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レシートの山を見て見ぬふりしていませんか——飲食店の月末経理、半日で終わる6ステップ

飲食店の月末経理を「半日6ステップ」で終わらせるチェックリスト。現金合わせ→棚卸→領収書整理→仕訳→月次P/L→来月の資金確認。確定申告前に慌てない店は、毎月これをやっています。

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目次

月末が来るたびに、レジ横に積み上がったレシートの束を見て、「来月こそ整理しよう」と思う。

でも翌月も同じ。気づけば12月。確定申告の期限が迫って、段ボールいっぱいのレシートを前に途方に暮れる——。

個人で飲食店をやっているオーナーなら、身に覚えがあるのではないでしょうか。

料理を作るのが仕事であって、帳簿をつけるのが仕事じゃない。その気持ちはわかります。でも、帳簿をつけない店は、自分の店が今月いくら儲かったのか(あるいは赤字なのか)を知らないまま走っていることになります。

2025年の飲食店倒産は900件超で過去最多(帝国データバンク 2026年1月13日公表)。閉めた店の多くに共通するのは、**「数字を見ていなかった」**ということです。

この記事では、月末にやるべき経理作業を6つのステップに分解して、順番にやるだけで終わるチェックリストにしました。会計の知識は必要ありません。


先に結論

  • 月末経理は**6ステップ、半日(3〜4時間)**で終わる。ただし日頃の整理ができていれば
  • 確定申告で慌てない店は、毎月これをやっている。年末にまとめてやる店は必ず漏れる
  • 6ステップ:①現金合わせ → ②棚卸 → ③売掛・買掛の確認 → ④レシート整理と仕訳 → ⑤月次P/Lの確認 → ⑥来月の資金繰りチェック
  • 日報をつけていれば①は5分で終わる。つけていないと1時間かかる
  • 会計ソフト(freee / マネーフォワード)を使えば④の手間が半分以下になる

なぜ「月末に1回」やるだけで変わるのか

経理と聞くと、毎日帳簿をつけて、仕訳を切って……と身構えるかもしれません。

もちろん毎日やれればベストです。でも現実として、ランチもディナーも営業して、仕込みをして、仕入れに行って、掃除をして——そのうえ毎日帳簿をつける余裕がある個人店のオーナーは少ない。

だから、月に1回、まとめてやる日を作る。これだけで十分です。

月末経理をやると何が変わるか。

  • 今月の利益(または赤字)が数字でわかる
  • 仕入れが売上に対して何%だったかがわかる
  • 来月、お金が足りるかどうかが事前にわかる
  • 確定申告が**「まとめ作業」ではなく「確認作業」**になる

逆に、月末経理をやらないと何が起きるか。

  • 「なんとなく儲かっている気がする」で12ヶ月走る
  • 確定申告の時期に1年分のレシートを一気に処理する → 漏れ、間違い、控除の取りこぼし
  • 赤字に気づくのが半年遅れる → 手の打ちようがない

弥生会計の解説によると、月次決算を行うことで「1か月ごとの財政状態や経営成績を明らかにして、経営管理に役立てることができる」とされています。法律上の義務ではありませんが、やっている店とやっていない店では、「問題に気づく速さ」が決定的に違います


月末経理チェックリスト:6ステップ

以下、月末の営業終了後(または定休日)にまとめてやる手順です。

順番通りにやれば、抜け漏れなく終わります。


ステップ1:現金合わせ(目安:15分)

やること:レジの中の現金と、帳簿上の現金残高が一致しているかを確認する。

  1. レジ内の現金を金種別(1万円札○枚、5千円札○枚……)に数える
  2. つり銭準備金を差し引いた金額を計算する
  3. 売上日報(または売上管理シート)の月末時点の現金残高と照合する
  4. 差異があれば原因を探す(レジの打ち間違い、釣り銭ミス、経費の現金払いの記録漏れなど)

差額が数百円以内であれば「現金過不足」として処理して問題ありません。ただし、毎月数千円以上の差額が出ている場合は、日々のレジ締めの精度に問題がある可能性があります。

コツ:毎日の売上日報をつけている店なら、月末の現金合わせは照合するだけなので5分で終わります。日報の習慣がない場合は、月末だけでも集計が必要になるため、ここだけで1時間近くかかることもあります。

売上日報のつけ方は、毎日5分の日報習慣ガイドで解説しています。


ステップ2:棚卸(目安:1〜2時間)

やること:月末時点の食材・ドリンクの在庫を数えて、金額に換算する。

  1. 冷蔵庫、冷凍庫、乾物棚、ドリンク在庫を一通り確認する
  2. 品名・数量・仕入れ単価を記録する(棚卸表を使う)
  3. 数量 × 仕入れ単価 で在庫金額を計算する
  4. 先月の在庫金額と比べて、増減をメモする

棚卸をしないと、「今月いくら使ったか(=原価)」が正確に出ません。

仕入れた金額がそのまま経費になるわけではありません。月末に残っている在庫は、まだ使っていない=まだ経費になっていないからです。

正確な原価の計算式はこうなります。

今月の原価 = 先月末の在庫 + 今月の仕入れ − 今月末の在庫

たとえば、先月末の在庫が20万円、今月の仕入れが80万円、今月末の在庫が25万円なら、今月の原価は75万円です。棚卸をしなければ「仕入れ80万円=原価80万円」と計算してしまい、5万円分、利益を少なく見積もることになります。

コツ:最初は品目が多くて大変に感じますが、2回目からはフォーマットが使い回せるので格段に楽になります。

棚卸表の作り方は棚卸表テンプレートガイドで無料テンプレート付きで解説しています。


ステップ3:売掛・買掛の確認(目安:15分)

やること:「もらうべきお金」と「払うべきお金」の未回収・未払いを確認する。

売掛金(もらう側)

  • 常連客のツケ払いがあれば、未回収額をリストアップする
  • クレジットカード売上で、まだ入金されていない分を確認する(入金サイトは通常、月末締め翌月10〜25日入金)
  • UberEats、出前館などのデリバリー売上の未入金分を確認する

買掛金(払う側)

  • 仕入れ業者への未払い額を請求書と照合する
  • 翌月に引き落とされる金額を把握する

キャッシュレス売上が増えた飲食店では、売上が立っているのに現金が手元にないという状態が起きやすくなっています。「売上=入金」ではないことを月末に確認しておくのが大事です。

クレジット売上の入金タイミングについて詳しくはクレジット売上と資金繰りガイドをご覧ください。


ステップ4:レシート・領収書の整理と仕訳(目安:1〜2時間)

やること:今月の支出をすべて記録に残す。

  1. レシート・領収書を日付順に並べる
  2. 内容ごとに仕分ける:仕入れ、消耗品、交通費、通信費、家賃、光熱費……
  3. 会計ソフトに入力する(または手書き帳簿に記帳する)
  4. 銀行口座やクレジットカードの明細と照合する

飲食店でよく使う勘定科目はこれだけ知っておけば十分です。

支出内容勘定科目備考
食材・飲料の仕入れ仕入高いちばん大きい経費
家賃地代家賃毎月固定
電気・ガス・水道水道光熱費
アルバイト給与給料賃金
消耗品(洗剤、ラップなど)消耗品費
ネット、電話通信費
広告・チラシ広告宣伝費
レジロール、包材消耗品費
自分の生活費の引き出し事業主貸経費にはならない

最大の注意点:自分のポケットからお店の仕入れ代を払ったり、お店のレジからプライベートの買い物をした場合、**「事業主借」「事業主貸」**としてきちんと記録する必要があります。これを曖昧にすると、確定申告のときに経費と私的支出が混ざり、正しい利益計算ができなくなります。

コツ:会計ソフト(freeeやマネーフォワード)を使っている場合、銀行口座やクレジットカードを連携しておくと、家賃・光熱費・通信費などの引き落としは自動で取り込まれます。手入力が必要なのは現金払いの仕入れだけになるので、作業量が大幅に減ります。


ステップ5:月次P/L(損益計算)の確認(目安:30分)

やること:今月、いくら儲かったか(赤字か)を計算する。

ステップ1〜4が終わっていれば、数字はすべてそろっています。確認するのは以下の3つだけです。

① 売上高 今月の売上合計。日報をつけていればすぐわかります。

② 原価(材料費) ステップ2で計算した数字。

原価 = 月初在庫 + 今月仕入れ − 月末在庫

③ 粗利(売上総利益)

粗利 = 売上 − 原価

この粗利から、家賃・人件費・光熱費・その他の経費を引いたものが営業利益です。

ざっくりでいいので、以下の比率を確認しましょう。

指標計算式目安
原価率原価 ÷ 売上 × 10030%前後(業態による)
人件費率人件費 ÷ 売上 × 10025〜35%
FL比率(原価 + 人件費)÷ 売上 × 10060%以下が目標

FL比率が60%を超えていたら、原価か人件費のどちらか(または両方)を見直す必要があります。

先月と比べてどう変わったかを見るのがポイントです。売上が上がったのに利益が減っていたら、原価率か人件費率のどちらかが上がっているはず。数字で原因がわかれば、翌月の対策が打てます。

FL比率について詳しくはFL比率の計算と改善ガイドで解説しています。


ステップ6:来月の資金繰りチェック(目安:15分)

やること:来月、お金が足りるかどうかを事前に確認する。

  1. 今月末の現金・預金残高を確認する
  2. 来月の固定支出をリストアップする
    • 家賃、光熱費、通信費、保険料、借入返済、リース料など
  3. 来月の変動支出の見込みを書く
    • 仕入れ(今月並みでいいか、季節変動はあるか)
    • 人件費(シフト増減があるか)
    • その他(設備の修理予定、税金の支払い予定など)
  4. 来月の売上見込みをざっくり立てる
    • 今月の実績ベースで、特別なイベントや繁閑を加味する
  5. 月末に手元にいくら残るかを逆算する

この逆算で、月末の残高が仕入れ1週間分を下回りそうなら、早めに対策が必要です。

対策は大きく3つ。

  • 仕入れ量を減らす(在庫を絞る)
  • 支払いサイトの交渉(月末一括を翌月払いに変更できないか)
  • 短期借入の検討

大事なのは「お金が足りなくなってから慌てる」のではなく、「足りなくなりそうだと1ヶ月前に気づく」ことです。月末経理をやっていれば、この「1ヶ月前の気づき」が手に入ります。


チェックリストまとめ

月末の定休日、あるいは営業終了後のまとまった時間に、この順番で進めてください。

#やること目安時間必要なもの
1現金合わせ15分レジ、売上日報
2棚卸1〜2時間棚卸表、電卓
3売掛・買掛の確認15分請求書、入金明細
4レシート整理・仕訳1〜2時間レシート、会計ソフト
5月次P/Lの確認30分上記の結果
6来月の資金繰りチェック15分通帳、固定費リスト
合計3〜5時間

初回は棚卸のフォーマット作りやレシートの整理に時間がかかるかもしれません。でも2回目からは半日で終わります。3ヶ月続ければ、手が覚えて2〜3時間で終わるようになります。


「毎日5分」と「月末半日」のセットで、年末が楽になる

この月末経理チェックリストは、毎日の売上日報とセットで使うと効果が倍増します。

  • 毎日5分:売上・客数・仕入れ額を記録する(日報ガイド
  • 月末半日:6ステップで月の成績を締める(この記事)
  • 年1回:確定申告=12ヶ月分を集計するだけ(確定申告ガイド

毎日5分の日報をつけている店は、月末の現金合わせが5分で終わり、月次P/Lも日報の数字を集計するだけです。確定申告も、12ヶ月分の月次P/Lを足し合わせるだけ。

逆に、日報をつけず、月末経理もやらない店は、年末に12ヶ月分のレシートを一気に処理することになります。抜け漏れが発生するのは当然です。経費の計上漏れは、そのまま税金の払い過ぎにつながります。


会計ソフト、使うならどれ?

個人飲食店で使われている会計ソフトは、大きく3つです。

ソフト月額(税込)特徴
freee1,628円〜自動仕訳が強い。スマホアプリが使いやすい
マネーフォワード1,078円〜仕訳ルール機能が便利。銀行連携が多い
弥生(青色申告オンライン)無料〜初年度無料プランあり。老舗の安心感

どれを使っても、銀行口座とクレジットカードを連携させるのが最初の一手です。これだけで、家賃・光熱費・通信費などの固定費は自動で帳簿に入ります。手動で入力するのは、現金で払った仕入れとレシート分だけになります。

「どれがいいかわからない」という方は、まず無料体験期間で試してみてください。UIの好みは人それぞれなので、触ってみるのがいちばん確実です。


ありがちな失敗3つ

失敗①:棚卸をサボる

「在庫なんてだいたいわかっている」と思って棚卸をスキップすると、原価が正確に出ない → 利益が正確にわからない → 経営判断がズレるという連鎖が起きます。特に月によって仕入れ量にバラつきがある店は、棚卸なしでは原価率すら正しく計算できません。

失敗②:事業用とプライベート用のお金を混ぜる

お店の売上からスーパーで自分の夕飯を買う。自分の財布からお店のトイレットペーパーを買う。こういう「ちょっとしたこと」が積み重なると、帳簿上の現金残高と実際の現金が合わなくなります。

対策はシンプルで、事業用の銀行口座とクレジットカードを1つずつ作る。お店の経費はすべてそこから払い、プライベートの支出は別の口座から。これだけで、ステップ4の仕分け作業が圧倒的に楽になります。

失敗③:「完璧にやろう」として続かない

1円単位の現金合わせに1時間かける。全食材の正確なグラム数まで棚卸する。最初から完璧を目指すと、面倒になって2ヶ月目から止まります。

「80%の精度で毎月やる」ほうが、「100%の精度で年に1回」よりはるかに価値がある。棚卸は主要食材だけでいい。現金差額は数百円なら「現金過不足」で処理していい。まずは**「やる習慣をつける」**ことが最優先です。


今週やること

  • 月末の半日を確保する(定休日、または営業終了後の夜)
  • 棚卸表のフォーマットを1枚作る(品名・数量・単価の3列で十分)
  • レシートを入れる箱を用意する(月別に分けられるとベスト)
  • 会計ソフトの無料体験に登録する(まだ使っていなければ)

4つとも、今日中にできることです。次の月末が来たとき、「やるべきことがわかっている」というだけで、気持ちが全然違います。


飲食店の経営は、料理を作ることだけではありません。でも、数字の管理は難しいことではなく、知っているかどうかの差でしかありません。

月末に半日、この6ステップをやるだけで、「今月いくら儲かったか」が数字でわかる。それだけで、来月の判断が変わります。


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よくある質問

飲食店の月末経理は何時間くらいかかりますか?

日頃からレシートを整理して売上日報をつけている店なら、半日(3〜4時間)で終わります。逆に、レシートを1ヶ月分ためてしまうと丸1日以上かかることもあります。毎日5分の日報習慣がある店とない店では、月末の作業量が大きく変わります。

会計ソフトは使ったほうがいいですか?

個人飲食店なら、freeeかマネーフォワードのどちらかを使うのが現実的です。銀行口座やクレジットカードを連携すると、仕入れや家賃の仕訳が自動で入るので、手入力の量が大幅に減ります。月額1,000〜2,000円程度で、年間の経理時間を数十時間単位で節約できます。

棚卸は毎月やらないといけませんか?

法律上の義務は年1回(確定申告時)ですが、毎月やらないと「今月の本当の利益」がわかりません。在庫を数えなければ、仕入れた金額がそのまま経費になるため、在庫が増えた月は利益が実際より少なく見え、在庫が減った月は利益が多く見えます。月次棚卸をすれば、毎月正確な原価と利益が把握できます。

税理士に頼まず、自分で月末経理はできますか?

年商1,000万円以下の個人飲食店なら、会計ソフトを使えば自分でも十分できます。この記事の6ステップをそのままやれば、確定申告の準備にもなります。ただし、消費税の課税事業者になった場合や、インボイス登録をした場合は、年に1回は税理士にチェックしてもらうと安心です。

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