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値上げしたいけど怖い——飲食店の値上げ、客離れしない伝え方とタイミング(2026年版)

2025年は2万品目超が値上げ。原価が上がっても値上げに踏み切れない飲食店へ、客離れを最小限にする伝え方・タイミング・告知例文を具体的に解説。

飲食店値上げ価格改定原価高騰客離れ告知2026
目次

「仕入れ値はどんどん上がってるのに、メニューの値段は3年前のまま」

こういう店、少なくないです。

帝国データバンクの調査(2025-12-26時点)によると、2025年の飲食料品値上げは合計2万609品目。前年を約6割上回りました。2025年4月だけで4,225品目が一斉に値上げされています。

仕入れ値が上がっているのに、売値を変えなければ利益が減っていくのは当たり前です。でも「値上げしたらお客さんが来なくなるかも」という不安が先に立って、ずるずる据え置きを続けている——。

この記事では、客離れを最小限にする値上げの進め方を、タイミング・伝え方・告知文の具体例まで含めて整理します。

先に結論

  • 原価が上がったのに売値を変えないのは「値引き」しているのと同じ
  • 値上げ幅は1回10%以内 が客離れを防ぐ目安
  • 告知は実施の1ヶ月前から。 最低でも2週間前
  • 「なぜ上げるか」を正直に伝える のが最も効果的
  • メニュー改定と同時にやる と値上げ単体が目立たない

まず「値上げしないリスク」を知る

値上げが怖いのはわかります。でも、値上げしないリスクのほうが実は大きい。

具体例:ラーメン1杯800円の店

項目3年前現在
麺・スープの原価240円 (30%)312円 (39%)
販売価格800円800円(据え置き)
粗利560円488円

原価率が30%→39%に上がると、1杯あたりの粗利が72円減る。1日80杯出す店なら、月の粗利は約17万円の減少。年間で200万円以上です。

これは極端な例ではありません。卵、油、小麦粉、野菜——飲食店が使う食材の多くが値上がりしている今、原価率が5〜10ポイント上がっている店はざらにあります。

値上げのタイミング——いつやるか

成功しやすい時期

時期理由
3月〜5月歓送迎会シーズン。新規客が増えるので、既存客への影響が薄まる
7月〜8月夏休みで来客数が増える観光地やファミリー層向けの店
メニュー改定時新メニュー導入と一緒にやると「リニューアル」として受け入れられる
消費税改定時税制変更のタイミングに合わせると自然

避けたい時期

時期理由
1月〜2月閑散期。客数が減っているときに追い打ちをかけることになる
年末の忘年会シーズン直前予約済みの幹事に不信感を与える
直前告知実施の1週間前以内の告知は「だまし討ち」に感じられる

最も自然なタイミング

新メニューの追加と同時にやるのが最も成功率が高いです。

理由はシンプル。お客さんが「前の値段」と比較しにくくなるからです。「ランチの日替わり定食が800円→880円」だと差が目立ちますが、「春の新メニューが登場しました。季節の天ぷら定食 980円」なら、比較対象が変わります。

伝え方——何を、どう言うか

鉄則:「理由」を伝える

「価格改定のお知らせ」だけでは不十分です。なぜ値上げするのかをきちんと伝えてください。

お客さんが知りたいのは「いくら上がるか」より、「なぜ上げなければいけないのか」です。

やるべき伝え方

やること具体例
仕入れ値の上昇を正直に伝える「食用油が1年前の1.3倍、鶏肉が1.2倍になりました」
品質を守る姿勢を示す「味と量を変えず、お出しするために」
感謝を添える「いつもご来店いただきありがとうございます」
具体的な改定日を明記「4月1日より一部メニューの価格を改定いたします」

やってはいけない伝え方

やらないことなぜダメか
告知なしで値上げ信頼を一気に失う。SNSで炎上するリスクもある
「諸般の事情により」で濁す何も伝えていないのと同じ。不信感が生まれる
過度な謝罪文値上げは悪いことではない。卑屈になる必要はない
ステルス値上げ(量を減らす)お客さんは量の変化に敏感。バレたときのダメージが大きい

告知文の書き方——コピペで使えるテンプレート

店内張り紙用

価格改定のお知らせ

いつもご来店いただき、ありがとうございます。

食材の仕入れ価格が大幅に上昇しており、
これまで価格の維持に努めてまいりましたが、
現在の品質と量を守り続けるため、
4月1日より一部メニューの価格を改定させていただきます。

【主な改定内容】
・ランチ定食 800円 → 880円
・夜の定食  1,000円 → 1,100円

ご理解いただけますと幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。

店主 ○○

SNS投稿用(Instagram・Xなど)

【お知らせ】

4月1日から一部メニューの価格を改定します。

ここ1年で食材の仕入れ値がかなり上がっていて、
正直ギリギリのところでやってきましたが、
味と量を変えずにお出しし続けるために、
今回の判断をしました。

値上げ幅はランチで80円〜100円ほどです。

これからも変わらない味をお届けできるよう
頑張りますので、引き続きよろしくお願いします。

ポイントは**「自分の言葉で書く」**こと。かしこまった定型文よりも、普段の自分の言葉で書いたほうが伝わります。

客離れを最小限にするテクニック

値上げで多少の客離れは避けられません。でも、やり方次第で影響は最小限にできます。

① 全メニュー一律ではなく、メリハリをつける

全品50円値上げ——これが一番やりがちで、一番失敗しやすいパターンです。

おすすめのやり方:

  • 看板メニュー(1〜2品)は据え置き。 「○○の値段は変わってない」と思ってもらえる
  • 原価が上がったメニューだけ値上げする。 理由が明確なので納得されやすい
  • 利益率が高いメニューは据え置き、低いメニューを値上げ。 全体の利益率を調整する

② 値上げと同時に「何か加える」

  • 新メニューを追加する
  • ランチにサラダやスープをつける
  • ドリンクの種類を増やす

値上げだけだと「取られた」と感じるけど、何かが増えると「変わった」と感じる。 この印象の差が大事です。

③ 常連客には個別に伝える

週2回以上来てくれるような常連さんには、張り紙ではなく直接声をかけるのが理想です。

「来月からちょっとだけ値段変わるんですけど、○○さんにはいつも来てもらっているので先にお伝えしておきますね」

たったこの一言で、常連客の印象はまったく変わります。

値上げの判断に必要な数字

「何となく厳しいから値上げする」ではなく、数字で判断することが大切です。

最低限知っておくべき3つの数字

指標計算式目安
原価率食材費÷売上×10030〜35%が健全。40%超は危険信号
人件費率人件費÷売上×10025〜30%が目安
FL比率(食材費+人件費)÷売上×10060%以内が健全。65%超は赤字圏

原価率が40%を超えていたら、「値上げすべきかどうか」ではなく、**「いつ値上げするか」**の問題です。

値上げ幅の決め方

ステップ1: レシピごとの原価を出す ステップ2: 目標原価率(例:33%)から逆算して売価を決める ステップ3: 現在の売価との差を確認する

例:ある料理の原価が350円。目標原価率33%の場合——

売価 = 350円 ÷ 0.33 = 約1,060円

現在の売価が900円なら、160円の値上げが「数字上は必要」ということです。ただし一度にそこまで上げると客離れのリスクがあるので、「まず1,000円に上げて、3ヶ月後に様子を見て1,050円」という段階的なやり方もあります。

KitchenCostを使うと、レシピごとの原価計算と目標原価率からの売価逆算が簡単にできます。「感覚」ではなく「数字」で値上げ幅を決められるようになります。

実際に値上げした飲食チェーンから学ぶこと

鳥貴族は2017年に全品280円→298円に値上げしました。一時は客数が落ちましたが、3年後には回復基調に。6.4%の値上げ幅で、品質と均一価格というブランドを守った判断でした。

CoCo壱番屋は主力のカレーを値上げした後、半年間は客数減少。しかしその後、利益が増加に転じました。

共通しているのは——

  • 理由を明確に説明した
  • 品質は維持した
  • 値上げ幅を抑えた(10%以内)

小さな飲食店でも、この3つを守れば大きな客離れは防げます。

今週やることチェックリスト

  • 主力メニュー5品の原価率を計算する
  • 原価率40%を超えているメニューをリストアップする
  • 値上げ幅を決める(まず10%以内で)
  • 告知文を書く(上のテンプレートを参考に)
  • 実施日を決める(1ヶ月後を目安に)
  • 常連客への声かけリストを作る

出典・参考:

  • 帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査」(2025年12月26日)
  • マイナビニュース「2025年に2万品目超が値上げ」(2025年12月28日)
  • 食べログ「飲食店の値上げのお知らせ方法」
  • レストランスター「飲食店の値上げを成功させる工夫5選」

よくある質問

飲食店の値上げはどれくらい前に告知すべきですか?

最低でも2週間前、できれば1ヶ月前には告知しましょう。常連客が多い店ほど早めの告知が大切です。「来月から変わります」と知っていれば受け入れやすくなりますが、行ったら突然値段が上がっていた、という体験は不信感につながります。

値上げ幅の目安はどれくらいですか?

1回の値上げで10%以内に抑えるのが客離れを防ぐ目安です。たとえば800円のランチなら880円まで。それ以上の値上げが必要な場合は、メニュー改定と同時に行うか、2回に分けて段階的に上げる方が受け入れられやすいです。

値上げのベストなタイミングはいつですか?

3月〜5月の歓送迎会シーズン、7月〜8月の夏休みシーズンなど、新規客の来店が増える繁忙期が成功しやすいです。逆に1月〜2月の閑散期は避けたほうが無難です。新メニューの追加やリニューアルに合わせると、値上げ単体が目立ちにくくなります。

ステルス値上げ(量を減らして値段据え置き)はアリですか?

おすすめしません。お客さんは量の変化に敏感です。「前より少なくなった」と感じた瞬間、信頼が崩れます。SNSで拡散されるリスクもあります。値段を上げるなら正直に伝えて、理由をきちんと説明するほうが長期的に信頼を守れます。

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