要点まとめ
- パンの原価は材料費だけでなく、人件費・諸経費・廃棄ロスを含めると2〜3倍になる
- メロンパン・ラスク・焼き菓子が利益のエンジン。材料費率10%以下で高利益率
- クロワッサンはバター価格次第。2026年はバター上昇が続くため定期的な原価見直しが必須
- 食パンは集客商品と割り切り、利益は菓子パンやドリンクで確保する
食パン1斤の材料費は約100〜130円。販売価格が300円なら原価率は33〜43%——一見、利益が出ているように見えます。
しかし、早朝3時から仕込みを始めるパン職人の人件費、月10万円を超えるオーブンの光熱費、毎日出る売れ残りの廃棄ロス。これらを加えると、その食パン1斤の本当のコストは材料費の2〜3倍になります。
パン屋の原価計算が飲食店と違う理由
レストランは「注文→調理→提供」。パン屋は**「仕込み→焼成→陳列→売れるのを待つ」**——この違いが原価計算を複雑にします。
| 項目 | レストラン | パン屋・ベーカリー |
|---|---|---|
| 生産単位 | 1皿ずつ | バッチ生産(1回で12〜200個) |
| 労働時間 | 営業時間中心 | 早朝仕込み(3〜6時) |
| 在庫リスク | 低い(注文後に調理) | 高い(売れる前に生産) |
| 廃棄パターン | 食べ残し | 売れ残り+製造ロス |
| 設備投資 | 共用キッチン | 専用設備(オーブン・発酵機・ミキサー) |
| 売上モデル | 注文→提供→回収 | 生産→陳列→販売を待つ |
最大の違いは**「売れる前に作る」**ということ。正確な原価計算なしに生産すれば、廃棄ロスで利益が消えます。
パン屋の原価計算公式
すべてのパン商品には4つのコスト層があります:
商品の総原価 = 材料費 + 人件費 + 諸経費配賦 + 廃棄ロス分
そして:
販売価格 = 商品の総原価 ÷ (1 − 目標利益率)
各層を順番に見ていきましょう。
第1層:材料費
パンの材料費は飲食業の中でも比較的低いのが特徴です。しかし2025〜2026年は原材料価格の変動が激しく、特にバターと卵の価格上昇がベーカリー経営を圧迫しています。
2026年 業務用原材料の仕入れ価格(日本国内)
| 原材料 | 業務用価格(税別目安) | 単位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 強力粉(外国産) | 2,500〜3,200円 | 25kg | 2026年1月から値下げ傾向 |
| 強力粉(国産) | 3,500〜5,000円 | 25kg | 北海道産「春よ恋」等はプレミアム |
| 薄力粉 | 2,200〜2,800円 | 25kg | 菓子パン・ケーキ用 |
| 無塩バター | 1,800〜2,200円 | 450g | 2025年から値上げ続く |
| バター(業務用ポンド) | 1,600〜2,000円 | 450g | よつ葉・雪印 |
| グラニュー糖 | 3,000〜3,500円 | 20kg | 比較的安定 |
| 卵(Mサイズ) | 250〜350円 | 10個(1パック) | 鳥インフル影響で再高騰中 |
| 生クリーム(乳脂肪35%) | 350〜500円 | 200ml | 洋菓子用 |
| インスタントイースト | 800〜1,200円 | 500g | サフ等の業務用 |
| 塩 | 1,000〜1,500円 | 25kg | コスト影響は軽微 |
出典: 農林水産省 小麦粉売渡価格(2025年10月期)、日清製粉価格改定(2026年1月)、JA全農たまご相場情報、帝国データバンク食品価格改定調査(2025年12月)。
2026年の原材料費トレンド
| 原材料 | 2025年後半の動向 | 2026年見通し |
|---|---|---|
| 小麦粉 | 政府売渡価格4.0%引下げ | 下落傾向。国際相場の下落と円高の影響 |
| バター | 明治・雪印が3〜11%値上げ | 上昇継続。乳製品コスト高止まり |
| 卵 | 鳥インフルエンザで再高騰。Lサイズ1パック313円(過去最高) | 高止まり。飼料価格も2019年比1.5倍 |
| 砂糖 | 比較的安定 | 横ばい |
| 生クリーム | 乳価上昇に連動 | やや上昇 |
注意: 2026年はバターと卵のコスト上昇が最大のリスク要因です。特にクロワッサンやブリオッシュなどバターを多用する商品は、原価率の定期的な見直しが不可欠です。
商品別:材料費の計算例
食パン(1斤・角食)
| 材料 | 使用量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 強力粉 | 250g | 約12円/100g | 30円 |
| 無塩バター | 15g | 約4.4円/g | 66円 |
| 砂糖 | 15g | 約0.16円/g | 2円 |
| 塩 | 5g | 約0.06円/g | 0円 |
| スキムミルク | 8g | 約2円/g | 16円 |
| インスタントイースト | 3g | 約2円/g | 6円 |
| 水 | 175ml | — | 0円 |
| 材料費合計 | 約120円 | ||
| 販売価格 | 280〜350円 | ||
| 材料費率 | 34〜43% |
クロワッサン(1バッチ=12個)
| 材料 | 使用量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 強力粉 | 250g | 約12円/100g | 30円 |
| 薄力粉 | 50g | 約10円/100g | 5円 |
| 無塩バター(生地用) | 30g | 約4.4円/g | 132円 |
| 無塩バター(折り込み用) | 150g | 約4.4円/g | 660円 |
| 砂糖 | 30g | 約0.16円/g | 5円 |
| 塩 | 5g | 約0.06円/g | 0円 |
| 卵 | 1個 | 約30円 | 30円 |
| 牛乳 | 100ml | 約0.2円/ml | 20円 |
| インスタントイースト | 4g | 約2円/g | 8円 |
| 材料費合計(12個) | 約890円 | ||
| 1個あたり | 約74円 | ||
| 販売価格 | 220〜350円 | ||
| 材料費率 | 21〜34% |
クロワッサンは**バターが原価の89%**を占めます。バター価格の変動がダイレクトに利益を左右する商品です。
メロンパン(1バッチ=12個)
| 材料 | 使用量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 強力粉(パン生地) | 200g | 約12円/100g | 24円 |
| 薄力粉(クッキー生地) | 100g | 約10円/100g | 10円 |
| 無塩バター | 40g | 約4.4円/g | 176円 |
| 砂糖 | 80g | 約0.16円/g | 13円 |
| 卵 | 1個 | 約30円 | 30円 |
| インスタントイースト | 4g | 約2円/g | 8円 |
| その他(バニラ・塩等) | — | — | 5円 |
| 材料費合計(12個) | 約266円 | ||
| 1個あたり | 約22円 | ||
| 販売価格 | 160〜250円 | ||
| 材料費率 | 9〜14% |
メロンパンは原価率が非常に低い優良商品。ボリューム感があり人気も高いため、パン屋の利益を支える存在です。
ショートケーキ(4号・12cm)
| 材料 | 使用量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 薄力粉 | 60g | 約10円/100g | 6円 |
| 卵 | 3個 | 約30円 | 90円 |
| グラニュー糖 | 60g | 約0.16円/g | 10円 |
| 無塩バター | 15g | 約4.4円/g | 66円 |
| 生クリーム | 300ml | 約2円/ml | 600円 |
| いちご | 8〜10個 | 約50円/個 | 400〜500円 |
| 材料費合計 | 約1,172〜1,272円 | ||
| 販売価格 | 2,500〜3,500円 | ||
| 材料費率 | 33〜51% |
ショートケーキはいちごと生クリームで材料費の80%以上。季節によるいちごの価格変動が大きく、冬(旬)は安く、夏は2〜3倍に跳ね上がります。
第2層:人件費
パン屋の人件費は早朝勤務の割増を含むため、一般的な飲食店より高くなりがちです。
パン屋の人件費の目安(2026年)
| 役職 | 時給目安 | 備考 |
|---|---|---|
| パン職人(経験者) | 1,200〜1,800円 | 都市部はさらに高い |
| パン職人(見習い) | 1,100〜1,400円 | |
| パティシエ(ケーキ担当) | 1,300〜2,000円 | 専門技術職 |
| 販売スタッフ | 1,100〜1,300円 | 最低賃金+α |
| 早朝手当(3〜6時) | +200〜500円/時 | 深夜割増(25%増)適用 |
業界目安: パン屋の人件費は売上の25〜35%(日本フードサービス協会、2025年外食産業経営動向調査参考)。
商品別の人件費配分
人件費を商品に配分するには、1個あたりの加工時間を把握する必要があります。
| 商品 | 実作業時間(1バッチ) | バッチサイズ | 1個あたり作業時間 | 人件費/個(@1,500円/時) |
|---|---|---|---|---|
| 食パン | 20分作業 + 発酵・焼成待ち | 3斤 | 約7分 | 約175円 |
| クロワッサン | 40分作業 + 冷蔵・焼成待ち | 12個 | 約3.3分 | 約83円 |
| メロンパン | 25分作業 + 焼成待ち | 12個 | 約2分 | 約50円 |
| あんぱん | 20分作業 + 焼成待ち | 12個 | 約1.7分 | 約42円 |
| ショートケーキ(4号) | 50分(スポンジ+デコレーション) | 1台 | 50分 | 約1,250円 |
| カレーパン | 30分作業 + 揚げ | 12個 | 約2.5分 | 約63円 |
注意: 発酵待ち・焼成待ちなどの「受動時間」は直接人件費に含めません。ただし、その間にオーブンや発酵機を占有するため、諸経費(設備費)として反映します。
第3層:諸経費の配賦
材料費でも人件費でもないすべてのコスト——家賃、設備費、光熱費、包装資材、保険、POSシステムなど。
パン屋の諸経費の内訳
| 費目 | 売上比率の目安 | 月額(小規模店の例) |
|---|---|---|
| 家賃 | 8〜15% | 15〜40万円 |
| 設備リース・減価償却 | 3〜7% | 5〜15万円 |
| 光熱費(ガス+電気) | 4〜7% | 8〜15万円 |
| 包装資材 | 2〜4% | 3〜8万円 |
| 保険 | 1〜2% | 1〜3万円 |
| POS・システム | 0.5〜1% | 1〜2万円 |
| 広告宣伝 | 1〜3% | 2〜5万円 |
| その他(消耗品等) | 1〜2% | 2〜4万円 |
| 諸経費合計 | 20〜40% | 37〜92万円 |
諸経費を商品に配分する簡易方法
商品1個あたりの諸経費 = 販売価格 × 諸経費率
諸経費率 = 月間諸経費合計 ÷ 月間売上高
例: 月間諸経費が50万円、月間売上が200万円の場合:
- 諸経費率 = 25%
- 250円のクロワッサンが負担する諸経費 = 63円
第4層:廃棄ロス
パン屋が最も注意すべきコスト。製造ロスと売れ残りロスの2種類があります。
廃棄ロスの実態
| ロスの種類 | 業界平均 | 優良店 | 要改善 |
|---|---|---|---|
| 製造ロス(生地の端材、失敗品) | 3〜5% | 2〜3% | 6%以上 |
| 売れ残りロス(閉店時の在庫) | 5〜10% | 3〜5% | 10%以上 |
| 合計廃棄率 | 8〜15% | 5〜8% | 16%以上 |
廃棄ロスを原価に反映する
ロス込み原価 = 基本原価 ÷ (1 − 廃棄率)
例: クロワッサンの基本原価(材料+人件費+諸経費)が220円、廃棄率10%の場合:
220円 ÷ (1 − 0.10) = 220円 ÷ 0.90 = 約244円
この差額24円が、売れなかったクロワッサンのコストを売れたクロワッサンで回収するための上乗せです。
全コスト層を合わせた商品別原価計算
クロワッサン(1個あたり)
| コスト層 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 74円 |
| 人件費(3.3分@1,500円/時) | 83円 |
| 諸経費(25%×280円) | 70円 |
| 廃棄ロス(10%分) | 25円 |
| 総原価 | 252円 |
| 販売価格 | 280〜350円 |
| 利益 | 28〜98円 |
| 利益率 | 10〜28% |
メロンパン(1個あたり)
| コスト層 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 22円 |
| 人件費(2分@1,500円/時) | 50円 |
| 諸経費(25%×200円) | 50円 |
| 廃棄ロス(8%分) | 10円 |
| 総原価 | 132円 |
| 販売価格 | 180〜250円 |
| 利益 | 48〜118円 |
| 利益率 | 27〜47% |
食パン(1斤あたり)
| コスト層 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 120円 |
| 人件費(7分@1,500円/時) | 175円 |
| 諸経費(25%×320円) | 80円 |
| 廃棄ロス(5%分) | 20円 |
| 総原価 | 395円 |
| 販売価格 | 300〜500円 |
| 利益 | -95〜105円 |
| 利益率 | -32〜21% |
注目: 食パンは300円台で売ると赤字になる可能性がある商品です。集客商品として位置づけ、他の高利益商品で補うか、高級食パンとして500円以上で販売する戦略が必要です。
ショートケーキ(4号1台)
| コスト層 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 1,220円 |
| 人件費(50分@1,500円/時) | 1,250円 |
| 諸経費(25%×3,000円) | 750円 |
| 廃棄ロス(3%分) | 97円 |
| 総原価 | 3,317円 |
| 販売価格 | 3,000〜4,000円 |
| 利益 | -317〜683円 |
| 利益率 | -11〜17% |
ケーキは**人件費が原価の38%**を占めます。3,000円では赤字。4,000円で販売しても利益率17%。デコレーションの工数に見合った価格設定が不可欠です。
商品カテゴリー別の目標原価率
| カテゴリー | 目標材料費率 | 目標粗利率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 食パン | 30〜40% | 40〜55% | 集客商品。毎日の来店動機 |
| 菓子パン(メロンパン・あんぱん) | 10〜20% | 60〜75% | 利益の柱。低原価・高人気 |
| 調理パン(カレーパン・サンドイッチ) | 20〜30% | 50〜65% | 具材コストが高め |
| クロワッサン・デニッシュ | 20〜35% | 50〜65% | バターコストに注意 |
| ケーキ・洋菓子 | 25〜40% | 50〜65% | 人件費配分が重要 |
| ラスク・焼き菓子 | 5〜15% | 70〜85% | 最高利益率。端材再活用も |
| ドリンク(コーヒー) | 10〜20% | 70〜80% | セット販売で客単価UP |
パン屋全体の目標: 材料費率20〜30%、粗利率60〜70%。
パン屋のコストを下げる7つの方法
1. 小麦粉は25kgの業務用を基本にする
小麦粉は最大のコスト削減ポイント。1kgあたり100〜120円(業務用25kg袋)vs 200〜300円(スーパーの1kg袋)で50%以上のコスト差があります。
| 購入方法 | 価格(1kgあたり) | 年間コスト差(月100kg使用時) |
|---|---|---|
| スーパー(1kg袋) | 200〜300円 | 基準 |
| 業務スーパー(5〜10kg) | 150〜200円 | ▲6〜12万円 |
| 業務用卸(25kg袋) | 100〜130円 | ▲12〜20万円 |
2. バターの代替を検討する
バター使用量の多い商品(クロワッサン、ブリオッシュ)は、一部をコンパウンドマーガリンに置き換えることで原価を30〜50%削減できます。
| 油脂 | 価格(1kgあたり) | 風味 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 無塩バター | 4,000〜4,900円 | ◎ | 主力商品のクロワッサン |
| 発酵バター | 5,000〜6,000円 | ◎+ | プレミアム商品 |
| コンパウンドマーガリン | 1,500〜2,500円 | ○ | 量産品のデニッシュ |
| ショートニング | 800〜1,200円 | △ | 食パン・菓子パン生地 |
ポイント: 看板商品は100%バター。量産品や原価の厳しい商品は代替油脂を活用する「二刀流」が現実的です。
3. 売れ残りを「別商品」に転用する
| 売れ残り | 転用先 | 原価回収率 |
|---|---|---|
| 前日の食パン | ラスク、クルトン | 60〜80% |
| クロワッサンの端材 | アーモンドクロワッサン | 70〜90% |
| スポンジケーキの端 | ケーキポップ、トライフル | 50〜70% |
| 固くなったパン | パン粉、パンプディング | 40〜60% |
| 傷んだ果物 | コンポート、ジャム | 30〜50% |
ラスクは最強のロス対策商品。 材料費はほぼゼロ(砂糖とバターのみ追加)で、販売価格は200〜400円。廃棄をそのまま利益に変えられます。
4. 生産量を時間帯別にコントロールする
パン屋の廃棄ロスの大半は閉店前の売れ残り。POSデータを活用して、時間帯別の販売数を把握し、焼成タイミングを最適化します。
推奨生産量 = 過去30日の平均販売数 × 0.9(安全係数)
10%少なく作る勇気が、廃棄ロスを劇的に減らします。「完売」は品切れではなく、良い経営の証拠です。
5. セット販売で客単価を上げる
| セット内容 | 個別合計 | セット価格 | 割引率 | 利益効果 |
|---|---|---|---|---|
| パン2個+コーヒー | 660円 | 580円 | 12% | コーヒー利益で補填 |
| 食パン+ジャム | 580円 | 500円 | 14% | ジャムの高利益率 |
| おまかせ3個セット | 750円 | 650円 | 13% | 売れ残りリスク分散 |
「おまかせセット」は閉店2時間前から販売開始すると、廃棄削減と売上確保を両立できます。
6. 季節商品で利益率を確保する
旬のフルーツや季節のイベントに合わせた限定商品は、通常商品より20〜30%高い価格設定が受け入れられやすい傾向があります。
| 季節 | 限定商品例 | 材料費率目安 |
|---|---|---|
| 春 | 桜あんぱん、いちごデニッシュ | 15〜25% |
| 夏 | マンゴークリームパン、レモンタルト | 20〜30% |
| 秋 | 栗パン、さつまいもペーストリー | 15〜25% |
| 冬 | シュトーレン、ガレットデロワ | 20〜30% |
7. 原材料費を月次でチェックする
2025〜2026年は小麦粉が下落傾向、バター・卵が上昇傾向という相反する動きがあります。年1回の価格改定では追いつきません。
- 月1回:主要原材料(小麦粉・バター・卵)の仕入れ価格をチェック
- 四半期ごと:メニュー価格を見直し
- 価格改定時のコツ:「国産バター100%使用」「契約農家の卵」など、品質を理由にした値上げはお客様に受け入れられやすい
パン屋の原価計算でよくある失敗
| 失敗 | なぜ問題か | 対策 |
|---|---|---|
| 材料費だけで原価率を計算する | 人件費(25〜35%)と諸経費(20〜40%)を見落とす | 4つのコスト層すべてを含めて計算する |
| 全商品同じマークアップ | 食パンとメロンパンでは原価構造がまったく違う | 商品カテゴリー別に目標利益率を設定する |
| 売れ残りを「仕方ない」で済ませる | 廃棄率10%=売上の10%を捨てているのと同じ | POSデータで生産量を最適化する |
| 競合店の価格に合わせる | 競合の原価構造は不明。自店の原価を知らずに合わせると赤字に | 自店の原価から価格を算出する |
| ケーキの人件費を見落とす | デコレーション1時間の人件費は1,500円。3,000円のケーキで利益が出ない | 作業時間を計測して人件費を正確に配分する |
| 包装資材を計算に入れない | 紙袋・箱・シールで1商品あたり10〜50円 | 諸経費または商品別に計上する |
パン屋の原価ベンチマーク(2026年)
| 指標 | 優良 | 平均 | 要改善 |
|---|---|---|---|
| 材料費率 | 18〜23% | 24〜30% | 31%以上 |
| 人件費率 | 22〜27% | 28〜33% | 34%以上 |
| FLコスト(材料費+人件費) | 45〜50% | 51〜58% | 59%以上 |
| 営業利益率 | 12〜18% | 7〜11% | 6%以下 |
| 廃棄率 | 3〜6% | 7〜10% | 11%以上 |
| 労働生産性(1時間あたり生産個数) | 20個以上 | 12〜19個 | 11個以下 |
原価計算アプリで管理を効率化する
パン屋は商品の種類が30〜100以上になることも珍しくありません。すべての商品の原価を手計算やExcelで管理するのは現実的ではありません。
原価計算アプリ**KitchenCost**を使えば:
- 強力粉・バター・卵など各原材料の仕入れ価格を一括管理
- 食パン・クロワッサン・ケーキなど商品別の原価を自動計算
- バターの仕入れ値が上がったら、関連するすべての商品の原価が即時更新
- ロス率を材料ごとに設定して、廃棄分を含めた実質原価を把握
- バッチサイズを変更するだけで1個あたりの原価を再計算
Excelの「作った日が一番正確」な管理から、常に最新の仕入れ値を反映した原価管理に切り替えられます。
まとめ
パン屋の利益は、商品ごとの正確な原価計算から始まります。ポイントを整理すると:
- 材料費だけが原価ではない。 人件費・諸経費・廃棄ロスを加えると、材料費の2〜3倍のコストがかかる
- メロンパン・ラスク・焼き菓子が利益のエンジン。 材料費率10%以下で高利益率
- クロワッサンはバター価格次第。 2026年はバター上昇が続くため、定期的な原価見直しが必須
- 食パンは集客商品と割り切る。 利益は菓子パンやドリンクで確保
- ケーキは人件費を正確に反映する。 デコレーションの工数を甘く見ると赤字に
- 廃棄ロスは最大の利益流出源。 売れ残りの転用と生産量の最適化が鍵
- 月次で原材料費をチェック、四半期で価格改定。 2026年の価格変動に対応する
1個あたりの正確な原価を知ること——それがパン屋の「儲かる経営」と「忙しいだけの経営」を分ける境界線です。
今すぐやること
- 主力商品5種類の4層原価(材料費・人件費・諸経費・廃棄ロス)を計算する
- バターと卵の仕入れ価格を確認し、前月と比較する
- 廃棄率を計測し、10%を超えていないか確認する
- ラスクなど端材活用メニューを検討する
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