「同じ油を買ってるのに、なんでうちのほうが高いんだ?」
近所のイタリアンの店主と話していて、何気なくサラダ油の仕入れ値を聞いてみた。
「えっ、1缶1,200円? うちは1,500円ですけど…」
同じメーカー、同じ容量の油なのに、300円も違う。
理由はシンプルだ。イタリアンは月に6缶使うからケース買いできている。こっちは月に2缶しか使わないからバラ買いになっている。
年間にすると、油だけで3,600円の差。調味料、米、消耗品まで含めたら、年間5万〜10万円のコスト差になっていてもおかしくない。
個人店は発注量が少ないから仕入れ値が高い。これは構造的な問題で、1人ではどうにもならない。
──でも、2〜3店舗で一緒に注文したら?
共同仕入れの仕組み──やっていることは「まとめ買い」だけ
共同仕入れと聞くと大げさに聞こえるが、やっていることは**「近所の店と一緒にまとめて注文する」**だけだ。
なぜ安くなるのか?
| 仕組み | 具体例 |
|---|---|
| ケース単価の適用 | バラで1缶1,500円 → ケース(6缶)で1缶1,200円 |
| ロット割引 | 10kg単位で注文すると5%オフ |
| 送料の割り勘 | 送料1,000円 ÷ 3店舗 = 333円/店 |
| 送料無料ライン到達 | 1店舗5,000円の注文 → 3店舗で15,000円 → 送料無料 |
| 交渉力の向上 | 「月に3店舗分、合計○○万円分注文します」と言えば値引き交渉しやすい |
どのくらい安くなる?
あくまで目安だが、共同仕入れによるコスト削減効果は以下の通り。
| 項目 | 削減率の目安 | 年間削減額(月仕入れ30万円の店) |
|---|---|---|
| ケース購入による単価減 | 5〜15% | 18万〜54万円 |
| 送料の削減 | 月1,000〜3,000円 | 1.2万〜3.6万円 |
| 合計 | 約20万〜58万円 |
もちろん、すべての食材がケース価格になるわけではない。だが、**油、米、調味料、消耗品(ラップ、アルミホイル、手袋)**など、どの店でも使うものだけでも共同購入すれば、年間で数万円以上のコスト削減は十分可能だ。
始め方──「声のかけ方」が最大のハードル
共同仕入れの仕組み自体は簡単だ。**最大のハードルは「隣の店に声をかけること」**にある。
声をかけやすい相手
| 相手 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 同じ商店街・ビルの飲食店 | ◎ | 物理的に近い。受け取り・分配が楽 |
| 業態が違う近隣の店(カフェ × 居酒屋) | ○ | 競合しないから気楽。共通食材は意外と多い |
| 同業態の近隣店 | △ | 競合意識が出やすい。仕入れ値を見せたくない店も |
| 開業仲間・知り合いの店主 | ○ | 信頼関係がすでにある。ただし距離が遠いと物流が面倒 |
声のかけ方(テンプレ)
「最近、仕入れの送料ってバカにならないですよね。もしよかったら、調味料とか消耗品だけでも一緒に注文しませんか?ケースで買えると単価も下がるし、送料も割り勘にできるんで。月1回まとめて発注する感じで。」
ポイントは、最初から大きく始めないこと。
- ✅ 「調味料と消耗品だけ」→ 失敗しても損が少ない
- ✅ 「月1回」→ 負担が少ない
- ❌ 「全食材を共同で」→ ハードルが高すぎて断られる
共同仕入れ向きの食材・消耗品リスト
すべての食材を共同仕入れにする必要はない。**「どの店でも使う」「日持ちする」「ケースで安くなる」**ものだけでいい。
共同仕入れにおすすめ
| カテゴリ | 具体的な商品 | ケース購入の効果 |
|---|---|---|
| 油 | サラダ油、ごま油、オリーブオイル | 10〜15%安くなることが多い |
| 調味料 | 醤油、味噌、みりん、酢、めんつゆ | 大容量ほど単価が下がる |
| 米 | 業務用米(30kg袋) | 複数袋で送料無料になりやすい |
| 消耗品 | ラップ、アルミホイル、使い捨て手袋 | ケース買いで20〜30%安くなることも |
| 洗剤類 | 食器用洗剤、漂白剤、除菌スプレー | 業務用サイズ×ケースで大幅安 |
| 紙製品 | ペーパータオル、ナプキン、おしぼり | 箱買いでの割引が大きい |
共同仕入れに向かないもの
| カテゴリ | 理由 |
|---|---|
| 生鮮食品(野菜・肉・魚) | 鮮度管理が難しい。好みや品質基準が店ごとに違う |
| 専門食材 | 自分の店しか使わないものは共同購入の意味がない |
| 冷凍食品 | 保管スペースの問題。受け渡し時の温度管理 |
トラブル防止──3つのルールだけ決めておく
共同仕入れで最も多いトラブルは**「お金」と「手間の偏り」**だ。
ルール1:お金の立て替えはしない
「先に払っておくから、あとで振り込んで」は絶対にNG。
方法は2つ:
- 各店舗が自分の分を事前に振り込んでから注文する
- 注文時にクレジットカードで各自決済(店舗ごとに分けて注文できるサービスを使う)
ルール2:注文の締め切りを決める
「今週何か頼む?」「あー、まだ考えてない」──こんなやり取りを毎週続けると、取りまとめ役がストレスで爆発する。
- 毎週月曜の夜までにLINEグループに注文内容を投稿
- 火曜にまとめて発注
- 締め切りを過ぎたら次回に回す
ルール3:受け取りと分配は「1店舗受け取り+取りに来る」方式
宅配便は1つの住所にしか届かないので、どこか1店舗に届けてもらい、他の店が取りに来る。
- 受け取り店舗は固定 or 持ち回り
- 取りに来る時間帯を決めておく(「配達日の翌日午前中まで」など)
- 重いもの(油のケースなど)は台車があると便利
税務処理──各店の経費にちゃんと計上する
共同仕入れで気をつけたいのが、確定申告時の仕入れの計上方法だ。
方法1:領収書を店舗ごとに分けてもらう
仕入れ先に「各店舗宛に領収書を分けて発行してほしい」と頼む。対応してくれる業者は多い。
方法2:按分計算で計上する
1枚の領収書しか出ない場合は、注文リストを根拠に按分する。
例:合計15,000円の注文で、A店が6,000円分、B店が5,000円分、C店が4,000円分なら、それぞれがその金額を仕入れとして計上する。
大事なのは、「誰がいくら分を購入したか」の記録を残すこと。 LINEのやり取りや注文リストのスクリーンショットを保存しておけば十分だ。
成功事例:3店舗で月2万円のコスト削減
ある商店街の事例を紹介する。
参加店舗
- ラーメン店(月仕入れ40万円)
- 居酒屋(月仕入れ35万円)
- カフェ(月仕入れ15万円)
共同仕入れしたもの
- サラダ油(月合計12缶 → ケース2箱で15%OFF)
- 業務用ラップ・アルミホイル(月合計6本 → ケース買い)
- 使い捨て手袋(月合計2,000枚 → 箱買い)
- 食器用洗剤(月合計6本 → ケース買い)
結果
- 3店舗合計で月約2万円のコスト削減
- 1店舗あたり月6,000〜7,000円、年間約8万円の節約
- 送料は3店舗で割り勘にして、1店舗あたり月300円以下に
「8万円」と聞くと大した金額じゃないように感じるかもしれない。でも、仕入れ値を8万円下げるのと、8万円分の売上を上げるのでは、利益への効果がまったく違う。仕入れ値の削減はそのまま利益になる。
今週やること──3ステップ
-
近所の飲食店の店主に、仕入れの話題を振ってみる
- 「最近、油の値段上がりましたよね」程度の雑談から
- いきなり「共同仕入れしませんか?」は重すぎる
-
自分の月間消耗品リストを作る
- 今月買った消耗品(油、調味料、ラップ、洗剤…)の品名・数量・金額を書き出す
- ケースで買ったらいくらになるかを調べる
-
LINEグループを作る準備をする
- 2〜3人の候補が見つかったら、「試しに来月の消耗品だけ一緒に頼んでみませんか?」
最初は「消耗品だけ」「月1回」「3店舗以内」。 小さく始めて、うまくいったら少しずつ品目を増やしていけばいい。
共同仕入れで「いくら安くなったか」を知るには、もとの原価を正確に把握しておくことが大切です。KitchenCostなら、食材ごとの単価を登録しておくだけで、レシピ原価の変動がすぐに見える化されます。