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「お酒のテイクアウト、始めたいんだけど」──飲食店が知らないと違法になる酒類販売免許の話

飲食店でお酒を出すのに免許は不要。でもテイクアウトで売るなら「酒類販売業免許」が必要。知らずにボトルワインを持ち帰り販売して、税務署から指導を受けた事例も。申請先は税務署、期間は約2ヶ月、登録免許税は3万円。飲食店がお酒のテイクアウト販売を始める手順と注意点を解説。

飲食店酒類販売免許テイクアウトお酒持ち帰り個人店税務署免許2026年
目次

ある居酒屋で起きたこと

人気の居酒屋がInstagramで告知した。

「好評の自家製サングリアをボトル販売します! テイクアウトOK!」

お客さんからの反応は上々。1週間で20本売れた。

──そこに、税務署から電話がかかってきた。

「酒類販売業免許をお持ちですか?」

持っていなかった。無免許での酒類販売。酒税法違反だ。

「え? うちは飲食店営業許可を持っているけど」──残念ながら、それとこれは別の話なのだ。


飲食店で「免許がいる場合」と「いらない場合」

ケース免許
店内で生ビールを注いでお客さんに出す不要
店内でボトルワインを開けてグラスで出す不要
お客さんが飲み残したボトルを持ち帰る不要(飲み残しの持ち帰り)
未開栓のボトルワインをテイクアウト販売必要
缶ビール・缶チューハイを持ち帰り用に販売必要
自家製果実酒をボトルに詰めて販売必要(+製造免許が必要な場合あり)
通販でお酒を販売必要(通信販売酒類小売業免許)

ルールは明快だ。

  • 店の中で飲んでもらう → 免許不要
  • 店の外で飲む目的で売る免許必要

酒類販売業免許の取り方

ステップ1: 税務署の酒類指導官に事前相談(無料)

所轄の税務署に電話し、**「酒類指導官」**に繋いでもらう。

  • 「飲食店でテイクアウト用にお酒を売りたい」と伝える
  • 飲食店と同じ場所で免許が取れるか確認する
  • 必要書類のリストをもらう

この事前相談が最も重要。店の状況によって必要書類が変わるため、ネットの情報だけで進めると二度手間になる。

ステップ2: 必要書類を準備する

書類内容
酒類販売業免許申請書税務署の書式
飲食店営業許可証の写し保健所発行のもの
賃貸借契約書の写し物件のオーナーの承諾書が必要な場合も
店舗の平面図酒類販売コーナーの位置を記載
収支見込みお酒の仕入れ・販売計画
住民票本籍地記載のもの
確定申告書の写し(直近3期分)経営状況の確認用
登記事項証明書法人の場合

ステップ3: 申請

書類を揃えて税務署に提出。審査期間は約2ヶ月

  • 登録免許税: 3万円(一般酒類小売業免許)
  • 行政書士に依頼する場合: 15〜25万円(書類作成代行)

ステップ4: 免許交付 → 販売開始

免許が交付されたら、以下を整備してから販売開始。

  • 酒類販売コーナーの表示
  • 飲食用と販売用の在庫・帳簿の分離
  • **「20歳未満の方への酒類の販売は法律で禁止されています」**の掲示

飲食店と同じ場所で売るための3つのルール

ルール1: スペースを分ける

レジ横やカウンターの一角に「お持ち帰り用お酒コーナー」を設ける。物理的に完全に分離する必要はないが、どこが酒類販売スペースか明確にする。

ルール2: 在庫を分ける

同じワインでも、店内で飲ませる分は飲食用の仕入れ、テイクアウトで売る分は酒販用の仕入れとして分けて管理する。

  • 仕入伝票を別にする
  • 棚を分けて保管する(同じ冷蔵庫でも棚で区別可能)

ルール3: 帳簿を分ける

飲食の売上と酒販の売上を別々に記録する。POSレジで「テイクアウト酒類」というカテゴリを作っておけば対応できる。


テイクアウト酒販の原価計算

テイクアウトでボトルワインを売る場合の利益を計算してみよう。

項目金額
ワイン仕入値1,200円
テイクアウト販売価格2,500円
粗利益1,300円
粗利率52%

店内でグラスワインとして出す場合:

  • 1本(750ml)から約5杯
  • グラス1杯600円 × 5杯 = 3,000円
  • 粗利益 = 1,800円

テイクアウト販売は、グラス売りより利益は低い。しかし、閉店後や定休日にも売れるのがメリットだ。冷凍自販機やテイクアウト窓口と組み合わせれば、営業時間外の売上を作れる。


こんなケースは要注意

ケース1: ネット通販で売りたい

店頭のテイクアウト販売は「一般酒類小売業免許」だが、通販は**「通信販売酒類小売業免許」**が別途必要。

しかも通信販売免許で扱えるのは、国産酒は年間課税移出数量が3,000kl未満の製造者のものに限定される(大手メーカーのビールなどは対象外)。地酒やクラフトビールなら可能。

ケース2: イベントで売りたい

お祭りやマルシェなどの一時的なイベントでお酒を販売する場合、**「期限付酒類小売業免許」**を申請する。イベントの10日前までに申請が必要。

ケース3: 自家製果実酒を販売したい

自家製の梅酒や果実酒を販売するには、酒類製造免許が必要になる場合がある。判断が難しいので、必ず税務署に事前相談すること。


今すぐやること

  • 「テイクアウトでお酒を売りたい」と思ったら、まず税務署の酒類指導官に電話
  • 自分の店で何をどれくらい売りたいかを整理する
  • 販売開始の3ヶ月前には準備を始める(審査2ヶ月+書類準備)
  • テイクアウト酒類の原価計算をしてから販売価格を決める

「知らなかった」で酒税法違反になるのは、あまりにもったいない。 3万円の登録免許税と2ヶ月の手続きで、合法的にテイクアウト酒販を始められる。


KitchenCostは、飲食店の原価計算アプリです。テイクアウト用の酒類も、店内提供のメニューと分けて原価管理すれば、「どっちが利益が出ているか」が一目でわかります。

よくある質問

飲食店でお酒を出すのに免許は必要ですか?

いいえ、店内でお客さんに飲んでもらうだけなら酒類販売業免許は不要です。保健所の飲食店営業許可があればOKです。ただし、お酒をボトルや缶のまま持ち帰り用に販売する場合は「酒類小売業免許」が必要になります。たとえば、ワインバーで未開栓のボトルワインをテイクアウト販売する、居酒屋で缶ビールを持ち帰り用に売る、自家製果実酒を瓶詰めして販売する──こうしたケースはすべて免許が必要です。

酒類販売業免許の取得にいくらかかりますか?

税務署への登録免許税が3万円(一般酒類小売業免許の場合)。書類の作成を行政書士に依頼すると15〜25万円程度。自分で書類を作成すれば登録免許税の3万円のみで済みます。申請に必要な書類は多いですが、税務署の酒類指導官に事前相談すれば書き方を教えてもらえます。事前相談は無料です。申請から免許交付まで約2ヶ月かかるので、販売開始の3ヶ月前には準備を始めましょう。

飲食店と同じ場所でお酒のテイクアウト販売はできますか?

できます。ただし条件があります。飲食店のスペースと酒類販売のスペースを明確に区分する必要があります。具体的には、①レジ周辺やカウンターの一角に「酒類販売コーナー」を設ける、②飲食用の在庫と販売用の在庫を分けて管理する、③帳簿(仕入伝票・売上伝票)も飲食と酒販で分ける。同じワインでも「店内で飲む分」と「テイクアウトで売る分」は別の仕入として管理しなければなりません。面倒に思えますが、POSレジで商品カテゴリを分けるだけでも対応できます。

自家製のレモンサワーや果実酒を販売するのは違法ですか?

注意が必要です。まず、酒税法では、自家製の酒(酒に果実や糖類を混合したもの)を販売することは、酒類製造免許がない限り違法です。ただし、「みなし製造」に該当しない場合(焼酎にカットレモンと砂糖を漬けただけなど)は免除される場合もあります。判断が難しいので、税務署の酒類指導官に必ず事前確認してください。店内で提供する分には問題ありませんが、瓶詰めして販売するとなると製造免許が必要になるケースがあります。

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