夜11時、シャッターの前で売上が動く
東京・下北沢のラーメン店。営業は11:00〜22:00。閉店後、店主は帰る。
でも店の前に置いた冷凍自販機は、夜中も朝方もずっと売り続けている。
「自販機の売上を確認するのが朝の楽しみになった」と店主は言う。
冷凍ラーメンセット(スープ+麺+チャーシュー)を1個800円で販売。1日に3〜5個売れる。月で90〜150個。月売上7万〜12万円。
営業時間外に、人件費ゼロで、追加売上が生まれる。
この仕組みが、個人飲食店に静かに広がっている。
冷凍自販機の基本を押さえる
仕組み
冷凍自販機は、マイナス18℃以下で食品を保管・販売できる自動販売機だ。飲料の自販機と同じく、お金(現金またはキャッシュレス)を入れて商品を選ぶだけ。
主な製品と価格帯
| 製品名 | 価格帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| ど冷えもん(大和自販機) | 約120〜180万円 | 最も普及。ラーメン店・餃子店の採用多い |
| FROZEN STATION(スマリテ) | 58万円〜 | 低価格帯。小規模店舗向け |
| サンデン製 | 約150〜200万円 | 大手メーカー。保守体制が充実 |
| 中古品 | 60〜100万円 | 状態による。保証の確認が必要 |
リース契約なら月額3〜5万円で初期費用なしで始められる。
ランニングコスト
| 項目 | 月額目安 |
|---|---|
| 電気代 | 5,000〜8,000円 |
| リース料(利用する場合) | 30,000〜50,000円 |
| 商品補充の手間 | 週2〜3回、1回15分程度 |
| メンテナンス | 年1〜2回(リースに含まれる場合あり) |
原価計算:自店メニューを冷凍して売る場合
ここが一番大事な話だ。「何をいくらで売って、いくら残るのか」。
ケース:ラーメン店が冷凍ラーメンセットを販売
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 800円 |
| 原材料費の内訳 | |
| 麺(1食分) | 80円 |
| スープ(1食分) | 100円 |
| チャーシュー(2枚) | 60円 |
| 容器・パッケージ | 50円 |
| 食品表示ラベル | 10円 |
| 原材料費合計 | 300円 |
| 原価率 | 37.5% |
| 粗利 | 500円/個 |
月に100個売れたら——
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 売上 | 80,000円 |
| 原材料費 | 30,000円 |
| 電気代 | 7,000円 |
| リース料 | 35,000円 |
| 営業利益 | 8,000円 |
リース利用の場合、月100個でギリギリ黒字。月150個売れると利益は3万円を超える。
ケース:餃子店が冷凍餃子を販売
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 600円(12個入り) |
| 原材料費 | 150円 |
| 容器・ラベル | 40円 |
| 原材料費合計 | 190円 |
| 原価率 | 31.7% |
| 粗利 | 410円/個 |
餃子は「家で焼く楽しさ」もあって、冷凍自販機との相性が抜群にいい。月150パック売れると粗利6万円以上。
損益分岐点を計算する
購入とリース、それぞれの損益分岐点を出しておこう。
購入の場合(本体150万円)
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 本体価格 | 1,500,000円 |
| 月間固定費(電気代) | 7,000円 |
| 1個あたり粗利 | 500円 |
| 月間損益分岐個数 | 14個 |
| 投資回収期間(月100個販売) | 約30ヶ月(2年半) |
リースの場合(月額35,000円)
| 前提 | 数値 |
|---|---|
| 月間固定費(リース+電気代) | 42,000円 |
| 1個あたり粗利 | 500円 |
| 月間損益分岐個数 | 84個 |
つまり、リースなら1日3個売れれば黒字になる計算だ。
売れる店と売れない店の違い
冷凍自販機を置いただけで売れるわけではない。売れている店にはパターンがある。
売れる店の特徴
① 「この店の味」が明確にある
「うちの看板は味噌ラーメンです」「餃子だけは誰にも負けません」——こういう店の冷凍商品は売れる。なぜなら、「店で食べたあの味を、家でも」というニーズに直結するからだ。
② 店の前に人通りがある
冷凍自販機は「通りがかりの衝動買い」で売れることが多い。駅前、住宅街の交差点、コンビニの近くなど、日常的に人が通る場所に店舗がある飲食店は有利だ。
③ SNSで告知している
自販機を置いたことをInstagramやLINEで発信している店は、初速が違う。特に「24時間買えます」「お土産にどうぞ」の一言が効く。
売れない店の特徴
- 「とりあえず既製品を入れた」→ コンビニに負ける
- 人通りのない裏路地に設置 → 存在を知られない
- 補充を怠って「売り切れ」が続く → リピーターが離れる
食品表示ラベルのルール
自分で作った冷凍食品を販売する場合、食品表示法に基づくラベルが必須だ。
必ず表示する項目
- 名称(例:冷凍ラーメンセット)
- 原材料名(使用量の多い順に記載)
- アレルゲン(特定原材料8品目は必須。推奨21品目も可能な限り表示)
- 内容量(例:麺120g、スープ200ml)
- 消費期限または賞味期限
- 保存方法(例:-18℃以下で保存してください)
- 製造者名と住所
- 栄養成分表示(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量)
ラベルの印刷は、家庭用プリンターでも対応可能だが、耐水・耐冷の「冷凍ラベル」を使うこと。通常のラベルは結露で剥がれる。
補助金で初期費用を抑える
冷凍自販機は、いくつかの補助金の対象になる。
中小企業省力化投資補助金(カタログ型)
- 補助率:1/2
- 補助上限:従業員5名以下で200万円(賃上げ達成で300万円)
- 特徴:カタログに登録された製品を選ぶだけ。事業計画書不要
- 申請:随時受付
150万円の自販機なら、実質75万円で導入できる計算だ。
IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)
- キャッシュレス決済機能付きの自販機は対象になる場合あり
- 他のITツール(POSレジ等)と合わせて申請すると効果的
小規模事業者持続化補助金
- 「新たな販路開拓」の費目で申請可能
- 補助上限50万円(通常枠)
補助金は申請してから採択まで1〜3ヶ月かかる。導入を検討するなら、早めに動くこと。
始める前のチェックリスト
冷凍自販機を導入する前に、以下を確認しよう。
- 店の看板メニューで「冷凍しても美味しいもの」があるか?
- 店の前に1日何人くらい通行人がいるか?(少なくとも1日100人以上が目安)
- 冷凍商品の製造は今の厨房設備で対応できるか?(急速冷凍機が必要な場合も)
- 食品表示ラベルの作成体制はあるか?
- 補充は週2〜3回対応できるか?
- 保健所への届出は済んでいるか?
- 補助金の公募スケジュールを確認したか?
今週やること
- 自店のメニューで冷凍販売に適した商品を1つ選ぶ
- 冷凍自販機メーカー2社に資料請求する
- 店の前の通行量を3日間、時間帯別にカウントする
- 管轄の保健所に、冷凍自販機の届出について電話で確認する
「閉店後も稼ぐ店」は、もはや大手チェーンだけの話ではない。
自分の料理に自信があるなら、その味を冷凍して24時間届けることは、立派な経営戦略だ。
冷凍自販機の原価設計には、KitchenCostが使えます。原材料費、容器代、ラベル代をまとめて計算して、「1個あたりいくら残るか」をすぐに確認できます。