「ニッパチ」──飲食店オーナーが最も嫌いな言葉
2月の平日、夜8時。
店内にお客さんは2組。
「あれ、今日も暇だな……」
1月は年始の宴会で忙しかった。12月は忘年会で毎日満席だった。
でも2月になると、まるでスイッチが切れたように客が来なくなる。
家賃25万円。アルバイトの給料20万円。光熱費12万円。これらは1人もお客さんが来なくても発生する。
閑散期に「待っているだけ」では、確実に赤字になる。
閑散期のダメージを数字で見る
月商200万円の居酒屋が、2月に売上が25%落ちた場合。
| 項目 | 通常月 | 閑散期(▲25%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 200万円 | 150万円 | ▲50万円 |
| 食材費(30%) | 60万円 | 45万円 | ▲15万円 |
| 人件費 | 50万円 | 50万円(変わらない) | 0円 |
| 家賃 | 25万円 | 25万円(変わらない) | 0円 |
| 光熱費 | 12万円 | 11万円 | ▲1万円 |
| その他 | 13万円 | 12万円 | ▲1万円 |
| 利益 | 40万円 | 7万円 | ▲33万円 |
売上が50万円減っても、固定費は変わらない。 減るのは食材費だけ。
結果、利益は40万円→7万円。オーナーの取り分がほぼ消える。
これが閑散期の怖さだ。売上が25%減ると、利益は80%以上消える。
対策1: 仕込み量を「天気×曜日」で絞る
閑散期に最もやってはいけないのは、通常月と同じ量を仕込むこと。 来客が減っているのに仕込み量が同じなら、廃棄ロスが増えるだけ。
やることはシンプル:
- 先月の曜日別来客数を見る
- 閑散期は通常月の**70〜80%**で仕込む
- 天気予報を毎朝確認し、雨の日はさらに**10〜20%**減らす
| 曜日 | 通常月の来客数 | 閑散期の目安 |
|---|---|---|
| 月曜 | 30人 | 22〜24人 |
| 火曜 | 35人 | 25〜28人 |
| 水曜 | 35人 | 25〜28人 |
| 木曜 | 40人 | 28〜32人 |
| 金曜 | 55人 | 40〜44人 |
| 土曜 | 60人 | 45〜48人 |
| 日曜 | 45人 | 32〜36人 |
仕込み量を20%減らすだけで、月の食材廃棄が3〜5万円減る。
対策2: 閑散期限定メニューで「理由」を作る
閑散期に来てもらうには、「今行く理由」が必要。
効果的な限定メニューのパターン
| パターン | 例 | 効果 |
|---|---|---|
| 季節限定 | 2月限定「とろける牡蠣鍋」 | 旬の食材で「今だけ」感 |
| 平日限定 | 平日ディナー限定「前菜3種盛り無料」 | 平日の来客を底上げ |
| 数量限定 | 1日5食限定「特製煮込みハンバーグ」 | 希少性で来店動機に |
| コラボ | 近隣の酒屋と「地酒×おつまみセット」 | 新規客の取り込み |
限定メニューの原価計算は必ず事前にやる。 集客のために原価率の高いメニューを出しすぎると、売上は増えても利益は増えない。
対策3: テイクアウト・デリバリーで売上を補填
閑散期は店内の客が減る。ならば店の外で売る。
| 方法 | 初期費用 | 月の追加売上目安 |
|---|---|---|
| テイクアウト弁当(店頭販売) | 容器代のみ | 5〜15万円 |
| Uber Eats・出前館 | 0円(手数料型) | 10〜30万円 |
| 冷凍食品の通販 | 機材・パッケージ | 5〜20万円 |
デリバリーの手数料(30〜35%)を考慮したデリバリー用の原価計算が必須。通常メニューの価格設定のままデリバリーに出すと、利益がほぼゼロになるケースが多い。
対策4: 常連客にアプローチする
閑散期に来てくれるのは常連客。新規客を呼ぶより、常連客に来てもらう方が効率が良い。
LINE公式アカウント
- 月1回、閑散期限定メニューの告知
- 「1月中にご来店いただいたお客様限定」のクーポン
- 「2月の平日、ドリンク1杯サービス」
手書きのDM(ハガキ)
- 年末の忘年会シーズンに来てくれたお客さんに
- 「2月の新メニュー、ぜひ試しに来てください」
- 手書きは開封率・来店率が圧倒的に高い
1通63円のハガキで、客単価4,000円の常連が来てくれれば、投資効率63倍。
対策5: シフトを閑散期用に組み直す
スタッフを減らすのではなく、シフトの時間配分を変える。
| 時間帯 | 通常月 | 閑散期 |
|---|---|---|
| ランチ(11:00-14:00) | 3人 | 2人 |
| アイドルタイム(14:00-17:00) | 2人 | 1人 |
| ディナー(17:00-22:00) | 3人 | 2人 |
1日1人×3時間分のシフトを減らすと、時給1,100円×3時間×25日=月82,500円の削減。
対策6: アイドルタイムを収益化する
14:00〜17:00の暇な時間帯を「売上ゼロの時間」にしない。
| アイデア | 内容 |
|---|---|
| カフェ利用 | ランチ後にコーヒー+デザートで客単価UP |
| おやつメニュー | 15:00台に「スイーツプレート」 |
| 作り置き惣菜の販売 | テイクアウト用の惣菜を準備 |
| 貸し切り・イベント | 会議やワークショップのスペース貸し |
対策7: 閑散期を「投資期間」にする
売上は落ちるが、時間には余裕ができる。この時間を繁忙期への準備に使う。
| やること | 効果 |
|---|---|
| メニューのABC分析 | 死に筋メニューを外し、原価率を改善 |
| 厨房の大掃除 | 衛生管理の強化、機器の故障予防 |
| スタッフの教育 | 新人の研修、接客トレーニング |
| 新メニューの試作 | 春の新メニューを仕込む |
| SNS・Googleマップの更新 | 写真の更新、口コミへの返信 |
| 仕入れ先の見直し | 相見積もりで食材費を下げる |
閑散期にメニューのABC分析をやって死に筋を外した結果、翌月の原価率が2%下がったという事例は珍しくない。月商200万円なら月4万円、年間48万円の効果。
閑散期の心構え
閑散期は毎年必ず来る。 避けることはできない。
できるのは──
- 来ることを前提に、繁忙期の利益を蓄えておく
- 変動費を絞って、赤字幅を最小化する
- 時間を使って、繁忙期の準備をする
閑散期を「暇な月」ではなく「利益を守り、次の繁忙期に備える月」と捉えられるかどうか。 それが、年間通して利益を出せる店と出せない店の違いだ。
今すぐやること
- 過去1年の月別売上を並べて、閑散期がいつか把握する
- 閑散期の仕込み量を通常月の70〜80%に設定する
- LINE公式アカウントで常連客に閑散期メニューを告知する
- アイドルタイムの活用を1つ試す
- 閑散期にメニューのABC分析をやる
KitchenCostは、メニューごとの原価率を計算できるアプリです。閑散期こそ、売れ筋と死に筋を見直すチャンス。原価率の高いメニューを整理するだけで、翌月からの利益が変わります。