「品数を増やせば売上が上がる」——惣菜店をやっている人は、みんなそう考える。
実際、ショーケースに20品並んでいると見栄えがいい。お客さんも「いろいろ選べる」と喜ぶ。
でも月末に数字を見ると、利益が出ているのは上位8品だけだったりする。残りの12品は、仕込みの手間と売れ残りの廃棄で利益を食っている。
惣菜は原価率が低く見える商品が多い。きんぴら80gの原価は40円。売価200円なら原価率20%。数字だけ見れば優秀だ。
でも仕込み30食分のうち5食が売れ残ったら? 実質原価率は24%に跳ね上がる。 しかも廃棄した5食分の食材費は、丸ごと利益から消えている。
惣菜・デリ専門店の原価管理は、品数を絞る勇気と廃棄を見える化する仕組みがすべてだ。
先に結論
- 20品並べても利益が出るのは8〜10品。 売上上位で全体の70〜80%を占める
- 廃棄率15%で原価率は5〜8ポイント悪化する。 目標40%の惣菜が実質47%に化ける
- 盛り付け量のブレは月1.5〜2.5万円の利益差。 スプーン・ディッシャーで標準化する
- 包材は1食45〜63円。 入れないと利益を過大に見積もる
- 仕込み量は前日の販売数ベースで決める。 「多めに作っておく」が廃棄の元凶
惣菜の原価構造
惣菜は「食材原価+人件費+廃棄ロス+包材」の4層で考える。食材原価だけ見ていると、利益を見誤る。
実質原価 = 食材原価 ÷(1 − 廃棄率)+ 包材原価
目標売価 = 実質原価 ÷ 目標原価率
廃棄率を加味した原価の変化
| 食材原価 | 廃棄率 | 実質原価 | 売価200円での実質原価率 |
|---|---|---|---|
| 80円 | 0% | 80円 | 40.0% |
| 80円 | 10% | 89円 | 44.4% |
| 80円 | 15% | 94円 | 47.1% |
| 80円 | 20% | 100円 | 50.0% |
| 80円 | 30% | 114円 | 57.1% |
廃棄率15%で原価率が7ポイント上がる。 30%なら17ポイント。惣菜の「見かけの原価率」と「実質原価率」は別物だ。
惣菜5品盛り合わせの原価を分解する
例:5品盛り合わせ(テイクアウト・税抜980円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| メイン惣菜(鶏の唐揚げ) | 100g | 120円 |
| 副菜A(きんぴらごぼう) | 80g | 40円 |
| 副菜B(ポテトサラダ) | 100g | 55円 |
| 副菜C(ほうれん草の胡麻和え) | 60g | 35円 |
| 副菜D(ひじきの煮物) | 60g | 30円 |
| 包材(容器+蓋+箸+シール+袋) | — | 55円 |
| 合計 | 335円 |
原価率:335 ÷ 980 = 34.2%
ここに廃棄率を加味すると:
廃棄率10%の場合:実質原価 = 280 ÷ 0.90 + 55 = 366円(37.4%)
廃棄率15%の場合:実質原価 = 280 ÷ 0.85 + 55 = 384円(39.2%)
廃棄率20%の場合:実質原価 = 280 ÷ 0.80 + 55 = 405円(41.3%)
表面上は34%でも、廃棄を含めると39〜41%。「うちの原価率は35%です」と言っている店の多くは、廃棄を計算に入れていない。
品数を絞る:20品から12品への勇気
惣菜店の売上パレートの法則
ほとんどの惣菜店で、上位10品が売上の70〜80%を占める。残りの10品は、見栄えのために並べている「利益を食うお荷物」であることが多い。
| 順位 | 売上構成比 | 廃棄率 | 利益への貢献 |
|---|---|---|---|
| 1〜5位 | 55% | 5〜8% | 高い |
| 6〜10位 | 20% | 10〜15% | まあまあ |
| 11〜15位 | 15% | 15〜25% | ほぼゼロ |
| 16〜20位 | 10% | 25〜40% | 赤字 |
品数を絞るとどうなるか
20品→12品に減らすと:
- 廃棄が減る:全体の廃棄率が15%→8%に下がるケースが多い
- 仕込み時間が減る:朝の仕込みが1.5〜2時間短縮。人件費に直結
- 食材のまとめ買いができる:少品種大量仕入れで仕入れ単価が下がる
- 品質が安定する:スタッフが覚える品数が減り、仕上がりのバラつきが少なくなる
「品数が減るとお客さんが離れるのでは?」と心配するかもしれない。でも12品でも十分に選べるし、鮮度の良い惣菜が12品並んでいるほうが、売れ残りが目立つ20品より魅力的だ。
絞り方の基準
- 週あたりの販売数が20食以下の品目は候補
- 廃棄率が20%を超えている品目は即入れ替え
- 残す品目は「メイン3〜4品+副菜8〜10品」のバランス
盛り付け量の標準化
惣菜は目分量で盛ると、スタッフごとに20〜30gのバラつきが出る。
バラつきのコスト
きんぴら80gの設計が100gになった場合:
原価差 = 40円 × (100/80) − 40円 = 10円/食
1日50食 × 26日 = 月13,000円の利益減
これが5品目で起きていたら、月に5〜6万円の利益が消える。
標準化の方法
| 惣菜 | 基準量 | 計量ツール |
|---|---|---|
| きんぴら | 80g | 計量スプーン すりきり2杯 |
| ポテトサラダ | 100g | #16ディッシャー 1杯 |
| ひじき煮 | 60g | 小トング ひとつかみ+レードル半量 |
| 唐揚げ | 100g(3個) | 個数管理(1個33〜35g) |
| 煮物 | 80g | 盛り付け皿に線を引く |
ポイント:忙しい時間帯ほど盛りが増える。 昼のピーク時に「スタッフが急いで盛る→多めになる→原価が膨らむ」パターンが多い。事前に小分け容器に計量しておくと、忙しくても量がブレない。
包材コストを見落とさない
テイクアウト主体の惣菜店で、包材を原価に入れていない店は意外に多い。
包材の原価内訳(1食あたり)
| 包材 | 原価 |
|---|---|
| 弁当容器(3〜5仕切り) | 25〜35円 |
| 蓋 | 10〜15円 |
| 割り箸 | 3円 |
| シール(賞味期限表示) | 2円 |
| 手提げ袋 | 5〜8円 |
| おしぼり | 3〜5円 |
| 合計 | 48〜68円 |
1日80食テイクアウトなら:
80食 × 55円(平均)× 26日 = 114,400円/月
年間 = 1,372,800円
年間137万円。 これを原価に入れないのは、利益を137万円多く見積もっているのと同じだ。
包材コストを下げる方法
- まとめ買い:1,000個単位で10〜15%安くなる
- 容器サイズの統一:3種類に絞ると在庫管理が楽で、仕入れも安くなる
- 袋のサイズを見直す:大きすぎる袋を使っていないか。1サイズ下げるだけで1枚2〜3円の差
- 仕入れ先を比較:包材専門の卸は飲食店向けに安い。年1回は相見積もりを取る
仕込み量の決め方
惣菜の廃棄を減らす最大のレバーは「仕込み量」だ。
基本ルール
今日の仕込み量 = 前日の販売数 × 曜日係数
曜日係数の目安
| 曜日 | 係数 | 理由 |
|---|---|---|
| 月曜 | 0.8 | 週明けは売上が落ちる |
| 火〜木 | 1.0 | 基準 |
| 金曜 | 1.1 | 週末前の買い物需要 |
| 土曜 | 1.3 | 家族向けの需要増 |
| 日曜 | 0.9 | 店舗の立地による |
天候も加味する。雨の日は来店数が15〜25%減るので、仕込み量を0.8倍に。これを2週間続けるだけで、自店の傾向が数字で見えてくる。
「足りない」を恐れない
「売り切れるとお客さんに申し訳ない」と多めに作る気持ちはわかる。でも10食分多く作って5食廃棄するなら、その5食分の食材費は丸ごと利益から消えている。
売り切れは「人気」の証拠。 閉店1時間前にショーケースが空に近づいているなら、仕込み量は適正だ。
時間帯別の値引きルール
売れ残りを廃棄するくらいなら値引きで売ったほうがいい——これは正しい。ただし値引きのルールを決めておかないと、スタッフの判断でバラつく。
値引きルールの例
| タイミング | 値引き幅 | 条件 |
|---|---|---|
| 閉店2時間前 | 10% | 在庫が仕込み量の40%以上残っている場合 |
| 閉店1時間前 | 20〜30% | 在庫が30%以上残っている場合 |
| 閉店30分前 | 50% | 残りすべて |
これをPOPで事前に告知しない。 「待てば安くなる」と思われると、ピーク時の売上が落ちる。値引きは在庫処分であって販促ではない。
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:26日
- 1日の販売数:80食
- 平均単価:550円
月間売上 = 80食 × 550円 × 26日 = 1,144,000円
【廃棄率8%(品数12品・仕込み管理あり)】
実質原価率 = 38%
原価 = 434,720円
粗利 = 709,280円
【廃棄率20%(品数20品・仕込み管理なし)】
実質原価率 = 48%
原価 = 549,120円
粗利 = 594,880円
差額 = 114,400円/月 = 年間1,372,800円
廃棄率12ポイントの差が、年間137万円の利益差になる。品数を絞り、仕込み量を管理するだけで取り戻せる金額だ。
今週やること
- 過去1週間の品目別販売数を集計し、売上上位10品と下位10品を分ける
- 下位10品の廃棄率を計算する(仕込み数−販売数)÷ 仕込み数
- 廃棄率20%以上の品目を入れ替え候補としてマークする
- 主力5品の盛り付け量をグラムで固定し、計量ツールを決める
- 包材(容器・蓋・箸・袋)の1食あたり原価を計算して原価表に加える
- 明日から「前日販売数 × 曜日係数」で仕込み量を決めるルールを試す
関連ガイド
出典
品目ごとの原価と包材をまとめて管理できます。廃棄率を入力すれば実質原価率が自動で出る。仕入れ値が変わっても全品の原価が一括更新。KitchenCost を使ってみてください。