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飲食店の創業計画書、数字が甘いと融資は通らない──日本政策金融公庫に「この人なら貸せる」と思わせる書き方

公庫の創業融資を申し込む飲食店オーナー向け。原価率30%と書くだけでは落ちる。客単価×回転数×営業日数の根拠、FL比率の妥当性、運転資金6ヶ月分──融資担当者が見ているポイントと、通る計画書の書き方を具体例で解説。

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目次

「融資を申し込んだら、あっさり断られた」

飲食店の開業で日本政策金融公庫(以下「公庫」)に創業融資を申し込む人は多い。民間の銀行と違って、実績がない創業者にも貸してくれる。無担保・無保証人で使える。金利も低い。

でも、「誰でも借りられる」わけではない。

公庫の創業融資の審査で最も見られるのが「創業計画書」。A3用紙1枚のこのシートに書く数字が甘いと、面談に進んでもすぐ見抜かれる。

特に飲食店で多い失敗パターンがこれだ。

  • 原価率を「30%」と書いたが、根拠を聞かれて答えられない
  • 売上予測が「月商300万円」──でもその数字がどこから来たか説明できない
  • 運転資金を計算していない。「開業費さえあればなんとかなる」と思っている

この記事では、飲食店の創業計画書で融資担当者が実際に見ているポイントを整理して、「通る計画書」の書き方を解説する。

先に結論

  • 公庫の融資は「数字の根拠」で決まる。 願望ではなく計算を見せる
  • 原価率は主要メニューの積み上げで算出。 「業界平均30%」では弱い
  • 売上予測は「客単価 × 席数 × 回転率 × 営業日数」の式で書く
  • 運転資金は最低6ヶ月分を計上。 開業後3ヶ月は赤字が普通
  • 自己資金は総投資額の3分の1以上が現実的な目安

そもそも日本政策金融公庫の創業融資とは

飲食店の開業で最も使われる融資制度を簡単に整理する。

新規開業・スタートアップ支援資金(2025年3月〜)

項目内容
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間設備資金20年以内 / 運転資金10年以内
金利年2.5〜4.0%程度(2026年1月時点)
担保・保証人原則不要
自己資金要件制度上は撤廃。実務上は3分の1以上が目安

(出典:日本政策金融公庫 公式サイト、2026-01時点)

以前の「新創業融資制度」は2024年3月に廃止され、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合されている。無担保・無保証人で融資が受けられる点は変わらない。

飲食店の融資の現実

制度上の限度額は7,200万円だが、実際に融資されるのは自己資金の2〜3倍程度が多い。

自己資金現実的な融資額合計投資額
200万円400〜600万円600〜800万円
300万円600〜900万円900〜1,200万円
500万円1,000〜1,500万円1,500〜2,000万円

自己資金が少ないほど融資も少ない。 「全額借りれば開業できる」はほぼ通らない。

創業計画書のどこを見ているか──融資担当者の視点

公庫の創業計画書は8つの記入欄がある。このうち、飲食店の審査で特に重視されるのは4つ。

① 創業の動機──「なぜ飲食店なのか」

ここで見られているのは「本気度」と「経験」。

通りやすい書き方:

  • 飲食店での勤務経験(調理◯年、店長◯年など具体的に)
  • その経験から「こういう店が求められている」と感じた具体的なエピソード
  • 修業先との差別化ポイント

落ちやすい書き方:

  • 「料理が好きだから」「脱サラしたい」(趣味の延長に見える)
  • 飲食業の経験がゼロで、いきなり開業しようとしている
  • 「なんとなく儲かりそう」というニュアンスが伝わる文面

公庫のデータによると、飲食業の開業者のうち約7割は飲食業での勤務経験者。未経験者は審査のハードルが高くなる。

② 取扱商品・サービス──メニュー構成と価格設計

ここで原価率の根拠を示す。

「原価率30%を目標にします」だけでは足りない。主要メニューの原価を積み上げた一覧が必要。

原価計算の記載例(ラーメン店の場合)

メニュー販売価格材料原価原価率想定構成比
醤油ラーメン850円238円28%40%
味噌ラーメン900円270円30%25%
チャーシュー丼400円140円35%15%
餃子(6個)450円117円26%15%
ビール550円110円20%5%
加重平均29.1%100%

この「加重平均」が大事。メニューによって原価率はバラバラなので、売れる比率を掛けて全体の原価率を出す

ここまで書けると、融資担当者は「ちゃんと計算できる人だ」と判断する。

③ 事業の見通し──売上予測の根拠

売上予測は、この計算式で書く。

月間売上 = 客単価 × 席数 × 回転率 × 営業日数

記載例

項目数値根拠
客単価950円メニュー構成比から算出(上の表)
席数16席物件の図面から
回転率2.5回/日ランチ1.5回転 + ディナー1.0回転
営業日数26日/月週1休み
月間売上988,000円 × ?

待ってほしい。16席 × 2.5回転 × 950円 = 38,000円/日。月26日で988,000円

ここで「月商100万円弱」という現実的な数字が出る。「月商300万円を目指します!」と書くより、計算式から自然に導き出された数字のほうが100倍信用される

ただし、16席で月商100万円では家賃と人件費を払うと利益が厳しい。これは「立地と席数に対して業態が合っているか」を再検討するきっかけにもなる。

売上の上振れシナリオも書く

シナリオ回転率月商
保守的2.0回転79万円
標準2.5回転99万円
好調時3.0回転119万円

「保守的なシナリオでも返済可能」と示せると強い。

④ 必要な資金と調達方法──使途の内訳

ここは「開業にいくらかかるか」と「どこからお金を用意するか」の対応表。

記載例(小規模ラーメン店)

資金の使途

項目金額備考
物件取得費150万円保証金6ヶ月+仲介手数料
内装工事費250万円居抜き物件、一部改装
厨房設備120万円製麺機、冷蔵庫、ガス台
什器・備品30万円食器、テーブル、看板
運転資金200万円6ヶ月分の固定費
合計750万円

資金の調達方法

項目金額
自己資金250万円
公庫からの借入500万円
合計750万円

運転資金を入れ忘れる人が非常に多い。 飲食店の開業後3ヶ月は赤字が当たり前。6ヶ月分の家賃+人件費+食材費を運転資金として確保しないと、黒字化する前にお金が尽きる。

融資が落ちる3つのパターン

パターン1: 数字に根拠がない

「月商300万円」「原価率30%」と書いてあるが、なぜその数字なのか説明できない。担当者に「この客単価の根拠は?」と聞かれて黙ってしまう。

対策: メニュー表と価格設定を先に作り、原価を積み上げて計算する。

パターン2: 自己資金が不自然

通帳に突然まとまった金額が入金されている。これは「見せ金」(一時的に借りて残高を増やすこと)を疑われる。

対策: 自己資金は毎月コツコツ貯めた記録がある通帳が最強。

パターン3: 競合分析がない

「この立地でこの業態なら売れるはず」──でも、なぜそう言えるのかの根拠がない。半径500m以内にラーメン店が5軒あるのに、市場調査していない。

対策: 出店予定地の半径500m〜1kmの競合店を実際に食べ歩いて、価格帯・客層・混雑状況を記録する。

創業計画書の数字を整合させる──最終チェックリスト

創業計画書でもっとも大事なのは**「全体の整合性」**。一カ所の数字を変えたら、他の数字も連動して変わる。

  • メニュー別の原価率を積み上げて、全体の原価率を算出したか
  • 売上予測は「客単価 × 席数 × 回転率 × 営業日数」の式で計算したか
  • FL比率(食材費+人件費)が売上の55〜65%に収まっているか
  • 運転資金は最低6ヶ月分を確保しているか
  • 保守的な売上シナリオでも、月々の返済額を払えるか
  • 自己資金と融資希望額の比率は1:2〜1:3に収まっているか
  • 物件の家賃は月商の10%以内に収まっているか

すべての数字が「自分の計算」でつながっていること。これが融資担当者を安心させる最大のポイントだ。

今週やること

  • 出店予定地の半径1km以内の競合店を3〜5軒リストアップする
  • メニュー案を5〜10品作り、材料費を積み上げて原価率を計算する
  • 「客単価 × 席数 × 回転率 × 営業日数」で月商を3パターン出す
  • 公庫の創業計画書のテンプレート(公式サイトからダウンロード可)に記入してみる
  • 最寄りの公庫支店に相談予約を入れる(相談は無料)

原価率の根拠作りは、メニューの材料費を正確に把握することから始まる。 KitchenCostなら、食材をレシピに登録するだけで1品あたりの原価と原価率が自動計算される。創業計画書に添付する原価資料としても使える。

よくある質問

飲食店の創業融資はいくらまで借りられますか?

日本政策金融公庫の『新規開業・スタートアップ支援資金』では、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。ただし、実際に融資されるのは自己資金の2〜3倍程度が一般的で、自己資金300万円なら600〜900万円が現実的なラインです。無担保・無保証人で利用できるのが最大の特徴です。

創業計画書で原価率はどう書けばいいですか?

飲食店全体の原価率の目安は30%前後ですが、この数字を書くだけでは不十分です。主要メニュー5〜10品の『材料名・使用量・仕入れ単価・1品あたり原価』を一覧にして、そこから店全体の原価率を算出する根拠を示してください。公庫の担当者は『なぜその原価率になるのか』の根拠を見ています。

自己資金はいくら必要ですか?

制度上は自己資金要件は撤廃されていますが、実務上は総投資額の3分の1以上が目安です。開業費用が1,000万円なら自己資金300万円以上。自己資金が少ないと『本気度が低い』と判断されやすく、融資額も減ります。コツコツ貯めた貯金通帳が最も説得力があります。退職金や親族からの贈与も自己資金として認められます。

融資の面談ではどんなことを聞かれますか?

主に4つです。(1)なぜ飲食店をやりたいのか(動機と経験)、(2)この立地・業態を選んだ理由(市場分析)、(3)売上の数字の根拠(客単価×席数×回転率×営業日数の計算式)、(4)計画通りにいかなかった場合の対策(黒字化が遅れたときの資金繰り)。特に数字の根拠を具体的に説明できるかが合否を分けます。

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