「うちは人手がギリギリだから、人件費は適正なはず」
本当にそうだろうか?
「何となく」で人件費を管理している飲食店は多い。 でも数字を見ないと、適正かどうかは判断できない。
- アルバイトを1人増やしたら、人件費率は何%上がるのか?
- オーナー自身の給料を入れたら、FL比率はいくらになるのか?
- 最低賃金が上がったら、利益はどのくらい減るのか?
計算しなければ、答えは出ない。
人件費率の計算方法
基本の計算式
人件費率(%)= 人件費の合計 ÷ 売上 × 100
人件費に含めるもの
| 含める | 含めない |
|---|---|
| アルバイト・パートの給与 | 食材費 |
| オーナーの給料(取り分) | 家賃 |
| 社会保険料(事業主負担分) | 光熱費 |
| 通勤手当 | 広告費 |
| 賞与・手当 | 設備のリース料 |
よくある間違い: オーナーの取り分を人件費に入れない。 オーナーだって労働している。その対価を含めないと、人件費率は実態より低く見える。
計算例
月商200万円の居酒屋(オーナー+アルバイト2人)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| オーナーの取り分 | 30万円 |
| アルバイトA(週4日、1日6時間) | 12万円 |
| アルバイトB(週3日、1日5時間) | 8万円 |
| 社会保険・通勤手当 | 3万円 |
| 人件費合計 | 53万円 |
人件費率 = 53万 ÷ 200万 × 100 = 26.5%
この居酒屋の人件費率は26.5%。適正範囲内だ。
FL比率──飲食店の最重要指標
計算式
FL比率(%)=(食材費 + 人件費)÷ 売上 × 100
先ほどの居酒屋の場合
| 項目 | 金額 | 売上に対する割合 |
|---|---|---|
| 食材費(F) | 64万円 | 32% |
| 人件費(L) | 53万円 | 26.5% |
| FL合計 | 117万円 | 58.5% |
FL比率58.5%。 ギリギリ適正範囲だが、余裕はない。
FL比率の判定基準
| FL比率 | 判定 | 状態 |
|---|---|---|
| 55%以下 | ◎ 優秀 | 利益がしっかり残る |
| 55〜60% | ○ 適正 | 標準的な利益水準 |
| 60〜65% | △ 要注意 | 利益がほとんど残らない |
| 65%以上 | ✕ 赤字圏 | 経営を見直す必要あり |
業態別の適正人件費率
| 業態 | 原価率の目安 | 人件費率の目安 | FL比率の目安 |
|---|---|---|---|
| ラーメン店 | 30〜35% | 20〜25% | 50〜60% |
| カフェ | 25〜30% | 25〜30% | 50〜60% |
| 居酒屋 | 28〜35% | 25〜30% | 55〜65% |
| 定食屋 | 30〜35% | 25〜30% | 55〜65% |
| 焼肉店 | 35〜45% | 20〜25% | 55〜65% |
| フレンチ・イタリアン | 28〜35% | 30〜35% | 58〜65% |
| 寿司店 | 35〜45% | 25〜30% | 60〜70% |
原価率が高い業態は人件費率を低く、人件費率が高い業態は原価率を低くする。 FLのバランスが大事。
人件費を「下げずに」人件費率を改善する方法
人件費率を下げるのは、必ずしも「人を減らす」「給料を下げる」ことではない。
方法1: 売上を上げる(分母を大きくする)
人件費50万円は変わらなくても──
- 月商200万円 → 人件費率25%
- 月商250万円 → 人件費率20%
客単価アップやアイドルタイムの活用で売上が上がれば、人件費率は自然に下がる。
方法2: シフトの最適化
「ピーク時に人が足りず、アイドルタイムに人が余っている」──これが人件費のムダ。
| 時間帯 | 来客数 | 必要なスタッフ | 実際のスタッフ | ムダ |
|---|---|---|---|---|
| 11:00-13:00 | 40人 | 3人 | 2人 | 人手不足 |
| 14:00-17:00 | 5人 | 1人 | 2人 | 1人分がムダ |
| 18:00-21:00 | 30人 | 3人 | 3人 | 適正 |
14:00-17:00の1人分を減らすだけで、月3〜5万円の削減。
方法3: オペレーションの効率化
- 仕込みの段取りを改善 → 30分短縮 = 月の人件費数千円減
- セルフオーダーの導入 → ホールスタッフ1人分を削減
- 券売機の導入 → 会計業務ゼロ
方法4: メニュー数の絞り込み
メニューが多い → 仕込みに時間がかかる → 人件費が増える
メニューを20品から15品に減らすだけで、仕込み時間が20〜30%減る。
最低賃金が上がったらどうなるか?
2024年10月の全国加重平均最低賃金は1,054円。毎年3〜5%ずつ上がっている。
アルバイト2人の人件費シミュレーション:
| 最低賃金 | 月の人件費(2人合計) | 売上200万円での人件費率 |
|---|---|---|
| 1,054円 | 20万円 | 10% |
| 1,100円 | 21万円 | 10.5% |
| 1,200円 | 23万円 | 11.5% |
| 1,300円 | 25万円 | 12.5% |
オーナーの取り分30万円を加えると、最低賃金1,300円時代の人件費率は(30+25)÷200×100 = 27.5%。まだ適正範囲だが、余裕は減る。
最低賃金の上昇分を吸収するには、それ以上に売上を増やすか、オペレーション効率を上げるしかない。
今すぐやること
- 今月の人件費の合計を計算する(オーナーの取り分を含める)
- 人件費率を計算する(人件費÷売上×100)
- FL比率を計算する((食材費+人件費)÷売上×100)
- FL比率が60%を超えていないか確認する
- 超えていたら、シフトの最適化か売上アップのどちらで改善するか決める
「何となく適正な気がする」から「数字で適正」へ。 その差が、利益が出る店と出ない店の違いだ。
KitchenCostは、食材費と原価率を見える化するアプリです。FL比率を計算するには、まず正確な原価率(F)を知る必要があります。原価率が見えれば、人件費率(L)との合計で利益が残るかどうかが一目でわかります。