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メニュー40品、利益を出しているのは何品?——ABC分析で「稼ぐ品」と「お荷物」を仕分ける

飲食店の94.6%が仕入れ値上昇に直面する2026年。ABC分析なら、売上データだけで「残すメニュー」と「削っても影響のないメニュー」を仕分けられます。紙とペンでもできる手順を居酒屋の実例つきで解説。

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目次

メニューが40品ある店で、実際に利益を出しているのは何品あるか。

「うちは全品ちゃんと原価を計算してるよ」という方もいるかもしれません。でも、「このメニューが売上のどれくらいを占めているか」まで把握している方は、かなり少ないのではないでしょうか。

飲食店をやっていると、メニューは増えていくものです。お客さんから聞かれたから追加した。季節限定のつもりが定番になった。開店のときからあるので、なんとなく残している——。気づけば40品、50品。でも売れ行きには大きな差があるはずです。

今回紹介するABC分析は、その「差」を数字で見える化する方法です。特別なソフトは不要。レジの売上データと紙があれば、今日からできます。


先に結論

  • メニュー全体の20〜30%が、売上の70〜80%を生んでいるのが一般的(パレートの法則)。残りは「あってもなくても売上にほぼ影響しない」品
  • ABC分析は売上データだけで始められる。 原価データがあればさらに精度が上がる
  • Aグループ(上位75%): 品切れを絶対に出さない。仕入れの安定が最優先
  • Bグループ(75〜95%): 原価・見せ方を見直すとAに昇格する可能性がある
  • Cグループ(95〜100%): 「減らす・統合する・値上げする」の3択で判断
  • メニューを3〜5品減らすだけでも、仕込み時間・在庫・廃棄が目に見えて変わる

仕入れ値が上がっているのに、メニューが変わっていない

まず、いまの状況を数字で確認しておきます。

帝国データバンクの調査(2025年3月)によると、飲食店の**94.6%**が仕入れ価格の上昇に直面しています。これは全業種で最も高い割合です。

2026年は、食品の値上げが1万5千品目前後になる見込みです(帝国データバンク、2025年12月時点の試算)。2025年の2万609品目よりはペースが鈍化していますが、「ほぼ毎日どこかの食材が値上がりする」状況は変わりません。

一方で、実際に値上げを実施できた飲食店は**約65%**にとどまります(帝国データバンク調査)。つまり残り約35%は、仕入れ値が上がったにもかかわらず売値を変えていません。

その結果が、数字に出ています。2025年の飲食店倒産件数は1,002件。30年ぶりに1,000件を超え、過去最多を更新しました(東京商工リサーチ、2026年1月発表)。

ここで多くの店がぶつかる問題があります。

「じゃあ、どのメニューの値段を変えればいいの?」

全品一律10%上げる? 原価率が高い品だけ上げる? よく売れる品は怖いから据え置く?

——この判断を、感覚ではなくデータで行う方法がABC分析です。


ABC分析とは——売上を3つのグループに分けるだけ

名前は難しそうに聞こえますが、やることはシンプルです。

メニューを売上金額の大きい順に並べて、A・B・Cの3つのグループに分ける。 これだけです。

グループ売上の累計意味
A上位75%まで稼ぎ頭。この品がなくなると売上が大きく落ちる
B75〜95%中間層。手を加えればAに育つ可能性がある
C95〜100%売上への貢献が小さい。見直し候補

累計比率の区切りは「75/95」が一般的ですが、「70/90」や「80/95」など、店の事情に合わせて調整して構いません。

イタリア人の経済学者パレートが発見した「80:20の法則」をご存じでしょうか。**「売上の80%は、商品の上位20%から生まれる」**という経験則です。飲食店のメニューでも、これに近い傾向が見られることが多いです。

つまり、40品のうち8〜12品で売上の大半を稼いでいる可能性が高い。残りの30品近くは、あってもなくても売上にはほとんど影響しない——。

「そんなことはわかってるよ」と思うかもしれません。でも、「じゃあ具体的にどの品がAで、どの品がCか」を一覧にしたことがある方は、どれくらいいるでしょうか。


やり方——5ステップ、30分で終わる

ステップ1:1ヶ月分の販売データを用意する

必要なのは**「メニュー名」「販売数」「売上金額」**の3つだけ。

POSレジを使っている場合は、月間のメニュー別売上レポートを出力すれば準備完了です。手書き伝票の場合は、1ヶ月分の売上をメニュー別に集計してください。

1週間分でも大まかな傾向はつかめますが、できれば1ヶ月分がおすすめです。曜日による偏りを均すためです。

ステップ2:売上金額の大きい順に並べる

エクセルでもノートでも構いません。売上金額が大きいメニューが上に来るように並べ替えます。

たとえば、こんな感じです。

順位メニュー月間売上
1生ビール(中)320,000円
2鶏の唐揚げ185,000円
3枝豆142,000円
4ハイボール128,000円
5刺身盛り合わせ115,000円
35冷やしトマト8,000円

ステップ3:累計売上と累計比率を計算する

上から順番に売上を足していって、全体の何%に達したかを計算します。

順位メニュー月間売上累計売上累計比率
1生ビール(中)320,000320,00021.3%
2鶏の唐揚げ185,000505,00033.7%
3枝豆142,000647,00043.1%
4ハイボール128,000775,00051.7%
5刺身盛り合わせ115,000890,00059.3%
6焼き鳥盛り合わせ98,000988,00065.9%
7ポテトフライ75,0001,063,00070.9%
8サワー各種68,0001,131,00075.4%
9焼きそば52,0001,183,00078.9%

(月商150万円の居酒屋を想定した例です)

ステップ4:A・B・Cに分ける

  • 累計比率が**75%**に達したところまで → Aグループ
  • 75〜95%Bグループ
  • 95%以降Cグループ

上の例では、8品目(生ビール〜サワー各種)までがAグループ。全35品中の8品——約23%です。

ステップ5:各グループに対策を打つ

ここが一番大事なところです。分類しただけでは何も変わりません。


グループ別の打ち手

Aグループ:守る・伸ばす

Aグループは店の「生命線」です。

やること:

  • 品切れを絶対に出さない。 仕入れの安定が最優先。天候や仕入れ先の事情で欠品するリスクがあるなら、別の仕入れルートを確保しておく
  • 原価を正確に把握する。 Aグループは1品の原価が1%ずれるだけで、月の利益に大きく響く。仕入れ値が変わったらすぐに原価を再計算する
  • 安易な値上げは慎重に。 Aグループはお客さんの「基準価格」になっていることが多い。値上げするなら量の微調整やセット化など、別の方法も検討する
  • 「なぜ売れているか」を言語化する。 味なのか、値段なのか、見た目なのか。売れている理由がわかれば、新メニュー開発のヒントにもなる

Bグループ:磨く・育てる

Bグループは「もう少しでAに上がれるかもしれない品」と「Cに落ちかけている品」が混在しています。

やること:

  • 露出を増やす。 メニュー表での配置を変える、スタッフのおすすめトークに加える、セットメニューに組み込む。注文されない理由が「気づかれていない」だけのことがある
  • 原価率を重点的に見直す。 Bグループは手を加えるとA昇格の可能性がある。盛り付けの改善、量の調整、付け合わせの見直しなど
  • 「注文されない理由」を考える。 メニュー表での位置が目立たない? 名前がわかりにくい? 写真がない? 小さな改善で注文数が変わることは珍しくない

Cグループ:減らす・統合する・割り切る

Cグループは売上への貢献が小さいメニューです。ここがABC分析で最も大事な判断どころです。

3つの問いで判断する:

  1. このメニューを消しても、お客さんは困らないか? → 困らないなら削除候補
  2. 似たようなメニューが他にないか? → あるなら統合する(例:3種類のサラダを「本日のサラダ」にまとめる)
  3. この品がなくなると、仕入れる食材の種類が1つ減るか? → 減るなら廃棄ロスも減る可能性が高い

注意点:

  • Cグループがメニュー全体の半分以上を占めている場合は赤信号。メニュー数が多すぎて、食材の種類・在庫・仕込み時間がふくらんでいる可能性が高い
  • ただし**「残すべきC」もある。** 常連さんが必ず頼む品、子連れ客に必要なキッズメニュー、ドリンクのラインナップを保つための品など。売上の数字だけで機械的に消さないこと
  • 1回に減らすのは3〜5品まで。いきなり10品減らすと、お客さんが「メニューが寂しくなった」と感じる。少しずつ減らして反応を見る

具体的な目安:

個人の居酒屋やカフェなら、メニュー数は30〜50品が運営しやすいラインです。50品を超えると、仕込み・在庫・廃棄の管理が急に難しくなります。

Cグループから3〜5品を削るだけでも、仕込みの種類が減り、仕入れがシンプルになり、冷蔵庫のスペースが空きます。目に見える変化が出やすいのは、メニューを「増やす」ときではなく**「減らす」とき**です。


ABC分析でよくある3つの失敗

失敗① 売上だけ見て「利益」を見ない

ABC分析は通常「売上金額」で分類しますが、**「売上が多いのに原価率が高すぎて利益が残っていない品」**を見逃すことがあります。

たとえば、刺身盛り合わせが月11万5千円売れてAグループだとしても、原価率が60%なら粗利は4万6千円。一方、ポテトフライは月7万5千円でBグループでも、原価率が20%なら粗利は6万円。

ポテトフライのほうが利益を多く生んでいます。

余裕があれば、売上のABC分析に加えて**「粗利(売上 − 原価)のABC分析」**もやってみてください。売上ではAなのに粗利ではBやCになっている品は、原価設計の見直しが必要です。

失敗② 1回やって満足する

ABC分析は「1回やって終わり」ではありません。季節で売れ筋は変わりますし、仕入れ値も変動します。

夏に売れたかき氷が冬にはCグループに落ちるのは当然です。それ自体は問題ない。問題は、季節が変わってもメニュー構成が変わらないこと

理想は月1回。忙しければ3ヶ月に1回でも構いません。メニュー改定や値上げのタイミングで実施すれば、自然と定期的に回るようになります。

失敗③ Cグループを一気に全部消す

「Cだから全部なくそう」は危険です。先ほど書いたように、売上の数字には表れない役割を持つメニューがあります。

一度に大幅に減らすと、常連客から「あのメニューがなくなった」と不満が出ることがあります。1回に3〜5品にとどめて、お客さんの反応を確認してから次を判断してください。


もうひとつの視点——「数量」で並べ替えてみる

売上金額での分析が終わったら、次は販売数量で並べ替えてみてください。

「売上金額は低いけど、注文回数がやたら多い品」が見つかることがあります。たとえば、枝豆(300円)は売上順位では中位でも、注文数では1位かもしれません。

このような「注文回数は多いけど単価が低い品」は、客単価アップのヒントになります。

  • セットの「必ずつく品」にして、メインの注文を増やす
  • 量を増やして価格を上げる(「大盛り枝豆 500円」)
  • この品を頼む人が一緒に頼む品を把握して、おすすめに活かす

逆に、「単価は高いけど注文数が極端に少ない品」は、お客さんにとって「頼みづらい」何かがある可能性があります。値段が高すぎる、名前が凝りすぎて中身がわからない、そもそもメニュー表で目に入っていない——原因を探って改善する価値があります。


今週やること

  • レジから先月のメニュー別売上データを出す(手書きなら1週間分を集計する)
  • 売上金額の大きい順に並べて、累計75%・95%のラインを引く
  • Aグループの品数を確認する(全体の20〜30%に収まっているか?)
  • Cグループの中から「消しても影響のない品」を3つ候補に挙げる
  • 来月のメニュー改定に反映する

所要時間の目安:30分〜1時間。1回やれば、2回目からは15分で終わります。


まとめ

ABC分析は、経営コンサルタントの専門ツールではありません。**レジのデータと紙があれば、今日からできる「メニューの健康診断」**です。

仕入れ値がほぼ毎月のように上がるいまの状況で、「どのメニューが稼いでいて、どのメニューが足を引っ張っているか」を知らないまま営業を続けるのは、体温計なしで風邪を治そうとしているようなものです。

まずは1回、30分だけ時間をとってみてください。「この品、こんなに貢献してたのか」「この品、なくても大丈夫だったんだ」——その気づきが、次の判断の精度を変えます。


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よくある質問

ABC分析とは何ですか?飲食店でどう使いますか?

ABC分析は、メニューを売上への貢献度でA(上位)・B(中位)・C(下位)の3グループに分ける手法です。売上累計が75%に達するまでのメニューがAグループ、75〜95%がBグループ、残りがCグループ。飲食店では「どのメニューを強化し、どれを見直すか」の判断材料として使います。エクセルや専門ソフトがなくても、レジの売上データと紙があれば30分でできます。

ABC分析にはどんなデータが必要ですか?

最低限必要なのは「メニュー名」「販売数」「売上金額」の3つです。1ヶ月分のレジデータや伝票の集計で十分始められます。原価データがあればさらに精度が上がりますが、まずは売上だけで始めるのがおすすめです。POSレジを使っていれば、月間メニュー別売上レポートを出力するだけで準備完了です。

Cグループのメニューは全部なくすべきですか?

いいえ。Cグループでも「常連客が毎回頼む定番品」「セットの選択肢として必要な品」「子連れ客向けのキッズメニュー」は残す判断もあります。ただし、Cグループがメニュー全体の半分以上を占めている場合は、食材の種類と在庫が無駄に膨らんでいる可能性が高いです。1回に減らすのは3〜5品までにして、お客さんの反応を見てから次の判断をしてください。

どれくらいの頻度でABC分析をやるべきですか?

理想は月1回ですが、忙しい個人店なら3ヶ月に1回でも効果はあります。特にメニュー改定や値上げの前後には必ず実施してください。季節メニューの入れ替え時期に合わせると、自然に定期的な見直しサイクルが回ります。1回目は30分〜1時間、2回目以降は15分程度で終わります。

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