「水道代、なんか高くない?」
東京都内で定食屋を経営して10年の店主が、ある月の水道料金の明細を見て首をかしげた。
先月より5,000円高い。
「使い方は変えてないのに……?」
変わったのは使い方じゃない。水道料金そのものだ。
2025年から、全国各地で水道料金の値上げが相次いでいる。新潟市は平均29%値上げ。埼玉県の一部では40%増。関東だけで37の自治体が値上げを実施した。
そしてこれは始まりに過ぎない。
なぜ水道料金が上がるのか
理由はシンプルだ。日本中の水道管が寿命を迎えている。
数字で見る水道管の現状
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 日本の水道管総延長 | 約74万km(地球18周分) |
| 法定耐用年数(40年)超の管路率 | 約22%(2022年度) |
| 年間の更新ペース | 全体の約0.65% |
| 全管路を更新するのにかかる時間 | 約150年 |
1970〜80年代に一気に整備された水道管が、今いっせいに寿命を迎えている。でも更新するお金がない。
財務省の試算:「平均8割値上げが必要」
財務省の研究所の試算によると、水道管の更新費用を水道料金だけで賄うなら、全国平均で約8割(80%)の値上げが必要だとされている。
全国の水道事業体の**96%**が、将来的に値上げが避けられない状況だ。
飲食店は「水の大口消費者」
一般家庭の月間水道使用量は約20㎥。飲食店は業態にもよるが、その3〜10倍の水を使う。
業態別の水道代目安
| 業態 | 月間水道代の目安 |
|---|---|
| カフェ・喫茶店 | 1.5〜3万円 |
| 居酒屋 | 2〜4万円 |
| 定食屋・食堂 | 2〜5万円 |
| ラーメン店 | 3〜7万円 |
| 寿司店(鮮魚の洗い) | 3〜6万円 |
| 中華料理店 | 3〜8万円 |
30%値上げされたらいくら増える?
| 現在の水道代 | 30%値上げ後 | 月間の増加額 | 年間の増加額 |
|---|---|---|---|
| 2万円 | 2.6万円 | +6,000円 | +72,000円 |
| 3万円 | 3.9万円 | +9,000円 | +108,000円 |
| 5万円 | 6.5万円 | +15,000円 | +180,000円 |
月商300万円の店で水道代が年18万円増えるということは、利益から年18万円が消えるということだ。
今すぐできる5つの節水対策
「水道代が上がるのは仕方ない」と思うかもしれない。でも使う量は減らせる。
対策①:節水コマを取り付ける
蛇口の内部に取り付ける小さな部品で、水の流量を30〜50%カットできる。
- 費用:1個100〜300円。自治体によっては無料配布している
- 取り付け:蛇口を回して外し、中にコマを入れるだけ(5分)
- 効果:蛇口1本あたり月500〜1,000円の節約
店内のすべての蛇口に付けるだけで、月に数千円の削減になる。
対策②:流水解凍をやめる
冷凍食材を流水で解凍していないだろうか?
流水解凍は、1時間で約100リットルの水を使う。
毎日1時間の流水解凍をしている店なら、月に約3,000リットル(3㎥)の水を解凍だけで使っている計算だ。
代替案:
- 冷蔵庫解凍:前日に冷蔵庫に移すだけ。水はゼロ
- 氷水解凍:ボウルに氷水を入れて浸す。流水の1/10以下
対策③:食洗機を導入する
手洗いと食洗機の水使用量の差は歴然だ。
| 方法 | 1回あたりの水使用量 |
|---|---|
| 手洗い(流しっぱなし) | 約40〜60リットル |
| 食洗機 | 約8〜15リットル |
食洗機は手洗いの1/3〜1/5の水量で済む。
初期費用は30〜120万円だが、省力化投資補助金(カタログ型)を使えば実質半額で導入できる。水道代の節約分と合わせると、2〜3年で回収できるケースが多い。
対策④:「ため洗い」を徹底する
食器の下洗いを流しっぱなしでやっていないか?
ルール:蛇口は「すすぎ」のときだけ開ける。
下洗いはシンクに水を張って行い、最後のすすぎだけ流水を使う。これだけで洗い場の水使用量が30〜40%減る。
対策⑤:トイレの節水
客用トイレの水も無視できない。
- 節水型トイレへの交換(1回あたりの洗浄水量が13リットル→6リットルに)
- タンクに節水リングを入れるだけでも効果あり
水道代を原価に正しく反映する
水道代は「見えにくいコスト」だ。食材費ほど意識されないが、確実に利益を削っている。
水道代の原価配賦の考え方
| 方法 | 計算式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 売上比率法 | 月間水道代 ÷ 月間売上 | 最もシンプル。1.0〜3.0%が目安 |
| 食数比率法 | 月間水道代 ÷ 月間提供食数 | 1食あたりの水道コストがわかる |
例:月間水道代4万円、月間提供食数2,000食の場合——
1食あたりの水道コスト = 40,000円 ÷ 2,000食 = 20円/食
値上げで水道代が5.2万円になると——
1食あたりの水道コスト = 52,000円 ÷ 2,000食 = 26円/食
1食あたり6円の増加。年間で14万4,000円の利益減少。
値上げのスケジュールを確認する方法
自分の店がある自治体の水道料金が今後どうなるか、確認する方法は2つ。
① 自治体の水道局ホームページ
「○○市 水道料金 改定」で検索すると、多くの自治体が値上げのスケジュールと金額を公開している。
② 水道料金の検針票
検針票に「料金改定のお知らせ」が同封されていることがある。見逃さないこと。
今週やること
- 今月の水道料金の明細を確認し、前年同月と比較する
- 自治体の水道局サイトで、値上げ予定があるか調べる
- 蛇口の数を数えて、節水コマの必要数を把握する(自治体で無料配布がないかも確認)
- 流水解凍をしている食材があれば、冷蔵庫解凍に切り替えられないか検討する
- 「1食あたりの水道コスト」を一度計算してみる
水道料金の値上げは、食材の値上げと違って「仕入れ先を変える」ことができない。
使う量を減らすか、原価に正しく反映するか。やれることは限られている。だからこそ、今のうちに手を打つことが大事だ。
水道代を含む光熱費の原価配賦には、KitchenCostが使えます。月間の水道代を入力するだけで、1食あたりの水道コストが自動計算されます。