「売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」
朝4時に起きて生地を仕込む。昼過ぎまで焼き続けて、夕方には片付けと翌日の仕込み。閉店後に売上を確認して、「今日もこんなもんか」とため息。
パン屋やケーキ屋を営んでいる人なら、一度は経験があるんじゃないだろうか。
原因の多くは、原価計算の仕方にある。
先に結論
- 材料費だけで「原価率20%だから安心」は危険。 製造原価で見ると40%を超えている店は多い
- クリーム10gの誤差も、1日100個で1kgのロスになる
- ある洋菓子店では年間100万円分の廃棄が発覚した
- 値下げで客を増やすより、適正価格で信頼を守るほうが長く続く
「材料費だけ」で原価を考えていませんか?
パン1個の原価を聞かれて、小麦粉・バター・卵・砂糖の材料費だけで答える人は多い。
でも実際には、こんなコストがかかっている。
- 材料費(小麦粉、バター、卵、砂糖、イースト…)
- 包装費(袋、シール、箱、リボン…)
- 光熱費(オーブン、冷蔵庫、空調…)
- 人件費(仕込み、成形、焼成、仕上げ…)
- ロス(焼き損じ、売れ残り、試作…)
これを全部ひっくるめたものが「製造原価」だ。材料費だけ見て「原価率20%だから大丈夫」と思っていても、製造原価で見ると40%を超えていた——そんなケースはざらにある。
業態別・原価率の”本当の目安”
教科書の数字と、現場のコンサルタントが使っている数字は少し違う。
| 業態 | 材料費の原価率目安 | 製造原価率の目安 |
|---|---|---|
| 洋菓子専門店(ケーキ屋) | 25%以下 | 40〜50% |
| 和菓子専門店 | 18%未満 | 35〜45% |
| パン屋 | 約30% | 45〜55% |
| 和洋併売店 | 23%以下 | 40〜50% |
注目すべきは、製造原価率を40%近くに抑えなければ利益が出にくいという点だ。利益を出しているケーキ屋は、この数字をしっかり意識している。
利益を食うのは「見えないロス」
パン屋・ケーキ屋には特有の問題がある。ロスが利益を静かに食い潰すことだ。
オーバーポーション
レシピ通りに量っているつもりでも、クリームやフルーツの盛り付けが毎回微妙に多い。1個あたり10gの誤差でも、1日100個作れば1kgのロスになる。
作りすぎ
「売り切れたらもったいない」と多めに焼く。その気持ちはわかる。でも売れ残りが毎日3〜5%出ていれば、月末には大きな金額になっている。
賞味期限切れの材料
冷蔵庫の奥で眠っている生クリーム、フルーツ、ナッツ。「あとで使おう」と思って忘れたまま期限切れ——これも立派な原価ロスだ。
ある洋菓子店では、ロスを記録し始めたら月8万円以上の廃棄が判明した。 年間で約100万円。新しいオーブンが買える金額だ。
「値段を上げたら売れなくなる」は本当か?
原価が上がっているのに値段を据え置いている店は多い。
でも考えてみてほしい。バターの仕入れ値はこの2年で20%以上上がっている。小麦粉も同じだ。材料費が上がったのに売値を変えなければ、利益率は勝手に下がる。
菓子業界で原価率を「最も左右するのは値づけ(価格設定)」だと専門家は言う。
原価を下げるために材料の質を落とせば、味が変わる。味が変われば客が離れる。値段を適正に上げるほうが、お客様との信頼関係を守れることのほうが多い。
「材料にこだわっています」と伝えたうえでの価格改定は、黙って品質を下げるよりずっと誠実だ。
今週やること
- 売れ筋5品の「製造原価」を出す。 材料費に加えて、包装費・光熱費・人件費(製造にかかった時間×時給)を足す。KitchenCostのようなアプリを使えば、レシピの分量と仕入れ単価から自動計算できるので、価格が変わるたびに手計算し直す手間がなくなる
- ロスを1週間だけ記録する。 廃棄した商品と食材を、ノートでもスマホのメモでもいいから書き出す。「何を」「どれだけ」捨てたかを知ることが第一歩
- 製造原価率50%超の商品を洗い出す。 該当する商品があれば値上げを検討する。一律ではなく、原価率の高い商品だけを調整するのがコツ。お客様への説明文も事前に用意しておくとハードルが下がる
パン屋やケーキ屋は、「美味しいものを作りたい」という情熱で始める人が多い。その情熱を長く続けるために、数字と向き合う時間を少しだけ作ってみてほしい。
利益が見えれば、もっと自由に”作りたいもの”に挑戦できるようになるはずだから。
パン屋とケーキ屋の製造原価をまとめて管理するなら。KitchenCost を使ってみてください。