ブログ

飲食店の開業、届出は最大12種類──「知らなかった」で開店が遅れる前に読む手続き完全一覧

飲食店開業に必要な届出は保健所・税務署・消防署・警察署など最大12種類。営業許可は申請から交付まで2〜3週間、届出の順番を間違えると工事やり直し。全届出の提出先・期限・費用・必要書類を一覧で整理。

飲食店開業届届出一覧営業許可保健所税務署消防署食品衛生責任者防火管理者個人事業主開業手続き2026年
目次

保健所に行く前に、まず消防署に相談する──この順番を間違えた人の話

知り合いが居抜き物件でカフェを開業したときの話です。

物件の契約を済ませ、内装の打ち合わせを進め、食品衛生責任者の講習も受けた。あとは保健所に営業許可を申請するだけ──そう思って保健所に行ったら、こう言われた。

「消防署の検査結果は持っていますか?」

消防署に確認を取っていなかったため、先に消防署で防火対象物使用開始届を出し、検査を受け、その結果をもらってから保健所に再提出。オープン予定日が2週間遅れた。

飲食店の開業には、最大12種類の届出が必要です。提出先は保健所、税務署、消防署、都道府県税事務所、場合によっては警察署、労働基準監督署、ハローワーク。

そして、届出には「順番」がある。 これを知らないと、同じ窓口に何度も足を運ぶことになる。

この記事では、どこに・何を・いつまでに・いくらで・何を持っていくかを、提出の順番どおりに整理しました。


まず全体像──届出の数と提出先

区分届出数
全員必須4種類
条件付き(該当すれば必須)最大8種類
合計最大12種類

全員必須の届出(4種類)

届出名提出先期限費用
飲食店営業許可申請保健所工事完了10日以上前15,000〜19,000円
防火対象物使用開始届出書消防署使用開始7日前無料
個人事業の開業届出書税務署開業から1ヶ月以内無料
事業開始等申告書都道府県税事務所開業から15日〜1ヶ月以内無料

条件付きの届出(該当すれば必須)

届出名提出先条件
青色申告承認申請書税務署節税したい人(ほぼ全員)
防火管理者選任届出書消防署建物全体の収容人員30人以上
防火対象物工事等計画届出書消防署内装工事をする場合
深夜酒類提供飲食店営業開始届警察署深夜0時以降に酒類を提供
給与支払事務所等の開設届出書税務署従業員を雇う場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署従業員10人未満
労働保険 保険関係成立届労働基準監督署従業員を1人でも雇う場合
雇用保険適用事業所設置届ハローワーク週20時間以上の従業員を雇う場合

ポイント:青色申告承認申請書は「任意」だが、出さないと年間最大65万円の控除を捨てることになる。 実質的には全員必須と考えていい。


手続きの正しい順番──「開業6ヶ月前」から「開業後1ヶ月以内」まで

届出にはやるべき順番がある。順番を間違えると、冒頭のカフェのように「あちらを先に済ませてください」と差し戻される。

タイムライン

時期やること
6〜3ヶ月前①食品衛生責任者の講習を受ける
3〜2ヶ月前②保健所に事前相談(図面を持参)
2〜1ヶ月前③消防署に事前相談 → 防火対象物工事等計画届を提出
内装工事完了前④消防署に防火対象物使用開始届を提出(使用開始7日前)
工事完了後⑤保健所に営業許可を申請 → 施設検査
許可証交付後⑥開業日を決定
開業日〜1ヶ月以内⑦税務署・都道府県税事務所に届出
従業員を雇った翌日〜10日以内⑧労働基準監督署・ハローワークに届出

一番多い失敗:保健所に先に行って、消防の確認を求められて出直す。消防が先、保健所が後。


【ステップ1】食品衛生責任者の資格を取る

飲食店を開業するには、店舗ごとに食品衛生責任者を1人置く必要がある。これは営業許可の条件なので、許可申請の前に取得しておく必要がある。

項目内容
受講料約10,000円(eラーニングは約12,000円)
所要時間1日(約6時間)
受講場所各都道府県の食品衛生協会
試験なし(講習を最後まで受ければ修了)
有効期限なし(ただし定期的な実務講習の受講が推奨)

受講が不要な人:調理師、栄養士、製菓衛生師、医師、薬剤師などの資格を持っている人は、講習なしでそのまま食品衛生責任者になれる。

注意点

  • 人気の日程はすぐ埋まる。 東京都では月に数回開催されているが、土日は1〜2ヶ月先まで満席ということもある。開業を決めたら真っ先に予約する。
  • eラーニングは自治体による。 東京都、大阪府など対応している自治体が増えているが、全自治体で対応しているわけではない。

【ステップ2】保健所に事前相談する

営業許可の申請をする前に、必ず保健所に事前相談に行く。 これが最も重要なステップ。

なぜか。飲食店の営業許可を取るには、施設基準を満たす必要がある。この基準は細かくて、自治体によっても微妙に違う。工事が終わってから「この設備がありません」と言われたら、追加工事で数十万円かかる。

事前相談で確認すること

  1. 自分の業態に必要な許可の種類
    • 飲食店営業、菓子製造業、そうざい製造業…業態によって必要な許可が異なる
  2. 施設基準の詳細
    • 二槽式シンクの設置義務(手洗い専用+洗い物用)
    • 床と壁の材質(耐水性、清掃しやすい素材)
    • 換気設備、照明(50ルクス以上)
    • 冷蔵庫の温度計
    • トイレの手洗い設備
  3. 必要書類の確認
    • 自治体ごとに微妙に異なる
  4. 消防署との連携の有無
    • 保健所が消防署に照会するかどうか(自治体による)

持っていくもの

  • 店舗の平面図(手書きでもOK)
  • メニューの概要(何を提供するか)
  • 物件の住所

相談は無料。 予約が必要な保健所もあるので、事前に電話で確認する。


【ステップ3】消防署に届出を出す

保健所の事前相談と並行して、消防署にも行く。内装工事を始める前が理想。

① 防火対象物工事等計画届出書

項目内容
対象内装の間仕切り変更・修繕・模様替えなどの工事をする場合
期限工事開始の7日前まで
費用無料
提出先管轄の消防署(予防課)

居抜き物件で内装をほぼ変えない場合は不要なこともある。事前に消防署に確認する。

② 防火対象物使用開始届出書(全員必須)

項目内容
対象全飲食店
期限使用開始の7日前まで
費用無料
必要書類届出書、平面図、立面図、付近の見取り図など

居抜き物件でもテナントが変わったら必要。 前のテナントが出していたとしても、新しいテナントとして改めて届出が必要。

③ 防火管理者選任届出書

項目内容
対象建物全体の収容人員が30人以上
期限営業開始日まで
費用届出は無料(講習費は別途)
資格取得甲種(2日・7,000〜8,000円)/ 乙種(1日・2,500円)

収容人員の数え方に注意。 自分の店だけでなく、入っているビル全体で計算する。カウンター8席+スタッフ3人=11人でも、ビル全体で30人を超えていれば対象。

延べ面積300㎡未満なら乙種、300㎡以上なら甲種の資格が必要。個人飲食店の多くは乙種で済む。

④ 消火器の設置

2019年10月の消防法改正により、すべての飲食店に消火器の設置が義務化された。面積に関係なく、火を使う飲食店は消火器が必要。

項目費用
業務用消火器(10型)4,000〜6,000円
交換時期製造から10年

【ステップ4】保健所に営業許可を申請する

内装工事が完了したら(あるいは完了する10日以上前に)、保健所に営業許可を申請する。

必要書類

書類備考
営業許可申請書保健所の窓口またはWebで入手
施設の構造及び設備を示す図面平面図・配置図
食品衛生責任者の資格を証明する書類修了証のコピー
水質検査成績書貯水槽・井戸水を使用する場合のみ
登記事項証明書法人の場合のみ
申請手数料自治体による(下表)

手数料の目安

自治体新規申請更新
東京都18,300円8,900円
大阪市16,000円
名古屋市16,000円
福岡市16,000円

更新は5〜8年ごと(自治体による)。

施設検査

申請書類を提出すると、保健所の職員が現地に来て施設検査をする。チェック項目は主に以下の通り。

  • 手洗い設備:手洗い専用の流水式手洗いがあるか
  • 二槽式シンク:洗い物用と消毒用で2つ以上のシンクがあるか
  • 床・壁:耐水性があり清掃しやすい素材か
  • 冷蔵庫の温度計:温度計が見える位置に設置されているか
  • 換気設備:適切な換気ができるか
  • トイレ:手洗い設備があるか(調理場と離れているか)
  • 防虫・防鼠設備:網戸や排水口のトラップなど

不合格になると、改善して再検査を受ける必要がある。 再検査のたびにオープンが遅れる。だからステップ2の事前相談が大事。

申請から交付まで

ステップ所要時間
書類提出 → 施設検査数日〜1週間
検査合格 → 許可証交付約1週間
合計約2〜3週間

営業許可証が交付されるまで営業を始めることはできない。 許可証なしで営業すると、食品衛生法違反で2年以下の懲役または200万円以下の罰金


【ステップ5】税務署・都道府県税事務所に届出を出す

開業したら(営業開始後でOK)、以下の届出を税務署に提出する。

① 個人事業の開業届出書(全員必須)

項目内容
期限開業から1ヶ月以内
費用無料
提出先納税地の所轄税務署
提出方法窓口持参、郵送、e-Tax
必要なもの届出書、マイナンバー確認書類、本人確認書類

出さなくても罰則はない。ただし以下のデメリットがある:

  • 青色申告ができない(→ 最大65万円の所得控除が使えない)
  • 屋号付きの銀行口座が開設しにくい
  • 小規模企業共済に加入できない
  • 事業実態の証明が面倒になる(融資申請時など)

事実上、出さない理由がない書類。

② 青色申告承認申請書(ほぼ全員)

項目内容
期限開業から2ヶ月以内
費用無料
メリット最大65万円の所得控除

「2ヶ月以内」を過ぎると、その年は青色申告ができない。 翌年まで待つことになる。開業届と一緒に出すのが鉄則。

③ 事業開始等申告書

項目内容
期限開業から15日〜1ヶ月以内(自治体による)
費用無料
提出先都道府県税事務所

個人事業税の課税対象になるための届出。税務署の開業届とは別に、都道府県にも出す必要がある。忘れる人が多い。


【条件付き】従業員を雇う場合の届出

アルバイトでもパートでも、1人でも雇ったら届出が必要。

① 給与支払事務所等の開設届出書

項目内容
提出先税務署
期限給与支払事務所の開設から1ヶ月以内
費用無料

従業員の給与から源泉所得税を天引きして納める義務が生じるための届出。

② 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

項目内容
提出先税務署
条件従業員が常時10人未満
メリット源泉所得税の納付が年2回でOK(通常は毎月)

個人飲食店はほぼ全員該当する。出しておくと事務負担が大幅に減る。

③ 労働保険 保険関係成立届

項目内容
提出先労働基準監督署
期限雇用開始日の翌日から10日以内
保険料飲食業は給与総額の0.3%(2026年度)

アルバイト1人でも加入義務がある。 「うちは小さい店だから」は通用しない。労災保険は従業員のための保険であり、保険料は全額事業主負担。

④ 雇用保険適用事業所設置届+雇用保険被保険者資格取得届

項目内容
提出先ハローワーク
条件週20時間以上、31日以上の雇用見込みがある従業員
期限翌月10日まで
保険料率事業主負担0.95%+従業員負担0.55%(飲食業、2026年度)

週20時間未満のアルバイトだけなら雇用保険は不要。ただし労災保険は必要。


【条件付き】深夜にお酒を出す場合──警察署への届出

バーや居酒屋で深夜0時以降もお酒を提供する場合、警察署への届出が必要。

深夜酒類提供飲食店営業開始届

項目内容
提出先管轄の警察署(生活安全課)
期限営業開始日の10日前まで
費用無料
必要書類届出書、営業所の平面図、住民票、賃貸借契約書のコピーなど

注意点

  • 用途地域の制限がある。 住居系の用途地域(第一種低層住居専用地域など)では営業できない。
  • 「接待」をする場合は別の許可が必要。 カウンター越しにお酒を出すだけなら届出で済むが、従業員がお客さんの隣に座って接待する場合は「風俗営業許可」が必要(審査に2ヶ月かかる)。
  • 届出なしで深夜営業すると、50万円以下の罰金。

費用の総額──届出だけでいくらかかるか

ここまでの届出にかかる費用を合計する。

最小構成(1人で営業、深夜営業なし)

項目費用
食品衛生責任者 講習10,000円
営業許可申請手数料16,000〜19,000円
消火器4,000〜6,000円
開業届・その他届出無料
合計約30,000〜35,000円

従業員あり・防火管理者あり

項目費用
食品衛生責任者 講習10,000円
営業許可申請手数料16,000〜19,000円
消火器4,000〜6,000円
防火管理者講習(乙種)2,500円
開業届・その他届出無料
合計約32,500〜37,500円

届出そのものの費用は意外と安い。 飲食店の開業でお金がかかるのは物件取得費と内装工事であり、届出の費用は全体の1%にも満たない。だからこそ、「費用を惜しんで届出をしない」という選択は割に合わない。


よくある失敗5つ

失敗①:消防署より先に保健所に行く

冒頭で紹介した通り。自治体によっては保健所が消防署に照会するため、消防の確認が取れていないと営業許可が出ない。消防→保健所の順番を守る。

失敗②:青色申告承認申請の2ヶ月を過ぎる

開業直後は忙しい。「あとで出そう」と思っているうちに2ヶ月が過ぎると、その年は白色申告しかできない。 65万円の所得控除が消える。開業届と一緒に同じ日に出す。

失敗③:居抜き物件なのに届出を「前の人が出してるから大丈夫」と思う

テナントが変わった時点で、前テナントの届出は無効。新しいテナントとして、すべて改めて届出が必要。 営業許可も防火対象物使用開始届も、すべてやり直し。

失敗④:食品衛生責任者の講習を直前に予約しようとする

講習は人気日程だと1〜2ヶ月先まで埋まっている。営業許可の申請には資格証が必要なので、講習が受けられない=許可申請ができない=開業できない。物件を契約する前でもいいので、早めに受講する。

失敗⑤:都道府県税事務所への届出を忘れる

税務署に開業届を出して安心してしまい、都道府県税事務所への「事業開始等申告書」を忘れるケースが多い。出さないとペナルティが来ることは稀だが、あとから「出してください」と連絡が来る。最初にまとめて済ませる。


届出チェックリスト──印刷して使う

【全員必須】

  • 食品衛生責任者の講習を受講した(約10,000円)
  • 消防署に事前相談した
  • 消防署に防火対象物使用開始届出書を提出した(使用開始7日前
  • 保健所に事前相談した
  • 保健所に飲食店営業許可を申請した(工事完了10日前、16,000〜19,000円)
  • 保健所の施設検査に合格した
  • 消火器を設置した(4,000〜6,000円)
  • 営業許可証を受け取った
  • 税務署に開業届を提出した(開業から1ヶ月以内
  • 税務署に青色申告承認申請書を提出した(開業から2ヶ月以内
  • 都道府県税事務所に事業開始等申告書を提出した

【条件付き──該当する場合のみ】

  • 消防署に防火対象物工事等計画届出書を提出した(工事開始7日前
  • 消防署に防火管理者選任届を提出した(収容30人以上)
  • 警察署に深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出した(深夜営業10日前
  • 税務署に給与支払事務所等の開設届出書を提出した(開設1ヶ月以内
  • 税務署に源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出した
  • 労働基準監督署に労働保険 保険関係成立届を提出した(雇用開始10日以内
  • ハローワークに雇用保険適用事業所設置届を提出した

この記事のまとめ

  1. 届出は最大12種類。 全員必須が4種類、条件付きが最大8種類
  2. 順番がある。 消防署→保健所→税務署。この順番を間違えると出戻りが発生する
  3. 最初にやるべきは食品衛生責任者の講習予約。 これがボトルネックになりやすい
  4. 届出の費用は合計3〜4万円程度。 安い。だから漏れなく出す
  5. 青色申告承認申請は開業から2ヶ月以内。 これを逃すと65万円の控除を失う

閉店時の届出については、飲食店の廃業手続きチェックリストで詳しく解説しています。


KitchenCostは、食材の原価計算や売値シミュレーションに使えるアプリです。 開業後の「この料理、いくらで出せばいいのか?」を計算するときに使ってみてください。

よくある質問

飲食店を開業するとき、届出はどこに出しますか?

最低でも3箇所──保健所(営業許可申請)、税務署(開業届)、消防署(防火対象物使用開始届)への届出が必要です。深夜0時以降にお酒を出す場合は警察署にも届出が必要で、従業員を雇う場合は労働基準監督署とハローワークも加わり、合計5〜6箇所になります。

飲食店の営業許可にかかる費用と期間はどれくらいですか?

営業許可の申請手数料は自治体によって異なりますが、東京都の場合は新規申請で18,300円です。申請から営業許可証の交付までは通常2〜3週間かかります。店舗の工事が完了する10日以上前に申請書類を提出し、保健所職員の施設検査に合格する必要があります。

食品衛生責任者の資格はどうやって取りますか?

各都道府県の食品衛生協会が開催する養成講習会を受講すれば取得できます。講習は1日(約6時間)で、受講料は約10,000円です。調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っている方は講習不要で、そのまま食品衛生責任者になれます。eラーニングで受講できる自治体も増えています。

開業届を出さないとどうなりますか?

税務署への開業届は、提出しなくても罰則はありません。ただし、出さないと青色申告承認申請ができず、最大65万円の所得控除が使えなくなります。また、屋号付きの銀行口座が作れない、小規模企業共済に加入できないなどのデメリットもあります。開業から1ヶ月以内に出すのが原則です。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。