「電気代、また上がったの?」
大阪で20席の定食屋を切り盛りしている50代の店主。毎月届く電気料金の明細を、最近は開くのが怖い。
「先月より3,000円高い。食材もガスも上がってるのに、電気代まで……」
値上げの要因は複数あるが、中でも知らないうちに増えているのが「再エネ賦課金」だ。
再エネ賦課金とは何か──「見えない電気代」の正体
電気料金の3つの構成要素
電気料金の明細を見たことがあるだろうか。実は、電気代は3つの要素でできている。
| 構成要素 | 内容 | 自分で変えられるか |
|---|---|---|
| 基本料金+従量料金 | 電力会社に払う料金 | プラン変更・会社切替で可能 |
| 燃料費調整額 | 石油・天然ガス価格に連動 | 変えられない |
| 再エネ賦課金 | 再生可能エネルギー普及の費用 | 変えられない |
再エネ賦課金は、太陽光発電や風力発電を支えるために、電気を使うすべての人から集めるお金だ。国が毎年単価を決め、電力会社に関係なく一律で適用される。
つまり、電力会社を切り替えても、再エネ賦課金だけは安くならない。
過去最高の3.98円──12年で18倍になった
| 年度 | 再エネ賦課金(円/kWh) | 備考 |
|---|---|---|
| 2012年(制度開始) | 0.22 | – |
| 2016年 | 2.25 | – |
| 2020年 | 2.98 | – |
| 2023年 | 1.40 | 政府補助で一時下落 |
| 2024年 | 3.49 | – |
| 2025年 | 3.98 | 過去最高 |
12年前は1kWhあたり0.22円だったものが、今は3.98円。約18倍だ。
飲食店の電気代にいくら影響するのか──業態別で計算
業態別の月間電力使用量と再エネ賦課金の負担
| 業態 | 月間電力使用量(目安) | 再エネ賦課金(月) | 再エネ賦課金(年) |
|---|---|---|---|
| カフェ(10坪) | 1,000〜1,500 kWh | 3,980〜5,970円 | 約5〜7万円 |
| 定食屋(15坪) | 1,500〜2,500 kWh | 5,970〜9,950円 | 約7〜12万円 |
| 居酒屋(20坪) | 2,000〜4,000 kWh | 7,960〜15,920円 | 約10〜19万円 |
| ラーメン店 | 2,500〜5,000 kWh | 9,950〜19,900円 | 約12〜24万円 |
| 焼肉店 | 3,000〜6,000 kWh | 11,940〜23,880円 | 約14〜29万円 |
一般家庭(月260kWh)の再エネ賦課金は月約1,035円。飲食店はその4〜20倍を払っている。
前年度からの増加分だけでも……
2024年度の3.49円から2025年度の3.98円へ、0.49円の上昇。
| 業態 | 月間電力使用量 | 賦課金増加分(月) | 賦課金増加分(年) |
|---|---|---|---|
| カフェ | 1,200 kWh | 588円 | 約7,000円 |
| 定食屋 | 2,000 kWh | 980円 | 約12,000円 |
| 居酒屋 | 3,000 kWh | 1,470円 | 約18,000円 |
| ラーメン店 | 4,000 kWh | 1,960円 | 約24,000円 |
「たかが年間1〜2万円」と思うかもしれない。でもこれは再エネ賦課金だけの話。
2026年4月以降──「三重の値上げ」が飲食店を襲う
値上げ①:再エネ賦課金(過去最高3.98円が継続or上昇)
2026年度の再エネ賦課金は2026年3月時点で未発表だが、太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)のコストが積み上がっているため、横ばいまたはさらに上昇する見通しだ。
値上げ②:電力会社10社すべてが料金改定
2026年4月の検針分で、北海道電力から沖縄電力まで大手10社すべてが電気料金を値上げした。託送料金(送配電の費用)の見直しが主な要因だ。
値上げ③:電気代補助金の終了
政府の電気・ガス料金激変緩和措置(補助金)は2026年1〜3月使用分で実施されたが、4月以降は未定。過去の補助金では低圧契約で1kWhあたり2.5〜4円の値引きがあった。
もし補助金が終了すると──
月2,000kWh使用の定食屋なら、補助金分だけで月5,000〜8,000円の負担増。年間で6〜10万円が上乗せされる。
個人飲食店が今からできる5つの電気代対策
対策①:電力会社・料金プランの見直し(投資ゼロ)
もっとも手軽で効果的。新電力を含めた料金比較を行い、基本料金と従量料金を下げる。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 削減効果 | 月額の3〜10% |
| 初期費用 | 0円 |
| 手間 | Web申込で完了、工事なし |
| 注意点 | 再エネ賦課金は変わらない |
対策②:LED照明への全面切り替え
まだ蛍光灯や白熱灯を使っているなら、LEDに替えるだけで照明の消費電力が約50%減。
| 項目 | 蛍光灯 | LED |
|---|---|---|
| 消費電力(40W形) | 38W | 18W |
| 年間電気代(1本、12h/日) | 約6,000円 | 約2,800円 |
| 寿命 | 約6,000時間 | 約40,000時間 |
店内に蛍光灯が20本あるなら、LED化で年間約6万円の削減。初期費用は1本1,500〜3,000円程度で、1〜2年で元が取れる。
対策③:冷蔵庫・冷凍庫の運用見直し
飲食店の電力消費の**30〜40%**を占めるのが冷蔵・冷凍設備。
- 庫内温度を1℃上げると、消費電力が約2〜3%減少
- 扉の開閉回数を減らす(仕込み前にまとめて取り出す)
- コンデンサー(放熱フィン)の清掃を月1回行う → 効率10〜15%改善
- ゴムパッキンの劣化チェック → 隙間から冷気が漏れると電力浪費
コスト:0円。やるかやらないかだけ。
対策④:エアコンの使い方を見直す
- フィルター清掃を2週間に1回 → 消費電力5〜10%削減
- 室外機の周囲を片付ける(排熱の妨げが効率低下の原因)
- 営業開始30分前に弱運転で冷やし始め、強運転を避ける
- 10年以上前のエアコンなら買い替えで30〜40%削減(省力化投資補助金も対象になる場合あり)
対策⑤:電気代を原価に正しく反映する
対策をしても上がる分は上がる。大事なのは、電気代の上昇を原価計算に反映することだ。
電気代の原価反映の考え方:
月の電気代 ÷ 月の営業日数 ÷ 1日の提供食数 = 1食あたりの電気代
例)月の電気代8万円、月25日営業、1日80食の場合:
80,000 ÷ 25 ÷ 80 = 40円/食
この「40円/食」を、年間で8万円上がるなら──
(80,000 + 6,700) ÷ 25 ÷ 80 ≒ 43円/食
1食あたり3円の増加。メニュー価格を10〜20円上げれば余裕で吸収できる水準だ。
まとめ:「見えない値上げ」を見える化する
再エネ賦課金は過去最高の3.98円/kWh。電力10社すべてが値上げ。補助金も終了の見通し。
飲食店の電気代は「三重の値上げ」に直面している。でも、正体が分かれば対策は打てる。
今週やること:
- 直近3ヶ月の電気料金明細を引っ張り出す
- 月間のkWh使用量を確認する
- 再エネ賦課金の金額を計算してみる(kWh × 3.98円)
- 電力会社の切り替えを検討する(Web比較サイトで5分)
- 1食あたりの電気代を計算し、原価表に組み込む
電気代を含めた光熱費を正確に把握しておけば、「なんとなく利益が減った」ではなく「何にいくらかかっているか」が見える。KitchenCostで日々の原価管理をしておくと、光熱費込みのトータルコストで判断できるようになる。