聞きたいことがある
あなたのお店で 一番売れているメニュー。
その1品の原価は、いくらですか?
即答できた方は、この記事は読まなくていい。
「だいたいこのくらい」「まあ、利益は出てるはず」——そう思った方は、5分だけ時間をください。
なぜ、1品の原価が大事なのか
月の売上と仕入れ額だけ見ていると、「全体としてはまあまあ」と感じる。
でも、メニューごとに分解すると、意外な事実 が見えてくることが多い。
例えば、こんなケースがある。
メニューA(ランチ定食)
売値:900円 原価:360円 原価率:40% 粗利:540円
メニューB(パスタセット)
売値:1,200円 原価:300円 原価率:25% 粗利:900円
メニューAは一番人気で、毎日30食出る。でも原価率は40%。 メニューBは1日10食。でも1品あたりの粗利はAの1.7倍。
Aが30食で粗利16,200円。Bが10食で粗利9,000円。
もしBを15食に増やせたら? AとBの売上構成が変わるだけで、月の利益が数万円変わる。
こういうことは、1品ずつの原価を知らないと気づけない。
5分でできる原価計算の方法
一番売れているメニュー1品でやってみよう。
ステップ1:材料を書き出す(2分)
そのメニューに使っている材料を、全部書き出す。
例:カレーライス
| 材料 | 1人前の量 |
|---|---|
| ごはん | 250g |
| カレールー | 1/12箱 |
| 豚肉 | 80g |
| 玉ねぎ | 1/4個 |
| じゃがいも | 1/2個 |
| にんじん | 1/4本 |
| サラダ油 | 大さじ1 |
| 福神漬け | 大さじ2 |
ポイントは、調味料や付け合わせも含める こと。忘れがちだが、塩、油、ソース、ガーニッシュ、箸袋、紙ナプキン——全部コストだ。
ステップ2:材料ごとの単価を出す(2分)
仕入れ値を、使う量で割る。
| 材料 | 仕入れ値 | 1人前コスト |
|---|---|---|
| 米 5kg | 2,500円 → 250g | 125円 |
| カレールー 12皿分 | 350円 → 1/12 | 29円 |
| 豚こま 1kg | 1,200円 → 80g | 96円 |
| 玉ねぎ 1個 | 50円 → 1/4 | 13円 |
| じゃがいも 1個 | 40円 → 1/2 | 20円 |
| にんじん 1本 | 60円 → 1/4 | 15円 |
| サラダ油 | — | 3円 |
| 福神漬け | — | 8円 |
| 合計 | 309円 |
ステップ3:原価率を出す(1分)
原価率 = 材料費 ÷ 売値 × 100
309円 ÷ 850円 × 100 = 36.4%
この店のカレーライスの原価率は 36.4%。
カレーの場合、30〜35%が標準的。36.4%は少し高め。豚肉を減らすか、仕入れ先を見直すか、検討の余地がある。
見落としやすい「隠れコスト」
上の計算は「材料費だけ」だ。実際にはこんなコストも乗ってくる。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 歩留まりロス | 野菜の皮、肉の脂身、魚の骨。購入量の20-40%は廃棄になることも |
| 調理ロス | 焦がした、作りすぎた、失敗した分 |
| 容器・包材 | テイクアウトの場合、容器代が1食50-100円かかることも |
| 決済手数料 | キャッシュレス決済の場合、売上の3-4%が手数料として引かれる |
特に 歩留まり率 は重要だ。
例えば、1kgの鶏もも肉を買って、可食部が800gなら歩留まり率は80%。 実質の仕入れ単価は、表示価格の 1.25倍 になる。
これを計算に入れていないと、「計算上は利益が出るはずなのに、なぜか残らない」という状態になる。
「原価率」と「粗利額」の両方を見る
原価率だけで判断すると、間違える。
例:3つのメニューを比較
| メニュー | 売値 | 原価 | 原価率 | 粗利額 |
|---|---|---|---|---|
| コーヒー | 450円 | 45円 | 10% | 405円 |
| ハンバーグ定食 | 1,100円 | 385円 | 35% | 715円 |
| 海鮮丼 | 1,800円 | 810円 | 45% | 990円 |
原価率だけ見ると、コーヒーが最優秀。海鮮丼はワーストだ。
でも、1品売れたときの利益 は海鮮丼が一番大きい。
実際の経営では、こう考える。
- 回転率の高い時間帯(ランチなど)→ 粗利額が大きいメニューを推す
- 客単価を上げたいとき → 高価格・高粗利メニューを目立たせる
- 廃棄リスクが高い食材 → 原価率が低いメニューに組み込む
原価率と粗利額の 両方 を把握して初めて、メニュー戦略が立てられる。
よくある質問
Q: 全メニューの原価計算は必要ですか?
理想は全メニュー。でも、最初からやる必要はない。
まずは売上上位5品だけ でいい。
多くの店では、売上の60-80%を上位5-10品で稼いでいる。この上位メニューの原価を把握するだけで、全体像がかなり見えてくる。
Q: 食材の価格が変わったら、毎回計算し直すの?
月に1回で十分。月末に主要食材の仕入れ値をチェックして、大きく変動したものだけ更新する。
ただし、卵や小麦粉のように 大幅な価格変動 があった場合は、すぐに計算し直したほうがいい。2024-2025年は卵の卸売価格が1.5〜2倍になったケースがあった。
Q: 人件費は原価に入れるべき?
メニューの「原価率」を出すときは、通常 材料費のみ で計算する。
人件費は FL比率 で管理するのが一般的だ(FL比率 = 食材費+人件費 ÷ 売上)。
ただし、手間のかかるメニュー(手打ちうどん、手ごねハンバーグなど)は、調理時間を考慮した「実質原価」を意識しておくと判断が正確になる。
計算した後にやること
原価率が分かったら、メニューを4つのグループに分類してみよう。
| 人気がある | 人気がない | |
|---|---|---|
| 利益が高い | スター(稼ぎ頭) | 隠れた名品(もっと売りたい) |
| 利益が低い | 人気だけど儲からない(要改善) | お荷物(削除候補) |
- スター → 品切れしないように在庫管理を徹底
- 隠れた名品 → メニュー表で目立たせる、スタッフが薦める
- 人気だけど儲からない → 材料見直し、ポーション調整、値上げ検討
- お荷物 → 削除して仕込みの手間と廃棄を減らす
これが、飲食業界で言う メニューエンジニアリング の基本だ。
まとめ
メニュー1品の原価を計算するのに、5分あれば十分だ。
必要なのは、材料リスト、仕入れ値、電卓。それだけ。
「忙しくてそんな時間ない」と思うかもしれない。でも、その5分が、月に数万円の利益の差を生む。
今日、1品だけでいい。あなたの店で一番売れているメニューの原価を計算してみてほしい。
思ったより高かったら——それが、利益を増やすチャンスだ。
この記事で引用したデータの出典:帝国データバンク「食品値上げ調査」、経済産業省「商工業実態基本調査」