丼ものは「一杯で完結」する。だからシンプルに見える。
でも、シンプルだからこそ原価のブレが直撃します。
牛丼の肉が5g増えるだけで1杯7円の原価増。1日100杯で月21,000円。親子丼の卵を2個から3個に変えると1杯20円の差。ご飯の盛りが250gのはずが280gになっていたら、月の米代が1万円以上変わる。
丼ものは「具材がご飯の上に乗っているだけ」の構造なので、すべてが数グラム単位で利益に効く。
牛丼チェーンが肉80gをグラム単位で管理しているのは、それが利益管理そのものだからです。
まとめ
- 丼ものの原価は**主たんぱく質が50〜65%**を占める。具材のグラム管理が利益管理そのもの
- ご飯は安いが、盛り量のブレが積もると月1万円以上の差が出る
- タレ・つゆは仕込み単位で原価を出し、1食あたりに割る
- テイクアウト容器(15〜35円)を原価に含めないと原価率が甘くなる
- サイズ展開は追加原価の2倍以上の価格差をつけないと大盛で赤字になる
- セットメニュー(味噌汁・サラダ・卵)で客単価を上げるのが利益改善の最短ルート
丼ものの原価が崩れる5つの原因
1. 主たんぱくの盛り量がブレる
肉・魚の量は、スタッフの感覚に任せると平気で±10g動きます。牛肉で10gは約13円。1日100杯で月39,000円の差。
対策:ポーションスケールで計量する。仕込み時に1食分ずつ小分けしておけば、盛り付け時の計量が不要になる。
2. ご飯の盛りが安定しない
ご飯は「安い」印象があるので軽視されがちですが、並盛250gのはずが280gになっていると、1食あたり5円の原価増。1日100杯で月15,000円。
対策:しゃもじの回数で統一する。「並盛=しゃもじ2杯」と決めれば、毎回計量しなくても安定する。
3. タレ・つゆの使用量が人によって違う
牛丼のつゆを「多め」に入れるスタッフがいると、60mlのはずが80mlに。1食あたり6円の差が月18,000円になる。
対策:レードルのサイズを固定して「すりきり1杯」と定義する。
4. トッピングが無料化している
「ネギ多め」「紅しょうが多め」を無料で対応していると、1食あたり5〜15円の原価増。トッピングは「有料オプション」として価格設計に組み込む。
5. テイクアウト容器を原価に入れていない
丼用の蓋付き容器は1個15〜35円。箸・おしぼり・袋を含めると25〜50円。テイクアウト比率が高い店では、これだけで原価率が1〜2ポイント変わります。
牛丼(並盛)の原価を分解する
例:牛丼並盛(税抜480円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 牛バラ薄切り | 80g | 104円 |
| 玉ねぎ | 40g | 12円 |
| つゆ(醤油・みりん・砂糖・だし) | 60ml | 18円 |
| ご飯 | 250g | 38円 |
| 紅しょうが | 5g | 3円 |
| 合計 | 175円 |
原価率:175 ÷ 480 = 36.5%
※ 牛バラ肉は100gあたり130円で計算(業務用冷凍の一般的な価格帯)。米は5kgあたり2,500円(炊飯後の重量換算)。
牛丼は業態として原価率が高めです。36%台は珍しくない。だから回転率とセットメニューの両方で利益を組み立てる必要があります。
親子丼(並盛)の原価を分解する
例:親子丼並盛(税抜780円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 鶏もも肉 | 90g | 120円 |
| 卵 | 2個 | 40円 |
| 玉ねぎ | 30g | 9円 |
| つゆ(醤油・みりん・だし) | 50ml | 15円 |
| ご飯 | 250g | 38円 |
| 三つ葉 | 1つまみ | 8円 |
| 合計 | 230円 |
原価率:230 ÷ 780 = 29.5%
親子丼は鶏肉と卵が安いので、丼もの専門店の利益の柱になりやすい。
卵の個数で原価がどう変わるか
| 卵の数 | 卵原価 | 総原価 | 原価率(780円) |
|---|---|---|---|
| 1個 | 20円 | 210円 | 26.9% |
| 2個 | 40円 | 230円 | 29.5% |
| 3個 | 60円 | 250円 | 32.1% |
卵1個の差は20円。年間で計算すると:
20円 × 100杯/日 × 25日 × 12ヶ月 = 600,000円/年
卵1個の判断が年間60万円の差を生みます。「卵多め」を無料対応するのはコスト的に厳しい。
海鮮丼の価格設計:並・上・特上で利益を守る
海鮮丼は仕入れ変動が大きいので、ネタ量と種類の段階化が必須です。
ネタ構成と原価の段階設計
| ランク | ネタ量 | 主なネタ | ネタ原価 | 総原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 並 | 80g | マグロ・サーモン・イカ | 280円 | 340円 | 980円 | 34.7% |
| 上 | 110g | 並+エビ・ハマチ | 420円 | 480円 | 1,480円 | 32.4% |
| 特上 | 140g | 上+ウニ・イクラ | 650円 | 720円 | 2,200円 | 32.7% |
ポイントは「量を増やすだけ」ではなく、種類を変えること。
並のネタをそのまま増やすと、「並を2杯頼んだほうが得」になります。特上には並にないウニやイクラを入れることで、値段の差を品質の差として納得してもらえます。
仕入れ変動への対策
海鮮は日によって仕入れ価格が変わります。
- ネタの入れ替えルール — 仕入れ価格が20%以上高騰したネタは、別のネタに差し替える。メニューに「本日のおすすめネタ」と書けばクレームにならない
- 冷凍ネタの活用 — マグロ・サーモン・エビは冷凍で安定調達。解凍ルールを統一すれば品質も安定する
- ネタの種類を固定しない — 「マグロ・サーモン+日替わり2種」のようにすると、仕入れの安いネタを使いやすくなる
サイズ別の価格設計
並盛と大盛の価格差をどう設計するかで、全体の利益率が変わります。
牛丼のサイズ別原価
| サイズ | 肉 | ご飯 | つゆ等 | 合計原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 並盛 | 80g = 104円 | 250g = 38円 | 33円 | 175円 | 480円 | 36.5% |
| 大盛 | 110g = 143円 | 350g = 53円 | 38円 | 234円 | 620円 | 37.7% |
| 特盛 | 150g = 195円 | 350g = 53円 | 42円 | 290円 | 750円 | 38.7% |
大盛にするほど原価率が上がっていることに注目してください。
並盛→大盛で原価は59円増。売価差は140円。差額で利益は81円出ているように見えます。
でも、大盛を選ぶ人が増えると全体の平均原価率が上がる。大盛比率が50%を超えると店全体の原価率が37%を超えてきます。
価格差の設計ルール
差額の目安:追加原価の2倍以上を確保する。
59円の原価増なら、差額は120円以上。上の例では140円の差をつけていますが、ギリギリです。大盛比率が高い店では、差額をもう少し大きくするか、肉の増量を抑えてご飯だけ大盛にする設計も検討してください。
セットメニューで客単価を上げる
丼もの単品の原価率は30〜37%。これだけで十分な利益を出すには回転率が必要です。回転率を上げられない立地なら、セットで客単価を上げるのが現実的です。
セットメニューの原価と利益
| セット内容 | 追加原価 | セット追加価格 | 粗利 | 追加分の原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 味噌汁 | 12円 | +100円 | 88円 | 12% |
| サラダ | 25円 | +120円 | 95円 | 21% |
| 卵 | 15円 | +60円 | 45円 | 25% |
| 味噌汁+サラダ | 37円 | +180円 | 143円 | 21% |
| 漬物3種 | 18円 | +80円 | 62円 | 23% |
味噌汁は原価12円で100円もらえる。原価率12%。丼もの本体の35%に比べれば圧倒的に利益率が高い。
セット率を上げる方法
- メニュー表でセットを目立たせる:単品の横にセット価格を並べると「あと100円で味噌汁つく」が伝わる
- 券売機ならセットボタンを隣に配置する:単品ボタンだけでは選ばれにくい
- 「おすすめ」のPOP:「味噌汁セット+100円」の一言POPでセット率が10%上がった店もある
セット率30%で平均セット追加額130円なら:
100杯/日 × 30% × 130円 = 3,900円/日
月間 = 3,900 × 25日 = 97,500円
追加原価 = 月約18,750円
追加粗利 = 約78,750円/月 = 年間約94万円
テイクアウトの原価計算
テイクアウト比率が高い丼もの専門店では、容器代を無視すると原価率がずれます。
テイクアウト用の追加原価
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 丼用容器(蓋付き) | 20円 |
| 箸 | 3円 |
| おしぼり | 2円 |
| ビニール袋 | 5円 |
| 合計 | 30円 |
テイクアウト比率40%・1日100杯の場合:
30円 × 40杯/日 × 25日 = 30,000円/月
月3万円。年間36万円。これを「見えないコスト」にしておくと、原価率の計算がずっと甘くなります。
テイクアウトの価格に容器代を上乗せするか、イートインと同額にして容器代を吸収するか——どちらにしても原価計算には必ず含める。
ポーション管理の実践
丼ものは「標準ポーション」を決めることが全てです。
標準ポーション表(例)
| 項目 | 牛丼 | 親子丼 | 海鮮丼(並) | カツ丼 |
|---|---|---|---|---|
| 主たんぱく | 80g | 90g | 80g | 100g |
| ご飯 | 250g | 250g | 250g | 250g |
| タレ/つゆ | 60ml | 50ml | 30ml | 60ml |
| 卵 | — | 2個 | — | 1個 |
| 容器(TO) | 20円 | 20円 | 25円 | 25円 |
このポーション表をキッチンに貼っておくだけで、盛り付けのブレが減ります。
ポーション管理の3ステップ
- 仕込み時に小分け — 肉・魚は1食分ずつ計量して保存容器に分ける
- ご飯はしゃもじの回数で統一 — 「並盛=しゃもじ2杯」
- 新人は最初の3日間、全杯計量 — 感覚を体に覚えさせる
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日の平均杯数:100杯
- 平均客単価:650円(セット含む)
月間売上 = 100杯 × 650円 × 25日 = 1,625,000円
原価率33%の場合(管理が行き届いている):
原価 = 536,250円
粗利 = 1,088,750円
原価率38%の場合(ポーションブレ・大盛多い・容器未計上):
原価 = 617,500円
粗利 = 1,007,500円
差額 = 81,250円/月 = 年間975,000円
原価率5ポイントの差が、年間約97万円の利益差になります。
今すぐやること
- 主力丼の主たんぱく使用量をグラムで計測して、標準ポーションを決める
- ご飯の盛り量を3杯分計量して、しゃもじの回数に換算する
- つゆ・タレの仕込み原価を寸胴単位で計算し、1食あたりに割る
- テイクアウト容器・箸・袋の1セット原価を計算して、原価に含める
- 並盛→大盛の価格差が追加原価の2倍以上あるか確認する
- セットメニューの構成と価格を見直し、メニュー表で目立たせる
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