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厨房が40℃を超える夏、あなたの店は「違法状態」かもしれない──2025年6月・熱中症対策義務化で飲食店がやるべきこと

2025年6月施行の改正労働安全衛生規則により、WBGT28℃以上の厨房で働かせるなら熱中症対策が義務に。違反すれば50万円以下の罰金。スポットクーラー(1.6万円〜)、業務改善助成金の活用法、スタッフが倒れたときの労災リスクまで、個人飲食店が今すぐ対応すべきポイントを解説。

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目次

「大丈夫っすよ、慣れてるんで」──その一言が、50万円の罰金につながる

真夏のランチタイム。14席の小さな定食屋で、店主がひとり、鍋とフライヤーに向き合っている。

温度計は**42℃**を指している。

「窓を開けてるし、水も飲んでるから大丈夫」──そう思っているかもしれない。でも2025年6月から、その「大丈夫」が法律違反になった。


2025年6月、何が変わった?

改正労働安全衛生規則により、暑い環境での仕事に対する熱中症予防措置が事業者に義務付けられた。

対象となる条件

項目基準
温度基準WBGT 28℃以上、または気温31℃以上
作業時間連続1時間以上、または1日4時間超
対象者雇用しているすべての従業員(パート・アルバイト含む)

飲食店の厨房は、この条件をほぼ確実に満たす

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、厨房は湿度80%以下、温度25℃以下が望ましいとされている。しかし現実には、火を使う飲食店の厨房が25℃以下で維持されているケースはほとんどない。

違反するとどうなる?

  • 6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金
  • 法人(お店)にも同額の罰金
  • スタッフが倒れた場合、労災認定 → 安全配慮義務違反 → 損害賠償請求のリスク

厨房はなぜ「異常に暑い」のか?──原因の正体

「暑い」とわかっていても、なぜ厨房だけ異常に温度が上がるのか。原因を理解すると、対策の優先順位が見えてくる。

熱源の正体

熱源温度の目安
ガスコンロの炎1,700〜1,900℃
フライヤーの油面170〜190℃
スチームコンベクション100〜300℃
食洗機の蒸気80〜90℃
炊飯器の蒸気100℃

これらの熱源が同時に動いているのが、ランチやディナーのピークタイム。しかも、食品衛生の観点から窓を大きく開け放つわけにもいかず、熱がこもりやすい。

個人店で多い「窓のない地下の厨房」「空調が客席にしか効いていない物件」は、夏場に40℃超えが日常的に起きる。


義務化で「やらなきゃいけないこと」一覧

法律で求められている対策を、飲食店の個人事業主が実際にやるべき内容に落とし込むと、こうなる。

必須対策(法律上の義務)

対策具体的にやることコスト目安
暑さ指数(WBGT)の測定WBGT計を厨房に設置して数値を記録3,000〜5,000円(計測器)
水分・塩分の補給体制厨房に冷水器やスポーツドリンク常備、塩タブレット設置月500〜1,000円/人
休憩場所の確保涼しい場所(客席、事務所等)で休憩できる体制0円〜
作業管理連続作業時間の制限、暑い時間帯の作業軽減0円(シフト調整)
健康管理作業前の体調確認、持病のある従業員への配慮0円
教育熱中症の症状と対応をスタッフに周知0円

あると安心な追加対策

対策コスト目安効果
スポットクーラー(小型)1.6万〜3万円作業者の顔〜胸あたりに冷風を直接当てる
業務用扇風機5,000〜1.5万円空気循環で体感温度を下げる
冷却ベスト3,000〜8,000円/着保冷剤入りのベスト、2〜3時間持続
換気扇の増設・清掃清掃0円 / 増設5〜15万円排気効率が上がると厨房温度が3〜5℃下がることも
遮熱シート(窓用)2,000〜5,000円西日の強い厨房に効果的

「お金をかけずに」今日からできる5つのこと

設備投資の前に、0円でできる対策から始めよう。

1. 仕込みの時間帯をシフトする

最も暑くなる13〜15時のコンロ作業を減らすために、仕込みを早朝に集中させる。

  • 6:00〜9:00 → だし取り、煮込み、揚げ物の仕込み
  • 13:00〜15:00 → 盛り付け、軽い調理のみ

これだけで、ピークタイムの厨房温度を3〜5℃下げられる

2. 換気扇のフィルターを掃除する

信じられないかもしれないが、換気扇のフィルターが油で目詰まりしている店は非常に多い。月1回の清掃で排気効率が劇的に改善し、厨房の温度が下がる。

3. 「水分補給ルール」を決める

「のどが渇いたら飲む」では遅い。30分ごとに200mlを目安に、厨房の手が届く場所に冷たい飲み物を置いておく。

  • 経口補水液やスポーツドリンクが理想
  • コーヒーやお茶は利尿作用があるため、水分補給にはカウントしない

4. 「休憩の声かけ」を習慣にする

個人店では「自分が大丈夫だからスタッフも大丈夫だろう」と考えがち。でも、体力・体質は人それぞれだ。

2時間ごとに「10分休憩して」と声をかけるルールを作る。忙しいときほど、この声かけが重要になる。

5. 使わないコンロの火を落とす

ランチのピークが過ぎたら、使っていないコンロの火は消す。当たり前のようだが、「すぐ使うかもしれないから」と点けっぱなしにしている店は多い。ガス代の節約にもなる。


スポットクーラーの選び方──「買ったけど効かない」を防ぐ

スポットクーラーは効果的な対策だが、「買ったのに全然涼しくならない」という失敗も多い。

失敗する理由

スポットクーラーはエアコンとは違う。冷風を出す代わりに温風(排熱)も出す。この排熱を外に逃がさないと、部屋全体の温度はむしろ上がる。

排熱ダクトを窓や換気口から外に出せるか? これが導入の最大のチェックポイントだ。

選び方のポイント

厨房の環境おすすめ価格帯
窓がある / 換気口に余裕があるスポットクーラー(排熱ダクト付き)1.6万〜5万円
窓がない / ダクトを出せない業務用大型扇風機 + 冷却ベスト5,000円〜 + 3,000円〜
予算に余裕がある厨房用エアコン増設30万〜80万円(工事費込み)

レンタルという選択肢もある。 夏の3ヶ月だけスポットクーラーをレンタルする場合、月額5,000〜1万5,000円。買うか迷ったら、まず1ヶ月レンタルして効果を確認するのが賢い。


補助金が使えるケースもある

熱中症対策の設備導入には、以下の補助金が使える可能性がある。

業務改善助成金(厚生労働省)

  • 対象:従業員の最低賃金を引き上げた事業者
  • 補助対象:生産性向上のための設備投資(スポットクーラー含む)
  • 補助率:3/4〜9/10
  • 上限:30万〜600万円(賃上げ額と人数による)

エイジフレンドリー補助金

  • 対象:60歳以上の従業員がいる中小企業
  • 補助対象:転倒防止、熱中症対策などの設備
  • 補助率:1/2
  • 上限:100万円

既存の記事「エイジフレンドリー補助金ガイド」も参考にしてほしい。


スタッフが倒れたとき──「知らなかった」では済まないこと

最も避けたいシナリオを、あえて書いておく。

厨房で熱中症が発生した場合の流れ

  1. スタッフが体調不良を訴える(めまい、吐き気、大量の発汗)
  2. 涼しい場所に移動、水分補給、体を冷やす
  3. 意識がもうろうとする → すぐに119番
  4. 病院搬送 → 熱中症と診断
  5. 労災保険の申請(厨房内の熱中症は労災認定されやすい)
  6. 労働基準監督署の調査 → 対策が不十分だったか?
  7. 対策不備が判明 → 安全配慮義務違反 → 損害賠償請求の可能性

損害賠償のリスク

過去の判例では、熱中症で後遺症が残ったケースで数百万円〜数千万円の損害賠償が認められた例がある。

「うちは1人でやってるから関係ない」と思うかもしれない。でも、アルバイトを1人でも雇っていれば、あなたは事業者としての責任を負う


今週やること──チェックリスト

  • 厨房に温度計を設置する(100均でもOK。WBGT計は3,000円〜)
  • 厨房にスポーツドリンクと塩タブレットを置く
  • 換気扇のフィルターを掃除する
  • スタッフに「30分ごとの水分補給」「2時間ごとの休憩」を伝える
  • 仕込みスケジュールを見直して、午後のコンロ作業を減らせないか検討する

かかるコスト:2,000〜3,000円。かかる時間:30分。

スタッフが倒れてからでは遅い。50万円の罰金を払うよりも、3,000円の温度計を買うほうがずっと安い。


厨房の暑さ対策で仕込み時間をシフトしたら、「いつ何を仕込むか」の管理が大切になります。KitchenCostのレシピ管理機能なら、仕込みに使う食材の原価と必要量を一覧で確認できるので、早朝仕込みの段取りがスムーズになります。

よくある質問

飲食店の厨房でも熱中症対策は義務ですか?

はい、2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、WBGT(暑さ指数)28℃以上、または気温31℃以上の環境で1時間以上連続して作業する場合、事業者に熱中症予防措置が義務付けられました。火や蒸気を使う飲食店の厨房は、夏場に40℃を超えることも珍しくなく、ほとんどの店舗が対象になります。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。個人事業主であっても、アルバイトやパートを雇っている場合は対象です。

厨房にスポットクーラーを置くのにいくらかかりますか?

業務用スポットクーラーは小型のもので1万6,500円〜、中型で3万〜5万円、大型の三相200V対応で10万〜20万円程度です。レンタルの場合は月額5,000〜1万5,000円が相場です。ただし、厨房に置く場合はダクト(排熱管)を外に出す必要があるため、設置環境の確認が必要です。排熱の逃げ場がないと、冷風を出す代わりに温風も室内に出してしまい、逆効果になる場合があります。近くに窓や換気口がある厨房なら効果的です。

厨房のスタッフが熱中症で倒れたら労災になりますか?

はい、厨房内での熱中症は労災認定される可能性が高いです。労災の判断基準は「業務環境が高温多湿であり、熱中症との因果関係が認められること」です。飲食店の厨房は火気・蒸気・食洗機の熱で高温多湿になりやすく、労災として認定されやすい環境です。もし対策を怠った状態でスタッフが倒れた場合、治療費・休業補償の負担に加えて、安全配慮義務違反で損害賠償を請求されるリスクもあります。

小さな個人店でもできる低コストの熱中症対策はありますか?

お金をかけずにできる対策は複数あります。①水分・塩分補給の環境整備(ポカリスエットや塩タブレットを厨房に常備、1人あたり月500円程度)、②休憩ルールの設定(2時間ごとに10分の涼しい場所での休憩)、③換気扇の定期清掃(目詰まりで排気効率が下がっている店が多い、無料)、④服装の工夫(速乾性のコックコートに切り替え、1着3,000円程度)、⑤調理タイムシフト(仕込みを早朝に移動して、最も暑い13〜15時の火を使う作業を減らす)。これらは設備投資なしで今日から始められます。

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