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飲食店の94.6%が仕入れ値上昇に直面──食材高騰時代に原価率を守る7つの対策

2025年の食品値上げは2万品目超、米は2年で2倍、調味料は前年比+262%。それでも値上げできた飲食店は64.9%だけ。30ポイント分を自腹で吸収している店が大半。食材高騰を原価計算で乗り越える7つの具体策と、値上げを成功させるための伝え方を解説。

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目次

毎月届く仕入れの請求書を見て、ため息をつく回数が増えた。

米は2年前の2倍。卵は一時期の最高値からは下がったものの、以前の価格には戻らない。油も、味噌も、醤油も──ひとつひとつは数十円、数百円の上昇だが、全部まとめると月の仕入れ額がじわじわと膨らんでいく。

でも、メニューの値段は変えていない。

「値上げしたらお客さんが来なくなるんじゃないか」

この恐怖が、多くの飲食店オーナーの足を止めている。

数字で見る「食材高騰」の現実

まず、今何が起きているのかを数字で確認しておく。

2025年:食品値上げ2万品目超

帝国データバンクの調査によると、2025年に値上げされた食品は年間2万609品目。 前年(1万2,520品目)から64.6%増で、2023年以来2年ぶりに2万品目を超えた。

値上げ品目数前年比
2023年約3万品目(過去最多)
2024年1万2,520品目減少
2025年2万609品目+64.6%
2026年(1〜4月確定分)3,593品目やや減少傾向

分野別:調味料が異常な上がり方をしている

分野2025年値上げ品目数前年比
調味料6,221品目+262.7%
酒類・飲料4,901品目+80%超
加工食品多数増加傾向
冷凍食品多数米価格連動で増加

調味料が前年比**+262.7%**という数字は、飲食店にとって特に痛い。醤油、味噌、油、マヨネーズ──毎日使うものばかりだ。

米──「令和の米騒動」とその後

2024年に起きた「令和の米騒動」以降、米の価格は急騰した。

2025年3月時点で、2023年と比べて約2倍の水準。 スーパーでの小売価格だけでなく、業務用米も大幅に値上がりしている。

味の素冷凍食品は2026年2月から業務用の米飯類製品19品を15〜25%値上げ。 「原料米などの価格上昇が継続」が理由だ。

飲食店にとって米は、定食、丼もの、おにぎり、弁当──ほぼすべてのメニューの土台。米の価格が2倍になるということは、メニューの半分以上で原価が上がるということ。

飲食店の94.6%が影響を受けている──でも値上げできたのは64.9%だけ

帝国データバンクの2025年3月の調査で、見逃せないデータがある。

項目割合
仕入れ価格が上昇した飲食店94.6%
販売価格を上げた飲食店64.9%
差(自腹で吸収)29.7ポイント

飲食店の94.6%が仕入れ値の上昇に直面している。 これは全業種で最も高い数字だ。

しかし、自店の販売価格を上げた飲食店は64.9%にとどまる。約30%の店は、仕入れ値が上がっているのに価格を据え置いている。 つまり、利益を削って自分で吸収している。

この「30ポイントの差」が、個人飲食店の経営を静かに蝕んでいる。

なぜ値上げできないのか──3つの壁

壁①:「お客さんが離れる」という恐怖

一番大きな壁がこれだ。

「ランチ800円を850円にしたら、常連さんが来なくなるかもしれない」

この恐怖は理解できる。でも、実際にはどうか。

複数の業界調査では、理由を明示した値上げは、客数への影響が小さいことがわかっている。「食材高騰のため、一部メニューの価格を改定しました」と正直に伝えた店は、客離れが最小限にとどまるケースが多い。

逆に、黙って値上げするほうが問題だ。「あれ、この前より高くなってない?」と気づいたお客さんの不信感は、正直に伝えた場合よりも大きい。

壁②:「近所の競合が値上げしていない」

「うちだけ上げたら、隣の店にお客さんが流れる」

これもよく聞く。だが、実際には隣の店も同じ状況だ。仕入れ値は全業種共通で上がっている。隣の店が値上げしていないなら、利益を削って耐えているか、質を落としているか、どちらかの可能性が高い。

「先に値上げした店」は一時的に不利に見えるが、長期的には適正な利益を確保できている店が生き残る。

壁③:「値上げの伝え方がわからない」

「いつ、いくら、どうやって伝えるか」が決められなくて、結局ずるずる先延ばしになる。

これには具体的な解決策がある(後述)。

食材高騰に対抗する7つの対策

対策①:全メニューの原価率を再計算する

これが最初にやるべきことで、一番重要だ。

仕入れ値が上がっているのに、半年前の原価データで経営している店が驚くほど多い。

まず全メニューの原価率を今の仕入れ値で再計算する。すると「この商品は原価率45%を超えていた」と気づくことがある。

原価率 = 食材費(今の仕入れ値)÷ 売上 × 100

例:豚骨ラーメン
- 以前の食材費:250円(原価率31.3%)
- 今の食材費:310円(原価率38.8%)
→ 知らないうちに原価率が7.5%上がっていた

原価率が高い順にメニューを並べる。 上位3〜5品が「利益を食っている」犯人だ。

対策②:業態別の目安を知って比較する

自分の店の原価率が「高いのか低いのか」を判断するには、業態ごとの目安が必要だ。

業態原価率の目安備考
居酒屋28〜35%ドリンクで調整しやすい
ラーメン店30〜35%麺・スープの原価変動が大きい
カフェ25〜30%ドリンクの原価率が低い(10〜15%)
定食屋30〜38%米の影響を強く受ける
焼肉店35〜45%肉の仕入れ値に大きく左右される
弁当屋35〜40%容器代を含む

自分の業態の目安と比べて、3%以上高ければ対策が必要。 5%以上高ければ、早急に手を打つべきだ。

対策③:メニューの「原価率バランス」を見直す

全メニューを同じ原価率にする必要はない。高原価率のメニューと低原価率のメニューを組み合わせて、全体の利益を確保する。

メニュー原価率役割
看板メニュー(集客用)35〜40%お客さんを呼ぶ。利益は少なくてもOK
標準メニュー28〜32%安定した利益を出す主力
高利益メニュー15〜25%ドリンク、デザート、サイドメニューで利益を稼ぐ

例えば、原価率38%の看板ラーメンだけでは厳しくても、原価率15%のドリンク原価率20%のトッピングを一緒に頼んでもらえれば、1客あたりの平均原価率は下がる。

対策④:「歩留まり」で食材を見直す

一見安い食材でも、使える部分が少なければ結果的に高くなる。

実質キロ単価 = 仕入れ価格 ÷ 可食部の重量

例:キャベツ
- 1玉 200円、重さ1.2kg
- 外葉・芯を除いた可食部:900g
- 実質キロ単価:200 ÷ 0.9 = 222円/kg

例:カット野菜(キャベツ千切り)
- 1kg 280円
- 可食部:1kg(ロスなし)
- 実質キロ単価:280円/kg

キロ単価だけ見るとキャベツ丸ごとのほうが安いが、廃棄分を含めた実質コストで比べると差は60円。ここに人件費(洗い・カットの時間)を加えると、カット野菜のほうが安くなることもある。

高くても「歩留まりが良い食材」は、結果的にコスト削減になる場合がある。

対策⑤:セットメニューで客単価を上げる

値上げが難しい場合、客単価を上げて利益額を増やす方法がある。

方法効果
セット化ラーメン+餃子+ドリンクで1,200円客単価UP、全体の原価率が下がる
トッピング追加「味玉+100円」「チャーシュー増し+200円」追加分の原価率が低い
サイズ展開「大盛り+100円」追加の食材費は50〜60円程度

セットメニューは**「全部の原価率を平均する」効果**がある。原価率38%のメインと原価率15%のドリンクをセットにすれば、セット全体の原価率は下がる。

対策⑥:仕入れ先を定期的に見直す

ずっと同じ業者から同じ値段で仕入れていると思っていても、他の業者ならもっと安いケースは多い。

  • 業務スーパー:個人店でも使える大容量パック
  • 産直仕入れ:農家との直取引で中間マージンを省く
  • 共同購入:近隣の飲食店と一緒にまとめ買いする
  • ネット通販:業務用食材のEC(食材.net、Misumiなど)で価格比較

年に1〜2回、主要食材の相見積もりを取るだけで、月数万円のコスト削減につながることがある。

対策⑦:フードロスを減らす

仕入れ値を下げる以上に効果が大きいのが、捨てている食材を減らすこと。

農林水産省のデータでは、外食産業の食品ロス率は約3〜5%。年間売上3,000万円の店なら、90〜150万円分の食材が廃棄されている計算だ。

対策効果
発注量の見直し(曜日別の需要予測)余剰在庫を30〜50%削減
端材の活用(野菜の皮→出汁、パンの耳→ラスク)廃棄率を1〜2%改善
先入れ先出しの徹底消費期限切れロスを半減
メニュー数の絞り込み食材の種類が減り、管理がシンプルに

フードロスの削減は、利益率を直接的に改善する。 原価率を1%下げることと、年間売上の1%に相当するロスを減らすことは、利益への影響が同じだ。

値上げを成功させるための「伝え方」

最後に、一番多くの人が悩む「値上げの伝え方」について。

やってはいけない値上げ

  • 黙って値上げする:常連客は気づく。そして不信感を抱く
  • 一気に大幅値上げする:100円以上の値上げはインパクトが大きすぎる
  • 全メニュー同時に上げる:選択肢がなくなると、お客さんは店を変える

成功する値上げの3ステップ

ステップ1:理由を正直に伝える

店内に掲示する。ひとことでいい。

「食材価格の高騰に伴い、一部メニューの価格を改定させていただきます。引き続き、味と量は変えずに提供してまいります」

大事なのは**「味と量は変えない」**という約束だ。お客さんが一番恐れるのは、値上げと同時に量が減ったりクオリティが下がること。

ステップ2:段階的に上げる

一度に100円上げるのではなく、まず30〜50円。 反応を見て、2〜3ヶ月後にさらに調整する。

30円の値上げなら、ほとんどのお客さんは許容範囲内だ。

ステップ3:同時に何か「プラス」を加える

値上げと同時に小さな付加価値を足すと、値上げへの抵抗感が大きく下がる。

  • 小鉢をひとつ追加する
  • 盛り付けを少しだけ変える
  • 「新メニュー」として出し直す(名前と見た目を変えて、価格を新しく設定する)

「50円上がったけど、小鉢が増えたからまあいいか」──このくらいの感覚を作れれば成功だ。

この記事のポイント

  1. 2025年の食品値上げは2万品目超。調味料+262.7%、酒類+80%超。米は2年で約2倍
  2. 飲食店の94.6%が仕入れ値上昇に直面。でも値上げできたのは64.9%。30%の店は自腹で吸収
  3. まず全メニューの原価率を今の仕入れ値で再計算。半年前のデータは使えない
  4. 原価率のバランスで利益を守る。高原価の集客メニュー+低原価のドリンク・サイドの組み合わせ
  5. 歩留まりで食材を評価する。見た目の安さより「使える部分の実質コスト」
  6. 値上げは正直に伝える。黙ってやるのが一番まずい。段階的に、付加価値を足しながら

食材が高くなるのは、自分の力ではどうしようもない。でも、原価を正確に把握して、メニュー構成と価格設定で対応することは自分でできる。

「なんとなく大丈夫だろう」で先延ばしにすると、気づいたときには月の利益が半分になっていた──そういう話は、2025年以降本当に増えている。

まずは主力メニュー5品の原価率を、今日の仕入れ値で再計算してみてほしい。数字が見えれば、打つ手も見えてくる。

KitchenCostなら、食材の価格が変わったときにワンタップで全メニューの原価率を再計算できます。どのメニューが利益を圧迫しているか、一目でわかります。App StoreまたはGoogle Playからどうぞ。

よくある質問

2025年〜2026年の食品値上げはどのくらいですか?

帝国データバンクの調査によると、2025年の食品値上げは年間2万609品目で、前年比64.6%増。2023年以来2年ぶりに2万品目を超えました。特に調味料が6,221品目(前年比+262.7%)、酒類・飲料が4,901品目(前年比+80%超)と大幅増。2026年も1月〜4月だけで3,593品目の値上げが決定しています。

飲食店の原価率が上がっているのに値上げできないのはなぜですか?

帝国データバンク調査で、飲食店の94.6%が仕入れ価格上昇に直面していますが、販売価格を上げた割合は64.9%にとどまります。この30ポイントの差は「お客さんが離れるのが怖い」「近隣の競合が値上げしていない」「値上げの伝え方がわからない」という3つの理由が大きいです。結果として、利益を削って自腹で吸収している店が多数派です。

食材高騰で原価率が上がったとき、まず何をすべきですか?

まず全メニューの原価率を再計算してください。仕入れ値が上がっているのに、半年前の原価データのまま経営している店が多いです。再計算すると「この商品は原価率45%を超えていた」と気づくケースがよくあります。次に、原価率が高い順に並べて、上位3〜5品のメニューから対策(値上げ、食材変更、提供方法の見直し)を検討します。

お客さんに嫌がられない値上げの方法はありますか?

ポイントは3つ。①理由を正直に伝える(「食材価格の高騰により」と掲示する)、②一気に上げずに段階的に上げる(まず30〜50円、反応を見て追加)、③値上げと同時に何か付加価値を足す(小鉢追加、盛り付け改善など)。実際に、理由を明示して丁寧に値上げした店は、客数がほぼ変わらないというデータが複数の調査で出ています。

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