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飲食店の経費、開業時のまま放置していないか?──2年目以降に見直すべき7つの固定費

開業時に決めた家賃・電気・保険・グルメサイト…そのまま2年以上払い続けていませんか?見直すだけで年間20〜50万円浮く7項目を、交渉例つきで解説。

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目次

「開業のとき決めたまま、ずっとそのまま払っている経費」──いくつあるだろうか。

家賃。電気とガスの契約。保険。グルメサイトの掲載プラン。POSレジの月額。害虫駆除の業者。

開業のときは余裕がなくて、「とりあえず」で決めたものが多い。比較検討する時間もなかった。でもそれから2年、3年と経っても、一度も見直していない。

その「とりあえず」が、毎月じわじわと利益を削っている。

飲食店の廃業率は、開業から2年以内で約50%、3年以内で約70%というデータがある。生き残った店にとって、次のハードルは「利益が出る体質をつくること」。そのために一番手っ取り早いのが、すでに払っている固定費を見直すことだ。

売上を月10万円増やすのは簡単ではない。でも経費を月2万円減らすのは、契約を見直すだけでできることがある。

この記事では、開業2年目以降の飲食店が見直すべき固定費を7つに絞って解説する。


先に結論

  • 開業時に決めた契約は、2年以上そのままなら確実に「割高」が混ざっている
  • 7つの見直しポイントで、年間20〜50万円の削減が現実的
  • 売上を増やすより、すでに払っている経費を減らすほうが即効性がある
  • 見直しに必要な時間は各項目30分〜1時間。月1回、1項目ずつでもいい

① 家賃──更新のタイミングが交渉チャンス

家賃は固定費の中で最も大きい部類に入る。月商に対して10%以内が健全な目安とされるが、開業時に「ここしかなかった」で決めた家賃が、実は相場より高いケースは珍しくない。

削減の可能性:月5,000円〜2万円 → 年間6〜24万円

交渉できるタイミング

  • 賃貸借契約の更新時(2年ごとが多い)
  • 近隣に空きテナントが増えたとき
  • 長期入居の実績があるとき(3年以上は交渉材料になる)

交渉のコツ

飲食店向けの家賃交渉支援会社のデータでは、交渉成功率は約73%。ただし「安くしてください」だけでは通らない。

交渉で用意するもの

  1. 周辺の賃料相場──SUUMOやアットホームで同エリア・同規模の空き物件を3〜5件調べる
  2. 自店の営業実績──売上推移を簡単にまとめる(「ここで長く続けたい」の根拠になる)
  3. 具体的な希望額──「5,000円下げてほしい」と具体的に

大家さんにとって、空室になるリスクのほうが月5,000円の値引きより痛い。退去されて次のテナントが決まるまでの空白期間(平均3〜6ヶ月)を考えれば、値引きに応じたほうが得、という計算になる。

📎 家賃と売上の関係は「家賃10万円で最低月商いくら必要?逆算の考え方」で解説しています。


② 電気・ガスの契約──最もハードルが低い見直し

開業時に電力会社やガス会社を比較検討した人は少ない。「前のテナントと同じ契約をそのまま引き継いだ」という店が多い。

削減の可能性:月3,000〜5,000円 → 年間3.6〜6万円

見直しの方法

  1. 現在の契約内容を確認する──電気の検針票(または電力会社のマイページ)で、契約種別・基本料金・単価を確認
  2. 比較サイトで見積もりを取る──エネチェンジ(enechange.jp)などで、事業者向けプランを比較
  3. 切り替えを申し込む──工事不要、手続きはオンラインで完結することが多い

2026年の電気料金の動き

2026年1〜3月は政府の「電気・ガス料金負担軽減支援事業」で一時的に値引きされている(電気:最大4.5円/kWh、ガス:最大18円/m³)。ただし2026年4月以降は補助が大幅に縮小される予定で、基本料金の見直しが一層重要になる。

セット割引も検討。東京ガスの例では、電気とガスをまとめると電気料金の合計から0.5%割引。個別の割引率は小さいが、他の見直しと合わせると積み上がる

📎 電気代の削減方法は「飲食店の電気代削減・省エネ0円ガイド」で詳しく解説しています。


③ グルメサイトの掲載プラン──「惰性で払い続けている」の代表格

食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ──開業時に営業を受けて契約し、効果を検証しないまま払い続けている店は多い。

削減の可能性:月1〜5万円 → 年間12〜60万円

なぜ見直すべきか

2022年のTableCheck調査では、飲食店を探す際にGoogleを利用する人が86.1%。グルメサイトの61.3%を上回っている。「グルメサイトを信頼できない」と回答した人も全体の**30.4%**で、2年間で約1.2倍に増加した。

つまり、グルメサイト経由の集客力は年々下がっているのに、掲載料は下がっていない。

具体的な見直しステップ

  1. 過去3ヶ月のグルメサイト経由の予約数を確認する
  2. 1予約あたりのコストを計算する(月額掲載料 ÷ 予約数)
  3. 1予約あたり1,000円を超えていたら、プランダウンを検討する

食べログの従量課金は、ディナー予約1件あたり200円、ランチ100円。月額掲載料に加えてこの従量課金が発生するため、実際のコストは見た目より高い

いきなり解約するのはリスクがある。 まずは有料プランを最安プランに下げて1〜2ヶ月様子を見る。予約数が大きく減らなければ、そのプランで十分ということ。

代わりに注力すべきはGoogleビジネスプロフィール。無料で、検索結果に営業時間・写真・口コミが表示される。

📎 Googleビジネスプロフィールの設定方法は「飲食店のGoogleビジネスプロフィール設定ガイド」を参照。


④ 保険の補償内容──「入っているけど内容を知らない」が危ない

開業時に不動産屋か保険代理店に勧められるまま加入した保険。更新のハガキが届いたら、中身を見ずにそのまま更新していないだろうか。

削減の可能性:月1,000〜3,000円 → 年間1.2〜3.6万円

見直すべきポイント

過剰な補償がないかチェックする。

確認項目よくある「払いすぎ」
什器・備品の評価額開業時の新品価格のまま。2年経てば資産価値は下がっている
休業補償の金額月商200万円の店に月商500万円相当の補償がついている
特約の重複火災保険と事業保険で同じ補償が重複している

一方で、不足している補償もチェック。

  • 生産物賠償責任保険(PL保険):食中毒が出たときの賠償をカバー。月数百円で入れるのに、未加入の店が意外に多い
  • 施設賠償責任保険:お客がケガをしたときの補償

保険は「入っていれば安心」ではなく、補償内容と保険料のバランスを年1回チェックするもの。更新月に30分だけ時間を取って、補償内容と保険料を見直してほしい。


⑤ リース契約──「終わった後」が見落とされている

厨房機器のリースは、契約期間が終了した後も自動更新されているケースがある。

リースの一般的な仕組みはこうだ。

時期状態
契約期間中(5〜7年)毎月リース料を支払う
契約満了後再リース(月額は大幅に下がるが、自動で継続)
買い取りリース会社に申請して買い取る(残存価額で取得)

問題は、再リースになっても月額を払い続けていること。再リース料は元の10分の1程度に下がるのが一般的だが、そもそもリースが終わったことに気づかず元の月額を払い続けているケースや、もう使っていない機器のリースが残っているケースがある。

やること

  1. リース契約の一覧を作る(機器名・月額・契約期間・満了日)
  2. 満了済みのものは再リース条件か買い取りかを確認する
  3. 使っていない機器のリースは解約を申し出る

📎 厨房機器のリースと購入の判断基準は「厨房機器のリース・購入・中古の判断基準」で解説しています。


⑥ サブスク・月額サービスの棚卸し

開業時に「便利そう」で契約した月額サービスが、使わないまま課金され続けている──これは飲食店に限らず多いパターンだが、経費として落ちるだけに気づきにくい

削減の可能性:月2,000〜1万円 → 年間2.4〜12万円

よくある「払っているだけ」のサービス

サービス月額の目安見直しポイント
有線放送・BGMサービス3,000〜5,000円SpotifyやApple Musicの商用利用可能プランで代替できる場合がある
予約管理システム3,000〜15,000円Googleカレンダーや紙の予約台帳で十分な規模なら不要
顧客管理(CRM)ツール2,000〜10,000円常連50人以下なら、ノートで管理できることが多い
会計ソフト1,000〜3,000円機能を使いこなしているか? 無料プランで足りるかもしれない

棚卸しの方法

  1. クレジットカード明細を3ヶ月分印刷する
  2. 「月額」「年額」で引き落とされているものにマーカーを引く
  3. 「先月これを使ったか?」と自問する
  4. 使っていないものは今月中に解約する

「いつか使うかも」は使わない。解約しても、また必要になったらそのとき契約し直せばいい。


⑦ 仕入れ先の条件再交渉──「付き合いだから」で損をしていないか

開業時に紹介された仕入れ先と、2年以上同じ条件で取引を続けていないだろうか。

削減の可能性:月5,000円〜2万円 → 年間6〜24万円

交渉しやすいタイミング

  • 仕入れ量が増えたとき(「月の発注額がこれだけ増えました」が交渉材料になる)
  • 他の業者から見積もりを取ったとき(比較の数字があると話が具体的になる)
  • 年度の切り替え時期(4月前後)

交渉で大事なこと

「もっと安くしろ」ではなく、**「長く付き合いたいから、お互いにとって無理のない条件を探したい」**という姿勢。

具体的には:

  • 3社以上から見積もりを取る──「A社はこの価格だった」と伝えるだけで、値引きではなく条件改善(配送頻度を増やす、ロットを下げるなど)の提案が出ることがある
  • まとめ発注で単価を下げる──ただし在庫リスクとのバランスを考える
  • 支払い条件の変更──月末締め翌月末払いから、もう少し早い支払いにすることで値引きを引き出すケースもある

📎 仕入れ先の見直しと交渉術は「仕入れ先の見直しと値上げ交渉の実務」で詳しく解説しています。


2026年に知っておくべき制度変更

経費の見直しとあわせて、今後の制度変更も押さえておきたい。

社会保険の適用拡大

2026年10月から、パート・アルバイトの社会保険加入における年収106万円の壁(賃金要件)が撤廃される。さらに2029年10月には、個人事業所で従業員5人以上の全業種が社会保険の強制適用になる見込み。

飲食店にとっての影響は大きい。アルバイトの社会保険料の事業主負担(約15%)が増えることになる。月20万円分のアルバイト人件費に対して、約3万円の負担増。

2026年10月から3年間は、従業員50人以下の企業を対象に社会保険料の8割を国が還付する特例措置がある。ただし恒久的な制度ではないため、3年後以降は自力で負担する必要がある

この負担増に備えるためにも、今のうちに他の固定費を削っておくことが重要になる。


見直しチェックリスト

7つの項目を一覧にまとめた。プリントアウトして、1項目ずつ潰していってほしい。

#見直し項目最後に見直した日年間削減の目安対応済み?
1家賃(更新時に交渉したか)___年___月6〜24万円
2電気・ガスの契約プラン___年___月3.6〜6万円
3グルメサイトの掲載プラン___年___月12〜60万円
4保険の補償内容と保険料___年___月1.2〜3.6万円
5リース契約の状況(満了・再リース)___年___月─(状況による)
6サブスク・月額サービスの棚卸し___年___月2.4〜12万円
7仕入れ先の条件(価格・配送)___年___月6〜24万円
合計(目安)約31〜130万円

全部を一度にやる必要はない。 今月は1つ、来月は1つ。半年で全項目を一巡できればいい。


今週やること

  1. クレジットカード明細と通帳を直近3ヶ月分出す。「毎月・毎年の定額引き落とし」にマーカーを引く
  2. 上のチェックリストで「最後に見直した日」を埋める。「覚えていない」なら、それが見直し対象
  3. 最も簡単な1つから手をつける。おすすめは「電気・ガスの比較サイトで見積もり」(30分でできる)

経費を1つ見直すごとに、月数千円が浮く。それが12ヶ月積み重なると、数万〜数十万円になる。

売上を増やす努力は続けつつ、すでに払っている経費を見直す。この両輪が回り始めると、利益が残る体質に変わっていく。


まず「食材費」の見える化から

経費の見直しと並行して、最も大きなコストである食材費を正確に把握することも重要だ。

仕入れ価格が変わったのに、メニューの価格が変わっていない──これは「見えない値下げ」をしているのと同じ。レシピごとの原価がわかれば、どのメニューが利益を出していて、どのメニューが足を引っ張っているかが見える。

KitchenCostは、レシピの材料と仕入れ価格を入力するだけで原価を自動計算する無料アプリです。仕入れ価格が変わったときも、1か所変えれば全レシピに反映されます。

固定費の見直しと、食材費の見える化。この2つを同時に進めることで、利益が残る経営に一歩近づけます。

よくある質問

飲食店の経費は何年ごとに見直すべきですか?

最低でも年に1回、できれば半年に1回の見直しをおすすめします。特に家賃は賃貸借契約の更新時(2年ごとが多い)、電気・ガスは毎年4月の料金改定前、保険は更新月がチャンスです。開業から2年以上経って一度も見直していない場合、年間20〜50万円の削減余地がある可能性があります。

飲食店の家賃交渉は本当にできますか?

できます。飲食店向けの家賃交渉支援会社のデータでは、交渉成功率は約73%とされています。ポイントは更新のタイミングで、周辺相場のデータを添えて『この場所で長く続けたい』という姿勢で交渉すること。月1万円下がれば年間12万円、5年で60万円の差になります。

開業時から変えていない経費で、最初に見直すべきものは何ですか?

まずは電気・ガスの契約プランです。新電力への切り替えや、電気とガスのセット契約で月3,000〜5,000円(年間3.6〜6万円)下がるケースが多く、工事不要・手続きも簡単で、最もハードルが低い見直し項目です。次に使っていないサブスクリプションの解約、その次に保険の補償内容チェックをおすすめします。

グルメサイトの掲載をやめると集客に影響しますか?

2022年のTableCheck調査では、飲食店を探す際にGoogleを利用する人が86.1%と、グルメサイトの61.3%を上回っています。有料プランを解約してもGoogle検索・Googleマップ・Instagram経由の集客に影響はありません。まずは有料プランを最安プランに下げて1〜2ヶ月様子を見るのが安全です。月1〜5万円の削減になることが多いです。

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