「いい物件が見つかった!」──その判断、数字で裏付けはあるか?
不動産屋から紹介された物件。駅から徒歩3分。家賃25万円。「飲食店可」の表示。
「ここだ!」 と契約したくなる気持ちはわかる。
でも、ちょっと待ってほしい。
- その通りを何人が歩いているか、数えたことはあるか?
- 周辺に何軒の飲食店があるか、確認したか?
- 家賃25万円を払うために必要な月商を計算したか?
飲食店の廃業理由の上位に、**「立地の失敗」がある。そして立地の失敗のほとんどは、「感覚で決めた」**ことが原因だ。
家賃の適正ラインは「売上の10%」
まず最も大事な数字から。
家賃は月商の10%以下に抑える。 これが飲食店経営の鉄則だ。
| 家賃 | 必要な月商 | 必要な日商(25日営業) |
|---|---|---|
| 15万円 | 150万円以上 | 6万円以上 |
| 20万円 | 200万円以上 | 8万円以上 |
| 25万円 | 250万円以上 | 10万円以上 |
| 30万円 | 300万円以上 | 12万円以上 |
| 40万円 | 400万円以上 | 16万円以上 |
| 50万円 | 500万円以上 | 20万円以上 |
家賃30万円の物件なら、月商300万円、日商12万円が最低ライン。
客単価1,000円のランチ主体の店なら、1日120人のお客さんが必要。15席の小さな店で120人は、回転率8回。現実的か?
この計算を契約前にやっていない店が、驚くほど多い。
通行量の数え方──「駅前」だけでは判断できない
「駅前だから人が多い」は正しいが、「人が多い=お客さんが来る」とは限らない。
通行量カウントの方法
- 候補物件の前に立つ
- ターゲット客層だけを数える
- 居酒屋なら「会社員風の30〜50代」
- カフェなら「女性、学生、リモートワーカー風」
- ファミリーレストラン型なら「家族連れ、ベビーカー」
- 時間帯を分けて数える
| 時間帯 | 何を見るか |
|---|---|
| 平日11:00〜13:00 | ランチ需要。オフィス街なら最重要 |
| 平日17:00〜20:00 | ディナー需要。帰宅ルートかどうか |
| 休日11:00〜13:00 | 休日のランチ需要。住宅地は重要 |
| 休日17:00〜20:00 | 休日ディナー。ファミリー層の動き |
注意点:
- 雨の日と晴れの日で通行量は大きく変わる。晴れの日に数えること
- 駅の「改札に近い出口」と「反対側の出口」で人の流れが全然違う
- 通りの「歩道側」と「車道側」で視認性が変わる
商圏を「無料で」調べる方法
jSTAT MAP(総務省統計局)
無料の地理情報システムで、指定した地点の周辺人口を調べられる。
使い方:
- jSTAT MAPにアクセス
- 候補物件の住所を入力
- 半径500m / 1km の円を描く
- その範囲内の人口・世帯数・年齢構成がわかる
Googleマップで確認すること
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 周辺のオフィスビル数 | ランチ需要の推定 |
| マンション・住宅の密度 | ディナー・テイクアウト需要 |
| 学校・大学 | 学生向けの低価格帯メニュー需要 |
| 病院・クリニック | 付き添い・見舞い客の需要 |
| 競合飲食店の数 | 同業態が何軒あるか |
競合調査──「ライバルが多い」は良いことか?
意外に思うかもしれないが、ライバルが多い立地は、需要がある証拠でもある。
「良い競合」と「悪い競合」
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 同業態の店が繁盛している | ◎ 需要がある立地。差別化すれば勝てる |
| 同業態の店が空いている | × 需要がないか、立地が悪い |
| 飲食店がほとんどない | △ 需要がない or まだ開拓されていない。リスクが高い |
| 競合が多すぎて価格競争になっている | × 利益が出にくい |
競合調査のやり方
- Googleマップで「ラーメン」「居酒屋」など自分の業態を検索
- 候補物件の半径300m以内の同業態をリストアップ
- 実際に食べに行く(最低3軒)
- メニュー構成と価格帯
- 客層(年齢、性別、1人 or グループ)
- 混雑具合(ランチとディナー)
- 口コミの評価と内容
競合の「弱点」を見つけること。 全店が味は良いけどサービスが悪い、全店が高くてランチに手頃な店がない──その隙間があなたの入る場所だ。
1階 vs 2階 vs 地下──フロアで変わる「ゲームのルール」
| フロア | 家賃の目安 | 強み | 弱み | 向いている業態 |
|---|---|---|---|---|
| 1階路面 | 高い(基準) | 視認性が高い。飛び込み客が入りやすい | 家賃が高い | ラーメン、カフェ、テイクアウト |
| 2階 | 1階の50〜70% | 家賃が安い。落ち着いた雰囲気 | 看板がないと気づかれない | 居酒屋、バー、予約制レストラン |
| 地下 | 1階の40〜60% | 家賃が安い。隠れ家感 | 入口の視認性が低い。換気・排水の問題 | バー、ワインバル、スナック |
2階・地下で成功するために必要なこと:
- SNS・Googleマップでの認知獲得が必須
- 1階に目立つ看板や黒板を出せるか(ビルオーナーに確認)
- 階段やエレベーターの使いやすさ
- 常連客のリピート率を高める仕組み
契約前のチェックリスト──10項目
物件を契約する前に、以下を確認する。
- 家賃 ÷ 想定月商 = 10%以下か?
- 通行量を自分で数えた?(最低4時間分)
- 商圏人口を調べた?(半径500m以内の人口)
- 競合調査をした?(半径300m以内の同業態)
- 解約予告期間は何ヶ月?(3ヶ月 or 6ヶ月)
- 原状回復の条件は?(スケルトン返し or 現状渡し)
- 給排水・ガス・電気の容量は十分か?
- 営業時間の制限はないか?(深夜営業不可の物件もある)
- 看板の設置条件は?(大きさ、場所の制限)
- 前のテナントが飲食店だった場合、なぜ撤退したか?
特に「前のテナントの撤退理由」は重要。不動産屋は教えてくれないこともあるが、近隣の店舗に聞けばわかることが多い。
今週やること
-
気になっている物件の前に行って、ランチタイムの通行量を数える
- 12:00〜13:00の1時間だけでいい
- ターゲット客層が1時間に何人通るかをメモする
-
jSTAT MAPで商圏人口を調べる
- 所要時間:15分。費用:0円
-
「家賃 ÷ 想定月商」を計算する
- 10%を超えているなら、もっと安い物件を探す価値がある
立地は、開業後に変えられない。 だからこそ、契約前に数字で判断することが何より重要だ。
開業後の原価管理も、立地選びと同じくらい大切です。KitchenCostなら、メニューの原価率を事前にシミュレーションできるので、開業計画の段階から「利益が出るメニュー構成」を設計できます。