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「もっとシフト入れますか?」——年収の壁178万円時代、飲食店オーナーが知らないとパートさんに逃げられる話

2026年から年収の壁が178万円に。でも106万・130万の社会保険の壁はそのまま。飲食店のパートさんが『もっと働ける』のか『壁を超えたら損する』のか、オーナーが正しく理解していないとシフト交渉で失敗する。個人飲食店向けに、壁ごとの手取り変化と最適なシフト設計を具体的に解説。

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目次

パートさんが12月になると急にシフトを減らす

飲食店オーナーなら、毎年この光景に覚えがあるはずだ。

11月の終わり頃、パートさんがおずおずと言ってくる。

「すみません、12月はシフト減らしてもらえませんか……壁がギリギリで」

年末の忘年会シーズン、一番人が欲しいときに、一番頼りにしているパートさんが休む。

その理由が「年収の壁」。ニュースでは「壁が178万円に上がった!」と報道されたけど、現場は全然そんなに単純じゃない。

この記事では、個人飲食店のオーナーが本当に知っておくべき「壁」の仕組みと、パートさんとの上手なシフト設計を整理する。


まず結論:壁は「1つ」じゃなくて「5つ」ある

「壁が178万円に上がった」と聞いて、パートさんが178万円まで自由に働けると思っているオーナーがいる。それは間違いだ。

178万円に上がったのは 「所得税の壁」だけ。パートさんの手取りに影響する壁は、全部で5つある。

年収ライン超えるとどうなる?個人飲食店に関係ある?
①住民税約110万円住民税がかかり始める△(金額は小さい)
②社会保険(大企業)106万円社会保険料を自分で負担✕(従業員51人以上の企業のみ)
③社会保険(中小)130万円社会保険料を自分で負担◎(個人飲食店はここ)
④配偶者控除123万円〜160万円配偶者の税金が増える○(パートさんの夫の控除)
⑤所得税178万円所得税がかかり始める△(ここまで働く人は少ない)

個人飲食店のパートさんにとって、最もインパクトが大きいのは③の「130万円の壁」だ。


130万円の壁を「1円」超えると何が起きるか

手取りシミュレーション

パートさんの年収が129万円から131万円に「たった2万円」増えたとき、手取りはどう変わるか。

年収所得税住民税社会保険料(本人負担)手取り
129万円0円約2万円0円(扶養内)約127万円
131万円0円約2万円約20万円約109万円

年収が2万円増えたのに、手取りが18万円減った。

これが「壁」の正体。パートさんが「壁を超えたくない」と言う理由がわかるだろう。

いくらまで稼げば「超えた方が得」になるか

手取りが逆転しないためには、130万円の壁を超えたら 一気に年収160万〜170万円まで稼ぐ必要がある。

年収手取り(概算)130万円以内と比べて
130万円(壁の手前)約127万円
140万円約117万円▲10万円
150万円約126万円▲1万円
160万円約133万円+6万円
170万円約141万円+14万円

つまり、130万円〜159万円の間は 「働き損ゾーン」。この範囲でシフトを組んでも、パートさんの手取りは130万円以内のときより少ない。


飲食店オーナーの3つの選択肢

選択肢A:130万円以内でシフトを設計する

最もトラブルが少ない方法。パートさんの年収が130万円を超えないように、月の労働時間を逆算する。

時給月の上限額月の上限時間週の上限時間
1,200円108,333円約90時間約20.8時間
1,350円108,333円約80時間約18.5時間
1,450円108,333円約75時間約17.2時間

注意:交通費が月15万円を超える場合は年収に含まれるが、通常の通勤手当は含まない。

選択肢B:130万円を大きく超えるシフトにする

パートさんが「もっと働きたい」場合は、130万円で止めるより 160万円以上を目指す方が合理的。

パターン時給週の労働時間月収年収手取り(概算)
130万円で抑える1,350円18.5h10.8万円130万円約127万円
中途半端に超える1,350円24h14万円168万円約140万円
しっかり超える1,350円28h16.4万円197万円約162万円

選択肢Bのメリット: お店にとっても、シフトが安定して埋まる。パートさんにとっても、手取りが増える。

デメリット: お店側も社会保険料の事業主負担(年収の約15%)を払う必要がある。ただし、個人飲食店で従業員が5人以下の場合、社会保険の加入義務は「任意適用」となるケースもある。

選択肢C:人数を増やして1人あたりの時間を減らす

パートさん3人で回している店なら、4人に増やして1人あたりの労働時間を減らす。

  • 全員が130万円以内で収まる
  • シフトの融通が利きやすくなる
  • 急な欠勤にも対応できる

デメリット: 採用コスト(1人5〜15万円)と教育コストがかかる。


2026年10月の変更:106万円の壁はどうなる?

2026年10月から、106万円の壁の 一部が撤廃される。

変更点変更前変更後(2026年10月〜)
賃金要件月額8.8万円以上撤廃
勤務時間週20時間以上変更なし
対象企業従業員51人以上変更なし
個人飲食店対象外対象外

ポイント:個人飲食店(従業員50人以下)には直接の影響はない。 130万円の壁がそのまま適用される。

ただし、パートさんの配偶者が勤めている会社が従業員51人以上の場合、配偶者の扶養の条件が変わる可能性があるので、パートさんに「配偶者の会社の条件も確認してね」と伝えておくのが親切だ。


パートさんとの会話テンプレート

年収の壁は、オーナーよりパートさん本人の方が敏感に気にしている。でも、聞きにくい話でもある。

こんなふうに声をかけると、スムーズにシフト設計ができる。

「最近、年収の壁が変わったって話がニュースでよく出てますよね。もし働き方について希望があれば、気軽に教えてくださいね。扶養内で抑えたいとか、もうちょっと増やしたいとか、どちらでもシフトは調整できますので。」

ポイントは3つ。

  1. こちらから切り出す(パートさんからは言いにくい)
  2. どちらでもOKと伝える(減らすことも増やすことも否定しない)
  3. 具体的な金額は本人に計算してもらう(税金の詳細はパートさん側の事情による)

まとめ:壁の仕組みを知っている店は、パートさんに選ばれる

人手不足の時代、パートさんは「時給が高い店」だけでなく 「自分の事情を理解してくれる店」 を選ぶ。

  • 年収の壁を理解して、130万円以内のシフトを組んでくれる
  • 逆に「もっと働きたい」なら、働き損にならない年収ラインを教えてくれる
  • 年末に慌てるのではなく、年初からシフト計画を立ててくれる

こういう店は、同じ時給でも人が辞めない

今週、パートさんに一言聞いてみよう。

「今年の働き方の希望、決まっていますか?」


よくある質問

年収の壁178万円とは何ですか?

2026年度税制改正で、所得税がかかり始める年収ラインが103万円から178万円に引き上げられました。基礎控除と給与所得控除がそれぞれ引き上げられた結果です。パートさんが年収178万円まで働いても所得税がゼロになります。ただし、住民税・社会保険の壁は別に存在するので注意が必要です。

飲食店のパートさんは年収178万円まで自由に働けるようになったのですか?

所得税の壁は178万円になりましたが、社会保険の壁はそのまま残っています。従業員51人以上の企業では年収106万円、それ以外では年収130万円を超えると社会保険料の負担が発生します。個人飲食店(従業員50人以下)の場合は130万円が社会保険の壁です。この130万円を超えた瞬間に手取りが約15〜20万円減るため、パートさんの多くは130万円を意識してシフトを調整しています。

106万円の壁は撤廃されると聞きましたが、いつからですか?

2026年10月から段階的に撤廃が始まります。従業員51人以上の企業に適用されていた『年収106万円以上で社会保険加入』の条件のうち、賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃されます。ただし、週20時間以上の勤務条件は残り、従業員50人以下の個人飲食店には直接影響しません。

パートさんから『壁を超えたくない』と言われたら、どうすればいい?

まず、パートさんがどの壁を気にしているのか確認しましょう。所得税の壁(178万円)なのか、社会保険の壁(106万・130万円)なのかで対応が変わります。個人飲食店の場合、社会保険の壁は130万円です。選択肢は3つ——①130万円以内でシフトを設計する、②130万円を大きく超える(年収160万円以上)シフトにして手取り減少を最小化する、③人数を増やして1人あたりの労働時間を減らす。

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