開業準備で見積もりを取ったとき、厨房機器の金額に驚いたことはありませんか。
製氷機、業務用冷蔵庫、コンビオーブン、食洗機——。ひとつひとつは「まあ、このくらいか」と思っても、合計すると200万、300万円はあっという間です。小さなカフェでも100万円は超えます。
そこで必ず出てくるのが、**「リースにしますか? 購入しますか?」**という選択肢。
リース会社の営業マンは「月々の支払いでOK」「全額経費で落とせます」と勧めてきます。たしかに魅力的に聞こえる。でも、ちょっと待ってください。リースの「月額」だけ見て決めると、あとで後悔するケースが少なくありません。
この記事では、飲食店の厨房機器をリース・新品購入・中古購入の3つで比較します。月額コスト、税金の扱い、閉店リスクまで——数字で判断できるようにまとめました。
先に結論
- リースの総支払額は、新品購入の1.2〜1.5倍になる。月額が安く見えるのは、6年分に引き延ばしているだけ
- リースは途中解約できない。3年で閉店しても、残り3年分のリース料を一括で払う義務がある
- 中古品なら新品の30〜60%の価格で手に入る。テンポスバスターズ等の専門店なら整備済み・保証付き
- 青色申告の個人事業主は30万円未満の機器を一括経費にできる(少額減価償却資産の特例)。中古ならこの枠に収まる機器が多い
- 「5年以上確実に使う+資金に余裕がある」なら購入、「資金が厳しい+最新機種が必要」ならリース、「コスト最優先」なら中古——が基本の判断軸
厨房機器の相場を知る
まず、主要な厨房機器の価格感を押さえておきましょう。
| 機器 | 新品価格(税別) | 中古価格の目安 | リース月額(6年) |
|---|---|---|---|
| 製氷機(25kg) | 20〜30万円 | 8〜15万円 | 約4,000〜5,400円 |
| 業務用冷凍冷蔵庫(縦型4ドア) | 40〜80万円 | 15〜35万円 | 約8,000〜15,000円 |
| コンビオーブン(6段) | 80〜150万円 | 30〜70万円 | 約15,000〜28,000円 |
| 食洗機(アンダーカウンター) | 40〜70万円 | 15〜30万円 | 約7,000〜13,000円 |
| ガステーブル(2口) | 10〜20万円 | 4〜10万円 | 約2,000〜3,500円 |
| コールドテーブル(冷蔵) | 15〜30万円 | 6〜15万円 | 約3,000〜5,500円 |
一式をリースで揃えると、月額3〜5万円程度が目安です。ホシザキで食洗機・製氷機・コールドテーブル・ガステーブルなど計6台をリースした場合、月額39,800円で6年契約——という実例もあります。
一見、「月4万円なら家賃並みで払える」と思うかもしれません。でも、6年間の総額を計算すると——
39,800円 × 72ヶ月 = 2,865,600円
同じ機器を新品で購入すれば200万円前後。差額は約80万円です。この差額が、リース会社の金利と手数料。「初期費用ゼロ」の裏側にあるコストです。
3つの選択肢を「5年間の総コスト」で比較する
「月額がいくら」だけでは判断できません。5年間で実際にかかるお金を、**業務用冷凍冷蔵庫(縦型4ドア・新品60万円)**を例に比較してみましょう。
ケース①:新品を一括購入する場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 購入価格 | 60万円(初年度に支払い) |
| 5年間で経費にできる額 | 約37.5万円(定額法・耐用年数8年で年7.5万円×5年) |
| 5年後の帳簿上の残り | 約22.5万円(まだ3年分の減価償却が残る) |
| 5年間の実質キャッシュアウト | 60万円 |
ケース②:6年リースの場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額リース料 | 約10,000円 |
| 5年間の支払額 | 10,000円×60ヶ月=60万円 |
| 5年間で経費にできる額 | 60万円(リース料は全額経費) |
| 6年目の支払い | さらに12万円(残り1年分) |
| 6年間の総支払額 | 約72万円 |
ケース③:中古品を購入する場合
4年使用済みの中古品を20万円で購入したとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 購入価格 | 20万円 |
| 中古の耐用年数 | 約5年(計算式:(8年−4年)+4年×20%=4.8年→5年) |
| 年間の減価償却費 | 4万円(20万÷5年) |
| 5年間で経費にできる額 | 20万円(全額) |
| 5年間の実質キャッシュアウト | 20万円 |
5年間の比較まとめ
| 新品購入 | リース | 中古購入 | |
|---|---|---|---|
| キャッシュアウト(5年) | 60万円 | 60万円 | 20万円 |
| 経費計上額(5年) | 37.5万円 | 60万円 | 20万円 |
| 所有権 | あり | なし | あり |
| 5年後に売却 | 可能(5〜10万円) | 不可 | 可能(数万円) |
| 閉店時のリスク | なし | 残債あり | なし |
中古が圧倒的に安いのは明らかです。ただし「程度の良い中古が見つかるか」「何年使えるか」という不確実性はあります。
リースのメリットは「月額が安い」ではない
リースの本当のメリットは、別のところにあります。
メリット①:固定資産税の申告が不要
厨房機器を購入すると、毎年1月に「償却資産の申告」を自治体に提出する必要があります。個人でやると地味に面倒です。リースの場合、機器の所有者はリース会社なので、この手続きが不要。
メリット②:リース料は全額経費
購入した場合の減価償却は8年。60万円の冷蔵庫を買っても、1年目に経費にできるのは7.5万円だけです。一方、リースなら支払った月額がそのまま経費。毎月の経費計上額が大きいため、「今年の利益を圧縮したい」というときにはリースのほうが都合がいいことがあります。
メリット③:最新機種を導入しやすい
とくに技術進歩が速い機器(食洗機、スチームコンベクション等)は、5〜6年で省エネ性能が大きく変わります。リースなら契約満了後に最新モデルに切り替えやすい。
メリット④:修理・メンテナンスがセットの場合がある
リース会社やメーカーによっては、メンテナンス込みのリースプランを用意しています。修理費が読めないのが不安な人にとっては安心感があります。
リースの最大のリスク:「途中解約できない」
ここが最も重要です。
リース契約は、原則として途中解約ができません。
「3年で閉店」「業態変更で機器が不要に」——こうなっても、残りのリース料を一括で支払う義務があります。
実際にあった話
Yahoo!知恵袋には、こんな相談が投稿されています。
「飲食店の経営を始めて2年で閉店しました。製氷機や冷凍庫をリースで借りていましたが支払いができなくなり、リース会社に解約を申し出たところ、残り5年分の支払いを求められました」
6年リースの2年目で閉店。残り4年分のリース料——月額4万円なら192万円を一括で請求される。閉店で収入がなくなったあとに、この金額はかなり厳しい。
飲食店の廃業率を考えると、これは「特殊なケース」ではありません。開業から3年以内に約50%が閉店すると言われている業界です。
閉店時の対処法
万が一閉店することになった場合の選択肢:
- 残額を一括精算する。 リース品を返却し、残債を支払う
- 居抜き売却で引き継ぐ。 次のオーナーにリース契約ごと引き継いでもらう(リース会社の承認が必要)
- リース品を買い取る。 残額を支払って自分の所有にし、中古として売却する
契約前に確認すべきこと:
- 途中解約時の違約金の計算方法
- リース契約の引き継ぎ(承継)が可能か
- 契約期間終了後の買取オプション
中古という「第3の選択肢」をもっと活用する
正直に言うと、開業時のコストを最も抑えられるのは中古です。
中古のメリット
- 価格が新品の30〜60%。 浮いた資金を運転資金に回せる
- 減価償却が早い。 中古品は耐用年数が短いので、購入額を早く経費にできる
- 所有権があるので、不要になったら売れる。 リースと違い、閉店時にも残債は発生しない
中古品の入手先
| 入手先 | 特徴 | 保証 |
|---|---|---|
| テンポスバスターズ | 全国チェーン。整備済みで品質が安定 | あり(3〜6ヶ月が多い) |
| 厨房ベース | ネット販売中心。在庫豊富 | あり(商品による) |
| 居抜き物件の前テナントから | 物件ごと設備を引き継ぐ | なし(自己責任) |
| ネットオークション・個人売買 | 最安値の可能性あり | なし |
中古購入で気をつけること
- 製造年を確認する。 10年以上前の機器は部品供給が終了していることがある
- メーカー保守が受けられるか。 ホシザキ、パナソニックなどは古い機種の修理を断ることがある
- 搬入・設置費を見積もりに入れる。 本体が安くても、搬入に5〜10万円かかることがある
- 電気・ガスの容量を確認する。 とくに三相200Vが必要な機器は、物件の設備を要確認
個人事業主が知っておくべき税務のポイント
厨房機器の「買い方」によって、税金の扱いが変わります。ここは意外と大きな差がつくところです。
30万円未満なら一括経費にできる
青色申告をしている個人事業主には「少額減価償却資産の特例」があります。1台あたりの取得価額が30万円未満であれば、購入した年にまるごと経費にできます(年間合計300万円まで)。
つまり、中古で25万円の冷蔵庫を買えば、その年の確定申告で25万円まるごと経費。所得税率20%の人なら、約5万円の節税です。
一方、同じ冷蔵庫を新品60万円で買うと、8年かけて少しずつ経費にするしかありません。
リースと購入の経費化スピード比較
60万円の業務用冷蔵庫の場合:
| 年 | 新品購入(定額法8年) | リース(月1万円×12ヶ月) | 中古購入20万円(5年) |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 7.5万円 | 12万円 | 4万円(または20万円一括) |
| 2年目 | 7.5万円 | 12万円 | 4万円 |
| 3年目 | 7.5万円 | 12万円 | 4万円 |
| 5年目まで合計 | 37.5万円 | 60万円 | 20万円 |
| 支払い総額 | 60万円 | 72万円 | 20万円 |
中古で30万円未満の機器を一括経費にできれば、初年度のキャッシュフロー改善効果が最も大きい。
判断フローチャート
最終的に、どれを選ぶかは「あなたの状況」次第です。以下のフローで判断してみてください。
Q1:手元資金に余裕がありますか?
- ✅ ある → Q2へ
- ❌ ない → リースまたは中古を検討
Q2:5年以上その機器を使い続ける確信がありますか?
- ✅ ある → 新品購入(長期的に最安。資産として売却も可能)
- ❌ わからない → Q3へ
Q3:中古で十分な品質の機器が手に入りますか?
- ✅ 手に入る → 中古購入(コスト最小。早く経費にもできる)
- ❌ 最新機種が必要 → リース(初期費用ゼロ。ただし途中解約リスクを理解した上で)
タイプ別のおすすめ
| あなたのタイプ | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 開業資金が限られている | 中古購入 | 初期コスト最小。居抜き物件+中古機器の組み合わせが最強 |
| 2店舗目を出す予定がある | 新品購入 | 1店舗目の機器を移設できる。資産として残る |
| 初めての開業で不安が大きい | リース(メンテ付き) | 修理費の心配がない。ただし閉店リスクは理解しておく |
| 技術進歩が速い機器を使う | リース | コンビオーブンなど、5年で性能が大きく変わる機器向き |
| 居抜き物件で開業する | 前テナントの設備を引き継ぐ | 追加投資ほぼゼロ。ただし状態確認は必須 |
今週やること
- いま検討中の厨房機器をリストアップする。 機器名、新品価格、中古価格の3列の表を作る
- リース見積もりを取る場合は、必ず「総支払額」を確認する。 月額だけ見ない
- テンポスバスターズのサイトで中古相場をチェックする。 新品の何割で買えるか確認
- 30万円未満の機器がいくつあるか数える。 青色申告なら一括経費にできるものを把握
- 居抜き物件を検討しているなら、設備の製造年と状態を確認する。 10年超の機器は要注意
厨房機器は「最初の買い方」でその後の資金繰りに大きな差が出ます。月額の安さだけで判断せず、総額、税金、閉店リスクの3つを見て決めること。
設備投資のコストも含めて原価を管理したい方は、**KitchenCost**で日々の原価計算を始めてみてください。食材だけでなく、設備にかかるコストまで「見える化」することが、利益を残す第一歩です。