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「月にいくら売れば赤字にならないのか」──損益分岐点を知らない飲食店オーナーは危ない

損益分岐点とは「赤字と黒字の境目の売上」。固定費と変動費を分ければ計算できる。家賃25万円、人件費30万円の個人飲食店なら、月商何万円で赤字ゼロ? 計算式はシンプル。損益分岐点を下げる3つの方法まで、数字が苦手な飲食店オーナーでもわかるように解説。

飲食店損益分岐点固定費変動費必要売上個人店経営指標2026年
目次

「今月、黒字なのか赤字なのかわからない」

売上は200万円。食材を60万円仕入れた。家賃25万円。アルバイト代20万円。光熱費12万円……

「結局、いくら残ったの?」

この質問に即答できない飲食店オーナーは多い。そして、もっと怖いのは「最低いくら売ればいいのか」がわかっていないこと。

月の売上が200万円ある月はいいが、閑散期に150万円になったら? 120万円になったら?

赤字になるラインがわからないまま営業している──それは、信号のない交差点を走っているようなものだ。


損益分岐点とは?

「赤字と黒字の境目の売上」のこと。

  • 損益分岐点より上 → 黒字
  • 損益分岐点ちょうど → 利益ゼロ(トントン)
  • 損益分岐点より下 → 赤字

例えば、損益分岐点が月150万円の店なら──

月商状態
200万円✅ 黒字(50万円の利益)
150万円➡️ トントン(利益ゼロ)
120万円❌ 赤字(30万円の赤字)

計算方法──意外とシンプル

ステップ1: 費用を「固定費」と「変動費」に分ける

固定費(売上に関係なく発生)変動費(売上に連動して増減)
家賃食材費
正社員の給与消耗品(ナプキン、箸)
社会保険料包装資材
リース料アルバイト給与の一部
保険料
通信費・ネット代
減価償却費
会計ソフト代

飲食店の最大の変動費は食材費。 実務的には「原価率 ≒ 変動費率」で計算しても大きくずれない。

ステップ2: 計算式に当てはめる

損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

変動費率= 変動費 ÷ 売上

具体例: 個人居酒屋

費目金額分類
家賃25万円固定費
オーナー給料30万円固定費
アルバイト給料15万円固定費(固定シフト分)
社会保険・通勤手当5万円固定費
光熱費10万円固定費
リース料3万円固定費
保険・通信・雑費5万円固定費
固定費合計93万円
食材費60万円変動費
消耗品3万円変動費
変動費合計63万円
売上200万円

変動費率= 63万 ÷ 200万 = 31.5%

損益分岐点 = 93万 ÷(1 − 0.315)= 93万 ÷ 0.685 = 約136万円

月商136万円以上で黒字。 136万円を下回ったら赤字。

月商利益
200万円+約44万円
170万円+約23万円
136万円±0円(分岐点)
120万円−約11万円
100万円−約24万円

「1日いくら」に置き換える

月の損益分岐点136万円を、営業日数で割る。

営業日数1日の必要売上
25日/月54,400円
27日/月50,370円
30日/月45,333円

25日営業なら、1日54,400円が最低ライン。 客単価3,500円なら、1日16人のお客さんが必要。


損益分岐点を下げる3つの方法

方法1: 固定費を下げる

施策効果の目安
家賃交渉(5%ダウン)▲1.25万円/月
不要なサブスク解約▲0.5〜2万円/月
保険の見直し▲0.5〜1万円/月
電力会社の切り替え▲0.5〜1万円/月

固定費が5万円下がれば、損益分岐点は約7.3万円下がる。 月136万→129万。1日あたり約2,900円の余裕が生まれる。

方法2: 変動費率(原価率)を下げる

施策効果の目安
仕入れ先の見直し・相見積もり原価率1〜3%ダウン
フードロスの削減原価率1〜2%ダウン
メニューの原価率バランス見直し原価率1〜2%ダウン

原価率が2%下がれば(31.5%→29.5%)、損益分岐点は約4万円下がる。

方法3: 売上を上げる(客単価 or 客数)

損益分岐点そのものは変わらないが、分岐点を超えやすくなる。

施策効果の目安
ドリンクの注文率を上げる客単価+200〜500円
デザートメニューを充実させる客単価+300〜500円
ランチの提供を始める月商+15〜30万円

損益分岐点を知ると、判断が変わる

「定休日を増やしたい」→ 計算してから決める

休みを月4日→月5日に増やすと、営業日数が1日減る。

  • 月商200万円、25日営業 → 1日8万円
  • 月5日休み → 月商192万円(▲8万円)
  • 損益分岐点136万円 → まだ56万円の余裕 → 休みを増やしてもOK

「アルバイトをもう1人雇いたい」→ 計算してから決める

アルバイト1人追加=固定費+10万円/月

  • 損益分岐点: 93万÷0.685=136万 → 103万÷0.685=150万
  • 損益分岐点が14万円上がる
  • 今の月商200万なら余裕があるが、閑散期に150万を切ると赤字になる

「テナントを移りたい」→ 計算してから決める

家賃が25万→35万になったら?

  • 固定費: 93万→103万
  • 損益分岐点: 103万÷0.685=150万円
  • 月商150万以上を安定的に出せるか?出せなければ移るべきではない。

今すぐやること

  • 今月の費用を固定費変動費に分ける
  • 変動費率を計算する(変動費÷売上)
  • 損益分岐点を計算する(固定費÷(1−変動費率))
  • 1日あたりの必要売上に換算する
  • 閑散期でも損益分岐点を超えられるか確認する

自分の店の損益分岐点を知っている飲食店オーナーは、想像以上に少ない。 でもこの数字を知れば、「なんとなく不安」が「具体的な目標」に変わる。


KitchenCostは、食材の原価率を計算できるアプリです。変動費の大部分を占める食材費を正確に把握すれば、損益分岐点の計算精度も上がります。「あとどれだけ売れば黒字か」を知ることが、経営判断の土台です。

よくある質問

損益分岐点とは何ですか?

損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになる売上金額のことです。つまり「赤字でも黒字でもない、トントンの売上」。月の損益分岐点が150万円なら、月商150万円以上で黒字、150万円未満で赤字です。飲食店の経営で最初に把握すべき数字であり、『月にいくら売ればいいのか』の答えがこれです。損益分岐点を知らずに営業しているのは、ナビなしでドライブしているのと同じです。

損益分岐点はどうやって計算しますか?

計算式は「損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)」です。固定費は売上に関係なく発生する費用(家賃、人件費の固定部分、保険料、リース料など)。変動費は売上に連動する費用(食材費が中心)。変動費率は「変動費÷売上」で出ます。例:固定費110万円、変動費率35%の場合、110万÷(1−0.35)=169万円。月商169万円がトントンの売上です。

飲食店の固定費と変動費はどう分けますか?

固定費に含めるもの:家賃、正社員の給与、社会保険料、リース料、減価償却費、保険料、通信費、会計ソフト代など。変動費に含めるもの:食材費、消耗品(ナプキン、割り箸など)、アルバイトの給与(厳密にはシフトで変動する分)、包装資材。飲食店の場合、最大の変動費は食材費です。実務的には『原価率=変動費率』と近似しても大きくずれません。アルバイトの給与は半分固定・半分変動とみなすこともあります。

損益分岐点を下げるにはどうすればいいですか?

3つの方法があります。①固定費を下げる:家賃交渉、不要なサブスク解約、保険の見直しなど。固定費が5万円下がれば損益分岐点は約8万円下がる。②変動費率を下げる:食材の仕入れ見直し、ロスの削減、原価率の改善。原価率が2%下がれば損益分岐点は数万円下がる。③客単価を上げる:ドリンクやデザートの注文率を上げる。売上1回あたりの利益額が増えれば、少ない客数で損益分岐点を超えられる。最も即効性があるのは①の固定費削減です。

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