「ドーナツは粉ものだから儲かる」。
開業セミナーでそう聞いて始めた人が、半年後に油代の請求書を見て驚く。
たしかに、プレーンドーナツ1個の生地原価は18円。売価180円なら原価率21%。飲食業の中でもトップクラスの低さだ。
ところが人気メニューの「チョコナッツドーナツ」に目を向けると、チョコ18円、ナッツ12円、油の吸収10円、包材6円が乗って、**原価64円、原価率24.6%**に跳ね上がる。さらにフルーツやクリームを使ったプレミアム系は原価率30%超え——。
ドーナツの利益は、プレーンの高利益率をデコレーション系が食わない設計にできるかどうかで決まる。
先に結論
- 生地原価は1個18円で安い。 でも油・砂糖・トッピング・包材を足すと38〜90円になる
- 揚げ油のコストは1個8〜15円。 油の吸収量と交換頻度で原価が変わる
- チョコとナッツは「少し多め」が即赤字。 グラムで固定する
- 価格帯は3段階。 プレーンで集客、ミドルで利益、プレミアムで客単価を上げる
ドーナツの原価を3タイプで比較する
ベース:プレーンドーナツ(税抜180円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 生地(小麦粉・卵・砂糖・イースト) | 18円 |
| 揚げ油(吸収分) | 10円 |
| グレーズ(砂糖衣) | 4円 |
| 包材(個包装) | 6円 |
| 合計 | 38円 |
原価率:38 ÷ 180 = 21.1%。ドーナツ店の利益の柱。
ミドル:チョコナッツドーナツ(税抜260円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 生地 | 18円 |
| 揚げ油 | 10円 |
| チョコレート(コーティング) | 18円 |
| ナッツ(アーモンド5g) | 12円 |
| 包材 | 6円 |
| 合計 | 64円 |
原価率:64 ÷ 260 = 24.6%。見た目の華やかさで80円高く売れる。
プレミアム:いちごクリームドーナツ(税抜350円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 生地 | 18円 |
| 揚げ油 | 10円 |
| カスタードクリーム(30g) | 20円 |
| いちご(2粒) | 50円 |
| チョコ(ドリズル) | 8円 |
| 包材 | 8円 |
| 合計 | 114円 |
原価率:114 ÷ 350 = 32.6%。フルーツを使うと一気に高くなる。
3タイプを並べて見ると、プレーン21%→ミドル25%→プレミアム33%と原価率が12ポイント上がる。 全体の平均原価率を25%前後に保つには、プレーンとミドルの販売比率を高くする設計が必要だ。
揚げ油のコスト——「見えない原価」
ドーナツの原価で見落とされがちなのが揚げ油だ。
油の原価計算
ドーナツは揚げるたびに油を吸う。1個あたりの吸油量は8〜15g(生地の10〜15%)。
油1kg = 約300円
1個あたり吸油 = 12g(平均)
吸油原価 = 300円 × 0.012 = 3.6円
さらに鍋の油を定期的に交換する必要がある。
鍋の油量:6L = 6kg × 300円 = 1,800円
交換頻度:2日に1回
2日間の揚げ数:200個(仮)
油交換原価 = 1,800円 ÷ 200個 = 9円/個
吸油分+交換分で1個あたり約12〜13円。
13円 × 100個/日 × 25日 = 32,500円/月
油だけで月3.2万円。年間だと約39万円。「粉もの」のイメージとは裏腹に、油はドーナツ店の大きなコスト要因だ。
油のコストを抑える方法
- 揚げ温度を安定させる。 温度が低いと油の吸収量が増える
- 交換頻度を記録する。 「色が変わったら交換」ではなく日数で管理
- 揚げ数を予測する。 1日の揚げ数が少ない日は油の1個あたりコストが上がる
トッピングのグラム管理
チョコレートとナッツは「ちょっと多め」が原価を壊す。
| トッピング | 標準量 | 原価 | +50%にした場合 | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| チョコ(コーティング) | 15g | 18円 | 22.5gで27円 | +9円 |
| アーモンドスライス | 5g | 12円 | 7.5gで18円 | +6円 |
| ピスタチオ | 3g | 15円 | 4.5gで23円 | +8円 |
| ドライフルーツ | 8g | 16円 | 12gで24円 | +8円 |
全部50%増しにすると1個あたり**+31円**。1日50個のデコ系ドーナツを作るなら:
31円 × 50個 × 25日 = 38,750円/月
月4万円弱。トッピングをグラムで固定するだけで守れる金額だ。
3段階の価格設計
ドーナツ専門店の利益はメニュー構成と販売比率で決まる。
理想的な販売比率
| 価格帯 | 代表メニュー | 原価率 | 販売比率(目標) |
|---|---|---|---|
| ベース(150〜200円) | プレーン、グレーズ、シナモン | 18〜22% | 35〜40% |
| ミドル(230〜280円) | チョコ、メイプル、抹茶 | 22〜28% | 40〜45% |
| プレミアム(300〜400円) | フルーツ、クリーム、季節限定 | 28〜35% | 15〜20% |
ベースとミドルで全体の80%を占めれば、平均原価率は23〜25%に収まる。
プレミアム系は「映え」と「季節感」で集客する役割。原価率は高いが、SNSで拡散されれば広告費ゼロの集客効果がある。
今週やること
- プレーン・ミドル・プレミアムの3段階で原価を計算する
- 揚げ油の交換頻度を記録して、1個あたりの油原価を出す
- チョコ・ナッツのトッピング量をグラムで固定する(量りでチェック)
- 各価格帯の販売比率を1週間記録して、平均原価率を確認する
- 包材コストを1個あたりで計算して原価に加える
ドーナツは「生地が安いから儲かる」は半分正解、半分不正解。油とトッピングのコストを数字で把握して初めて、本当の利益が見えてくる。
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