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飲食店オーナーの確定申告、よくある7つの間違い——税務調査で「知らなかった」は通用しない(2026年版)

飲食店の確定申告で見落としがちな棚卸・自家消費・減価償却の落とし穴を解説。税務調査で指摘される前に知っておくべき7つのミスと対策。

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目次

確定申告の時期になると、飲食店オーナーの多くがこう思います。

「とりあえず領収書を集めて、売上と経費を入力すればいいんだろう」

その認識、半分正解で半分間違いです。

飲食店の確定申告には、他の業種にはない特有の落とし穴がいくつかあります。そしてその落とし穴にハマると、後から税務調査で指摘されて追徴課税を払うことになる。

国税庁のデータによると、飲食業の税務調査で不正が見つかる割合は——

  • バー・クラブ:62.3%
  • その他の飲食業:45.2%
  • 外国料理店:40.2%

つまり、調査が入ったら約半数で何かしら問題が見つかるということ。

「うちは売上をごまかしてないから大丈夫」と思っていても、悪意なくやってしまっている間違いが実はたくさんあります。この記事では、飲食店の確定申告で特に多い7つの間違いを、具体的な対処法と一緒に解説します。

先に結論

  • 棚卸をしていない → 一番やばい。 税務調査で100%チェックされる
  • 自家消費(まかない)を売上に入れていない → 意外と知らない人が多い
  • 10万円以上の設備を一括で経費にしている → 減価償却が必要
  • 開業費の扱いを間違えている → 実は「いつ経費にするか選べる」おトクな仕組み
  • 青色申告の65万円控除を取りこぼしている人が多い
  • 2027年から青色申告の制度が変わる。 紙提出は控除が10万円に激減

間違い①:棚卸(たなおろし)をしていない

これが飲食店の確定申告で最も多い間違いであり、税務調査で最も指摘されるポイントです。

棚卸とは?

12月31日の時点で、お店に残っている食材・飲料の金額を数えること。

「え、冷蔵庫の中の食材を全部数えるの?」

はい、そうです。

なぜ必要なのか

確定申告では、「その年に使った食材の金額」を経費として計上します。しかし、1月〜12月に仕入れた食材の全額が、その年に「使われた」わけではありません。12月31日に冷蔵庫に残っている食材は、まだ使っていない。

つまり——

その年の食材経費 = 年間の仕入れ額 − 年末の在庫額

棚卸をしないと、仕入れ全額を経費にしてしまう=利益を実際より少なく申告してしまうことになります。

具体例

項目金額
年間仕入れ額600万円
12月31日の在庫40万円
正しい食材経費560万円

棚卸をしないと600万円を経費にしてしまい、利益が40万円少なく申告される。所得税率が20%なら、8万円の過少申告。これに延滞税や加算税がつきます。

やり方

難しく考えなくて大丈夫です。

  1. 12月31日(営業終了後)に冷蔵庫・冷凍庫・棚を確認
  2. 残っている食材をリストアップ(肉○kg、野菜○kg、酒○本…)
  3. それぞれの仕入れ単価をかけて合計額を出す

完璧な数字でなくても構いません。「だいたいこれくらい」の金額を、根拠を持って算出することが大事です。

間違い②:自家消費(まかない)を売上にしていない

お店の食材で自分や家族のごはんを作る。飲食店では当たり前のこと。

でもこれ、「自分に対する売上」として計上しなければなりません。

計算方法

自家消費の売上額は、次のうち高い方——

  • 販売価格
  • 仕入れ値販売価格の70% のうち高い方

例:ラーメン1杯(販売価格900円、原価300円)を自分で食べた場合

  • 販売価格の70% = 630円
  • 仕入れ値 = 300円
  • 630円 > 300円 なので、630円を売上に計上

「毎回そんな計算するの?」と思うかもしれません。実務的には、**月末にまとめて「まかない○回 × ○円 = ○円」**と記録すればOKです。

税務調査ではこう聞かれる

調査官:「従業員のまかないはどうされていますか?」 調査官:「オーナーの食事はどう処理していますか?」

これに答えられないと、「売上除外」(売上を隠している)とみなされる可能性があります。

間違い③:10万円以上の設備を一括で経費にしている

業務用の冷蔵庫を50万円で買った。「経費50万円」で計上——これは間違いです。

減価償却(げんかしょうきゃく)のルール

10万円以上の設備・備品は、購入した年に全額経費にすることはできません。「耐用年数」に応じて、何年かに分けて経費にする必要があります。

設備耐用年数1年あたりの経費(定額法)
業務用冷蔵庫(50万円)6年約8.3万円
エアコン(30万円)6年約5万円
食洗機(60万円)6年約10万円

ただし——

  • 10万円未満:全額その年の経費にできる(消耗品費)
  • 10万円以上〜30万円未満:青色申告なら「少額減価償却資産の特例」で全額経費OK(年間合計300万円まで)
  • 30万円以上:減価償却が必要

つまり、青色申告をしていれば30万円未満のものは一括で経費にできます。 これを知らずに全部減価償却している人も、逆に知らずに30万円以上のものを一括経費にしている人もいます。

間違い④:開業費の扱いを間違えている

開業前にかかったお金(物件の下見の交通費、試作の材料費、研修費など)は「開業費」として処理します。

よくある間違い

  • 開業費を全額、開業した年の経費にしている
  • 家賃や仕入れを開業費に入れている

正しい扱い

開業費は「繰延資産(くりのべしさん)」という特殊な扱いで、いつ経費にするか自分で選べます。

これを「任意償却」と言います。

なぜこれがおトクなのか

開業1年目は赤字のことが多い。赤字の年に開業費を全額経費にしても、節税効果はゼロ。

でも任意償却なら、2〜3年目に利益が出たタイミングで経費にできる。 その年の税金を大きく減らせます。

開業費にできるもの・できないもの

開業費にできる開業費にできない
物件の下見の交通費開業前の家賃(毎月の固定費)
名刺・チラシの印刷代開業前の仕入れ(在庫として計上)
開業前の研修費10万円以上の設備(固定資産として計上)
市場調査の費用敷金・保証金(資産として計上)
開業前の打ち合わせの飲食代

間違い⑤:年末年始の売上計上がずれている

12月の売上なのに、入金が1月になる場合があります。

たとえば——

  • 12月31日の忘年会のクレジットカード決済 → 入金は1月
  • 12月分のUber Eatsの売上 → 入金は1月

この場合、12月の売上として計上する必要があります。 お金が入ったタイミングではなく、サービスを提供したタイミングで売上を認識するのがルール(発生主義)。

入金ベースで処理していると、12月の売上が翌年に計上されてしまい、今年の利益を少なく申告していることになります。

間違い⑥:飲食代の経費の区分が曖昧

飲食店オーナーが食事の経費を計上するとき、混乱しがちなのが区分です。

場面勘定科目条件
仕入先との会食接待交際費1人あたり1万円以下なら全額経費OK(2024年税制改正)
従業員との食事会福利厚生費全員参加が条件。特定の人だけだと交際費
一人での食事原則、経費にならない業務との直接的な関連を証明できれば可能
試食・新メニュー開発研究開発費 or 仕入高メモを残すこと

領収書の裏に書くべき3つのこと

  1. いつ(日付)
  2. 誰と(相手の名前・会社名)
  3. 何のために(業務上の目的)

これがないと、税務調査で「本当に仕事の食事ですか?」と聞かれたときに証明できません。

間違い⑦:人件費の処理が不完全

パート・アルバイトへの給料

  • 源泉徴収(げんせんちょうしゅう)をしているか? 月88,000円以上の給料からは所得税を天引きする義務がある
  • 給与支払報告書を市区町村に提出しているか?

現金手渡しで給料を払っていて、源泉徴収をしていない——というケースは、税務調査で必ず指摘されます。

家族への給料

奥さんや家族に給料を払う場合、「青色事業専従者給与」の届出が必要です。届出をしていないと、家族への給料は経費として認められません。

また、金額が不相当に高い場合も否認されます。「配偶者に月50万円の給料」は、業務内容に見合っていなければ認められません。

青色申告で最大65万円の控除を取る

まだ白色申告でやっている方は、青色申告に切り替えるだけで最大65万円の所得控除が受けられます。

申告方法控除額条件
青色申告(e-Tax)65万円複式簿記 + 電子申告
青色申告(紙)55万円複式簿記 + 紙提出
白色申告なし簡易帳簿でOK

所得が300万円の場合、65万円控除を使えると——

  • 所得税 + 住民税 + 国民健康保険料を合わせて年間約15〜20万円の節税になります。

2027年からの大きな変更

2027年(令和9年)から青色申告の控除額が変わります。

条件現行(〜2026年)2027年〜
e-Tax+複式簿記65万円75万円
紙+複式簿記55万円10万円

紙提出の控除が55万円 → 10万円に激減します。まだe-Taxを使っていない方は、2027年までに移行しておくことを強くおすすめします。

確定申告の前にやっておくべきこと

確定申告で困るのは、日常の記録が不十分だからです。

毎月やっておくべき3つのこと——

  1. 売上を毎日記録する。 レジの日計表を保存。現金とカードは分けて記録
  2. 領収書を分類して保管する。 「仕入」「消耗品」「交際費」など、もらったその日に分類
  3. 月末に棚卸の習慣をつける。 12月だけでなく、毎月やっておくと年末が楽

この3つを習慣にしておけば、確定申告は「12ヶ月分のまとめ作業」になります。1年分を一気にやろうとするから大変になる。

原価の把握も同じです。KitchenCostでレシピごとの原価を日常的に管理しておけば、確定申告のときに**「仕入れと原価率の関係」が明確**になります。税務調査で「原価率が異常に高い」と疑われることも防げます。

今週やることチェックリスト

  • 自分が青色申告をしているか確認する(白色なら切り替えを検討)
  • e-Taxの利用登録がまだなら登録する(2027年の制度変更に備えて)
  • 12月31日の棚卸のやり方を確認し、今年から実施する
  • 自家消費(まかない)の記録方法を決める(月末にまとめて記録)
  • 領収書の裏に「いつ・誰と・何のため」を書く習慣を始める
  • 10万円以上の設備購入の記録を確認し、減価償却の処理を見直す
  • 家族に給料を払っている場合、青色事業専従者給与の届出を確認する

出典・参考:

  • 国税庁「令和7年分 基礎控除の見直しについて」
  • 弥生「飲食店経営の確定申告ガイド」
  • マネーフォワード「飲食店の確定申告で押さえておきたいポイント」
  • 石橋税理士事務所「飲食業の確定申告のポイント」
  • 税務調査110番「飲食店の税務調査の傾向と対策」
  • HT Tax「飲食店の税務調査の流れと対応策」
  • 個人経営サポート「居酒屋が税務調査で指摘されないために」
  • 林会計事務所「飲食店の確定申告——65万円控除を狙う青色申告」
  • freee「開業費の繰延資産としての処理」

よくある質問

飲食店は税務調査に入られやすいって本当ですか?

はい、飲食店は他の業種と比べて税務調査が入りやすい傾向があります。理由は現金取引が多く、売上の計上漏れが起きやすいためです。国税庁のデータでは、バー・クラブの不正発見割合は62.3%、その他の飲食業で45.2%と高い水準です。事前連絡なしの「無予告調査」も飲食店では比較的多いとされています。

飲食店の確定申告で一番指摘されやすいポイントは何ですか?

最も指摘されやすいのは「棚卸(たなおろし)」の処理です。12月31日時点で冷蔵庫・冷凍庫に残っている食材の金額を計算して、その年の経費から差し引く必要があります。これをやっていないと、仕入れ全額を経費にしていることになり、利益を少なく申告している=脱税とみなされる可能性があります。

お店の食材を自分や家族が食べた場合、どう処理しますか?

自家消費(じかしょうひ)として「自分への売上」に計上する必要があります。金額は、販売価格か、仕入れ値と販売価格の70%のいずれか高い方です。例えばラーメン1杯の販売価格が900円で原価が300円なら、900円×70%=630円を売上に計上します。よく忘れがちですが、税務調査では必ず確認されるポイントです。

青色申告の65万円控除を受けるには何が必要ですか?

複式簿記で帳簿をつけること、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すること、そしてe-Taxで電子申告することが条件です。紙で提出すると控除額は55万円に下がります。なお、2027年からは制度が変わり、e-Taxなら75万円に増額される一方、紙提出は10万円に大幅減額されます。

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