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飲食店の確定申告、「経費で落とせたのに…」を防ぐ——仕訳・節税・インボイス移行の全手順【2026年版】

飲食店の確定申告、経費の仕訳ミスで年間20万円以上損するケースも。勘定科目の正しい使い分け、すぐ真似できる仕訳5パターン、2026年9月終了のインボイス2割特例→3割特例の届出準備まで。基礎控除58万円引き上げ・青色申告65万円控除の確実な取り方も解説。

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目次

確定申告の季節になると、毎年同じことで悩んでいませんか。「この食材、経費でいいんだっけ?」「まかないって売上に入れるの?」「インボイスの届出、いつまでだっけ…」

——正直に言います。飲食店オーナーの確定申告は、知っているかどうかだけで納税額が年間20万円以上変わることがあります。

たとえば、青色申告の65万円控除をe-Taxで取るだけで、所得税+住民税で約10万円の差。小規模企業共済を月7万円かけていれば、さらに約25万円の節税。逆に、使えたはずの経費を見落としていたら? その分は丸ごと「余計に払った税金」です。


先に結論

  • 飲食店で使う勘定科目は15種類程度。一度覚えれば毎月の仕訳はパターン化できる
  • まかない(自家消費)は売上計上が必要。やっていないと税務調査で確実に指摘される
  • インボイス2割特例は2026年12月期で終了。届出の判断期限は2026年中
  • 青色申告65万円控除はe-Tax必須。紙提出では55万円に減る
  • 小規模企業共済+経営セーフティ共済で年間最大324万円の節税枠が使える

飲食店で使う主な勘定科目——これだけ覚えれば8割カバーできる

「勘定科目」という言葉だけで身構えてしまう方もいると思います。でも、飲食店で実際に使うのは15種類ほど。以下の表を手元に置いておけば、日々の記帳で迷うことはほぼなくなります。

勘定科目何に使うか具体例
仕入高食材・ドリンクの仕入れ野菜、肉、魚、酒類、調味料
給料賃金アルバイト・パートへの給与時給×勤務時間の支払い
地代家賃店舗の家賃月額賃料(共益費含む)
水道光熱費電気・ガス・水道ガスはコンロ使用量が大きくなりがち
消耗品費10万円未満の備品調理器具、食器、洗剤、おしぼり
減価償却費10万円以上の設備を分割計上冷蔵庫、製氷機、エアコン
広告宣伝費集客にかかった費用チラシ印刷、食べログ掲載料、SNS広告
通信費電話・ネット代店舗のWi-Fi、電話回線
旅費交通費仕入れ先への移動費市場への交通費、駐車場代
接待交際費取引先との飲食酒屋さんとの会食、同業者との情報交換
損害保険料火災保険・賠償責任保険店舗総合保険の年額
修繕費設備の修理代冷蔵庫の修理、内装の補修
衛生費衛生管理にかかる費用害虫駆除、グリストラップ清掃
福利厚生費従業員への福利サービス制服のクリーニング、健康診断
雑費上記に当てはまらない少額支出ゴミ処分費、書籍代

💡 ポイント:「雑費」を多用すると、税務調査で中身を細かく聞かれやすくなります。月1万円を超える支出は、できるだけ具体的な科目に振り分けてください。


すぐ真似できる——飲食店の仕訳5パターン

実際の帳簿にどう書くのか。よくある5つの取引を仕訳で見てみましょう。会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)を使っていれば、この仕訳は自動で作られます。ただ「何をやっているか」を理解しておくと、入力ミスや科目選びの間違いに自分で気づけるようになります。

パターン1:食材の仕入れ(現金払い)

近所のスーパーで野菜を5,000円分、現金で買った場合。

借方金額貸方金額
仕入高5,000円現金5,000円

レシートの裏に「◯◯店用 野菜仕入れ」とメモしておくだけで、税務調査の際にもスムーズに説明できます。

パターン2:まかない(自家消費)の計上

スタッフと自分用に1食500円相当のまかないを出した場合。

借方金額貸方金額
福利厚生費500円売上高(自家消費)500円

ここが要注意です。まかないは「タダで食べてるから帳簿に関係ない」と思われがちですが、税務上は自家消費として売上に計上する義務があります。金額は、仕入れ原価以上かつ通常販売価格の70%以上で記録してください。

1日500円×月25日=月12,500円。年間で15万円の売上漏れになります。税務調査では確実に確認されるポイントです。

📖 まかないの処理をもっと詳しく知りたい方は:飲食店オーナーが知っておくべき「まかない」の経費と自家消費ルール

パターン3:厨房機器の購入(30万円未満)

業務用ミキサーを15万円で購入した場合。青色申告者なら、少額減価償却資産の特例が使えます。

借方金額貸方金額
減価償却費150,000円普通預金150,000円

通常、10万円以上の資産は何年もかけて少しずつ経費にします(減価償却)。でも、青色申告をしている方は30万円未満の資産をその年に一括で経費にできます(年間合計300万円まで)。これが「少額減価償却資産の特例」です。

⚠️ 30万円以上の大型機器(業務用冷蔵庫、製氷機など)は通常の減価償却が必要です。飲食店設備の法定耐用年数は多くが6〜8年。毎年その分だけ経費に入れます。

パターン4:自宅兼店舗の家賃(家事按分)

自宅兼店舗で家賃が月15万円、うち店舗スペースが60%の場合。

借方金額貸方金額
地代家賃90,000円普通預金150,000円
事業主貸60,000円

これが「家事按分」(かじあんぶん)——聞き慣れない言葉ですが、やっていることは単純です。自宅と店舗を兼ねている場合、面積の割合で経費にできる分を分けるだけ。家賃だけでなく、電気代・水道代・通信費にも同じ考え方が使えます。

パターン5:クレジットカードでの仕入れ

業務用食材をカードで8万円分購入した場合。

購入時:

借方金額貸方金額
仕入高80,000円未払金80,000円

引き落とし時:

借方金額貸方金額
未払金80,000円普通預金80,000円

カード明細の日付と実際の引き落とし日がズレるため、2段階で記帳するのが正式な処理です。ただし、毎月の少額仕入れなら「引き落とし時にまとめて仕入高で計上」でも実務上は問題ありません。


【2026年最重要】インボイス2割特例が終わる——届出は年内に

2023年10月にインボイス制度が始まったとき、「とりあえず2割特例でいいか」と登録した方は多いと思います。

その2割特例が2026年9月30日で終了します。

「でも自分は個人事業主だから12月決算でしょ?」——そうです。個人事業主の場合は2026年12月期の申告までは2割特例が使えます。問題は、その次の年をどうするかです。

2割特例終了後のスケジュール

時期何が起きるかやるべきこと
〜2026年9月2割特例の最終課税期間(法人)
2026年12月個人事業主の2割特例が使える最後の年2027年の課税方式を決める
2026年12月31日簡易課税届出書の提出期限届出を出すならこの日まで
2027年1月〜3割特例(個人のみ)or 簡易課税が開始
2028年12月3割特例の最終年簡易課税への完全移行を検討

飲食店オーナーが選べる3つの道

① 3割特例を使う(個人事業主のみ、2027-2028年)

  • 売上にかかる消費税の30%を納税。届出は不要
  • 2割特例より負担は増えるが、簡易課税の40%納税よりは少ない
  • 2年間だけの時限措置

② 簡易課税を選ぶ

  • 飲食業のみなし仕入率は60%。つまり売上消費税の40%を納税
  • 届出期限:2026年12月31日(個人事業主)
  • 帳簿が楽になる。仕入れの消費税を1件ずつ計算しなくていい

③ 本則課税(原則課税)を選ぶ

  • 売上の消費税から仕入れの消費税を差し引いた額を納税
  • 大きな設備投資をした年は、納税額が減る(場合によっては還付も)
  • 帳簿・請求書の管理がもっとも手間がかかる

金額でどれくらい違うの?

年間売上1,000万円(税抜)の飲食店の場合を見てみましょう。

課税方式納税額の目安計算の仕組み
2割特例約20万円消費税100万円 × 20%
3割特例約30万円消費税100万円 × 30%
簡易課税約40万円消費税100万円 × 40%
本則課税約45万円〜実際の仕入控除額による

※売上消費税100万円(=税抜売上1,000万円×10%)として概算

2割特例と簡易課税で年間20万円の差。小さくない金額です。

💡 結論:まず2027-2028年は3割特例を使い、同時に簡易課税届出書を2026年中に提出しておくのが安全策です。届出を出しておけば3割特例が終わったあと自動的に簡易課税に切り替わります。届出を忘れると、本則課税(負担がもっとも重い方式)が適用されるリスクがあります。


青色申告65万円控除を「確実に」受ける方法

青色申告の65万円控除は、飲食店オーナーにとって最大級の節税手段です。ところが、条件を一つでも満たせないと控除額が10万円に下がります。差額55万円に税率をかけると最低でも約8万円以上の損です。

65万円控除の3つの条件

条件やることつまずきやすいポイント
① 複式簿記借方・貸方で帳簿をつける会計ソフトを使えばほぼ自動
② e-Tax電子申告で提出するマイナンバーカードが必要
③ 期限内提出2026年は3月16日(月)まで1日でも遅れると10万円になる

⚠️ 3月15日は日曜日のため、2026年は3月16日(月)が期限です。ただし、ギリギリ提出はe-Taxのシステム混雑リスクがあります。3月10日までに完了を目標にしてください。

2027年からの変更——知らないと損する

令和8年度税制改正大綱で、75万円控除が新設されることが決まりました。2027年分の申告から適用されます。

申告方法現在(2026年分まで)2027年分〜
優良電子帳簿 + e-Tax65万円75万円
e-Taxのみ65万円65万円
紙で提出55万円10万円

注目すべきは紙提出の控除額です。55万円→10万円に大幅に下がります。まだe-Taxを使っていない方は、今年の確定申告から切り替えておくのが賢明です。


見落としがちな5つの節税テクニック

確定申告のたびに「もっと早く知りたかった…」と言われるものを5つまとめました。

1. 小規模企業共済——退職金がない個人事業主の味方

月額1,000円〜70,000円までの掛金が、全額所得控除になります。年間最大84万円。

月7万円×12ヶ月=年84万円を掛けた場合、所得税率20%+住民税10%の方なら年間約25万円の節税になります。しかも、廃業時や65歳以上で受け取る「退職金」にもなります。従業員には退職金があるのに、オーナー自身にはない——その不公平感を解消してくれる制度です。

2. 経営セーフティ共済——全額経費で積み立てる

正式名称は「中小企業倒産防止共済」。月額5,000円〜200,000円の掛金が全額必要経費になります。年間最大240万円。

40ヶ月以上掛けると解約時に全額(100%)戻ってきます。つまり、経費にしながら貯金しているようなものです。

ただし注意点が一つ。2024年10月の改正で、解約後2年以内に再加入した場合は掛金を経費にできなくなりました。「年末に解約→年始に再加入」という節税テクニックはもう使えません。

3. 基礎控除の引き上げ——2026年分から58万円に

2026年分の確定申告から、基礎控除が48万円→58万円に引き上げられました。

10万円分の控除が増えるので、所得税率20%の方なら約2万円の節税です。とくに手続きは不要で、確定申告書に記入するだけで自動的に適用されます。

4. 少額減価償却資産の特例——30万円未満は一括経費に

前のセクションでも触れましたが、青色申告者は30万円未満の資産を購入年度に全額経費にできます。

28万円の業務用冷蔵庫を買った場合の比較:

通常の減価償却少額特例
初年度の経費約4.7万円28万円
初年度の節税効果約1.4万円約8.4万円

※所得税率20%+住民税10%、耐用年数6年で計算

厨房機器の入れ替えが多い飲食店では、このタイミングの差が大きく効いてきます。

5. 青色事業専従者給与——家族への給与を全額経費に

配偶者やお子さんが店舗で働いている場合、「青色事業専従者給与」として給与全額を経費にできます。

条件内容
届出「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に税務署へ提出
専従者の要件15歳以上、年間6ヶ月を超えてその事業に専念していること
給与額仕事の内容と時間に見合った金額であること(過大だと否認される)

仮に月20万円の専従者給与なら年間240万円が経費に。所得税率20%+住民税10%で約72万円の節税です。

ただし、配偶者控除(38万円)や扶養控除が使えなくなります。「専従者給与にした方が得か、控除のままの方が得か」はケースバイケースなので、金額を比較してから判断してください。


今週やること——確定申告チェックリスト

  • 帳簿ソフトで2025年分の仕訳が完了しているか確認する(30分)
  • 12月31日時点の棚卸し(冷蔵庫・冷凍庫・乾物の在庫金額)が記録されているか確認する(15分)
  • まかない(自家消費)が毎月売上計上されているかチェックする(10分)
  • 10万円以上の購入品が正しく減価償却 or 少額特例で処理されているか確認する(10分)
  • e-Taxの利用者識別番号とマイナンバーカードを準備する(初回のみ20分)
  • インボイス:2027年の課税方式を決めて、簡易課税届出書の提出要否を判断する(15分)
  • 小規模企業共済・経営セーフティ共済の加入を検討する(未加入の方)

💡 日々の食材仕入れや原価を把握しておくと、確定申告時の仕入高の集計がぐっと楽になります。KitchenCostのようなレシピ原価計算アプリを使えば、食材コストが自動で記録されるので、帳簿づけの手間も減らせます。


まとめ

飲食店の確定申告は、「正しく経費を計上する」「使える制度を知っている」の2つだけで、年間数十万円の差が出ます。

2026年はとくに変化が大きい年です。

  • インボイス2割特例の終了——届出の判断期限は年内
  • 基礎控除の引き上げ——48万円から58万円へ
  • 2027年に向けたe-Tax移行——紙提出の控除が55万円から10万円に激減

「あとでやろう」を「今週やる」に変えるだけで、来年の確定申告は確実に楽になります。


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参考情報

よくある質問

飲食店の確定申告で経費にできるものは何ですか?

食材の仕入れ(仕入高)、家賃(地代家賃)、人件費(給料賃金)、水道光熱費、消耗品費、広告宣伝費、通信費などが経費になります。個人で食べる食材は経費にならないため、まかない(スタッフの食事)は自家消費として売上計上が必要です。

2026年のインボイス2割特例はいつ終わりますか?

2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終了します。個人事業主の場合、2026年12月期の申告までは2割特例が使えます。2027年からは新設の3割特例(個人事業主のみ、令和9年・10年)か簡易課税(届出期限2026年12月31日)を選ぶ必要があります。

青色申告の65万円控除を受けるには何が必要ですか?

複式簿記で帳簿をつけること、e-Tax(電子申告)で確定申告すること、期限内(2026年は3月16日まで)に提出すること、の3つが必要です。紙で提出すると55万円に減額されます。2027年分からは優良電子帳簿+e-Taxで75万円控除が新設されます。

飲食店オーナーが見落としがちな節税方法はありますか?

小規模企業共済(月7万円・年84万円が全額所得控除)、経営セーフティ共済(月20万円・年240万円が全額経費)、30万円未満の備品の一括経費計上(少額減価償却資産の特例)の3つが代表的です。退職金代わりになる共済は、早く始めるほど受取額が増えます。

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