「メンタルヘルス? うちの店には関係ないよ」
忙しいランチタイムを乗り越え、仕込みをして、ディナーの営業。閉店後に片付けと翌日の発注。
こんな毎日で「ストレスチェック」なんて考える余裕がない──それが個人飲食店の本音だろう。
でも、2028年頃から、従業員が1人でもいる事業場はストレスチェックが義務になる。
「知らなかった」では済まない。今のうちに、何をすればいいのかを押さえておこう。
何が変わるのか?
これまで(2024年まで)
- 従業員50人以上の事業場のみ、ストレスチェックが義務
- 50人未満は「努力義務」(やってもやらなくてもいい)
これから(2028年頃〜)
- 全事業場に義務化。従業員1人でも対象
- アルバイト2人の小さな飲食店も対象
2025年5月に法改正が成立。施行は「公布後3年以内」で、2028年4月頃と見込まれている。
ストレスチェックとは何をするのか?
やることは意外とシンプルだ。
①質問票に答えてもらう
従業員に57問のアンケートに答えてもらう。所要時間は10〜15分。
質問の例:
- 「非常にたくさんの仕事をしなければならない」(はい / いいえ)
- 「時間内に仕事が処理しきれない」(はい / いいえ)
- 「上司に気軽に話ができる」(はい / いいえ)
質問票は厚生労働省が用意している。自分で作る必要はない。
②結果を本人に返す
回答結果を集計し、ストレスの度合いを数値で本人に通知する。
- 「あなたのストレスレベルは高いです」
- 「あなたのストレスレベルは低いです」
重要: 結果はオーナー(事業主)には直接通知されない。個人のプライバシーが守られる仕組み。
③高ストレス者への対応
「高ストレス」と判定された従業員が希望すれば、医師の面接指導を受けられるようにする。
- 面接指導は従業員の「希望」があった場合のみ
- オーナーが強制することはできない
費用はいくらかかるのか?
| 方法 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自分でやる(無料ツール) | 0円 | 厚労省「こころの耳」の無料プログラムを使う |
| 外部委託(最安値) | 1人あたり300〜500円/年 | オンライン完結型のサービス |
| 外部委託(標準) | 1人あたり500〜1,000円/年 | 集計・分析・面接手配まで一括 |
| 産業医の面接指導 | 1回3,000〜10,000円 | 高ストレス者が希望した場合のみ |
従業員5人の飲食店の場合:
- 自分でやる → 0円
- 外部委託(最安値) → 1,500〜2,500円/年
年間数千円で済む。「コストがかかるから」は断る理由にならない。
個人飲食店の現実的な対応方法
パターンA: 従業員5人以下 → 自分でやる
- **厚労省の「こころの耳」**サイトから無料の質問票をダウンロード
- 紙またはオンラインで従業員に回答してもらう(営業終了後の10分間)
- 結果を集計し、本人に返却
- 高ストレス者がいれば、最寄りの産業保健総合支援センター(無料)に相談
産業保健総合支援センターは全国に設置されており、50人未満の事業場は無料で相談できる。
パターンB: 手間をかけたくない → 外部委託
オンライン完結型のストレスチェックサービスを利用。
- 従業員にURLを送る → 回答 → 自動集計 → 結果通知
- オーナーには個人結果は通知されず、全体の傾向のみ報告
なぜ飲食店は特にやるべきなのか?
飲食業はメンタルヘルスの問題が多い業種だ。
| ストレス要因 | 飲食業での実態 |
|---|---|
| 長時間労働 | ランチ〜ディナー通し営業で12時間超え |
| 不規則な勤務 | 朝の仕込み、深夜の閉店、休みが不定期 |
| 人手不足 | 1人で何役もこなす。休めない |
| クレーム対応 | 理不尽な要求、カスハラ |
| 孤立感 | オーナー1人で悩みを抱え込む |
ストレスチェックは「義務だからやる」だけではない。
アルバイトの突然の退職を防ぐ。 高ストレスの兆候に早く気づけば、シフトの調整や休暇の付与で対応できる。突然辞められて営業できなくなるよりずっといい。
2028年に向けた準備スケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 今すぐ | 「ストレスチェック義務化」の概要を理解する ←今ここ |
| 2026年度 | 厚労省が小規模事業場向けマニュアルを公表予定。内容を確認 |
| 2027年 | 自分の店でどの方法(自力 or 外部委託)で実施するか決める |
| 2028年4月頃 | 施行。年1回のストレスチェック開始 |
慌てる必要はないが、知らないまま2028年を迎えるのが一番まずい。
今すぐやること
- **「ストレスチェック」**という制度があることを知った ←完了
- 厚労省「こころの耳」のサイトをブックマークしておく
- 従業員がいるなら、日頃から「最近どう?」と声をかける習慣をつける
- 2026年度のマニュアル公表を待つ(ニュースをチェック)
ストレスチェックは、年1回・10分のアンケートだ。 それで従業員の突然の離職を1件でも防げれば、採用コスト(数万〜数十万円)をはるかに上回るリターンがある。
KitchenCostは、個人飲食店の経営をサポートするアプリです。原価管理が見える化されると、「利益が出ているかわからない」というオーナーのストレスが1つ減ります。