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飲食店を閉めるとき、届出を1つ忘れただけで「翌年も税金が来る」──廃業手続き完全チェックリスト

飲食店の閉店・廃業に必要な届出は保健所・税務署・警察・消防・年金事務所など最低8種類。提出期限を1つでも過ぎると追徴課税や保険料請求が続く。届出先・期限・書き方を一覧で整理。

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目次

閉店を決めたら、最初にやることは「感情の整理」ではない

2024年、飲食店の倒産件数は894件。過去最多を更新しました(帝国データバンク、2025-01-14発表)。

2025年上半期もすでに458件で、前年同期を上回っています。食材と人件費の高騰が止まらない中、「閉店」という選択は、もはや珍しいことではありません。

ただ、閉店を「決める」ことと、閉店を「完了する」ことは全く別の作業です。

保健所、税務署、警察署、消防署、年金事務所、ハローワーク——届出先は最低4箇所、従業員がいれば6箇所。提出する書類は8種類以上。そして、期限は「廃業日から10日以内」のものもあります。

「届出を1つ出し忘れた」だけで、翌年も税金の請求が届く。保険料が引き落とされ続ける。こういうトラブルは実際によくあります。

この記事は、**「閉店を決めたあと、何を・いつまでに・どこに出すか」**を、時系列のチェックリストで整理したものです。


先に全体像──閉店までのスケジュール

閉店の準備期間は最短2ヶ月、推奨3〜6ヶ月です。

全体の流れを先に見てください。

時期やること
6〜3ヶ月前物件の解約予告を出す(契約書を確認)
3ヶ月前仕入れ先に閉店連絡、在庫の調整開始
2ヶ月前居抜き売却を検討するなら業者に相談
30日以上前従業員に閉店を通知(解雇予告)
1〜2ヶ月前お客さんへの告知(店頭・SNS)
閉店日最終営業日
閉店後10日以内保健所・警察への届出
閉店後1ヶ月以内税務署への届出
閉店後5日以内社会保険・雇用保険の届出(従業員がいた場合)
翌年3月15日まで最終年度の確定申告

一番ありがちな失敗は、「解約予告期間を忘れていて、閉店後も家賃を払い続ける」ことです。賃貸契約書を今すぐ確認してください。


ステップ1:まず契約書を引っ張り出す

解約予告期間を確認する

飲食店の物件は、解約予告が3〜6ヶ月前に設定されている契約が大半です。

つまり、「来月閉めたい」と思っても、解約予告が6ヶ月前の契約であれば、向こう6ヶ月分の家賃が発生するということです。

  • 確認するもの: 賃貸借契約書の「解約条項」
  • 見るべきポイント: 解約予告期間、違約金の有無、原状回復の範囲

原状回復の条件を確認する

多くの飲食店の賃貸契約には、**「退去時はスケルトン(コンクリートむき出しの状態)に戻すこと」**と書かれています。

原状回復(スケルトン工事)の費用相場:

店舗の種類坪単価の目安
カフェ・軽飲食5〜8万円/坪
居酒屋・一般飲食8〜12万円/坪
ラーメン・焼肉(重飲食)10〜15万円/坪

20坪の居酒屋をスケルトンに戻す場合、160〜240万円。これだけの費用が閉店後にかかります。

ここがポイント:原状回復費を払う余裕がない場合は、「居抜き売却」を検討してください(後述します)。


ステップ2:届出の一覧──どこに・何を・いつまでに

ここが一番大事な章です。このリストを印刷して、1つずつ潰していってください。

【全員必須】保健所への届出

届出期限持ち物
廃業届廃業日から10日以内届出書(保健所の窓口またはWebで入手)
営業許可証の返納廃業届と同時営業許可証の原本

営業許可証をなくした場合は「紛失届」を一緒に出せば大丈夫です。届出は窓口でも郵送でも可能ですが、管轄の保健所によって様式が異なるので、事前に電話で確認するのが確実です。

【全員必須】税務署への届出

届出期限補足
個人事業の廃業届出書廃業日から1ヶ月以内e-Taxでもオンライン提出可能
所得税の青色申告の取りやめ届出書翌年3月15日まで青色申告者のみ。実務上は廃業届と同時提出が安全
事業廃止届出書速やかに消費税の課税事業者のみ
給与支払事務所等の廃止届出書廃業日から1ヶ月以内従業員やアルバイトに給与を払っていた場合

廃業届を出さないと何が起きるか:税務署は「事業が続いている」と判断します。結果として、翌年も所得税の予定納税や個人事業税の請求が届きます。「届出1枚を出し忘れた」だけで、本来払わなくていい税金の請求が来るのです。

【該当者のみ】警察署への届出

届出期限対象
深夜における酒類提供飲食店営業の廃止届出書廃業日から10日以内深夜0時以降にお酒を提供していた店(居酒屋・バー等)

深夜営業届を出していた店限定です。昼間だけの営業、またはお酒を出していない店には関係ありません。

【全員必須】消防署への届出

届出期限
防火管理者選任(解任)届出書廃業後速やかに

防火管理者を選任していた場合、「解任届」を出します。廃業日を解任日として記載してください。

【従業員がいた場合】年金事務所・ハローワークへの届出

届出先届出期限
年金事務所健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届廃業日から5日以内
ハローワーク雇用保険適用事業所廃止届廃業日から10日以内
ハローワーク雇用保険被保険者資格喪失届 + 離職証明書退職日の翌日から10日以内

特に注意すべきは、年金事務所への届出が「5日以内」であること。 閉店のバタバタで忘れやすいですが、届出を怠ると社会保険料が請求され続けます。


ステップ3:従業員への対応

解雇予告のルール

労働基準法では、閉店の30日以上前に従業員に通知する必要があります。

30日前に通知しなかった場合、不足日数分の解雇予告手当を支払わなければなりません。

通知タイミング解雇予告手当
30日以上前に通知不要
15日前に通知15日分の平均賃金を支払い
即日通知30日分の平均賃金を支払い

日給1万円のアルバイトが3人いて、即日通知した場合:1万円 × 30日 × 3人 = 90万円。この出費は大きいです。

早すぎる通知のリスク

かといって、3ヶ月前に通知すると、従業員が先に辞めてしまって閉店までの営業に支障が出るケースもあります。

現実的な目安は、閉店の40〜45日前。30日以上の猶予を確保しつつ、営業への影響を最小限に抑えるラインです。

やるべきこと

  • 離職票の準備: ハローワークで失業給付を受けるために必要な書類。従業員から求められたら10日以内に交付する義務があります
  • 源泉徴収票の発行: 退職年の分を作成して渡す
  • 社会保険の資格喪失手続き: 退職日の翌日から5日以内に年金事務所へ届出

ステップ4:お金の話──閉店費用の全体像

閉店には「開業より多くのお金がかかる」と言われることがあります。実際、何にいくらかかるのかを把握しておくことが大切です。

閉店にかかる費用の内訳

項目金額の目安備考
原状回復工事100〜300万円20坪の場合。重飲食はさらに高い
解約予告期間中の家賃家賃 × 残月数月30万なら3ヶ月で90万円
解雇予告手当0〜数十万円30日前通知で回避可能
残リース・レンタルの清算契約による厨房機器のリース残債
未払い仕入れ代金数万〜数十万円買掛金の精算
合計目安200〜500万円以上規模・業態・契約により大きく変動

閉店費用を大幅に減らす方法──居抜き売却

居抜き売却とは、内装や厨房設備をそのまま次の借り手に引き継いで退去することです。

メリット:

  • 原状回復工事が不要になる(100〜300万円の削減)
  • 設備に価値があれば売却益が出る(相場:数十万〜300万円)
  • 退去日ギリギリまで営業できる

つまり、原状回復費の削減と売却益を合わせると、最大で400〜600万円の差が出ることになります。

ただし注意点もあります:

  • 大家さんの承諾が必須(賃貸契約で禁止されている場合もある)
  • 設備が古すぎると買い手がつかない
  • 売却先が見つかるまで時間がかかることがある(平均1〜3ヶ月)

居抜き売却を専門に扱う業者(店舗買取り.comなど)に査定を依頼するのが最初のステップです。閉店を決めたらできるだけ早く相談してください。営業中の状態のほうが査定額は高くなります。


ステップ5:最終年度の確定申告

閉店した年も確定申告は必要です。ただし、いくつか「通常の年と違う処理」があります。

廃業年の確定申告でやること

項目内容
通常の収支計算1月1日〜廃業日までの売上・経費を集計
在庫の処理廃棄→「廃棄損」、売却→「売却損益」として計上
固定資産の処理未償却の設備→「固定資産除却損」として経費計上
原状回復費用必要経費として計上可能

赤字で閉めた場合

確定申告は義務ではありませんが、やったほうが得な場合が多いです。

  • 損益通算: 他の所得(給与所得など)と相殺して税金を取り戻せる
  • 純損失の繰越控除: 青色申告者は、赤字を翌年以降3年間繰り越して控除できる

つまり、閉店後に会社員として就職した場合でも、廃業年の赤字を使って翌年以降の所得税を減らせる可能性があります。

在庫と設備の処理記録

在庫を廃棄する場合は、証拠を残してください

  • 廃棄した食材の写真
  • 廃棄業者との契約書・領収書
  • 設備の売却先との取引記録

税務調査で「本当に廃棄したのか」と聞かれたときに、証拠がないと経費として認められないケースがあります。


閉店手続きチェックリスト──印刷用

最後に、すべての手続きを1枚のリストにまとめます。

閉店前

  • 賃貸借契約書を確認(解約予告期間・原状回復条件)
  • 大家さんに解約予告を提出
  • 居抜き売却を検討する場合は業者に相談
  • 仕入れ先に閉店を連絡、仕入れ停止の時期を調整
  • 従業員に閉店を通知(30日以上前
  • お客さんに告知(店頭掲示・SNS・常連への個別連絡)
  • 在庫の消化計画を立てる
  • リース・レンタル契約の解約手続き
  • ポイントカード・回数券・前売り券の精算方針を決める

閉店後──届出

  • 保健所: 廃業届 + 営業許可証返納(10日以内
  • 税務署: 個人事業の廃業届出書(1ヶ月以内
  • 税務署: 青色申告の取りやめ届出書(翌年3/15まで ※同時提出推奨)
  • 税務署: 事業廃止届出書(消費税課税事業者のみ)
  • 税務署: 給与支払事務所等の廃止届出書(従業員がいた場合、1ヶ月以内
  • 警察署: 深夜酒類提供飲食店営業 廃止届出書(該当者のみ、10日以内
  • 消防署: 防火管理者解任届出書
  • 年金事務所: 健康保険・厚生年金 適用事業所全喪届(従業員がいた場合、5日以内
  • ハローワーク: 雇用保険適用事業所廃止届(従業員がいた場合、10日以内
  • ハローワーク: 離職証明書の交付(従業員から請求があれば10日以内

閉店後──お金

  • 原状回復工事の手配(居抜き売却しない場合)
  • 未払い仕入れ代金の精算
  • 従業員への源泉徴収票の発行
  • 翌年3月15日までに最終年度の確定申告
  • 在庫・設備の処分記録を保管(写真・領収書)

「閉めるのが遅い」という判断はない

帝国データバンクの調査によると、飲食店の3年以内廃業率は**約50%**です(中小企業庁調査)。

「もう少し頑張れば持ち直すかも」と思って判断を先送りした結果、赤字が膨らんで閉店費用すら払えなくなる——。これが最も避けたいパターンです。

閉店を決めたなら、やるべきことは決まっています。

  1. 契約書を確認する(解約予告・原状回復条件)
  2. 届出リストを作る(この記事のチェックリストを使ってください)
  3. 居抜き売却を検討する(閉店費用を数百万円減らせる可能性がある)
  4. 専門家に相談する(税理士・社労士、費用は1〜3万円から)

手続きは多いですが、1つずつ潰していけば必ず終わります。


原価管理、最後まで数字を見る習慣

閉店準備中も、在庫の消化や最終月の収支管理で「数字を見る」作業は続きます。

KitchenCostは、レシピの原価計算から食材の在庫管理まで、飲食店の「数字まわり」をサポートするアプリです。閉店準備中の在庫消化計画にも、次の事業を始めるときの原価設計にも使えます。

App Store / Google Play

よくある質問

飲食店の廃業届はどこに出しますか?

最低でも4箇所に届出が必要です。保健所(廃業届・営業許可証返納)、税務署(個人事業の廃業届出書)、消防署(防火管理者解任届出書)、そして深夜にお酒を出していた店は警察署にも届出が必要です。従業員がいた場合は年金事務所とハローワークにも届出が加わり、合計6箇所になります。

飲食店の閉店にかかる費用はどれくらいですか?

原状回復(スケルトン戻し)が最大の出費で、坪単価5〜15万円が相場です。20坪の店舗なら100〜300万円。これに加えて解約予告期間中の家賃、未払い仕入れ代金、従業員への解雇予告手当などを含めると、総額200〜500万円以上かかるケースが一般的です。居抜き売却で原状回復費をゼロにできる場合もあります。

廃業届を出さないとどうなりますか?

税務署に廃業届を出さないと、事業が継続しているとみなされ、翌年以降も所得税の予定納税や個人事業税の請求が届きます。保健所に届け出なければ営業許可が残ったままになり、衛生責任が残ります。社会保険の喪届を出さなければ、保険料が請求され続けます。廃業届は「出し忘れた」だけで実害が出る書類です。

閉店を決めてから実際に店を閉めるまで、どれくらいかかりますか?

最短でも2ヶ月、余裕を持つなら3〜6ヶ月が目安です。物件の解約予告期間が3〜6ヶ月前に設定されていることが多く、これが全体のスケジュールを決めます。従業員への通知は30日前以上が必要(それ以下だと解雇予告手当が発生)。逆算して計画を立てないと、閉店後も家賃を払い続けることになります。

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