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飲食店の開業資金、リアルな内訳——「思ったより300万円多くかかった」を防ぐために(2026年版)

飲食店の開業資金は平均985万円、中央値580万円。物件取得・内装・厨房設備・運転資金の現実的な内訳と、予算オーバーを防ぐ具体策を解説。

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目次

「いくらあれば飲食店を開けるのか」

この質問の答えは、ネットで検索すると「500万円〜1,500万円」とか「1,000万円前後」とか、幅が広すぎてよくわからないものばかり出てきます。

実際のところ、日本政策金融公庫の2024年度調査によると——

  • 平均:985万円
  • 中央値:580万円

平均が985万円と聞くと「そんなに必要なの?」と思うかもしれません。でもこれは大型店舗も含んだ数字。半数以上の人は580万円以下で開業しています。

問題は、金額の大小ではなく「何にいくらかかるか、事前にわかっていたかどうか」です。

飲食店の廃業理由でよく聞くのが、「売上が足りなかった」ではなく**「思ったより初期費用がかかって、運転資金が残らなかった」というパターン。帝国データバンクによると、2024年の飲食店の倒産件数は894件で過去最多**。コロナ禍の2020年(780件)をも上回りました。

この記事では、飲食店の開業資金のリアルな内訳を項目ごとに分解して、「どこでお金が想定以上にかかるのか」「どうすれば予算オーバーを防げるのか」を具体的に整理します。

先に結論

  • 開業資金の平均は985万円、中央値は580万円。 半数以上は580万円以下で開業している
  • 最も大きいのは「内装工事費」。 スケルトンで1坪40〜70万円、居抜きでも20〜50万円
  • 物件取得だけで家賃の10倍かかる。 家賃20万円なら、契約時に200万円近くが消える
  • 運転資金を甘く見た店が潰れる。 月の固定費×3〜6ヶ月分は絶対に確保
  • 予算オーバーの原因は「小さな仕様変更の積み重ね」が多い

開業資金の全体像

まず、お金が何に使われるのかを全体で見てみます。

費目目安の金額全体に占める割合
物件取得費150〜300万円20〜30%
内装工事費200〜700万円30〜40%
厨房設備費150〜300万円15〜25%
備品・消耗品50〜100万円5〜10%
広告・販促費30〜50万円3〜5%
運転資金150〜600万円15〜30%

合計すると730〜2,050万円。幅が広いですが、これは業態・立地・物件の状態によって大きく変わるからです。

ポイントは、内装工事と物件取得で全体の50〜70%を占めること。ここをどれだけコントロールできるかで、総額が大きく変わります。

項目ごとの詳細

① 物件取得費(150〜300万円)

テナントを借りるとき、家賃以外に以下のお金がかかります。

項目金額の目安補足
保証金(敷金)家賃の6〜10ヶ月分飲食店は一般店舗より高め。退去時に一部返還
礼金家賃の1〜2ヶ月分返ってこないお金
仲介手数料家賃の1ヶ月分不動産屋への支払い
前家賃1〜2ヶ月分契約月と翌月分を先払い

家賃が月20万円の場合——

保証金(10ヶ月)200万円 + 礼金(1ヶ月)20万円 + 仲介手数料 20万円 + 前家賃 20万円 = 260万円

家賃20万円の物件を借りるだけで、260万円が契約時に飛びます。

ここで予算を圧縮したいなら——

  • 保証金が少ない物件を探す(6ヶ月の物件もある)
  • 居抜き物件なら「造作譲渡料」込みの場合がある(中の設備を前オーナーから買い取る形)

② 内装工事費(200〜700万円)

開業資金で最もお金がかかる項目です。そして最も予算オーバーしやすい項目でもあります。

物件タイプ1坪あたりの工事費15坪の場合
スケルトン(何もない状態)40〜70万円600〜1,050万円
居抜き(前の設備が残っている)20〜50万円300〜750万円

業態別だと——

業態1坪あたりの目安理由
カフェ・バー30〜50万円内装の雰囲気が重要で、デザイン費がかかりやすい
居酒屋40〜60万円客席数の多さ、換気・排煙設備が必要
ラーメン店30〜50万円厨房比率が高いが客席は比較的シンプル
レストラン30〜80万円業態により大きく差。高級路線だと上限が高い

内装工事で予算オーバーする3つのパターン

パターン1:工事中の仕様変更

「タイルをもう少しいいものにしたい」「照明の数を増やしたい」——こういう小さな変更が積み重なるのが一番危険です。1回の変更は5〜10万円でも、10回やれば50〜100万円。

パターン2:給排水・電気の追加工事

居抜き物件でも、厨房の配置を変えると給排水管の移設が必要になります。これが1箇所あたり20〜50万円。「居抜きだから安いはず」と思っていたのに、結局スケルトンと変わらなかった——というのはよくある話です。

パターン3:見積もりの「別途」に気づかない

見積書に「設備搬入費:別途」「産廃処理費:別途」と書いてあるのを見落として、最後に「あと50万円かかります」と言われるパターン。見積もりの「別途」は全部金額を聞いてください。

③ 厨房設備費(150〜300万円)

設備新品の目安中古の目安
業務用冷蔵庫(4ドア)40〜80万円15〜40万円
ガスコンロ・レンジ20〜50万円10〜25万円
食洗機40〜100万円15〜50万円
製氷機15〜40万円5〜20万円
シンク・作業台10〜30万円5〜15万円
フライヤー10〜30万円5〜15万円

全部新品で揃えると300万円を超えることも。

節約のポイント——

  • 中古厨房機器を使う。 テンポスバスターズやネットオークションで、新品の半額以下で手に入ることがある
  • 居抜き物件の設備をそのまま使う。 ただし動作確認は必ずする
  • リースを使う。 初期費用を抑えて月払いにする方法。ただし総支払額は購入より高くなる

④ 備品・消耗品(50〜100万円)

意外とかかるのがこの項目。

項目目安
食器・グラス10〜30万円
調理器具10〜20万円
テーブル・椅子20〜50万円
レジ(POSレジ含む)5〜20万円
メニュー・看板5〜15万円
ユニフォーム3〜10万円
清掃用品・消耗品3〜5万円

「まあ30万円くらいかな」と思っていたら、実際にリストアップすると70万円くらいになっている——というのはよくあることです。

⑤ 広告・販促費(30〜50万円)

項目目安補足
ホームページ制作10〜30万円無料サービスなら0円だが、検索に弱い
Googleビジネスプロフィール0円必ず登録。MEO対策の基本
チラシ・ポスティング5〜15万円近隣への認知用
SNSアカウント開設0円開業前から投稿して認知を作る
オープン記念キャンペーン5〜10万円割引や記念品など

開業直後の集客が弱いと、運転資金がどんどん減ります。広告費を削りすぎるのも危険です。

⑥ 運転資金(150〜600万円)

ここが最も甘く見積もられて、最も致命的になる項目です。

運転資金とは、開業してから売上が安定するまでの「生活費+お店の固定費」のこと。

固定費の内訳月額の目安(15坪の店)
家賃15〜25万円
人件費30〜80万円
仕入れ売上の30〜35%
水道光熱費5〜15万円
その他(通信、保険、雑費)5〜10万円

月の固定費が100万円なら、3ヶ月分で300万円、6ヶ月分で600万円。

開業直後は売上が読めません。 初月の売上が目標の50%しかなかった——というのは珍しくない。そのとき運転資金がなければ、2〜3ヶ月で資金ショートします。

飲食店が1年以内に閉店するケースの多くは、「料理がまずかった」ではなく**「お金が続かなかった」**が理由です。

予算オーバーを防ぐ5つの鉄則

鉄則1:見積もりは3社以上から取る

内装工事は業者によって100〜200万円の差がつくことがあります。1社だけで決めないでください。

鉄則2:「別途」の項目をすべて金額化する

見積書に「別途」と書いてある項目は、必ず具体的な金額を聞いてください。設備搬入費、産業廃棄物処理費、設計変更費など、別途の合計が50〜100万円になることがあります。

鉄則3:予備費として総額の10〜15%を確保する

予算800万円なら、80〜120万円は「使い道を決めないお金」として残しておく。これがないと、小さな想定外が出るたびに運転資金を食いつぶすことになります。

鉄則4:設備は「新品」と「中古」を使い分ける

お客さんの目に触れない厨房設備は、中古で十分な場合が多いです。冷蔵庫やシンクは中古で買い、お客さんが直接見る食器や椅子にお金をかける方が費用対効果が高い。

鉄則5:運転資金は最後に削らない

内装工事で予算が膨らんだとき、真っ先に削られるのが運転資金です。でもこれは絶対にやってはいけないこと。内装は少し妥協してでも、運転資金は月の固定費×3ヶ月分を死守してください。

開業資金を抑える3つの方法

① 居抜き物件を活用する

前の飲食店の内装や設備がそのまま残っている物件。うまくいけば内装工事費を半分以下にできます。

ただし注意点も——

  • 設備が古くて使えない場合がある(特に冷蔵庫と空調)
  • 前の店のイメージが残って、「ここ前の店と同じ?」と思われることがある
  • 造作譲渡料(前オーナーに払うお金)が100〜300万円かかる場合がある

② 補助金・助成金を使う

名称内容金額の目安
創業補助金新規開業の経費を補助最大200万円(補助率2/3)
小規模事業者持続化補助金販路開拓の経費を補助最大50〜200万円
自治体の独自補助金地域による数十万円〜

補助金は「先に自分で払って、後から補助金が振り込まれる」仕組みが多いです。つまり、開業時点では自分でお金を用意する必要があります。

③ 日本政策金融公庫の創業融資を使う

個人の飲食店開業で最もよく使われる融資先です。

  • 無担保・無保証人で最大7,200万円(ただし実際は300〜1,000万円が多い)
  • 自己資金の2〜3倍が融資の目安
  • 金利は年2〜3%程度(2026年3月時点)

自己資金300万円なら、600〜900万円の融資が目安。合計900〜1,200万円で開業する計算です。

業態別のリアルな開業資金例

ラーメン店(10坪・カウンターのみ)

費目金額
物件取得費150万円
内装工事費(居抜き)250万円
厨房設備(中古含む)150万円
備品・消耗品40万円
広告・販促費20万円
運転資金(3ヶ月分)240万円
合計850万円

カフェ(15坪・テーブル席あり)

費目金額
物件取得費200万円
内装工事費(スケルトン)500万円
厨房設備120万円
備品・消耗品(食器重視)80万円
広告・販促費30万円
運転資金(4ヶ月分)300万円
合計1,230万円

居酒屋(20坪・テーブル+カウンター)

費目金額
物件取得費300万円
内装工事費(スケルトン)800万円
厨房設備250万円
備品・消耗品80万円
広告・販促費40万円
運転資金(4ヶ月分)400万円
合計1,870万円

これらはあくまで目安です。同じ業態でも、立地やこだわりで数百万円の差が出ます。

「開業前にやっておけばよかった」と後悔すること

開業経験者がよく言うのは——

  1. 「もっと運転資金を残しておけばよかった」 — 開業後の売上不振に耐えられなかった
  2. 「内装にこだわりすぎた」 — 最初はシンプルで始めて、黒字になってから改装すればよかった
  3. 「家賃の安さだけで場所を選んだ」 — 家賃が安い=人通りが少ない。結局広告費がかかった
  4. 「原価管理を開業前から練習しておけばよかった」 — 開業後に「あれ、利益が出ない」と気づいても遅い

特に4番目。開業前の段階で、メニューごとの原価がいくらで、何個売ればいくら利益が出るのかをシミュレーションしておくことが大事です。

KitchenCostを使えば、レシピの材料費を入力するだけで1品あたりの原価と利益率が自動で計算されます。開業準備の段階からメニューの原価を把握しておくことで、「開業してから赤字に気づく」を防げます。

今週やることチェックリスト

  • 自分の業態と規模で開業資金のざっくり見積もりを出す(この記事の表を参考に)
  • 物件探しの前に「家賃の10倍」が初期費用でかかることを頭に入れる
  • 内装業者は3社以上に見積もりを依頼する
  • 中古厨房機器の相場をテンポスバスターズやネットで調べる
  • 日本政策金融公庫のサイトで創業融資の条件を確認する
  • 「市区町村名+創業補助金」で検索して使える補助金をリストアップ
  • 運転資金(月の固定費×3〜6ヶ月分)を必ず予算に入れる

出典・参考:

  • 日本政策金融公庫「2024年度 新規開業実態調査」(2024年11月公表)
  • 帝国データバンク「飲食店の倒産動向調査(2024年)」(2025年1月公表)
  • 弥生「飲食店の開業費・初期費用はどれくらい?平均額・内訳・節約方法を解説」
  • NTT東日本「飲食店の平均的な開業資金」
  • テナント工房「飲食店の開業資金 内訳と相場」
  • freee「飲食店の開業資金はいくら必要?内訳・調達方法を解説」
  • 店舗設計施工.com「飲食店の内装工事費用相場 2025年版」

よくある質問

飲食店の開業資金は平均いくらかかりますか?

日本政策金融公庫の2024年調査によると、平均985万円、中央値580万円です。ただし業態や立地、物件の状態(スケルトンか居抜きか)で大きく変わります。小規模な10坪程度の店舗なら500〜800万円で開業する方も多いです。

開業資金のうち、自己資金はどれくらい必要ですか?

同調査では平均293万円(全体の約25%)が自己資金で、残り65%は金融機関からの借入です。日本政策金融公庫の創業融資では自己資金の2〜3倍程度を借りられるケースが多いので、最低でも開業資金の3分の1程度は自己資金として用意したいところです。

居抜き物件とスケルトン物件、どちらが安いですか?

一般的には居抜きの方が安くなります。内装工事費の目安は、スケルトンで1坪あたり40〜70万円、居抜きで20〜50万円です。ただし居抜きでも厨房の配置変更や給排水工事が入ると、スケルトンと同じくらいかかる場合があるので、業者に見積もりを取ってから判断してください。

開業後の運転資金はどれくらい用意すべきですか?

月の固定費(家賃+人件費+仕入れ+光熱費)の3〜6ヶ月分が目安です。月の固定費が100万円なら300〜600万円。開業直後は客足が安定しないので、ここをケチると資金ショートの原因になります。実際、開業後1年以内に閉店する店の多くは『運転資金の不足』が主因です。

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