メニューを見直そうと思ったとき、多くの飲食店オーナーが最初に考えるのは「何を追加しようか」です。
「客層が広がるかも」「注文の選択肢を増やしたい」「競合がやっているから」——理由はいろいろ。
でも、実際にメニュー数を増やした結果、利益が増えたという店はどれだけあるでしょうか。
現場で起きているのは、むしろ逆のことが多い。
メニューが増えると、何が起きるか
メニュー数が増えると、表面上は「品揃え豊富」に見えます。でも裏では——
1. 食材の種類が増える → ストックする食材が増える → 冷蔵庫がパンパンになる → 奥の食材が忘れられる → 期限切れで廃棄
2. 出数が少ないメニューが生まれる → 週に2〜3食しか出ない料理の食材が余る → 使い切れずに廃棄
3. 仕込みが複雑になる → 朝の準備に時間がかかる → スタッフの負担が増える → 人件費が上がる
4. お客さんが迷う → メニュー表を眺める時間が長くなる → 回転率が下がる → 席あたりの売上が減る
つまり、メニューが増えるほど、コストが上がって売上効率が下がる。
これが、「メニューを絞ったら利益が増えた」という飲食店が多い理由です。
業態別:メニュー数の目安
「じゃあ何品くらいがいいの?」という疑問に対して、業態別の目安を整理しました。
| 業態 | 適正品数(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| ラーメン店 | 10〜15品 | 麺のバリエーション+サイドメニュー。主力は5種以内 |
| 定食屋 | 15〜25品 | 日替わりで変化をつける。定番+日替わり2〜3品 |
| カフェ | 15〜25品 | フード+ドリンク合計。フードは10品以内が理想 |
| イタリアン・フレンチ | 20〜35品 | コース+アラカルト。食材の重複率を高く保つ |
| 居酒屋 | 40〜60品 | ドリンク含む。フードは30品前後に抑えたい |
| 焼肉店 | 30〜50品 | 部位のバリエーション。サイドメニューは最小限 |
大事なのは品数そのものよりも、「主力メニューの比率」です。
メニュー全体に対して、主力商品が70%以上を占めているのが健全な状態。この比率が崩れると、仕込みが複雑になり、食材管理が追いつかなくなります。
メニュー構成の「黄金比」
儲かっている飲食店のメニュー構成を見ると、共通のパターンがあります。
| カテゴリ | 割合 | 役割 |
|---|---|---|
| 定番メニュー | 約40% | よく出る+お客さんが迷わず注文する。オペレーションが安定 |
| 看板メニュー | 約30% | 「この店ならでは」の商品。単価を上げる役割 |
| 変化メニュー | 約30% | 季節限定・日替わり。リピート来店のきっかけ |
この構成のメリットは——
- **定番40%**で仕入れが安定し、ロスが少ない
- **看板30%**で他店との差別化と単価アップ
- **変化30%**で「また来よう」を作りつつ、食材の柔軟な運用ができる
「変化メニュー」のポイントは、余りそうな食材を優先的に使うこと。日替わりや期間限定は、在庫管理のバッファとして機能します。
「このメニュー、やめるべき?」——3つの判断基準
メニューを減らそうと思っても、「どれをやめればいいかわからない」というのが本音。
以下の3つの基準で、各メニューを評価してみてください。
基準①:出数——週に何食出ているか
| 週の出数 | 判定 |
|---|---|
| 10食以上 | ◎ 維持 |
| 5〜9食 | ○ 食材の重複率次第 |
| 5食未満 | △ 見直し候補 |
| 2食未満 | × 廃止または期間限定化 |
週に2食未満のメニューのために食材をストックし続けることは、**「いつ廃棄してもおかしくない食材を冷蔵庫に置いている」**のと同じです。
基準②:食材の重複率
そのメニューの食材が、他のメニューでも使われているかをチェック。
- 高重複:鶏肉(唐揚げ、チキンサラダ、親子丼で共有) → ◎
- 中重複:トマトソース(パスタとピザで共有) → ○
- 低重複:バジルソース(1つのパスタだけ) → △
- 専用食材:そのメニューだけにしか使わない食材がある → ×
食材の重複率が低いメニューは、そのメニューを出さない限り食材が消費されない。注文がなければ、そのまま廃棄になります。
基準③:利益率
原価率が高すぎるメニューは、出数が多くても利益に貢献していない場合があります。
| 原価率 | 判定 |
|---|---|
| 25%以下 | ◎ 高利益 |
| 25〜35% | ○ 標準 |
| 35〜45% | △ 注意(集客メニューとして意図的ならOK) |
| 45%以上 | × 見直し必須 |
出数が少ない × 重複率が低い × 原価率が高い = 真っ先にやめるべきメニュー。
逆に、出数が少なくても重複率が高い(他の食材と共有できる)なら、残す価値はあります。
減らし方の実践ステップ
ステップ1:現状を把握する
まずは、全メニューの「出数」「食材リスト」「原価率」を書き出す。
これが面倒に感じるかもしれませんが、ここがすべてのスタートラインです。感覚ではなく、数字で判断するために。
KitchenCostを使えば、各メニューの原価率はすでに把握できているはず。あとは出数の記録を加えるだけ。
ステップ2:「やめる」「変える」「残す」に分類する
全メニューを3つに分ける。
| 分類 | 条件 | アクション |
|---|---|---|
| 残す | 出数多い+重複率高い+利益率OK | そのまま継続 |
| 変える | 出数少ない+食材重複あり | 日替わり・期間限定に変更 |
| やめる | 出数少ない+専用食材あり+利益率低い | メニューから削除 |
ステップ3:段階的に実行する
一気に10品減らすと常連さんが驚きます。おすすめは——
- 最初に「やめる」メニューの食材発注を止める
- 在庫がなくなったら「本日品切れ」として自然に消す
- 1ヶ月後にメニュー表を刷新
「品切れが続くと気にする人がいるかも」と心配するかもしれませんが、週2食未満のメニューを注文している人はほとんどいません。 気づかれないことのほうが多いです。
ステップ4:「変化メニュー」で柔軟性を持つ
メニューを減らした分は、**「日替わり」「週替わり」「季節限定」**で補います。
これのメリットは——
- 余りそうな食材を優先的に消化できる(ロス削減)
- 「今日は何があるんだろう?」という来店動機になる
- メニュー表を変えなくても、黒板やPOPだけで対応できる
よくある失敗パターン
失敗①:人気メニューまで消してしまう
出数の記録を取らずに「なんとなく」で減らすと、実は出ているメニューを消してしまうことがあります。必ずデータに基づいて判断してください。
失敗②:減らしたのに食材の種類が減っていない
メニューを5品やめたのに、残りのメニューに同じ食材を使っていなければ、仕入れる食材の種類は変わりません。 「食材の重複率を上げる」ことがポイントです。
失敗③:減らしすぎて「選ぶ楽しみ」がなくなる
業態にもよりますが、ある程度の選択肢は必要です。ラーメン店ならメニュー5品でも成り立ちますが、居酒屋で5品は厳しい。業態の目安品数を下回らないように。
メニュー設計と原価管理はつながっている
メニューの構成を変えるということは、仕入れる食材の構成が変わるということ。
つまり、メニューを見直すたびに、原価のシミュレーションが必要です。
「この食材を使うメニューを3品から1品に減らしたら、仕入れ単位が合わなくなる?」 「日替わりに切り替えたら、原価率はどう変わる?」
こうした計算を都度やるのは大変ですが、KitchenCostでレシピごとの原価を管理しておけば、メニュー構成を変更したときの原価シミュレーションがすぐにできます。
今週やることチェックリスト
- 全メニューの週あたりの出数を記録し始める
- 各メニューの主要食材を書き出す
- 食材ごとに「何品のメニューに使われているか」を確認する
- 週5食未満のメニューをリストアップする
- そのうち「専用食材があるもの」を特定する
- 「やめる」「日替わりに変える」「残す」の3分類を作る
- まずは1〜2品を「品切れ」にして反応を見る
出典・参考:
- 中村康彦「飲食店のメニュー構成とは?売れるメニュー設計の基本」
- みんなの飲食店開業「繁盛メニューの作り方」
- Manage labo「儲かる飲食店で必ず押さえているメニュー作りの5つのポイント」
- ワンゼミ「飲食店のメニューの数はどのように決めるか」
- フーズチャネル「飲食店が食品ロス対策をする方法」
- table source「世界の食品ロス削減アイデア8選」
- OpenKitchen「飲食店のメニュー設計と価格設定の基本」