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「駅前の好立地」に出店して、1年で閉店した──飲食店の立地選び、家賃の安さに飛びつく前に見るべき5つの数字

飲食店の廃業理由の上位は「立地の失敗」。駅前でも失敗し、路地裏でも成功する。違いは「数字で立地を評価したかどうか」だ。通行量の数え方、商圏人口の調べ方、家賃と売上の適正比率(10%以下)、競合調査の方法まで、個人飲食店が物件を契約する前にやるべきチェックリストを解説。

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目次

「いい物件が見つかった!」──その判断、数字で裏付けはあるか?

不動産屋から紹介された物件。駅から徒歩3分。家賃25万円。「飲食店可」の表示。

「ここだ!」 と契約したくなる気持ちはわかる。

でも、ちょっと待ってほしい。

  • その通りを何人が歩いているか、数えたことはあるか?
  • 周辺に何軒の飲食店があるか、確認したか?
  • 家賃25万円を払うために必要な月商を計算したか?

飲食店の廃業理由の上位に、**「立地の失敗」がある。そして立地の失敗のほとんどは、「感覚で決めた」**ことが原因だ。


家賃の適正ラインは「売上の10%」

まず最も大事な数字から。

家賃は月商の10%以下に抑える。 これが飲食店経営の鉄則だ。

家賃必要な月商必要な日商(25日営業)
15万円150万円以上6万円以上
20万円200万円以上8万円以上
25万円250万円以上10万円以上
30万円300万円以上12万円以上
40万円400万円以上16万円以上
50万円500万円以上20万円以上

家賃30万円の物件なら、月商300万円、日商12万円が最低ライン。

客単価1,000円のランチ主体の店なら、1日120人のお客さんが必要。15席の小さな店で120人は、回転率8回。現実的か?

この計算を契約前にやっていない店が、驚くほど多い。


通行量の数え方──「駅前」だけでは判断できない

「駅前だから人が多い」は正しいが、「人が多い=お客さんが来る」とは限らない。

通行量カウントの方法

  1. 候補物件の前に立つ
  2. ターゲット客層だけを数える
    • 居酒屋なら「会社員風の30〜50代」
    • カフェなら「女性、学生、リモートワーカー風」
    • ファミリーレストラン型なら「家族連れ、ベビーカー」
  3. 時間帯を分けて数える
時間帯何を見るか
平日11:00〜13:00ランチ需要。オフィス街なら最重要
平日17:00〜20:00ディナー需要。帰宅ルートかどうか
休日11:00〜13:00休日のランチ需要。住宅地は重要
休日17:00〜20:00休日ディナー。ファミリー層の動き

注意点:

  • 雨の日と晴れの日で通行量は大きく変わる。晴れの日に数えること
  • 駅の「改札に近い出口」と「反対側の出口」で人の流れが全然違う
  • 通りの「歩道側」と「車道側」で視認性が変わる

商圏を「無料で」調べる方法

jSTAT MAP(総務省統計局)

無料の地理情報システムで、指定した地点の周辺人口を調べられる。

使い方:

  1. jSTAT MAPにアクセス
  2. 候補物件の住所を入力
  3. 半径500m / 1km の円を描く
  4. その範囲内の人口・世帯数・年齢構成がわかる

Googleマップで確認すること

確認項目なぜ重要か
周辺のオフィスビル数ランチ需要の推定
マンション・住宅の密度ディナー・テイクアウト需要
学校・大学学生向けの低価格帯メニュー需要
病院・クリニック付き添い・見舞い客の需要
競合飲食店の数同業態が何軒あるか

競合調査──「ライバルが多い」は良いことか?

意外に思うかもしれないが、ライバルが多い立地は、需要がある証拠でもある。

「良い競合」と「悪い競合」

状況判断
同業態の店が繁盛している◎ 需要がある立地。差別化すれば勝てる
同業態の店が空いている× 需要がないか、立地が悪い
飲食店がほとんどない△ 需要がない or まだ開拓されていない。リスクが高い
競合が多すぎて価格競争になっている× 利益が出にくい

競合調査のやり方

  1. Googleマップで「ラーメン」「居酒屋」など自分の業態を検索
  2. 候補物件の半径300m以内の同業態をリストアップ
  3. 実際に食べに行く(最低3軒)
    • メニュー構成と価格帯
    • 客層(年齢、性別、1人 or グループ)
    • 混雑具合(ランチとディナー)
    • 口コミの評価と内容

競合の「弱点」を見つけること。 全店が味は良いけどサービスが悪い、全店が高くてランチに手頃な店がない──その隙間があなたの入る場所だ。


1階 vs 2階 vs 地下──フロアで変わる「ゲームのルール」

フロア家賃の目安強み弱み向いている業態
1階路面高い(基準)視認性が高い。飛び込み客が入りやすい家賃が高いラーメン、カフェ、テイクアウト
2階1階の50〜70%家賃が安い。落ち着いた雰囲気看板がないと気づかれない居酒屋、バー、予約制レストラン
地下1階の40〜60%家賃が安い。隠れ家感入口の視認性が低い。換気・排水の問題バー、ワインバル、スナック

2階・地下で成功するために必要なこと:

  • SNS・Googleマップでの認知獲得が必須
  • 1階に目立つ看板や黒板を出せるか(ビルオーナーに確認)
  • 階段やエレベーターの使いやすさ
  • 常連客のリピート率を高める仕組み

契約前のチェックリスト──10項目

物件を契約する前に、以下を確認する。

  • 家賃 ÷ 想定月商 = 10%以下か?
  • 通行量を自分で数えた?(最低4時間分)
  • 商圏人口を調べた?(半径500m以内の人口)
  • 競合調査をした?(半径300m以内の同業態)
  • 解約予告期間は何ヶ月?(3ヶ月 or 6ヶ月)
  • 原状回復の条件は?(スケルトン返し or 現状渡し)
  • 給排水・ガス・電気の容量は十分か?
  • 営業時間の制限はないか?(深夜営業不可の物件もある)
  • 看板の設置条件は?(大きさ、場所の制限)
  • 前のテナントが飲食店だった場合、なぜ撤退したか?

特に「前のテナントの撤退理由」は重要。不動産屋は教えてくれないこともあるが、近隣の店舗に聞けばわかることが多い。


今週やること

  1. 気になっている物件の前に行って、ランチタイムの通行量を数える

    • 12:00〜13:00の1時間だけでいい
    • ターゲット客層が1時間に何人通るかをメモする
  2. jSTAT MAPで商圏人口を調べる

    • 所要時間:15分。費用:0円
  3. 「家賃 ÷ 想定月商」を計算する

    • 10%を超えているなら、もっと安い物件を探す価値がある

立地は、開業後に変えられない。 だからこそ、契約前に数字で判断することが何より重要だ。


開業後の原価管理も、立地選びと同じくらい大切です。KitchenCostなら、メニューの原価率を事前にシミュレーションできるので、開業計画の段階から「利益が出るメニュー構成」を設計できます。

よくある質問

飲食店の立地選びで最も大切なことは何ですか?

最も大切なのは「家賃に対して十分な売上が見込めるか」です。飲食店の家賃比率は売上の10%以下が理想とされています。家賃が月30万円なら、月商300万円以上が必要です。駅前の一等地は通行量が多いですが家賃も高い。路地裏は家賃が安いが集客力が弱い。重要なのは「通行量÷家賃」のコストパフォーマンスです。家賃20万円で月商200万円を達成できる物件と、家賃50万円で月商300万円にしかならない物件では、前者のほうが圧倒的に利益が残ります。

物件の通行量はどうやって調べますか?

自分で数えるのが最も確実です。候補物件の前に立ち、平日と休日のランチ帯(11:00〜13:00)とディナー帯(17:00〜20:00)に通行人数をカウントします。1時間×4回(平日昼・夜、休日昼・夜)の合計4時間で傾向がつかめます。カウントするのは「自分のターゲット客層」だけ。ファミリー向けの店なら家族連れを、ビジネス向けなら会社員を数えます。目安として、個人飲食店(15〜20席)の場合、ターゲット客層の通行量が1時間あたり100人以上あれば有望な立地です。

商圏人口はどうやって調べますか?

無料で調べられます。①jSTAT MAP(総務省統計局):住所を入力すると、半径500m・1kmの人口・世帯数・年齢構成がわかります。②Google マップ:候補物件の周辺にどんな施設(オフィスビル、マンション、学校、病院)があるかを確認。③自治体の統計情報:市区町村のHPで町丁目別の人口データが公開されていることも。一般的に、個人飲食店の商圏は徒歩10分圏内(半径500〜800m)。この範囲の人口が5,000人以上いれば、一定の集客が見込めます。

1階じゃないとダメですか?2階や地下の物件は避けるべき?

業態によります。1階路面店は視認性が高く飛び込み客が入りやすいため、ラーメン店やカフェなど「通りすがり客」を取り込みたい業態には必須です。一方、予約制の割烹、隠れ家バー、常連中心の居酒屋なら、2階や地下でも問題ありません。2階・地下のメリットは家賃が1階の50〜70%で済むこと。デメリットは看板だけでは認知されにくいので、SNSやGoogleマップでの集客が必須になることです。「家賃の安さ」と「集客の難易度」のトレードオフを理解した上で選びましょう。

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