「値上げしたい」ではなく、正直には「値上げしないと厳しい」。 でも、いつ実行するかで迷って止まる。 この状態のまま数週間たつと、利益が静かに減っていきます。
先に結論です。
値上げのタイミングは、感覚ではなく原価計算で決めた方がぶれません。
先に要点
- 合図は3つ: 1食粗利、仕入れ通知、来店の波。
- 告知は実施の7〜14日前が目安です。
- 全商品一斉より、崩れている商品から順番に直す方が安全です。
いま「タイミング判断」が難しい理由(2026-02-17確認)
- 2025年の食品値上げは年間で20,609品目(帝国データバンク)。
- 2025年の飲食店倒産は900件(帝国データバンク)。
- 価格転嫁率は全業種平均で53.5%(経済産業省)。
ここでいう価格転嫁は、上がったコストを販売価格に反映することです。 - 一方で、飲食店業界の価格転嫁率は**32.3%**という調査もあり、十分に反映しきれていない店が多いです(帝国データバンク資料内)。
- 最低賃金の全国加重平均は1,121円(厚生労働省)。
「まだ上げない」で耐えるほど、後で上げ幅が大きくなりやすい。 これが一番しんどいパターンです。
値上げタイミングを決める3つの合図
1) 1食あたり粗利が3週連続で下がる
粗利は、売上から食材原価を引いた残りです。
1食粗利 = 売価 - 1食原価
週間粗利 = 1食粗利 × 週間販売数
目安として、週間粗利が3週続けて落ちるなら、先送りは危険です。
2) 主要食材の値上げ通知が来た
米・油・肉など、売上上位メニューに効く食材の通知が来たら、
その週のうちに再計算だけは終わらせます。
「来月から上がるらしい」で放置すると、翌月の1週目で赤字化しやすいです。
3) 来店の波が読める週に合わせる
値上げ日は「暇な日」より、スタッフ説明がそろえやすい日が向いています。
- 月替わりメニューの切替日
- 営業カレンダーの区切り日
- 予約比率が高く、事前案内しやすい週
14日で実行する、迷わない進め方
Day -14〜-10: 数字を確定
- 値上げ候補商品を3つに絞る
- 1食粗利の改定前後を試算する
- 「据え置き商品」を先に決める
Day -9〜-7: 告知を準備
- 店頭POP
- SNS投稿文
- スタッフの口頭説明
3つを同じ内容にそろえるのがポイントです。
Day -6〜-1: 現場合わせ
- よくある質問への返答を1行で統一
- レジ周りの価格表示を最終確認
Day 0: 価格改定
- 変更は開店前にまとめて反映
- 変更漏れがないか、最初の30分で確認
Day +14: 再判定
- 客数
- 1食粗利
- 来店頻度
この3つで続行/微調整を決めます。
5分で分かる実例(定食店)
- 改定前: 980円、原価380円、週140食
- 原価上昇後: 原価430円(価格据え置き)
改定前の週間粗利 = (980 - 380) × 140 = 84,000円
据え置き後の週間粗利 = (980 - 430) × 140 = 77,000円
この時点で週7,000円減です。 月で見ると約28,000円減るので、先送りするほど回復が難しくなります。
たとえば1,030円に見直して客数が5%減(133食)でも、
改定後の週間粗利 = (1,030 - 430) × 133 = 79,800円
据え置きよりは改善します。 ここから2週間データを見て、必要なら対象商品だけ微調整します。
お客さんへの伝え方(短文)
難しい説明は不要です。 事実を短く伝えるだけで大丈夫です。
仕入れ価格と人件費の上昇により、○月○日から一部メニュー価格を改定いたします。品質維持のため、ご理解いただけますと幸いです。
今週のチェックリスト
- 上位5商品の1食粗利を出した
- 主要食材の値上げ通知を確認した
- 値上げ候補を3商品まで絞った
- 告知を7〜14日前に出す日程を決めた
- 14日後の再判定日を決めた
まとめ
値上げの「正解日」は1日だけではありません。 ただ、遅すぎると選択肢が減るのは確かです。
まずは上位メニューの粗利から見てください。 そこが、いちばん安全なタイミングの入口になります。