何? 忙しいのに利益が出ない理由 --- FL比率の基本と改善4手法
- FLコスト超入門:小さな店の60%ライン --- 初心者向けの簡易版
- 飲食店の人件費が高い? 最初にやるべきこと --- L(人件費)側の改善手順
- 飲食店の値上げ告知:客離れしない文例テンプレート --- FL改善の手段としての値上げ
- プライムコストが60%を超えた店の立て直し手順 --- 60%超えの具体的な立て直しステップ
- 飲食店の人件費率から1日の必要売上を逆算する --- 人件費の逆算計算
KitchenCostなら、レシピごとの原価率と粗利額が自動で出ます。FLコストの食材費部分を品目別に把握するのが楽になります。
参考データ(確認日: 2026-03-27)
- 厚生労働省「令和7年度最低賃金(全国加重平均1,121円、前年+66円)」 — 公表 2025-09-05
- 帝国データバンク「食品値上げ動向(2025年・20,609品目、前年比+64.6%)」 — 公表 2025-11-28
- 帝国データバンク「飲食店の倒産動向(2025年・900件)」 — 公表 2026-01-13
- 中小企業庁「価格転嫁フォローアップ調査(転嫁率53.5%・外食32.3%)」 — 公表 2025-11-28
- 農林水産省「米の相対取引価格(2025年5月・27,649円/60kg)」 — 公表 2025-06-17
- 帝国データバンク「人手不足動向調査(飲食店65.3%)」 — 公表 2025-06-11