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飲食店の厨房設備、壊れてからでは遅い──修理費の相場と「直すか買うか」の判断基準(2026年版)

製氷機・冷蔵庫・エアコン──飲食店の設備故障は突然やってくる。修理費の相場(3万〜20万円)、修理vs買い替えの損得ライン、年間の修繕積立の目安を個人店オーナー向けに解説。

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目次

「明日も普通に営業できる」は、当たり前じゃない

月曜日の朝、店に来たら製氷機が止まっていた。

ランチ営業まであと3時間。修理業者に電話したら「最短で明後日の午前中です」と言われた。仕方なくコンビニで袋氷を買い込む。修理の見積もりは7万円。先月エアコンの調子が悪くて修理に5万円かかったばかりなのに。

こういう出費は、売上が伸びても利益が残らない「見えない原因」のひとつだ。

飲食店の開業ガイドには「設備の購入費」は詳しく書いてある。でも、開業した後に設備を維持し続けるコスト──修理費、メンテナンス費、そして突然の買い替え──についてはほとんど触れられていない。

この記事では、個人飲食店の設備修理費の相場、「直すか買い替えるか」の判断基準、そして突発的な出費に慌てないための準備について整理する。


厨房設備の寿命──「まだ動くから大丈夫」が一番危ない

まず、主要な厨房設備が「だいたい何年で壊れるか」を知っておこう。

法定耐用年数と実際の寿命は違う

法定耐用年数は税務上の減価償却のための数字であって、「この年数で壊れる」という意味ではない。

設備法定耐用年数実際の寿命の目安寿命を縮める原因
業務用冷蔵庫6年8〜12年コンプレッサーの劣化、扉パッキンの消耗
製氷機6年6〜10年水質(カルキ・ミネラル)、フィルター放置
業務用エアコン6〜15年※10〜15年稼働時間の長さ、フィルター清掃不足
ガスコンロ・ガステーブル8年8〜15年バーナーの詰まり、点火装置の摩耗
フライヤー8年5〜10年高温使用による油槽の劣化、サーモスタット故障
食洗機8年7〜12年洗剤カス・スケール蓄積、ヒーター劣化
オーブン・コンビオーブン8年8〜15年スチーム系統の詰まり、扉パッキン劣化

※エアコンは「建物附属設備」に該当する場合13〜15年、「器具備品」の場合6年。

ポイントは**「まだ動いているか」ではなく「あと何年使えるか」**で考えること。7年使った製氷機が突然壊れても、おかしくはない。


修理費はいくらかかる?──部位別の相場

「壊れた。で、いくらかかるの?」──ここが一番知りたいところだろう。

修理費の構成

修理費は大きく3つの要素で決まる。

項目金額の目安内容
出張費3,000〜8,000円業者が店に来るだけでかかる
基本作業費10,000〜30,000円分解、点検、組み立て、動作確認
部品代数千円〜数万円壊れた部品の実費

さらに、夜間・休日の緊急対応だと**+5,000〜20,000円**の割増料金がかかる。

故障箇所別の修理費

故障箇所修理費の目安対象機器
センサー交換10,000〜25,000円冷蔵庫、オーブン、食洗機
ヒーター交換15,000〜30,000円食洗機、オーブン
ファンモーター交換20,000〜50,000円冷蔵庫、エアコン
基板交換25,000〜60,000円全機器共通
コンプレッサー交換40,000〜80,000円冷蔵庫、冷凍庫、製氷機

業務用エアコンは別格

業務用エアコンの修理費は、厨房機器と比べて1段階高い

症状修理費の目安
リモコン不良、フィルター清掃後の動作不良5,000〜20,000円
ファンモーター・基板の交換30,000〜50,000円
冷媒ガス漏れの修理100,000円〜
コンプレッサー交換100,000〜200,000円

冷媒ガス漏れとコンプレッサー故障は修理費が10万円を超えるケースが多い。この金額になると「新品に買い替えたほうがいいのでは」という判断になりやすい。


「直す」か「買い替える」か──3つの判断基準

修理費の見積もりが出たとき、「これ、直す意味あるの?」と迷うことがある。以下の3つの基準で判断しよう。

① 修理費が新品価格の何%か

修理費の割合判断
新品価格の30%以下修理が得。迷わず直す
新品価格の30〜50%使用年数を考慮して判断。購入から5年以内なら修理、7年以上なら買い替え検討
新品価格の50%以上買い替えが得。修理してもまた別の箇所が壊れるリスクが高い

:新品40万円の業務用冷蔵庫。コンプレッサー交換で見積もり8万円(20%)なら修理。基板+コンプレッサー交換で25万円(62%)なら買い替え。

② 部品がまだ手に入るか

メーカーが部品を保有している期間は、製造終了から9〜10年が一般的。

つまり、10年以上前のモデルは部品が手に入らず修理不能になる可能性がある。修理業者に「部品はありますか?」と最初に確認しよう。

③ 電気代の差を考慮する

古い業務用エアコンから最新型に買い替えると、電気代が最大30〜40%削減できるケースがある。

修理費だけでなく、「修理して使い続けた場合の電気代」と「新品に替えた場合の電気代」の差も計算に入れる。飲食店はエアコンの稼働時間が長いので、この差は年間で数万円になることがある。

判断フローチャート

  1. 修理費が新品の30%以下 → 修理
  2. 修理費が30〜50% → 購入から5年以内なら修理、7年以上なら次へ
  3. 部品があるか確認 → 部品なし → 買い替え
  4. 修理しても電気代が高い旧型か → 旧型 → 買い替え
  5. 上記に当てはまらない → 修理

大家負担か自分負担か──契約書を確認する

設備が壊れたとき、修理費を大家さんに請求できるケースがある。

原則

設備の種類修理費の負担
建物附属設備(エアコン、給排水管、電気設備、換気ダクト)原則:大家負担
テナント持ち込み設備(自分で買った厨房機器)テナント負担
前のテナントからの造作譲渡品契約書による(要確認)

ただし、契約書が最優先

上記はあくまで「原則」であって、賃貸契約書の**「修繕負担区分」**に別の記載があれば、そちらが優先される。

よくあるのが「軽微な修繕(〇万円以下)はテナント負担」という条項。この金額が10万円に設定されていると、エアコンの修理5万円は自腹になる。

契約時に確認すべきこと

  • エアコンの修理・交換は誰の負担か
  • 「軽微な修繕」の金額上限はいくらか
  • 前テナントから引き継いだ設備の扱い

突然の故障に慌てない──「修繕積立」のすすめ

設備はいつか必ず壊れる。問題は「いつ壊れるかわからない」ことだ。

月商の1〜2%を積み立てる

月商月の積立額の目安年間の積立額
100万円10,000〜20,000円12〜24万円
200万円20,000〜40,000円24〜48万円
300万円30,000〜60,000円36〜72万円

個人店なら月1〜3万円を「設備修繕口座」に分けておくだけでいい。専用口座にする必要はない。メインの通帳で「この金額は修繕用」と把握しておけば十分だ。

開業からの年数で積立額を変える

時期積立の強度理由
1〜3年目月商の1%で十分設備がまだ新しい。故障リスクは低い
4〜6年目月商の1.5%に増やす消耗部品の交換が出始める時期
7年目以降月商の2%以上主要設備の買い替えが視野に入る

この積立があるかないかで、故障が「突発的な危機」になるか「想定内の出費」になるかが変わる


壊れる前にできること──日常メンテナンス

修理費を減らす一番の方法は、壊れにくい状態を保つことだ。特別なことは必要ない。

週1でやること(合計10分)

  • 冷蔵庫のコンデンサー(背面のフィン)のホコリ取り。詰まるとコンプレッサーに負荷がかかり、壊れるのが早くなる。乾いたブラシで払うだけでいい
  • 製氷機のフィルター確認。水アカやカルキが溜まると製氷能力が落ちる

月1でやること(合計30分)

  • エアコンのフィルター清掃。飲食店は油煙が多いので家庭より頻繁に必要。フィルターが詰まると電気代が10〜15%上がる
  • 食洗機の洗浄槽・ノズルの掃除。洗剤カスとスケール(水垢)が溜まるとヒーターに負荷がかかる
  • フライヤーの温度計の精度確認。設定温度と実際の油温がズレていると、油の劣化が早まり、サーモスタット故障の原因になる
  • ガスコンロのバーナーキャップ清掃。目詰まりは不完全燃焼の原因

年1でやること

  • 業務用エアコンの専門業者によるクリーニング。費用は1台2〜4万円。これをケチると修理費の方が高くつく
  • グリストラップの専門清掃(別記事で詳しく解説)
  • ガス機器の法定点検。ガス会社に依頼。無料の場合もある

修理業者の選び方──3つだけ確認する

設備が壊れてから慌てて業者を探すと、判断を誤りやすい。壊れる前に1〜2社の連絡先を控えておくのが理想だ。

① 対応メーカーの幅

ホシザキ、フクシマガリレイ、パナソニック、マルゼン、タニコー──飲食店の厨房にはさまざまなメーカーの機器が混在している。メーカーを問わず対応できる業者のほうが、いちいち別の業者を探す手間がない。

② 修理後の保証期間

修理したのに1ヶ月後にまた同じ箇所が壊れた──こういうとき、保証があれば無料で再修理してもらえる。最低でも3ヶ月、できれば1年の保証がある業者を選ぼう。

③ 見積もりの明確さ

「出張して見てみないとわかりません」は仕方ない。でも、電話の時点で**「だいたいの費用感」を教えてくれる業者**は信頼できる。「センサー交換なら1〜2万円、コンプレッサーなら5〜8万円」──このレベルの目安を伝えてくれるかどうか。

緊急時の連絡先リスト(作っておくと安心)

設備連絡先備考
冷蔵庫・製氷機_____メーカーのサービスセンターが確実
エアコン_____メーカーまたは空調専門業者
ガス機器_____ガス会社の修理窓口
水回り(水漏れ・配管)_____地元の設備屋
電気系統_____電気工事会社

この表を印刷してレジ横やバックヤードに貼っておく。故障が起きたときに「どこに電話するか」で迷う時間が一番もったいない


修理費の経費計上──「修繕費」で落とせるもの、落とせないもの

修理にかかったお金は、確定申告で経費として計上できる。ただし、「修繕費」になるものとならないものがある。

内容勘定科目
壊れた部品の交換(元の状態に戻す)修繕費コンプレッサー交換、パッキン交換
定期的なメンテナンス修繕費エアコンクリーニング、フィルター交換
性能を上げる改良(元の状態を超える)資本的支出(減価償却)旧型エアコンを最新型に交換

判断に迷ったら:1回の修理が20万円未満なら「修繕費」で経費計上できる(税法の規定)。20万円を超える場合は税理士に相談するのが安全だ。


30秒チェックリスト──来週までにやること

  • 主要設備(冷蔵庫・製氷機・エアコン)の購入年・型番をメモする
  • 賃貸契約書の修繕負担区分を確認する(大家負担のラインはどこか)
  • 修理業者の連絡先を最低1社控えておく
  • 月1〜3万円の修繕積立を始める(口座を分けなくてもOK)
  • 冷蔵庫の背面のホコリを今週中に1回払う

まとめ──「壊れてから考える」をやめる

厨房設備の修理費は、1回あたり数万円〜20万円。年に2〜3回のトラブルが重なれば、それだけで年間の利益が吹き飛ぶ。

でも、多くの個人店がやっているのは「壊れてから業者を探す」「見積もりを1社だけ取って、そのまま頼む」──これでは高くつく。

壊れる前にできることは3つだけ

  1. 日常のメンテナンスで寿命を延ばす
  2. 修繕積立で突発的な出費に備える
  3. 修理業者の連絡先を事前に控えておく

この3つを押さえておけば、設備トラブルは「突然の危機」ではなく**「想定内の経費」**になる。

KitchenCostなら、食材の原価だけでなく、修繕費やメンテナンス費といった**固定費も含めた「お店の本当のコスト」**を一覧で把握できる。設備の購入年を記録しておけば、買い替えの時期もざっくり予測できる。「壊れてから慌てる」から卒業しよう。

よくある質問

飲食店の厨房設備の修理費は1回いくらかかりますか?

故障の内容によって大きく異なります。センサー交換など軽微な修理なら1〜2.5万円、ファンモーターや基板の交換で2.5〜6万円、コンプレッサー交換(冷蔵庫・製氷機)で4〜8万円、業務用エアコンの冷媒漏れ修理で10〜20万円が相場です(2026年3月時点)。これに出張費3,000〜8,000円、夜間・休日の緊急対応で+5,000〜20,000円が加わります。

厨房設備は何年で壊れますか?修理と買い替え、どちらが得ですか?

法定耐用年数は飲食店業用設備で8年、冷蔵・冷凍機器で6年ですが、実際の寿命はメンテナンス次第で10〜15年持つこともあります。判断の目安は「修理費が新品価格の30〜50%を超えたら買い替え」「製造終了から10年以上経ち部品がない場合は買い替え」です。逆に購入から5年以内で部品交換だけなら、修理のほうが圧倒的に安くなります。

設備の修理費は大家さんと自分、どちらが負担しますか?

原則として、テナントが持ち込んだ設備(自分で買った厨房機器)の修理費はテナント負担です。建物に付属する設備(エアコン・給排水管・電気設備)は大家負担が一般的ですが、賃貸契約書の『修繕負担区分』の記載が最終的な判断基準になります。契約時に必ず確認しておいてください。

飲食店は年間いくら修繕費を積み立てておくべきですか?

目安は月商の1〜2%、または月1〜3万円です。月商200万円の個人店なら月2〜4万円(年間24〜48万円)を修繕積立として確保しておくと、突然の故障でも慌てずに対応できます。開業から5年目以降は設備の老朽化が進むため、積立額を増やすことをおすすめします。

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