ブログ

飲食店のグリストラップ、放置したら「修理費100万円+営業停止」もある──清掃の頻度・費用・業者選びの全知識

グリストラップ清掃を怠った飲食店に起きた下水逆流・修理費100万円超の実例。業者清掃は1回2〜8万円、月1回で年間24〜96万円。自分でやれば日常清掃は1日10分。3槽構造の仕組みから、清掃頻度の目安、業者の選び方、廃棄物処理法の罰則(最大1,000万円)まで。個人店オーナーが今日から使えるチェックリストつき。

飲食店グリストラップ清掃排水油脂詰まり業者費用廃棄物処理下水道法衛生管理ランニングコスト個人事業主2026年
目次

木曜の夜、ラーメン屋の閉店作業をしていたら、シンクの水が流れなくなった。

排水口からゴボゴボと音がして、やがて黒っぽい水がシンクに逆流してきた。床にも溢れ始める。厨房中に、今まで嗅いだことのないような腐敗臭が充満した。

翌朝、緊急で呼んだ水道業者の見積もりは87万円。排水管の内部が油脂で完全に詰まっていて、高圧洗浄だけでは取れず、一部を交換する必要があるという。

営業再開まで4日かかった。その間の売上損失も合わせると、100万円を超える出費になった。

原因は、グリストラップの清掃不足

「グリストラップって何?」という人がいてもおかしくない。居抜きで開業して、前のオーナーから「これは定期的に業者に頼んでね」と言われたけど、何のことかよくわからないまま、結局一度も清掃を頼んでいなかった──そういうケースは珍しくない。


先に結論

  • グリストラップは飲食店の排水設備に設置されている油脂分離装置。放置すると詰まり→逆流→営業停止のリスクがある
  • 日常清掃は1日10分でできる。バスケットのゴミ取り(毎日)、油脂の除去(2〜3日に1回)、底の沈殿物(週1回)
  • 業者による本格清掃の相場は1回2〜8万円。月1回で年間24〜96万円
  • 日常清掃をきちんとやれば、業者清掃の頻度を2〜3ヶ月に1回に減らせる場合もある
  • 清掃で出た汚泥は産業廃棄物。一般ゴミとして捨てると廃棄物処理法違反(罰金最大1,000万円)

そもそもグリストラップって何?──3槽構造を知っておく

グリストラップ(グリーストラップ)は、正式名称を「油脂分離阻集器」という。厨房の排水に含まれる油脂・食べカス・汚泥が、そのまま下水に流れないように止める装置

中身は**3つの槽(そう)**に分かれていて、段階的に汚れと水を分離する仕組みになっている。

役割たまるもの
第1槽バスケットで大きなゴミをキャッチ食べカス、野菜くず、ご飯粒
第2槽油脂を水面に浮かせて分離。底には汚泥が沈殿油脂(表面)、ヘドロ状の汚泥(底)
第3槽トラップ管で最後の油脂を分離し、きれいな水を下水へわずかな油脂

つまり、第1槽でゴミを取り、第2槽で油を浮かせ、第3槽で仕上げて下水に流す──という3段階のフィルター。

これが正常に機能していれば問題ない。だが、どこか1つの槽でも詰まると、全体が機能しなくなる


設置義務と関連法令──「うちは小さいから不要」は通用しない

「グリストラップの設置は義務なんですか?」とよく聞かれる。答えは**「自治体による」**。

関連する3つの法令

法令グリストラップとの関係
建築基準法建設省告示第1597号で「油脂を含む汚水を排出する場合は阻集器を設けること」と規定。事実上、飲食店は対象
下水道法排水の水質基準を定めている。油脂(ノルマルヘキサン抽出物質)は1リットルあたり30mg未満が基準。超えれば除害施設(=グリストラップ)の設置が必要
水質汚濁防止法排水基準を超えた場合の罰則を定めている

自治体の条例

各自治体がさらに具体的なルールを定めている。

地域設置義務の内容
東京都すべての飲食店で設置義務あり(東京都下水道条例)
大阪府生活環境の保全等に関する条例で義務化
愛知県同上
福岡市・札幌市・京都市下水道条例で設置基準を規定

「小さい店だから関係ない」と思っていても、東京都ではカフェだろうが10席の居酒屋だろうが設置義務がある。自分の店がある自治体の下水道課に確認しておこう。


清掃しないとどうなる?──3段階のリスク

グリストラップを放置するとどうなるか。段階的に悪化していく。

第1段階:排水が遅くなる

油脂がたまり、バスケットにゴミが詰まる。排水が流れにくくなり、シンクの水がなかなか引かない。この段階なら、日常清掃で回復できる。

第2段階:詰まり→逆流→浸水

放置し続けると、油脂が排水管内部にこびりつき、管が完全に塞がる。結果、下水が逆流して厨房が浸水する。

この段階になると修理費は高額になる。

症状想定される対応費用目安
排水管の油脂詰まり高圧洗浄5〜15万円
排水管の重度詰まり高圧洗浄+管の一部交換15〜50万円
下水逆流・床浸水排水管全面修理+床の消毒・復旧50〜100万円以上

さらに、修理中は営業停止。1日の売上が10万円の店なら、3日止まれば30万円の逸失利益。

第3段階:法的な問題

グリストラップの汚泥は産業廃棄物に分類される。これを一般ゴミとして捨てると、廃棄物処理法違反になる。

違反行為罰則
産業廃棄物の不法投棄5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金(またはその両方)
法人の場合3億円以下の罰金
下水道法の水質基準違反行政処分(改善命令→営業停止)

「少量だから排水口に流しちゃえ」「一般ゴミに混ぜちゃえ」──これが発覚すれば、罰金だけでなく営業停止処分になりうる。飲食店経営にとって致命的なリスクだ。


日常清掃のやり方──1日10分でできる

グリストラップの清掃は「業者に頼むもの」というイメージがあるが、日常的な手入れは自分でできる。しかも、やれば1回10分程度。

毎日やること:バスケットのゴミ取り(3分)

第1槽のバスケットにたまった食べカスや野菜くずを取り除く。

やり方:バスケットを引き上げる → ゴミ袋に中身を捨てる → バスケットを戻す

ポイントは閉店直後にやること。翌朝に回すと、一晩かけて腐敗が進み、臭いの原因になる。夏場は特に重要。

2〜3日に1回:油脂の除去(5分)

第2槽の水面に浮いた油脂を、ひしゃくや専用のすくい網で取り除く。

やり方:水面の油脂をひしゃくですくう → ゴミ袋に入れる → 新聞紙で油を吸わせると捨てやすい

中華料理店やラーメン店など、油を大量に使う業態は毎日やったほうがいい。カフェや和食なら2〜3日に1回で十分。

週1回:底の沈殿物の除去(5〜10分)

第2槽の底にたまる沈殿物(ヘドロ状の汚泥)を取り除く。

やり方:専用の柄杓(ひしゃく)や灰汁取り用のお玉で底をすくう → バケツに集める → 産業廃棄物として処理

⚠️ この汚泥は産業廃棄物。一般ゴミとして捨ててはいけない。業者に引き取ってもらうか、産廃業者に依頼する。

2〜3ヶ月に1回:トラップ管の清掃

第3槽のトラップ管(排水の出口についている管)は、油分がこびりついてぬめりが発生する。定期的にブラシで掃除する。


日常清掃スケジュール表

作業頻度所要時間担当の目安
バスケットのゴミ取り毎日(閉店後)3分当日のラスト担当
油脂の除去2〜3日に1回5分週の担当を決めておく
底の沈殿物の除去週1回5〜10分店長 or 副店長
トラップ管の清掃2〜3ヶ月に1回10分店長

「誰かがやるだろう」にすると、誰もやらなくなる。シフト表にグリストラップ清掃の担当を書いておくだけで、習慣化しやすくなる。


業者による本格清掃──費用相場と頻度の目安

日常清掃だけでは取りきれない汚れがたまっていく。定期的にプロの業者に本格清掃を依頼する必要がある。

費用相場

グリストラップの容量1回あたりの費用年間費用(月1回の場合)
250L以下(個人店に多い)19,000〜35,000円約23〜42万円
250L以上(中規模以上)30,000〜80,000円約36〜96万円

費用に影響する要素

  • グリストラップの容量:大きいほど高い
  • 設置場所:店内(床下ピット)より屋外のほうが作業しやすく安い場合がある。逆にビルの上階にある場合は割高
  • 汚れの程度:日常清掃をしている店は軽度の汚れで済むため安い。放置していた店は追加作業が発生
  • 定期契約の有無:定期契約は1回あたり10〜20%割引になることが多い

業態別の推奨頻度

業態推奨頻度理由
中華料理・ラーメン月1回油の使用量が多く、蓄積が速い
焼肉・焼き鳥月1回油脂+肉汁で汚れが重い
居酒屋月1回メニューが多様で油を使う料理が多い
和食・寿司2ヶ月に1回揚げ物が少なければ頻度を落とせる
カフェ・喫茶店2〜3ヶ月に1回油の使用量が少ない
パン屋・ケーキ屋2〜3ヶ月に1回バターなどの油脂はあるが量は限定的

日常清掃をサボっている場合は、業態に関係なく月1回が必須


業者の選び方──5つのチェックポイント

グリストラップ清掃業者は、正直なところ「どこに頼んでいいかわからない」という人が多い。最低限、以下の5点は確認しておこう。

① 産業廃棄物収集運搬の許可証を持っているか

グリストラップの汚泥は産業廃棄物。これを回収・運搬するには、都道府県知事の許可が必要。許可証の番号を確認しよう。

許可なく回収している業者に頼むと、依頼した側(=店のオーナー)も法的責任を問われる可能性がある

② マニフェスト(産廃管理票)を発行してくれるか

産業廃棄物を処理するときは、「マニフェスト」と呼ばれる管理票を発行する義務がある。これは**「この廃棄物を適正に処理しました」という証明書**。

業者が発行してくれない場合、その業者は避けたほうがいい。

③ 定期契約の割引があるか

スポットで都度頼むより、月1回や2ヶ月に1回の定期契約を結んだほうが1回あたり10〜20%安くなることが多い。年間で考えるとかなりの差になる。

④ 清掃後の報告書を出してくれるか

「何をどう清掃したか」の報告書を出してくれる業者は信頼できる。写真つきで状態を記録してくれる業者もある。

保健所の立入検査のとき、この記録が衛生管理の証拠になる。

⑤ 緊急対応が可能か

詰まりは予告なく起きる。「営業中に排水が逆流」というケースに、翌日対応では話にならない。即日〜翌朝対応ができる業者を選ぼう。

相見積もりのコツ

最低でも3社から見積もりを取る。比較のポイントは以下の通り。

比較項目確認すること
基本料金1回あたりの清掃費用
定期割引年間契約時の割引率
追加費用高圧洗浄、廃棄物処理費が別途かかるか
対応エリア出張費が発生するか
緊急対応追加料金はいくらか

注意:極端に安い業者は、産業廃棄物の処理を適正に行っていない可能性がある。「安い」には理由があることを意識しておこう。


コスト削減の実践テクニック

「年間24万円以上の清掃費は痛い」──そう感じる個人店オーナーは多い。以下の方法で、品質を下げずにコストを抑えられる。

テクニック①:日常清掃で業者清掃の頻度を減らす

前述の日常清掃を毎日きちんとやっている店は、業者清掃を2〜3ヶ月に1回に減らせる場合がある。月1回(年12回)から3ヶ月に1回(年4回)に減れば、単純計算で費用は3分の1

テクニック②:油を排水に流さない工夫

そもそもグリストラップに流れ込む油脂の量を減らせば、汚れの蓄積も遅くなる。

  • フライパンの油はペーパータオルで拭き取ってからシンクに入れる
  • 廃油は凝固剤で固めてゴミとして処理(排水口に流さない)
  • 食器を洗う前に、油汚れをヘラで削ぎ落とす

この3つを習慣化するだけで、グリストラップの汚れ方はかなり変わる。

テクニック③:バイオ系洗浄剤の活用

最近は、微生物の力で油脂を分解する「バイオ系洗浄剤」が市販されている。毎日の閉店後にグリストラップに投入するだけで、油脂の蓄積を抑えられる。

1ヶ月あたり2,000〜5,000円程度の製品が多い。業者清掃の頻度を減らせるなら、十分元が取れる。


居抜き物件のグリストラップ──見落としがちな落とし穴

居抜きで飲食店を始める場合、前のオーナーがグリストラップの清掃をサボっていたケースに注意。

よくあるパターン

  1. 居抜きで入居 → 前のオーナーのグリストラップをそのまま使う
  2. 中の汚れを確認しないまま営業開始
  3. 数ヶ月後に排水が詰まる
  4. 修理費が自分の負担になる

対策

居抜きで入る前に、必ずグリストラップの中を確認する。蓋を開けて中を見る。見た目が明らかに汚れている場合は、開業前に業者清掃を1回入れる。費用は2〜8万円だが、あとで修理費100万円を払うよりはるかに安い。

物件の内見時に確認すべきことをまとめた。

チェック項目確認方法
グリストラップの有無厨房の床にあるステンレスの蓋を探す
蓋を開けた状態油脂や汚泥がどれくらいたまっているか
容量250L以下 or 以上。業者清掃の費用に直結する
設置場所店内(床下)or 屋外。清掃のしやすさに影響
排水管の状態排水が正常に流れるかテスト

保健所の検査とグリストラップ

保健所の立入検査(営業許可の更新時や抜き打ち検査)で、グリストラップの清掃状態を確認されることがある。

直接的に「グリストラップを見せてください」と言われなくても、**「衛生管理の記録はありますか?」**と聞かれたときに、業者の清掃報告書やマニフェストがあると安心。

2021年6月からすべての飲食店でHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務化されている。グリストラップの清掃記録は、HACCP対応の一環として記録しておくと、検査時にスムーズ。

記録のフォーマットは簡単でいい。

【グリストラップ清掃記録】
日付:
清掃内容:□バスケット □油脂除去 □汚泥除去 □業者清掃
担当者:
備考:

これをA4用紙に印刷して、毎日チェックをつけるだけ。


今週やるべきこと──チェックリスト

  • グリストラップの蓋を開けて中の状態を確認する(油脂がどれくらいたまっているか)
  • 日常清掃の担当をシフト表に書き込む
  • 業者清掃をしたことがない場合、最低3社に相見積もりを取る
  • 業者に産業廃棄物収集運搬の許可証があるか確認する
  • 清掃記録のフォーマットを印刷して厨房に貼る
  • 居抜きで入った店の場合、前回の業者清掃がいつかを確認する

まとめ

グリストラップは「目に見えない場所にあるから、つい忘れる」設備の代表格。だが、放置したときの代償は大きい。

  • 軽度の詰まりでも修理費5〜15万円
  • 重度なら50〜100万円+営業停止
  • 廃棄物の不正処理なら罰金最大1,000万円

一方、日常清掃は1日10分。業者の定期清掃も月2〜3万円程度(250L以下の小型なら)。この「月2〜3万円」を年間24〜36万円の保険だと思えば、決して高くない。

原価計算で食材費や人件費は細かく管理しているのに、設備のメンテナンスコストは「いくらかかっているかわからない」という店は多い。KitchenCostのようなアプリで、グリストラップの清掃費も含めたランニングコストを一元管理しておくと、「見えないコスト」が可視化される。

明日の閉店後、まずグリストラップの蓋を開けてみよう。中を見れば、次に何をすべきかがわかる。

よくある質問

飲食店のグリストラップ清掃にかかる費用はいくらですか?

業者に依頼する場合、グリストラップの容量によって異なります。250L以下で1回19,000〜35,000円、250L以上で1回30,000〜80,000円が相場です。月1回の定期契約なら年間24〜96万円。ただし日常清掃(バスケットのゴミ取り、油脂の除去)を毎日自分でやれば、業者依頼の頻度を月1回から2〜3ヶ月に1回に減らせる場合もあり、年間コストを半分以下にできます。

グリストラップの清掃頻度はどれくらいが適切ですか?

日常清掃として、バスケットのゴミは毎日、浮いた油脂は2〜3日に1回、底の沈殿物は週1回が目安です。業者による本格清掃は、油を多く使う業態(中華・ラーメン・焼肉など)は月1回、比較的油が少ない業態(カフェ・和食など)は2〜3ヶ月に1回が推奨されます。ただし、悪臭や排水の流れが悪いと感じたら頻度に関係なくすぐ対応が必要です。

グリストラップの清掃を怠るとどうなりますか?

3段階のリスクがあります。第1段階は排水管の詰まり(修理費5〜30万円)。第2段階は下水の逆流・店舗浸水(復旧費50〜100万円以上、営業停止数日〜数週間)。第3段階は法的問題で、廃棄物処理法違反は最大1,000万円の罰金(法人は3億円)、下水道法の水質基準違反は行政処分の対象になります。放置すれば悪臭で近隣トラブルも招きます。

グリストラップの清掃業者はどう選べばいいですか?

チェックすべきポイントは5つです。①産業廃棄物収集運搬の許可証を持っているか(必須)、②清掃後にマニフェスト(産廃管理票)を発行してくれるか、③定期契約の割引があるか、④清掃後の報告書を出してくれるか、⑤緊急時の対応が可能か。相見積もりは最低3社から取り、1回あたりの単価だけでなく年間トータルで比較するのがコツです。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。