確定申告が終わって、ふと思う。
「これ、税理士に頼んだほうがよかったんじゃないか。」
レシートの仕分けに2日。経費の科目がわからなくてネットで調べるのに半日。会計ソフトの入力でまた2日。合計で、営業日を4〜5日つぶした。
でも税理士に頼むと、月に何万円かかかる。個人の小さな店で、そんな余裕があるのか。
「頼むのは高い。でも自分でやるのも、実はタダじゃない。」
この記事では、飲食店の個人事業主が税理士に払う費用と、自分でやる場合の「見えないコスト」を、数字で比べてみる。
先に結論
- 税理士に顧問を頼む場合、売上500万円未満の個人店で年17〜34万円、売上1,000万円超で年42〜80万円が相場
- 確定申告だけのスポット依頼なら年5〜15万円で済む
- 一方、自分でやる場合の「見えないコスト」は年間20〜50万円相当(時間+ミスリスク+税務調査リスク)
- 売上1,000万円を超えたら、税理士を検討するタイミング。消費税申告が加わり、難易度が一気に上がる
- 一番多い選択肢は**「会計ソフト+年1回のスポット相談」のハイブリッド型**
税理士に頼むと、いくらかかるのか
「税理士の費用」と一口に言っても、頼み方で金額がまるで違う。
パターン①:確定申告だけスポットで頼む
自分で日々の記帳をやって、年に1回だけ確定申告書の作成と提出を依頼するパターン。
- 費用:5万〜15万円/年
- 売上が小さいほど安い。500万円未満なら5〜10万円が多い
- 記帳は自分でやるので、毎日のレシート整理は必要
こんな店に向いている:売上が小さめ、会計ソフトの操作はできる、日々の記帳は苦にならない。
パターン②:毎月の記帳+確定申告をまとめて頼む
日々のレシートや領収書を税理士に渡して、記帳から確定申告まで丸ごとお任せするパターン。
| 売上規模 | 月額顧問料 | 確定申告料 | 年間合計 |
|---|---|---|---|
| 〜500万円 | 1〜2万円 | 5〜10万円 | 17〜34万円 |
| 500万〜1,000万円 | 1.5〜3万円 | 8〜15万円 | 26〜51万円 |
| 1,000万〜3,000万円 | 2.5〜5万円 | 12〜20万円 | 42〜80万円 |
決算料(確定申告料)は月額顧問料の4〜6ヶ月分が一般的な目安。さらに消費税の申告が必要になると、5万〜10万円が追加になることもある。
パターン③:経営相談まで含めた顧問契約
税務だけでなく、「今月の数字を一緒に見て、来月どうするか」まで相談できるパターン。
- 月額3〜5万円+確定申告料
- 補助金の申請サポートが含まれる場合もある
- 年間50〜80万円以上になることも
「自分でやる」は本当に安いのか
「税理士に年30万円も払えない」と思って自分でやる人は多い。でも、「自分でやるコスト」を計算したことがある人はほとんどいない。
見えないコスト①:時間
飲食店の個人事業主が自分で経理をやる場合のイメージ。
| 作業 | かかる時間 |
|---|---|
| 毎日のレシート整理・記帳 | 15〜30分/日 × 約300日 = 75〜150時間/年 |
| 月末の帳簿チェック | 2〜3時間/月 × 12 = 24〜36時間/年 |
| 確定申告の準備・作成 | 20〜40時間/年 |
| 合計 | 119〜226時間/年 |
仮に時給1,500円で換算すると、年間18〜34万円分の労働にあたる。
しかも、この時間はお店を開けて売上を作る時間に使えたはずの時間だ。月商200万円の店なら、1日の売上は約6.6万円。確定申告の準備で3日つぶしたら、約20万円の売上機会を失っている。
見えないコスト②:ミスのリスク
会計の知識がない状態でやると、意外なところでミスが起きる。
よくあるミスとその損失:
- 青色申告65万円控除を取れない:複式簿記の要件を満たせず、10万円控除になってしまう。差額55万円の所得控除がなくなり、所得税+住民税で約8〜16万円の損
- 経費にできるものを見逃す:まかないの福利厚生費、自家消費の処理、減価償却の計算ミスなど。年間数万円〜十数万円の節税機会を逃す
- インボイスの処理ミス:2026年以降、2割特例が終了した事業者は、課税方式の選択を間違えると消費税の負担が大きく変わる
見えないコスト③:税務調査リスク
個人事業主全体の税務調査確率は年1〜2%。一見低そうに見えるが、10年で考えると**10〜20%**になる。10人に1〜2人は調査が来る計算だ。
しかも飲食店は、税務署から見て高リスク業種に分類されている。
理由は明確で、現金取引が多いからだ。カード決済は記録が残るが、現金は「申告しない」ことが物理的に可能。だから飲食店は、他の業種より税務調査の対象になりやすい。
特に注意が必要なケース:
- 開業3年以上で売上が伸びている店
- 売上1,000万円前後(消費税の課税事業者ラインを意識しているように見える)
- 経費率が同業他社より極端に高い店
飲食店では**事前連絡なしの「無予告調査」**が行われるケースもある。ある日突然、営業中のお店に調査官が来る。帳簿の整備が不十分だと、追徴課税+延滞税+加算税で数十万円の出費になることもある。
税理士がいれば、調査への事前対策と立ち会いができる。いなければ、一人で対応するしかない。
「自分でやる」vs「税理士に頼む」比較表
売上800万円の個人飲食店をモデルに比較してみよう。
| 項目 | 自分でやる | 税理士に頼む(顧問) |
|---|---|---|
| 会計ソフト代 | 約2万円/年 | 0円(税理士側で処理) |
| 税理士費用 | 0円 | 約30〜45万円/年 |
| 記帳の時間コスト | 約20〜30万円相当 | 0時間 |
| 確定申告準備の時間 | 約5〜10万円相当 | 0時間 |
| 節税の最適化 | 自力で限界あり | 年5〜15万円の節税余地 |
| 税務調査対応 | 自分で対応(不安大) | 税理士が立ち会い |
| 実質コスト | 約27〜42万円相当 | 約15〜30万円(節税分を差し引き) |
「自分でやれば0円」は幻想だということがわかる。時間とリスクを金額に換算すると、むしろ税理士に頼んだほうが安くなるケースがある。
売上規模別の「最適解」
売上300万円未満(開業初期・副業)
- おすすめ:会計ソフトで自分でやる
- 理由:経費のパターンが少ない。帳簿もシンプル
- 会計ソフト(freee、マネーフォワード等)は月1,280円〜で使える
- 不安なら、確定申告の時期だけスポットで相談(3〜5万円)
売上300万〜1,000万円(多くの個人店がここ)
- おすすめ:会計ソフト+年1回のスポット相談
- 理由:記帳は自分でできるが、確定申告の最適化は専門家に聞いたほうが安全
- 費用:会計ソフト2万円+スポット5〜15万円 = 年7〜17万円
- この価格帯なら、顧問料よりかなり安い
売上1,000万円超
- おすすめ:顧問契約を検討する
- 理由:消費税の課税事業者になるため、申告が格段に複雑化する
- インボイス対応、簡易課税 vs 本則課税の選択、消費税申告書の作成
- 従業員がいれば源泉徴収・年末調整も加わる
- 費用:年42〜80万円かかるが、節税と時間節約で十分ペイする可能性が高い
税理士を選ぶときの3つのチェックポイント
「じゃあ頼んでみよう」と思ったとき、どの税理士を選ぶかで満足度が大きく変わる。
1. 飲食業に詳しいかどうか
飲食店には独特の経費がある。まかないの処理、棚卸し、自家消費、減価償却(厨房機器)、原価率の管理。これらを知っている税理士と、知らない税理士では対応が全く違う。
「飲食店のお客さんは何件くらいいますか?」と聞いてみるのが一番わかりやすい。
2. レスポンスの速さ
「聞きたいことがあるのに、1週間返事が来ない」という不満は税理士の口コミで一番多い。
契約前に**「質問したら何日以内に回答がもらえますか?」**と聞くこと。「2営業日以内」と答えてくれるところを選ぼう。
3. 料金体系が明確かどうか
「月額いくら」「確定申告はいくら」「消費税申告は別途いくら」──料金の内訳がはっきりしている税理士を選ぶ。
「やってみないとわからない」と言う税理士は避けたほうがいい。
「税理士はいらない」が正解になるケース
全員が税理士を雇うべきとは限らない。以下に当てはまるなら、自分でやったほうがいい。
- 会計ソフトの操作に慣れている(簿記の基本がわかる)
- 売上が1,000万円未満で、経費パターンが少ない
- 毎日15分の記帳が苦にならない
- 確定申告を3回以上経験している
こうした人は、会計ソフト(年2万円前後)+年1回のスポット相談(3〜5万円)で、年5〜7万円で十分回せる。
逆に、こんな人は税理士を頼んだほうがいい:
- 確定申告の準備に毎年3日以上かかる
- 売上が1,000万円を超えて消費税の申告が必要
- 従業員を雇っていて、源泉徴収や年末調整がわからない
- レシートが溜まると、見るだけで嫌になる
今週できる3つのこと
- 確定申告にかけた時間を振り返る(何日つぶした? その日の売上機会はいくら?)
- 会計ソフトを使っていないなら、無料プランを試してみる(freee、マネーフォワード、弥生はどれも無料で始められる)
- 税理士の無料相談を1件受けてみる(多くの事務所が初回無料で対応している。「うちの規模なら顧問料はいくら?」と聞くだけでOK)
まとめ
「税理士に頼むのは贅沢」──そう思って自分でやっている個人店のオーナーは多い。
でも、確定申告に費やす時間を時給に換算したことはあるだろうか。経費の計上漏れで、年間いくら損しているか計算したことはあるだろうか。
**税理士の費用は「コスト」ではなく「投資」**にもなりうる。頼むことで浮いた時間を営業に使い、節税で手元に残るお金が増えれば、顧問料は十分にペイする。
まずは自分の店の売上規模と、確定申告にかけている時間を確認すること。そこから、「頼むべきか、自分でやるべきか」が見えてくる。
💡 KitchenCostは、レシピの材料費と原価率を自動計算できるアプリです。税理士に任せるのは「税務」、でも日々の原価管理は自分の手で──レシピの原価を正確に把握しておくことが、帳簿の精度にもつながります。